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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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メンタルが上がっていかないぜ・・・。小説は、カノキニの方が早く書き上がりそうですね。そろそろライソナから1ヶ月近く経ってしまうので、何とかしたいところです。

さて、お疲れモードなので、久々に小ネタでも。

**********

「──あれ、シェラ?」

聞き覚えのある声に、シェラは俯いていた視線を上げた。

「──・・・ジェームス」

そこには、見知った同級生の姿。

「お前、こんなところで何やって・・・」

怪訝そうな顔で訊ねてくるジェームスに、シェラははっとして現在の自分の状況を客観的に把握しようとした。
季節は秋。
天気は雨。
そして自分は、──ひとつ傘の下、長身の男に肩を抱かれている。

「──っ!」

かぁぁぁぁっ! と顔を紅くしたシェラは、自分でもどうやったのかは覚えていないが、ヴァンツァーの腕の中から抜け出し、まともに雨粒を浴びることになった。

「銀色」

呆れたような顔でヴァンツァーが声をかけてくるが、シェラはヴァンツァーとジェームスの顔を交互に見ると、脱兎の如く駆け出していった。

「あの・・・俺、なんか邪魔しました?」

妖艶な美貌の青年に若干怯んでいるジェームスだったが、その青年が「いや」と頭を振ると、少し安心した顔になった。

「昔から、あいつの行動はよく分からん」

ため息を零すヴァンツァーに、ジェームスは首を傾げた。
彼の目から見たら、シェラの行動の理由がとてもよく分かるような気がしたからだ。

「・・・大変ですね」

そうとしか返せなかったジェームスをじっと見つめたヴァンツァーは、ゆっくりとその美貌に笑みを浮かべた。
同性愛の気なんてまったくないジェームスでも、思わず心臓が跳ねる心地のする微笑みだ。

「その方が、愉しいだろう?」

正直、「同意を求められても・・・」と思ったジェームスだったのだけれど。

「早く迎えに行ってあげて下さい。この雨に打たれたら、風邪をひく」

そう言って肩をすくめるに留めた。

「確かに」

頷いたヴァンツァーは、ジェームスに目礼を送ると、すっかり姿の見えなくなったシェラを追った。

+++++

いくらも進まないうちに、人に囲まれているシェラを見つけた。
天使のような美貌の少女──と思われていた──が大雨に打たれているのだ。
普通の神経を持った人間であれば、心配して声をかけるだろう。

「だ、大丈夫ですから」

そんなことを言って先を急ごうとするシェラだったのだけれど、親切な人たちはなかなかに熱心で。
これが下心からの行動であれば冷笑とともに毒でも吐くのだが、人の親切というものは難しい、と困惑気味のシェラだった。
どうしよう、と困っていると、軽く腕を引かれてたたらを踏んだ。
親切な人を振り払うわけにもいかない、と相手を見上げたシェラは、菫色の瞳を大きく瞠った。

「・・・ヴァンツァー」
「行くぞ」

それだけ言うと、長身の男は再びシェラの肩を抱いて歩き出した。
シェラに声をかけていた人たちも、「彼氏がいたのね」といった感じのことを口々に話して安心したのだった。

「ちょっ! 離せ!」
「断る」
「こと──何でだ!」
「風邪をひかれると寝覚めが悪い」
「・・・別に、これくらい・・・寮に帰ったら風呂に」
「寮に帰るまでずっと濡れていくつもりか?」
「・・・・・・」

正論しか吐かない男なんか嫌いだ! とシェラは思い切り顔を顰めた。
そんなシェラの様子を見下ろしたヴァンツァーは、何やら鞄から取り出すと、シェラに渡したのだった。

「・・・何だ、これ」

怪訝そうな顔をしながらも渡された布を広げたシェラは、目を丸くした。

「──・・・ストール?」
「掛けていろ」

なぜこの男がこんなものを持っているのか。
不思議そうな顔をするシェラに、ヴァンツァーは「展示販売もしていた」と告げる。

「・・・彼女が、作ったものか?」

美しいストールだった。
やさしい色合いのオレンジやピンクの細い糸が使われ、綺麗なグラデーションを描いている。
織りも、学生が織ったにしては見事なものだった。
しかし、そんな美しいストールを、思わず握りしめそうになったシェラだった。

「いや」
「──え? じゃあ、何でこんなもの」
「なんとなく」

なんとなくでお前は女物のストールを購入するのか、と言いそうになったシェラだったのだけれど。

「・・・人にプレゼントするものなら、私に渡すな」
「そんな予定はない」
「じゃあ何で買うんだ」
「だからなんとなく」

同じことを繰り返す男を「馬鹿か」と罵ろうとしたシェラだったのだけれど。

「なんとなく──お前に似合うと思った」
「──ヴァンツァー・・・?」
「理由はない」
「・・・・・・」

今度こそ、シェラは渡されたストールを握りしめた。

──・・・理由、あるじゃないか・・・。

何だか泣きそうになっている自分に気づいて、シェラは慌てて奥歯を噛み締めた。

「掛けていろ」
「別に寒くは」
「身体が冷えることも勿論だが、自分の格好をよく見てものを言うんだな」

言われて自分の身体を見下ろしたシェラは、思わず顔を顰めた。
なるほど、今日の自分はシャツにズボンと、至って軽装だ。
そんな状態で雨に濡れたものだから、服が張り付いている。
少女のように見える自分の容姿を自覚しているシェラではあったので、受け取ったストールを肩に巻きつけた。

「あの・・・その・・・」

もごもごと口の中でしゃべっているシェラの声など、大雨の中ではまともに聞こえない。
だから特に反応もしなかったヴァンツァーだったのだが。

「あ・・・ありがとう」

ちいさく呟かれたその声には、さすがに目を瞠ったのだった。


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