小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
今日はセミナー受講し、早めに帰って来られたのでハイボール片手に小ネタをば。
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ゆっくりと意識が浮上する感覚は、もう珍しいものではなくなった。
他人が傍にいるときに熟睡したことなどなく──いや、それはひとりのときですら変わらなかった。
短時間で身体的な疲労を回復する術は会得していたし、そもそも睡眠そのものも必要最低限以外を摂ろうとは思わなかった。
「・・・いない」
口にせずとも分かっていることだが、うまく回らない頭が無駄とも思えることを舌に上らせる。
これもまた分かりきっているというのに、すっかり冷えたシーツに触れ、ゆっくりと身を起こした。
遮光カーテンの向こうに、強い日差し。
今日は暑くなると言っていた。
ベッドから足を下ろし、下履きを身に着けて寝室を出た。
リビングに人の姿はなく──水の音。
キッチンよりも遠い場所。
ゆっくりとそちらに向かえば、洗面所に。
「──いた・・・」
「──うわっ!」
背後から抱きすくめると、細い身体が驚き後ろに倒れてきた。
好都合と、懐深く囲い込む。
「おまっ、心臓止まるだろうが!」
泡だらけの手を洗面台に向けたまま、鏡越しに睨まれる。
「いないお前が悪い」
「ぐっすり寝てるお前も悪い」
一理あるが、認めると離れる口実を与えてしまう。
黙って肩口に顔を埋めたままいると、軽く身じろぎされた。
「・・・なぁ、今庭仕事してたんだ」
「お疲れ様」
「うん・・・いや、それで・・・汗、結構かいたし」
「気にしない」
「そ、そうか・・・?」
強張っていた肩から、力が抜ける。
何だ、そんなことを気にしていたのか。
「あぁ、気にしない──むしろ・・・イイ」
──すん。
「や、やだ馬鹿っ!!」
シャンプーと太陽と、水と土・・・それから薄く、汗の匂い。
「・・・シェラ」
呼んだ声が掠れたのは、寝起きだからだ。
「~~~うぅぅぅぅぅ・・・」
「シェラ?」
唸るような声に顔を上げれば、鏡の中に赤い頬。
軽く俯いているから髪に隠れてそれくらいしか見えないが、触れた身体が熱い。
「・・・かわいい」
「っ、寝言は寝て言え」
「起きてるよ」
熱い頬にキスをすると、もっと熱くなるのが面白くて思わず笑った。
「・・・馬鹿にした」
「褒めた」
こめかみにもキスをすると、「きゅう」とか「みゅう」とか言って、余計俯いてしまった。
「気になるなら、風呂に入ろう」
「・・・一緒に?」
「寝起きだからな。風呂場で転ぶかも知れない」
「・・・起きてるんだろう」
「風呂場でまた寝るかも知れないぞ?」
「──ぷっ」
ちいさく吹き出したシェラは、ようやく顔を上げて鏡越しにこちらを見てきた。
「素直に一緒に入りたい、って言え」
「一緒に入りたい」
「何だ、寂しかったのか?」
からかうような菫色の瞳を、見つめ返す。
「自分でも驚くくらい」
言って頷くと、真ん丸になった瞳が、直接見上げてきた。
「──ほんとか?」
「嘘を吐くなら隠す方だろう」
「それもそうか」
ふふっ、とシェラは機嫌良さそうに笑った。
「風呂を出て朝食を食べたら、たまには昼寝もいいな」
「あぁ」
朝も、昼も夜も。
お前がいれば、それだけで。
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おねむなヴァンツァーがうだうだしているだけの話。
だからうちにかっこいいヴァンツァーなんていないんだっつーの。
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