小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
くらいでしょうか。ヴァンツァーと、ルウの会話。
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ある日、ルウは訊いた。
「どうして、シェラと恋人どうしになる気になったの?」
言われた男は、薄く、冷たく笑った。
「そんなものには、なった覚えがないな」
「そうなの?」
「・・・見れば分かるだろうが」
ルウは「う~ん」と首を捻った。
「一緒にいて、お互いを大事に想っていて、精神的にも肉体的にも相手を必要とする関係って、恋人どうしって言わないの?」
やはりヴァンツァーは、口許に酷薄な笑みを浮かべた。
「──どちらが先に死ぬかを賭けているような関係でも?」
思わずルウは苦笑した。
「それじゃあ賭けにならないじゃない。──きみは、シェラより先には死ねないもの」
この仕立て屋の、こういうところがヴァンツァーは嫌いだった。
人間でないから見えないものが見えるのか、読めないと言っていたはずの人間の心まで見透かす。
そうして、悪びれもせずにそれを口にするのだ。
──真実だから否定することも、怒ることもできない。
だからといって、ほとんど唯一と言っていい自分たちの関係を形作る基盤に、土足で踏み込まれて気分が良いわけがない。
少なくとも、それはヴァンツァーにとって承服できることではなかった。
・・・地上に縫い止められた自分には、月の光は遠すぎて。
たとえ、この仕立て屋が自分を生き返らせ、あの銀色と再び出逢わせた存在なのだとしても。
銀色とは違い、盲目的に敬愛の対象とすることはできない。
「──あ。怒らないでよ。話題を振ったのはきみなんだから」
「怒っているように見えるのか?」
「ん~、っていうか、────拗ねているように見えるよ」
「・・・・・・」
特大のため息を吐いてその場を去ろうとするヴァンツァーに、ルウはもう一度訊ねた。
「ねぇ。どうして、平行線を交わらせる気になったの?」
あまりに過ぎた好奇心は身を滅ぼすものだが、この仕立て屋にそれを言ってもどうにもならない。
自分を簡単に生き返らせたように、一瞬で殺すこともできるのだから。
──あれよりも先に、勝手に死ぬわけにはいかない。
それが、今の自分を動かし、生かす絶対律だ。
自分と銀色とを結ぶ何よりも強固な絆であり、また同時に何よりも甘美な枷であった。
やはり身を縛る鎖から逃れるのは容易なことではないらしい、とヴァンツァーは自嘲した。
そうして、その表情に突っ込まれるのも、今後あまりしつこく訊かれるのも面倒なので、振り返りざま答えてやった。
「──・・・この世界が、丸いと知ったから・・・かな」
ルウは、にっこりと笑って「そう」とだけ返した。
またもや大きく嘆息したヴァンツァーは、軽い目礼だけを残して帰路についた。
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・・・分かる人だけ、分かればよろしい・・・
ある日、ルウは訊いた。
「どうして、シェラと恋人どうしになる気になったの?」
言われた男は、薄く、冷たく笑った。
「そんなものには、なった覚えがないな」
「そうなの?」
「・・・見れば分かるだろうが」
ルウは「う~ん」と首を捻った。
「一緒にいて、お互いを大事に想っていて、精神的にも肉体的にも相手を必要とする関係って、恋人どうしって言わないの?」
やはりヴァンツァーは、口許に酷薄な笑みを浮かべた。
「──どちらが先に死ぬかを賭けているような関係でも?」
思わずルウは苦笑した。
「それじゃあ賭けにならないじゃない。──きみは、シェラより先には死ねないもの」
この仕立て屋の、こういうところがヴァンツァーは嫌いだった。
人間でないから見えないものが見えるのか、読めないと言っていたはずの人間の心まで見透かす。
そうして、悪びれもせずにそれを口にするのだ。
──真実だから否定することも、怒ることもできない。
だからといって、ほとんど唯一と言っていい自分たちの関係を形作る基盤に、土足で踏み込まれて気分が良いわけがない。
少なくとも、それはヴァンツァーにとって承服できることではなかった。
・・・地上に縫い止められた自分には、月の光は遠すぎて。
たとえ、この仕立て屋が自分を生き返らせ、あの銀色と再び出逢わせた存在なのだとしても。
銀色とは違い、盲目的に敬愛の対象とすることはできない。
「──あ。怒らないでよ。話題を振ったのはきみなんだから」
「怒っているように見えるのか?」
「ん~、っていうか、────拗ねているように見えるよ」
「・・・・・・」
特大のため息を吐いてその場を去ろうとするヴァンツァーに、ルウはもう一度訊ねた。
「ねぇ。どうして、平行線を交わらせる気になったの?」
あまりに過ぎた好奇心は身を滅ぼすものだが、この仕立て屋にそれを言ってもどうにもならない。
自分を簡単に生き返らせたように、一瞬で殺すこともできるのだから。
──あれよりも先に、勝手に死ぬわけにはいかない。
それが、今の自分を動かし、生かす絶対律だ。
自分と銀色とを結ぶ何よりも強固な絆であり、また同時に何よりも甘美な枷であった。
やはり身を縛る鎖から逃れるのは容易なことではないらしい、とヴァンツァーは自嘲した。
そうして、その表情に突っ込まれるのも、今後あまりしつこく訊かれるのも面倒なので、振り返りざま答えてやった。
「──・・・この世界が、丸いと知ったから・・・かな」
ルウは、にっこりと笑って「そう」とだけ返した。
またもや大きく嘆息したヴァンツァーは、軽い目礼だけを残して帰路についた。
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・・・分かる人だけ、分かればよろしい・・・
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