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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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人を信じられない私の、それでも『信じたい』という心が挫けそうになっています・・・
約束したことが、何かの事情で反故になってしまうのは寂しいけれど仕方のないことですが、最初からその約束守る気ないんじゃねぇの? って疑ってしまう自分の心が嫌です。

よし、気分転換だ。


**********

休日の大通りを歩いていた高校生3人は、知った顔を見つけて遠くから大声を張り上げた。

「キーニアーン!!」

名前を呼ばれた少年は一瞬、びくっ、と肩を震わせ、立ち止まった。
やっぱりそうだ、と3人組は駆け寄っていき、「よっ!」と長身の少年をどついた。
いつもの挨拶だ。

「・・・先輩、痛いです」
「あ、平気、オレ痛くないし」
「いやそういうことじゃ」
「俺も痛くなーい」

えいえい、と肩を押されたり額を小突かれたりしている少年は、嫌そうというよりは、困ったような顔でされるがままになっている。

「──アル、だぁれ?」

そのとき聴こえてきた甘いソプラノに、3人組は視線を落とした。
バスケットボール部に所属しているので、その3人の少年たちも長身ではあったが、キニアンは更に背が高い。
そのキニアンの傍らに、頭ふたつ分ほど背が低いのではないか、という人間がいたのでは、気づかなくても無理は無い。
だが、少年たちは目を瞠った。

ひと言で言うと──綿菓子のような美少女。

ふわふわとした茶色の長い髪に、色素の薄い肌と瞳。
肩にかけているのはヴァイオリンのケースだろうか。
良家のお嬢様、といった感じの雰囲気だ。

「マリア・・・えっと、この人たちは」

美少女に向かって話しかけようとしたキニアンは、しかし先輩たちに首をがっちりホールドされて動けなくなった。

「ちょーっとこっち来ようか、キニアン君?」
「っ、ちょ、くるし・・・」
「ん~、いいカオだね~。ちょっとボクたちから質問」
「きみは、あれか? カノンちゃんという天使がありながら、お休みの日に、こんなところで、こんな可愛いお嬢さんとデートとかしちゃアレなわけ?」

うん? と顔は笑っているのに眼がマジな先輩たちにキニアンはぶんぶん首を振りたかったのだが、いかんせん身動きが取れない。
綿菓子のような美少女は、不思議そうな顔をしてその光景を見つめている。

「い~ご身分だね~。うん? キニアン君」
「・・・ちょ、それ、誤解・・・」
「ゴカイ。ゴカイって何だっけ?」
「あれだろ? 虫けら」
「あ~、虫けら。キニアン君、虫けら」

それはイコールで結ぶところじゃない! と叫びたいが、やはり叫べない。
しかし、この誤解だけは何としても解いておかねば、とキニアンは声を張り上げた。

「──っ、母親です!!」

ぴたり、とキニアンの頭をぐりぐりやっていた先輩たちの手が止まる。
そして、たっぷり10秒は視線を巡らせ、頭の中で反芻し、美少女を見遣り、そしてキニアンに視線を戻した。

「嘘は吐いちゃいけないんだぞ~」

と、またぐりぐりやり始めた先輩に、キニアンは「本当です!」と必死になってもがいた。

「マリア! 何とか言ってくれ!!」
「『何とか』」
「・・・・・・・・・・・・」

絶望的な気分になったキニアンだった。
わざとやっているのだ。
この人は、面白がってわざとこんな受け答えをしているのだ。
愕然としたキニアンの表情を見て、美少女はくすくすと笑った。
少年たちが、思わずぽーっと見惚れてしまうような可愛らしさだ。
こんな可愛らしい人が、こんな図体のデカい、高校生の母親なわけがない。

「はじめまして。アリス・キニアンの母です」

しかし、にっこりと笑った美少女は確かにそう言ったのだ。

「・・・マジで?」
「マジです♪」
「・・・キニアンの・・・お姉さんじゃなくて・・・?」
「あら、嬉しいこと言ってくれるわぁ~」
「この人、こう見えてさんじゅ──」
「──アル」
「・・・・・・」

ぴしゃり、と低められた声に、キニアンは押し黙った。

「あなた、人前で歳のこと言ったら──バラ撒くって言ったでしょう?」
「・・・・・・」

恐怖に青褪め、ぶんぶん首を振るキニアン。
何か、よほどの弱みを握られているらしい──まぁ、母親であればいくらでもネタはあるだろうが。

「こんな子ですけど、よろしくお願いしますね」

にっこりと微笑む綿菓子さんに、少年たちはでへっ、と相好を崩してこくこくと頷いた。

「いやー、でも、お姉さんみたいな人からこんなんが生まれるなんて、ちょっとびっくりです」
「あらー、ちいさい頃は可愛かったのよー?」
「あ、マリアさん、って呼んでもいいですか?」
「えぇ、どうぞ」

それから延々話していた4人だが、キニアンがストップをかけた。

「マリア。遅れる」
「いいのに、別に。待たせておけば」
「勘弁してくれ。俺が泣きつかれるんだから」
「だから、別にいいのに。わたし、困らないもの」
「・・・・・・」

本気で勘弁してくれ、と顔に書いている息子に、マリアは聖母の微笑みを浮かべた。

「ごめんなさいね。ちょっと用事があるから、これで失礼しますね」
「あー、オレたちこそすいません、引き止めて」
「いいのよー。アルのお友達の顔を見られたし」

「仲良くしてやってね」と微笑むマリアに、先輩3人組は「「「そりゃあもう!」」」と胸を叩いた。
──嘘吐け、と思わないでもないキニアンだったが、父親との待ち合わせ時間が迫っている。
先輩たちに頭を下げると、その場を辞した──背中に、先輩たちのくすくす笑う禍々しいオーラを感じながら。


──翌々日。

登校したキニアンは、にっこり笑った天使に「おはよう」と声をかけられた。
おはよう、と返したものの、何だか違和感がある。
首を傾げようとしたキニアンに、カノンは言った。

「──すごく可愛い子と、デートしてたんだって?」

さっ、と青褪めたキニアンは、頭の中で先輩たちを罵倒し、呪いながら、この日1日かけて天使のご機嫌取りに全精力を傾けたのだった。


**********

ママン登場。可愛くて美人できっぷがよくて才能があって──家事能力ゼロ(笑)ママンはヴァイオリニストです。パパンは指揮者さん。たぶん(コラ)パパンがママンにベタ惚れなんだけど、ママンはパパンの顔が大好き(笑)ママンはとても面食いさんなので、図体ばかりデカくなって可愛くない息子が、カノンという可愛らしい天使を捕まえたことにご満悦。更にシェラに家事を仕込まれていく息子を見て、「あら、この子使えるわぁ~」と思ったり思わなかったり。

こんなママン、どうでしょう?(笑)
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