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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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今夜日付が変わるあたりで、5周年用のミニ企画を始めようかなーと思っています。4周年記念小説と一緒に載せますが、アドレス変える予定なので、ブクマしていた方はお気をつけ下さい。つっても、まだページ作ってませんが(笑)

本当に、時間の流れが速いです。あっという間。時間を持て余しているよりは、いいのかなぁ・・・でも、あんまりせかせかしたくないんだよなぁ・・・よく分かりませんが、何か書きたくなったので小ネタ。


**********

物心ついた頃は、何も考えず、ただ耳にした音をそのまま再現していた。
一番最初に触った楽器はピアノだった。
もっと正確に言うならばヴァイオリンの弓だったが、演奏をしたという意味ではピアノが最初だ。
白と黒の板を押すと音が出るのが面白くて、めちゃくちゃに叩いていた。
それを笑った父が一番最初に聴かせてくれた曲が、『G線上のアリア』だった。
隣にいた母はヴァイオリンで。
新緑色の瞳を真ん丸にして異色のセッションを聴いていた2歳の子どもは、演奏が終わると大興奮でピアノに向かったものだ。
アルフレッドはほんのちいさな手を取って、1音1音ゆっくりと教えてやった。
8小節分終わったところで、きゃっきゃ言いながら教わっていた息子が今弾いた音を正確に再現したときは、さすがの両親も目を瞠った。

「あらあら」
「これは・・・」

もちろん、手つきは拙いどころか、手のひらが鍵盤2つ分にしかならないためにほとんど指1本で弾いている状態だ。
それでも、たった8小節分とはいえ一度見聞きしただけの音を1音も間違えることなく再現するのは、2歳の子どもに出来ることではない。

「──でった!」

『出来た』と嬉しそうに満面の笑みを浮かべる息子を見て、アルフレッドの音楽家魂がメラメラと燃え上がったことは言うまでもない。
幼少期はその発達しすぎた聴覚のせいでちょっと外に出ては大泣きを繰り返していた彼の息子は、成長するに従って外界からの音を制御する術を身に着けた。
聴力に関しても、その制御にしても、望んだからといって得られるものではないその天賦の才に、本人は「面倒くさいなぁ」という感想しか抱いていないようだった。
技術は日毎目を瞠る進化を見せた息子だったが、小学校の終わりに「バスケがしたい」と言い出した。
中等部から、音楽大学の付属校に通わせるつもりでいたというのに。
顎が外れそうな顔になったアルフレッドに、息子は「母さんは良いって言ったから」と、決定事項のような口調で話をした。
特大の雷が落ちたのは言うまでもない。
それでも最終的にバスケ部への所属と寮生活を許されたのは、マリアの助言があったからだろう。
身体のちいさかった息子の身長が、ちょっと会わない間に20センチも伸びていたときは思わず「誰だ」と言いたくなった。
マリアなど、可愛い名前をつけたちいさくて可愛かった息子が、だいぶ可愛くない大きさになってしまったので、『お母さん』禁止令を出したくらいだ。

──それでも、ふたりは彼らの息子を、その音を、変わらず愛した。

マリアのヴァイオリン、アルフレッドとアリスのチェロで奏でられる『G線上のアリア』。
音楽大学に入学し、ようやく本格的に音楽の道を歩むことになった青年の音は、世界最高の音楽家と並んでも遜色のないものだった。
技術の差はある。
だが、それを補って余りある神からの贈り物を、青年は既に手にしていた。
贅沢なひとときを過ごしたファロット一家の面々は、みな至極満足そうである。
特にヴァンツァーなど、もともとアルフレッドのファンということもあり、珍しく興奮を隠しきれない面持ちをしている。
アルフレッドは演奏後、ヴァンツァーと固く握手を交わした。

「素晴らしい施設だ。ちょっとしたホールに優るとも劣らない」
「趣味の延長ですが・・・まさか、マエストロにいらしていただけるとは思っておりませんでした」
「平素は愚息がご迷惑をおかけしております」
「とんでもない。今時珍しいくらいの好青年ですね」

にこやかに会話する父親どうしをよそに、マリアはシェラを筆頭とするファロット家の天使たちにご満悦の様子だ。

「いいなー、シェラちゃん。わたしもこういう可愛い子たちが良かったわぁ」

何であんなに大きくなっちゃったのかしら、と嘆くマリアに、シェラはくすくすと笑った。

「アー君、いい子ですよ」
「無愛想だし、真面目だし、堅物だし。どっかの誰かさんそっくり」
「・・・悪かったな」

むすっとした顔になる青年は、銀髪の天使の頭を胸に抱え込んでいる。
何だか知らないが、演奏が終わってから泣きっ放しなのだ。
どう対処すれば良いのか分からなくて、とりあえずあやしているという状況だ。

「お夕飯、召し上がっていって下さいね」

シェラの提案に、マリアは飛び上がって喜んだ。

「シェラちゃんのお料理、すごく美味しいってアルが言ってたの!」
「お口に合えば良いのですが」
「あ~ん、普通に喋って?」

演奏中はそれこそ神が乗り移ったのではないか、というくらいに荘厳な雰囲気を漂わせているマリアだが、楽器を置けば少女のように無邪気な表情を見せる。
ふわふわとした可愛らしい様子に、シェラは「分かった」と頷いた。

「美人がいっぱいで、羨ましいわぁ~」
「アルフレッドさんもアー君も、かなりの美形だと思うけど?」
「可愛げがないもの」
「そう? アー君、可愛いと思うけどなぁ」
「あんなにおっきいのよ?」
「ん~、何か、セントバーナードっぽいというか」
「あー・・・・・・」

じーっと息子の顔を見たマリアは、非常に残念そうな表情になった。

「・・・間違っても番犬なんて出来ないタイプね」
「・・・煩いよ」

端整な容貌を思い切り顰めたキニアンは、銀色の頭を見下ろした。
だいぶ落ち着いたみたいだけれど、どうしたのだろう。

「・・・カノン?」
「・・・・・・」

きつめの顔立ちに、寡黙なこともあって、無愛想だのとっつきにくいだの時には怖いだの言われがちなキニアンだったが、実はとても心のやさしい青年である。
特にこの恋人である天使が泣いたときなど、テンパって百面相になるほどだ。
今も内心『泣き止んでくれよぉ・・・』と気が気ではないのだが、こうして甘えてくれることが嬉しくもある。
けれど、周りの目が気になったりもする。

──・・・どうすんだよ、これ・・・。

「・・・アリス」
「ん?」
「・・・くるしい」
「──え?!」

ちょっ、お前ほんと大丈夫か?! 具合悪いのか?! と狼狽する青年に、涙に濡れた顔を上げたカノンは呟いた。

「・・・アリスって、綺麗なんだね」
「・・・・・・は?」

それだけ言ってまた胸に顔を埋めてしまった天使に、困惑の表情を浮かべる。
周りの大人たちを見ても、カノンの双子の妹を見ても、何のアドバイスもくれない。
アルフレッドだけが少し困ったような顔をしていたが、何かを口にするわけではなかった。

──俺、どうしたらいいわけ・・・?

ほとほと困り果ててしまったキニアンだったが、それでも、自分に預けられる体重を不快なものだとは思わなかった。


**********

よく分からん。ほんとはもっと書きたいことがあるんですが、ばっさりカット。カットしすぎてわけわかめ。よくある。わかちこ。
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