小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
もう年末ですね。あっという間の一年でした。皆様にとってはいかがでしたでしょうか?
私は相変わらず忙しい年でした。36協定もありますので時間外労働は月平均40時間程度ですが、それだと仕事終わらないんですよね(笑)ヴァンツァーくらい仕事が出来るようになりたい・・・ロンちゃんの感応頭脳並の脳みそが欲しい・・・あ、だめだ。結局腕は2本しかない(笑)
さて、年内最後の小ネタです。
私は相変わらず忙しい年でした。36協定もありますので時間外労働は月平均40時間程度ですが、それだと仕事終わらないんですよね(笑)ヴァンツァーくらい仕事が出来るようになりたい・・・ロンちゃんの感応頭脳並の脳みそが欲しい・・・あ、だめだ。結局腕は2本しかない(笑)
さて、年内最後の小ネタです。
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クリスマスといえばチキン。
ファロット一家は大家族なので、チキンは丸々2羽焼き上げられる。
「俺、いつも思うんです」
「うん?」
キニアンがシェラに料理を習ってはや数年。
すっかり手際も良くなり、よく作るメニューはレシピを見なくても材料を揃えられるようになった。
「食わず嫌いって、人生結構損してるなぁ、と」
「あはっ」
丸鶏の中に詰め物をしている青年の真剣な表情に、シェラは思わず笑ってしまった。
「──変なこと言いました?」
きょとん、と緑の目を瞬かせている音楽家に、シェラは「ちっとも」と返した。
「このタイミングで出てくるアー君の食わず嫌いは、レバーかな?」
「はい。匂いと食感がダメで」
ちいさい頃に食べて苦手意識を持ったものは、成長しても変わらないことが多い。
「鮮度とか処理の仕方もあるけど・・・」
「白レバーの焼き鳥最高です」
「あはは! だと思った」
シェラは料理を作ることが好きだが、自分の手料理を食べた人が幸せそうな顔になるのを見るのはもっと好きだ。
「脂肪肝って言うと聞こえ悪いですけど、フォアグラって考えると高級感出ますよね」
「白レバーの場合は無理やり餌を食べさせているわけでもないしね」
「うっかり食べ過ぎた鶏に感謝ですね」
丸鶏に詰めているのはちょっと厚めにスライスした玉ねぎとマッシュルーム、鶏のレバーと食パンをちぎって炒め、ローズマリーで香り付けをしたものだ。
ぎゅうぎゅうに押し込んで鶏の形を整える目的もあるが、焼き上げると鶏の脂や汁を吸って最高の付け合せになる。
「大人になって味覚が変わってきたのもあると思うけどね」
「そういうものですか?」
「ヴァンツァーみたいに、何年経ってもピーマン苦手な人もいるけど」
くすっ、といたずらっぽく笑う表情は可愛らしく、成人した双子を含め六人も子どもがいるとはとても思えない。
「何でしょうね。苦いものとか青臭いものがダメなわけでもないでしょう?」
「うん、平気。むしろ──」
「はい──って、え?」
手元の鶏から隣にいるシェラに視線を移したキニアンは、思わず瞠目した。
「え、シェラ何でそんな真っ赤なんですか?」
「い、いや・・・何でも」
「具合悪かったら、俺ひとりでも大丈夫ですよ?」
ローストチキンも、スモークサーモンのマリネも、生ホタテのサラダも、グラタンだってひとりで作れる。
「だ、大丈夫! なな、何でもないから!」
「そうですか・・・? 無理しないでくださいね」
年末は年越しコンサートがあり、家のことは何も出来ないキニアンなので、シェラに任せてしまうことを申し訳なく思っている。
だからそれまではできる限り手伝おうと、澄んだ緑の瞳の奥で思いを新たにした。
「──父さん。ぼく、シェラのアレどうかと思う」
「ピュアなアルとの落差がすごいわ」
「正直少し責任を感じている」
ダイニングテーブルの上で生クリームとチョコクリームのケーキを飾り付けている双子と父は、素知らぬ顔をしつつ小声で言葉を交わした。
今日は双子の誕生日。
主役のふたりではあったが、ライアンが四つ子と一緒に誕生会兼クリスマスの飾り付けを作っているので、手伝いを買って出たのだ。
「来年は六つ子とか出来ちゃったりして!」と面白がるソナタに対し、カノンは「意外とひとりかも知れないよ」と返す。
「シェラは、俺に似た女の子が欲しいらしい」
「ふわふわ黒髪の超絶美少女ってこと? 昔の父さんだったら女豹みたいな子かなー、と思うところだけど」
「わがままボディですんごい色っぽいのに中身『ぽやん』な、ギャップ萌え属性の子に違いないわ」
「フーちゃんみたいに、外では笑わないけど家族の前だとはにかむように微笑む子とか」
「ロンちゃんとりっちゃんの鉄壁の守護がないと、ひとりではお外に出せないわー」
「あーちゃんとふたりでほわほわおっとり笑ってるのとか、めちゃくちゃ可愛いだろうね」
「何でかバリキャリピンヒールのお姉様ってイメージ湧かないのよねぇ」
双子は揃って父の顔を見遣った。
クーア夫妻のようにウラシマ効果があるわけでもないのに、五十をいくつか越えているとは思えない美貌、衰えを知らぬような鍛えられた長身、書斎の蔵書はビジネス書籍から育児書まですべて頭に入っている恐ろしい記憶力。
この父がそのまま女性になったら、ソナタの言う『バリキャリピンヒールのお姉様』になるのだろうが、どうやってもそのように育つ気がしない。
「ロンちゃんのめんどくさがりは、ちょっとパパに似てるかも」
「でも、積極的にやらないだけで、結局何でも出来ちゃうよね」
「それそれ」
仕事以外では『ポンコツ』扱いされるヴァンツァーではあったが、仕事と父親としての役割があまりに完璧過ぎて、実は子どもたちから尊敬されまくっている。
シェラですら、悪態をつくことはあっても、根っこの部分で一番尊重しているのはヴァンツァーの意見だ。
「じゃあ、ルウみたいな女の子かな?」
美しい黒髪、宝石のような青い瞳、やさしげな美貌を持ち、剣の達人であり、優秀な医師であり宇宙船造船技師──神代の世界の人なのでその能力は神がかっているわけだが、ヴァンツァーは顔をしかめた。
「もっと普通の子がいい」
思わず「「──普通!」」と笑ってしまった双子であった。
「じゃあパパは、そんな『普通の女の子』に何て名前をつけるの?」
「いや、もうシェラの中では決まっているらしい」
おや、と目を丸くした双子だ。
子どもたちの名は、すべてヴァンツァーがつけている。
意識していたかどうかは分からないが、すべて音楽に由来する。
「美しい響きだと、俺は思う」
「何ていうの?」
問われたヴァンツァーは、薄く口許に笑みを浮かべて、ケーキに大粒のいちごを乗せた。
──フィーネ。
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創竜伝みたいな。
それでは皆様、よいお年をお迎えください。
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