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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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仕方がない(コラ)・・・と思ったら地震です。携帯の警報が鳴るんですが、ほんとこれ心臓に悪い。福島で震度5弱だそうです。皆さん、大丈夫でしたか? 日本にいる限りは地震から逃れることは出来ませんが、あまり大きな被害が出ないことを祈るばかりです。

さ。気を取り直して。

**********

風は強いものの、春の麗かな気候が心地よいある休日のこと。
シェラとソナタはブティック巡りをしようと街へ繰り出していた。

「やぁ、彼女たち! かーっわいいね!」

そんな決まりきった言葉が掛けられたとき、普段ならば無視して進んでしまうのだけれど、つい足を止めてしまってシェラは内心で『しまった』と思っていた。
こういう輩は、下手に会話を成立させてしまうとつけ上がる。
だから、綺麗さっぱり無視するのが一番なのだけれど。

「ふたりそっくりだね。姉妹?」
「・・・・・・」

ああ、ほら、めんどくさいことになりそうだ。
そう思ったシェラの顔は、ソナタと会話していたついさっきまでの天使の美貌とは反対に、心底嫌そうに歪んでいる。

「俺、雑誌の編集者なんだ」

こういう雑誌知ってる? と男が口にしたのは少女向けのファッション誌のようだった。
ソナタは知っている雑誌だったけれど、ちらりと見遣ったシェラがかなり苛立っているのを感じ取って口を噤んでいた。

「ふたりともすげー可愛いじゃん? モデルとか興味ない? それだけ可愛いんだもん、あるよね? 学校とかでも、かなり人気あるんじゃないの? ねーねー、モデルやろうよ」

──あー、こりゃ無理だ。

ソナタはこっそりため息を零した。
家にいるときのシェラは怒っていたって可愛いのだけれど、言動に品性のない男を前にしたときのシェラは、永久凍土の氷壁のようになってしまう。
案の定、つい、と顔を逸らすとソナタの手を取ってすたすた歩き出してしまった。

「あ、ちょっと待ってって!」

話だけでも聞いてよ、と、男がシェラの手首を掴む。
刃のように視線を鋭くしたシェラが殺気に近い気配を纏って振り返る。

「いっ・・・ててててててててっ!!」

息を呑む気配のあと、悲鳴に近い声が上がる。
しかし、シェラがやったのではなかった。

「──連れに何か用でも?」

振り返ったシェラの目に、妍麗な美貌が映る。
シェラの腕を掴んでいた男の手首を掴んでいる。
その美しい顔には表情らしい表情は浮かんでおらず、男が悲鳴を上げるほどの力を入れているようにも見えないのだが、林檎くらい軽く握り潰してしまう男の握力だ。
鍛えていない人間にとっては、万力で締め付けられているのと同じこと。
やがて男の手からは力が抜け、シェラは自由を取り戻した。

「は・・・はなっ」
「連れに、何か用でも?」

同じ言葉を繰り返すのは嫌いなヴァンツァーだったが、今回はわざとそう言った。

「つ・・・つれ・・・──っ!」

それまで痛みのあまりヴァンツァーの顔など見ていなかった男だけれど、自分の腕を握り潰さんとしている男を振り返って息を呑んだ。
緩く波打つ黒髪に、白皙の美貌。
青い瞳は宝石のようで、通った鼻梁も、形の良い唇も完璧な造作であり、芸能人ですら見ないような美男子だった。
同性愛の気はない男だったが、妖艶な色気すら感じる美貌にただただ見入るばかりであった。

「──もう、パパおそーい!!」

ぷんぷん、と頬を膨らませている黒髪の少女の言葉に、男は目を瞠った。

「悪い。駐車場を探すのに手間取った」

それ以上に、氷のように冷たく整った美貌の男が苦笑を浮かべ、その瞳が信じられないほどやさしくなったことに2度驚いた。

「罰として荷物持ちだからね」
「はいはい」
「ママの分もよ? パパが遅いから、ママが変なのに絡まれちゃったんだから」
「わかったよ」

そう言ってちょっと申し訳なさそうにしたヴァンツァーだったけれど、『ママ』という言葉に驚いてもいた。
もちろんそれを顔に出したりはしないのだが、シェラも同じような気分だったに違いない。
そして、驚きを隠しもしなかったのは雑誌の編集者を名乗る男だった。

「ま・・・ママ?」
「確かにママは可愛いけど、雑誌とかモデルとかお断り!! パパひと筋なんだから、他の男の人にまでモテちゃったら困るもの!! もちろん、わたしもそんなものに興味ありませんからねー」

じゃあね、バイバイ!! と言って、ヴァンツァーに男を解放するよう目で伝える。
ヴァンツァーはもう一度、見たら凍りつくか石になるような視線を男に向け、仕方なさそうに手を放してやった。
そうして、呆然としている男を尻目に3人は歩き出したのである。

「・・・ソナタ、何だ『ママ』って」

シェラが苦い顔をしていたので、ソナタは言ってやった。

「だって、『シェラ』って呼んだんじゃ、あの人姉妹だって勘違いしたままだったろうし」
「別に親子だろうが姉妹だろうが、叩きのめして離れれば、二度と会うこともない」
「──だと思った!」

ソナタが呆れたような声になる。

「わたしは、穏便に済ませようと思ったの。シェラったら、あのままだったらあの人の顔の形変わるくらいの力で殴りそうだったし」
「・・・そこまでは」
「それに、『パパ』と『ママ』って呼べば、あの人もパパと対決してまでわたしたちをモデルに誘おうなんてしなかっただろうし。まぁ、モデルの話が本当かどうかも怪しいけど」
「・・・・・・」

それはもっともだが、とちょっと苦い顔になったシェラは、くすっと笑う気配に隣の男を睨みつけた。

「ソナタが正しい」
「・・・分かってる」
「お前、最近危機感薄いんじゃないか?」
「・・・何だと・・・?」

一気に険悪な空気を纏うシェラに、ヴァンツァーはからかうような口調で言った。

「昔のお前なら、そもそもあんな男に声などかけさせないだろう。徹底的に無視するなり、視線ひとつで撃退するなり」
「・・・煩いな」
「足を止めれば、ああいう輩は図に乗って」
「──わかってる! だいたい、お前がいけないんじゃないか!」

食ってかかってくるシェラに、ヴァンツァーは目を丸くした。

「俺?」
「そうだ。お前がさっさと追いついてこないからいけないんじゃないか!」
「・・・・・・」
「シェラ・・・」

ヴァンツァーは思わず目をぱちくりさせ、ソナタは何とも言えない顔になって額を叩いた。
当のシェラはふたりの顔を交互に見て「なんだ、なんだ」と言っている。
ヴァンツァーと顔を見合わせたソナタは、苦笑を浮かべて言った。

「それって、パパが護ってくれるって思ってたってこと?」
「──なっ?!」
「だって、そういうことでしょう? パパがいたら大丈夫だって、安心してたんでしょう?」
「ちがっ」
「かーわいーなー、シェラは」

くすくすと楽しそうに笑っているソナタに、シェラは口をぱくぱくさせて喘いでいる。
違う、違う、と言いたいのだが、きっとソナタは「はいはい」と言ってかわしてしまうに違いない。
何だか悔しくて、代わりにヴァンツァーを睨んでやった。

「違うからな!」
「別にどちらでも構わんが」
「私は構う!」

フーフー! と猫が毛を逆立てるようになったシェラに、ヴァンツァーはくすっと笑みを浮かべた。

「──お前とソナタくらいなら、護ってやれるぞ」
「いらん世話だ!」
「まぁそう言うな」

それも何だか楽しそうだしな、とシェラの頭をぽんぽん叩く男。
シェラは地団太を踏みそうな勢いで「子ども扱いするな」と怒り、ヴァンツァーは楽しそうにくすくす笑っており、ソナタはそんなふたりを見て

──今日も平和だなぁ。

と思うのだった。


**********

ほら、見せ場作ってやったぞ(コラ)

たまにはヘタレてないヴァンツァーもよかろ。でも、こういうの書くと反動ですごいヘタレたのを書きたくなるんだ。
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