小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
されますね、青い薔薇が。
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ガラス張りの開放的な入り口から、シャンデリアの煌く眩い店内が見渡せる。
入り口横に設置されたショーウィンドウには、精緻な刺繍の施された純白のドレス。
マネキンが身につけているドレスとネックレスだけで数百万はする代物だが、この店のドレスを着ての挙式は女性にとっての憧れであった。
店の名は、『BLUE ROSE』。
『どんな無茶な注文も叶えてくれる』と評判のウェディング・プロデュース会社だ。
驚いたことに、社員はたったひとり。
というのも、老若男女問わず、本物志向の消費者から絶大支持を受けているアトリエ『Lu:na』の完全子会社であり、アトリエの社員たちがドレスや宝飾品の製作を行っているのだ。
『BLUE ROSE』唯一の社員であるシェラは、たびたび客からの無茶振りをアトリエに持って帰って、職員たちに頭痛の種をばら撒いている。
それでも、
「皆なら、出来ると思って」
と、天然なのか確信犯なのか、天使のような笑みを浮かべて言われてしまうと、その期待に応えないわけにはいかない。
また、シェラは誰よりもよく働き、ドレスの縫製も刺繍も基本的には彼が行う。
アトリエの仕事も行い、自分の会社の仕事もし、家に帰ったら家事を完璧にこなし、あまつさえ顔だけは抜群に美しいでっかい子どもの面倒まで見ているというのだから、もう恐れ入るしかない。
その『でっかい子ども』ことヴァンツァー・ファロットも、シェラの無茶に頭を抱えることが多々ある。
今日もそうだった。
客とデザインの打ち合わせをするから、と呼ばれて『BLUE ROSE』のあるフロアへ向かった。
そこまでは良かった。
「式のお日取りは?」
「あ、はい。来月の20日です!」
シェラの美貌にもふわふわ見惚れていた新婦であったが、ヴァンツァーが現れて更に頬が紅潮した。
それでも、傍らの新郎とずっと手を繋いでる仲の良さだ。
けれど、ヴァンツァーはそうもいかない。
式の日取りを聞き、シェラ以外の他の人間には絶対気づけなかっただろうが、ほんの一瞬脚の上で組んだ指がぴくり、と動いた。
けれど表情だけは完璧な笑顔で、「それはおめでとうございます」と言ってみせた。
隣でシェラが笑いを噛み殺すような顔つきをしている。
時々、『こいつは自分を困らせるのが趣味なのではないか』と真剣に疑うことがある。
当然だろう、式までひと月もないのだから。
しかし、『BLUE ROSE』と『Lu:na』にとっては、わりとよくある話である──よくあって欲しくない、というのがシェラというごくごく一部を除く職員全員からの望みなのだが。
ほくほく顔の客を帰したあと、軽くため息を零したことに気づかれた。
「出来るだろう?」
「・・・『やる』よ」
若干恨みがましい視線になるのは勘弁してもらいたいところだ。
そんなヴァンツァーに、シェラはにっこりと機嫌良さそうに笑った。
「あぁ──頼りにしてる」
そう言って、ポン、と肩を叩いて店の奥へと入っていった。
「・・・・・・」
またひとつため息を吐き、己の単純さに苦笑したヴァンツァーだった。
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ををををを!! ファロット一家でなくても書けるではないですか!! まぁ、相変わらず人格崩壊しているヴァンツァーしか書けませんけれども(^^;)
ま、『青薔薇』繋がりということで。
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