小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
今日を乗り切れば3連休(^^)でも障害PC山積み・・・ま、キリの良いところで・・・
ところで、橘はヴァンツァーをどういう方向性で扱いたいのか、また悩んでいます・・・昨日スキビの新刊でヘタ蓮がキレてるのを見たからのような気がします。一瞬『大人気ない・・・』とか思ったのですが、よく考えたら彼まだ二十歳なんですよね・・・ないわぁ、あの外見で(笑)
そんなわけで、ヴァンツァーにも新境地を開拓してもらいましょう。
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「ねぇ、ヴァンツァー。こんなに天気いいんだから、どっか行こうよ!」
海とか! と頬を膨らませている美少女──のようにしか見えない銀髪の美青年に袖を引かれた男は、ひと言こう返した。
「──やだよ、暑いし」
眼鏡の奥の藍色の瞳は、手元のちいさな画面に釘付けだ。
何やら、画面の右側に女の子の姿。
紫色の髪の美少女である。
画面下部にはテロップが出ており、
・「一緒に帰らない?」
・「お腹空いた。マック行こうよ」
・「きみが好きだ!!」
といった3択。
「・・・ここで告っても、まだパラメーターが・・・いや、でもそろそろアピールしておくのも・・・」
ブツブツいって深刻な顔で悩んでいる男に痺れを切らした銀髪の美青年は、ブチッと切れた脳内の血管と同じようにゲーム機の電源も切ってやった。
「──qあwせdrftgyふじこ!!!!!!」
最早何語だか分からない奇妙な叫びを上げた青年は、しばらく真っ青な顔で呆然としていたが、わなわなと震える手で携帯用ゲーム機を握り締めて傍らの青年を見上げた。
「──シェラ! おま・・・なにや・・・ゆかりたんとのパラメーターここまで上げるのにどれだけ苦労したと・・・セーブしてないんだぞ?!」
「その顔で『たん』とか言わないでよ!!」
悲鳴のような声を上げて涙目になるシェラのことなど意識の外の外な男は、電源の切れたゲーム機を見つめて呆然としている。
「~~~~っ、ヴァンツァー!!」
全然こちらを見てもくれない男に痺れを切らし、シェラはゲームのやりすぎで視力がとことん悪くなった男から眼鏡を取り上げた。
「ちょっ! シェラ、返せ!」
「何でその顔で、美少女系恋愛シミュレーションゲームとかやってるわけ?!」
そう。
ゲームの電源を落とされて本気でキレていた青年の露わになった顔は、俳優やモデルでもなかなかお目にかからないほどの美貌だったのだ。
襟足を覆うくらいに伸びた黒髪、白皙の美貌に嵌めこまれたサファイアのような瞳、加えて長身である男が、Tシャツにハーフパンツで美少女モノのシミュレーションゲームをしている──世も末だ。
シェラの気持ちが分からないでもない──というか、痛いくらいによく分かる。
「私より、そんな二次元の女の子の方がいいってこと?!」
「うん」
「──う・・・」
思わず絶句したシェラだった。
その隙に眼鏡を取り返すヴァンツァー。
流れる清流のような長い銀髪に、宝石のような菫色の瞳をした天使の美貌を誇るシェラは、そんなことを言われたのは生まれて初めてだった。
「煩いこと言わないし、奥ゆかしいし──何より、ひと筋縄でいかないところがいい」
「・・・・・・」
「顔とか容姿とか関係なく、こちらの言動だけで相手の気を引くんだぞ? ということは、外見でなく中身で勝負ということだ」
「・・・・・・」
「選択肢によっては普通にフラれるし。『○○くんの方がかっこいいけど、あなたと話してると楽しい』なんて言われたら、テンションMAXだろ?」
「・・・・・・」
知るか、そんなもの! と言いたくなったシェラだったが、仕方ない。
自分が一方的に好きなのだから────主に顔が。
バイト先のゲームショップで見かけてひと目惚れしたは良いが、大量にレジに積まれた美少女系ゲームに一瞬引いた──まだ、アダルトでないだけマシだったが。
けれど、やっぱり顔はかっこいいのだ。
猛烈なアタックを続け、「三次元に興味ないから」とまで言われ、それでも掴み取った彼女──男だが──の座。
どんなにオタクだろうと、どんなに社会不適合だろうと、付き合い始めて3ヶ月、デートなんて1度も連れていってもらってなかろうと、キスどころか手を繋いだことだってなかろうと、それだって、だってだって、顔に罪はないのだ。
しかし、本人はその顔が嫌いらしい。
何てもったいないことを、世の男の敵だ、と愕然とした覚えのあるシェラだったが、ということは顔目当てで近づいてくる女たちは門前払いということだ。
ちょっと安心──かなりしつこかったとはいえ、どうして自分がOKをもらえたのかは知らないが。
「・・・ヴァンツァーって、ゲイなの?」
「──気色悪いことを言うな」
首をすくめて鳥肌を立てている男に、しかしシェラは唇を尖らせた。
「だって、私こんなナリしてても男だもん・・・」
「顔は女みたいだけどな」
「・・・私の顔、好きなの?」
「いや、別に」
「──っ!! だったら何でOKしたの?!」
「は? お前が『うん、って言わなかったらここで死んでやる!!』って公衆の面前で言うからだろうが」
「・・・・・・」
言った。
確かに言った。
しかし、どんな理由があれ頷いたのなら、ちょっとは恋人らしく扱ってくれてもいいではないか。
「・・・海じゃなくてもいいから、どっか行きたい」
「行けば」
「一緒がいいの!」
「暑いの苦手。っていうか、外嫌い」
「・・・だったら車で涼しいところ行けばいいじゃん。私運転するから」
免許は持っている。
車も持っている。
デートが出来るなら、運転手でも何でもやる。
「お願い!」
手を合わせて拝むと、美貌の男は眼鏡を指先で直してシェラの方を向いた。
「だったら、デートしてくれる男と付き合えば?」
「──・・・っ!!」
「『一緒にいられればそれでいい! どっか連れてって、なんて我が儘言わないから!!』って言ったの誰だよ」
「・・・・・・」
それも言った。
確かに言った。
でも、こんなにかっこいい彼氏なのだから、ちょっとくらい自慢して歩いてみたいではないか。
「・・・・・・」
うぅぅ、と顔を顰めているシェラの瞳に、いっぱいの涙。
美貌のオタクゲーマーはまったく気にしていないよう。
「~~~~~っ、ヴァンツァーのばかっ!!」
叫ぶと、シェラは部屋を飛び出した。
残された男は、深くため息を零してゲーム機を見つめた。
「はぁ・・・めんどくさ」
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・・・これって、ヴァンツァーに対する冒涜でしょうか・・・? 私は愛情だと信じて疑わないのですが・・・
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