小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
『セレブ』を『セフレ』と読んでしまった瞬間、「あ、自分終わったな」と確信いたしました。
どうも皆さんこんばんみー。今日も品はないけど愛だけはある橘です、お世話させてやってます(コラ)
なかなかご好評いただいておりますカラオケネタ。ただ単に、橘がカラオケ行きたいだけ(笑)
そういえば、今週末は3連休ですね。ボーナスがいつの間にかなくなっていたので何も出来ませんが(笑)夏休みも、有給2~3日使って長めに取ろうかなー、と思っています。いや、ノープランな引越しのために家を片付けなくては・・・。あぁ、具合悪くなりそう・・・。
そんな鬱々とした気分を吹き飛ばすために、小ネタいってみよ。
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その場にいた誰ひとりとして、ヴァンツァーの歌を聴いたことがあるものはいなかった。
シェラでさえも、ピアノならば時間のあるときに弾いてもらっていたが、歌は聴かせてもらっていない。
得意ではないというのは聞いたことがあるので、無理に歌わせようとは思わなかったのだが。
子どもたちの彼氏が歌ったのだから、今このときに便乗するしかないではないか。
憎たらしいくらい何でも出来る男がどんな音痴なのか、考えただけでわくわくする。
いや、別に子どもたちの前で恥をかかせようとかいうわけではないのだ。
ただ、ちょっと興味が勝ってしまっただけなのだ。
にこにこと頭に花を咲かせて微笑んでいるシェラにちいさく笑うと、ヴァンツァーは曲を選んだ。
画面に現れたタイトルとアーティスト名に、ソナタとライアンが同時に声を上げた。
「「──ガッ君歌うの?!」」
誰だ、それ? という顔になったのは高校生カップルとシェラだ。
ソナタとライアンは感心したようなまなざしを最年長の男に向けている。
流れてきたヴァイオリンの音に、興味を持ったのはやはりキニアンだ。
機械の音ではあるのだけれど、そのメロディーラインの美しさを感じることは出来た。
──Love Letter
やさしい笑顔で微笑むきみが、今でも傍にいる
長い旅路の果てに何があるのか分からないけれど
不安な夜は、もう二度と訪れないから
美しいメロディーのこの曲は、歌い手に広いキーレンジを要求する難曲でもあるのだが、誰もそんなことを考えてはいなかった。
タイトルからも歌詞からも、ラヴソングだということは分かる。
それが、シェラに向けられたものであることも。
しかし、この場にいた誰もが、ヴァンツァーの歌を『カラオケ』だとは思わなかった。
込められた想いが、音の深さが、狭いカラオケボックスの中で聴いているのだということを忘れさせる。
永遠を歩いてゆける
これからもずっとふたりで
この胸に強く抱きしめた想いは変わらない
たったひとつだけの──愛してる
普段物静かで口数も少ない男が、豊かな声で歌い上げる。
隣に座る男ではなく画面を──そこに現れる文字を食い入るように見つめていたシェラの瞳から、ひと筋涙が零れた。
ちいさな花のような君に出逢った日は遠く
まだ幼すぎて傷つけあう日々もあったけれど
今では笑いあえる思い出
もう、文字を追うことが出来なかった。
脳裏を、ここではない場所で起こった出来事が駆け巡る。
めまぐるしい日々、刃を交えた感覚、空気の匂いすら鮮明に思い出せる。
次から次へと泉のように溢れてくる涙に、しかし嗚咽を漏らしたくなくて唇を噛む。
そんなシェラの頭を、歌い続けたまま己の胸にぐっと引き寄せる男。
誓いあう約束を忘れないで
誰よりも大切だから
描いた夢を少しずつ叶えてゆこう
くしゃり、と銀髪に手を入れれば、縋りつくようにシャツを握られた。
ずっとふたりで永遠を歩いてゆこう、と胸から直接響く言葉と音に、胸が苦しくなった。
もう、傷つけあうことはないのだから、と。
互いを信じ、自分を赦し、孤独に震える夜がもう来ないように寄り添って。
最後に『愛してる』と繰り返され、曲が終わると、どこからともなくため息が零れた。
「──アリス?!」
驚いたカノンの声に皆でそちらに顔を向け──目を瞠った。
新緑色の瞳から、はらり、と透明な雫。
「え・・・? あ、あれ・・・?」
本人も言われるまで気づかなかったらしく、羞恥に頬を染めて目元を拭った。
「う、わ・・・びっくりした」
何だこれ、と泣いている本人が一番驚いているようだった。
「でも分かるなー。おれも感動した」
「パパ、珍しくかっこ良かったよね」
「下手だなんて、謙遜しちゃって」
ねー、と微笑みあっているソナタとライアンに、キニアンは「何ていうか」と小首を傾げた。
「上手いとか、下手とか、そういうんじゃなくて・・・心臓鷲掴みにされてるのに、やさしく頭撫でられてる感覚、っていうか・・・」
「相変わらず発言がドMだよね」
「いや、なんか、すごくやさしくされてるんだけど、それが苦しいっていうか・・・いいのかな、そんな風にしてもらって、って思えてきて・・・」
「別にアリスに歌ったんじゃないでしょ」
「そりゃそうなんだけどさ」
何と言えばいいのか、あまり口数も語彙も多い方ではない少年は困惑顔だ。
でもまぁ、とカノンは納得したように頷いた。
「マリアさん、アリスは感性だけで生きてるって言ってたし、何か感じるところがあったってことだよね」
「・・・そんな酷いこと言ってたのか、あの人」
「褒めてたんだよ?」
「何も考えてないみたいじゃないか」
「考えない方がいいのに、難しく考えちゃうんだ、って言ってた」
「・・・俺、馬鹿ってこと?」
「『俺って馬鹿』って思ってることが馬鹿ってこと」
「・・・・・・よく分かんないぞ」
「いーんじゃない? アリスなんだし」
まったく褒められている気はしない少年の困ったような顔に、シェラはくすくすと笑った。
ヴァンツァーの胸に頭を預けたまま、目元と頬を手で拭っている。
「アー君は、感受性が強いんだよ」
「え・・・?」
「表面的な音とかテクニックじゃなくて、言葉でもなくて、そこにある感情を、読み取れるんだろうなぁ」
「・・・はぁ・・・」
「『ちょっと惚れそう』とか、思わなかった?」
「あー・・・まぁ・・・あんな風に想われるのは、羨ましいかなぁ・・・」
「あげないよー」
へへっ、とはにかんだように笑って逞しい身体に抱きつく万年天使に、一番驚いたのはヴァンツァー本人に違いない。
もちろん、子どもたちも目を真ん丸にしてはいるのだが、ヴァンツァーなど顔面崩壊を通り越して、いつも以上の無表情になっている。
そうして5分ほどして、ようやく情報の処理が追いついたらしい明晰な頭脳を持った美貌の男は、緩む口許と必死で戦うハメに陥ったのだった。
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・・・だから、なぜ最後までかっこいいままでいられんのだ、お前は・・・。
あー、もう、キニアン可愛いよ、キニアン。
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