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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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皆様、お久しぶりです。橘です。
ここ最近土日は出かけることが多いのですが、家にいる日はずっと寝ています。昨日も、8時くらいに起きて、またぱったりと寝て、11時くらいに起きて、ご飯を食べて、またぱったりと寝て、16時くらいに起きて、またぱったりと・・・。そんな繰り返しで1日が終わりました。
今日は家を片付けるぞ! と思ってはみたものの、昼過ぎまで起きられず、現在に至ります。週5日もたないんですよねー。

そんなわけで、サイトの更新ができず皆様には大変申し訳ない限りですが、せっかくですから七夕の小ネタでも書いてみようかと。んー、ヴァンシェラなんですけどね。一応。



**********

「外界へ行きたいか?」

天候を支配し、鬼神を従える男の声は力に溢れ、美しいが聞くものすべてに等しく畏怖の念を与える。

「・・・紫微様」
「また泣いていたのか」

けれど、顔を上げた少女の雪白の髪を撫でる手はやさしく、青玉のような瞳は穏やかだ。
艷やかな黒髪が縁取る白皙は、天女の誰もが恋をするという麗しさ。

「・・・泣いてなどおりませぬ」

ふい、と顔を反らす少女の様子に、男は忍び笑いを漏らした。

「・・・紫微様は、意地悪です」
「あぁ、許せ。お前の反応が愛らしいのでつい、な」

よしよし、と天の川のように煌めく銀髪を撫で、少女の機嫌を取る。
ゆっくりと持ち上げられた少女の顔は清らかで美しく、菫色の瞳は黎明の空を思わせる高貴な色彩。
けれど、眉は力なく下がり、やわらかな頬は少しやつれて見える。

「お前にそのような表情をさせるあの人間が、少し羨ましい」
「──え?」

少女の瞳が、驚きに瞠られる。
強大な力を持つ神であるこの方が、何の力も持たぬ人間を羨むなど考えられない。

「会いたいか?」
「・・・紫微様?」
「俺は風雨を司る。お前が望むなら、あの雨を止ますことも出来る」

窓の外、数歩先も見えないような大粒の雨。
この天気のおかげで、少女は離れた地にいる夫と会うことが出来ない。

「・・・紫微様は、何か思い違いをしていらっしゃいます」
「思い違い?」

今度は、男の藍色の瞳が丸くなる。

「わたくしは、あの人間を愛してなどおりませぬ」
「・・・・・・」
「羽衣を盗られたゆえ、仕方なく・・・」

少女の声に、涙が交じる。

「父天帝がお怒りになるような・・・機織りの義務も、忘れたわけではないのです」

織らせてもらえなかったのだ、と。

「今こうして天界へ連れ戻されたことを、喜びこそすれ、哀しんでなど──」

言い終わる前に、きつく、抱きすくめられた。

「──・・・紫微様?」
「では、なぜ笑わぬ」
「・・・・・・」
「ここへ戻ってから、お前の笑顔を一度として見ていない」

なぜだ、と。
衣を通しても感じる男の広い肩と厚い胸に、少女は縋りそうになった。

「・・・っ、いけ、ませぬ」
「聞かぬ」
「紫微様!」
「お前の嘆きの理由を聞くまでは」
「・・・・・・ふぅっ」

ぽろぽろ、と。
少女の瞳から、大粒の涙が零れた。

「紫微様・・・お慕い、しております」
「──姫・・・?」
「ずっと・・・ずっと」

堪えきれず、少女は男の背に腕を伸ばした。

「ずっと・・・紫微様・・・」
「お前は・・・」
「でも・・・でも、わたくしは・・・もう・・・」

乙女ではない身など、天帝に次ぐとも言われる力を持つ北の星の化身には相応しくない。
この美しい男に恋をしない天女などいない。
自分よりも力を持った天女など、いくらでも存在する。
昔は、天帝の娘である自分ならば、と考えたこともあった。
容姿にも、それなりの自信があった。
けれど──。

「──何だ」

嘆息とともに漏らされた言葉に、少女の肩が震える。
汚らわしいと、思われたのかも知れない。
慌てて離れようとした身体を、しかし、逆に強く引き寄せられた。

「・・・紫微様・・・?」

こわごわと訊ねる少女の髪を撫で、男は言った。

「俺の妻になれ」
「──え・・・?」

菫色の瞳が、大きく瞠られる。

「紫微様?」
「あの人間の元に、戻りたいのでなければ」
「戻りたくなど!」

ふるり、と細い身体を震わせる少女の髪をもう一度撫で、男は同じ言葉を繰り返した。

「俺の妻になれ」
「・・・ですが、わたくし、は・・・」
「天女の乙女の血は、神通力を強くする霊薬となる」
「え?」
「だが、俺には必要のないものだ」
「・・・・・・」

確かに、広大な北の天を統べるほどの力を持つ男には必要のないものであろうが。

「紫微様・・・?」
「離縁の儀は・・・あぁ、必要なさそうだな」
「え、あの」

目をぱちくりさせる少女に笑みを向けると、男は掌中の珠と言わんばかりに大事そうに少女を抱き上げた。

「さぁ、天帝の元へ挨拶に行こう」

驚いた顔をしている少女の唇を啄むと、男は有無を言わせずに歩き出した。

「──というわけで、娘をもらうぞ」
「──黙れロリコン」

最高神の住まう御所だとて、紫微大帝ほどの位にあるものであれば、入ることはそう難しくない。
苦虫を噛み潰したような顔をしている美貌の男は、玉座で頭を抱えていた。

「・・・お父様?」
「姫。お前、本当にその男でいいのか?」
「え、あの、あの・・・」

頬を紅く染めている様子を見ると、姫自身が望んでのことなのだろう。

「・・・ひでぇ冗談だ」

天帝はもう一度大きなため息を零した。

「だから、最初からさっさと俺に嫁がせておけば良かったのだ」

そうすれば、姫が無駄に傷つくこともなかった、と。
男の言葉はある意味正しいものではあったので、天帝は「分かったよ」と両手を上げた。

「幸せになんな」
「お父様──・・・はいっ!」

零れんばかりの笑顔に、少女を腕に抱いた男も、少女の父も、満足そうに頷いたのだった。


**********

ヴァンツァーが牛飼いとは思えなかったので。ごめんよ、彦星。別にきみをゲス野郎にする気はなかったのだが・・・。

おそまつでした。
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