小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
アイドルって大変ね、という記事を読んだので。
まぁ、あれは秋元康の売り方が悪いわな。いい詞書く時は書くんだけどね。
まぁ、あれは秋元康の売り方が悪いわな。いい詞書く時は書くんだけどね。
**********
手掛けたアーティストは必ずブレイクするという、業界において知らぬものはいない伝説のプロデューサー。
そんな男のもとを、シェラは訪れていた。
「・・・・・・」
重厚な樫の木の扉の前で、ごくり、と喉を鳴らした。
雪のような銀髪と天使のように愛らしい美貌をしたシェラだったので、中学生の頃に親戚のおばさんが勝手にアイドル発掘オーディションのようなものに応募してしまった。
親兄弟には反対されたけれど、シェラ自身そういうものに興味がなかったわけではない。
おそらくその美貌によるところが大きいのだろうが、シェラは見事オーディションに合格し、今の事務所に在籍することとなった。
何本かテレビにも出たし、CDも出したけれど、結果は芳しくない。
『ものすごい可愛いけど、それだけ』
というのが、世間と業界のシェラへの評価であった。
こんな世界に身を置いているくらいだから、シェラだとて売れたい。
また、売れないタレントに対して、事務所というものは冷たいものだ。
中には可愛がってくれる人もいたが、粘着質な視線と汗ばんだいやらしい手にベタベタ触れれるのを我慢することと引き換えだった。
それでも、ごくごく僅かだけれど味方もいて、その中でも『どうしてこの人がタレントじゃないんだろう?』と思うような金髪美形のマネージャに紹介されたのが、件のプロデューサーであった。
──コンコン。
扉を叩き、応えがあってから中に入る。
「あ・・・あの・・・シェラ・ファロットです。ナシアス・ジャンペールさんから紹介・・・され、て・・・」
部屋に入るなり、まず挨拶しなければ、と早口に自己紹介をしようとしていたシェラは、大きなデスクに頬杖をついてこちらを見てくる男を視界に入れると声を失った。
「話は聞いている」
決して大きくはないけれど、よく通る低い声。
かなり硬質で、感情を排除したような声音だったけれど、間違いなく美声の部類に入る声だった。
それに何より、男自身の美貌が凄まじい。
艶やかな黒髪に、白い肌、切れ長の瞳はサファイアのような青で、鼻梁はすっと通っている。
形の良い唇には愛想笑いのひとつも浮かんでいなかったけれど、それがまたストイックな印象を与えてきて胸が高鳴る。
「それで?」
「・・・はい?」
「何をしに来た」
そう言って立ち上がると、かなりの長身であることが分かった。
ダークスーツに身を包んだ身体は、相当鍛えられているのだろう、肩は広く、腰は細く、素晴らしい男ぶりである。
ゆっくりと近づいてくる男にどぎまぎしていたシェラは、訊ねられたことにも答えられないでいた。
「口が聞けないのか?」
「──へっ?!」
目の前に長身と美貌があって、やはり目が離せない。
頭ひとつ分近く身長差があるため、自然と見上げる形になる。
ぽーっと見惚れているシェラを見て、男は嫌そうに眉を寄せた。
「帰れ」
「え、ちょ」
「ナシアスの頼みだから聞いてやろうかと思ったが、お前のような馬鹿の相手をするほど俺は暇じゃない」
「なっ!」
さすがにカチン、ときたシェラは食ってかかろうとしたけれど、きつい視線ひとつで黙らされてしまった。
「お前は何がしたいんだ」
「・・・えっと」
「役者? 歌手? タレント?」
「・・・一応・・・歌手・・・?」
自信なさ気に呟いたシェラに、ヴァンツァーはひと言「辞めろ」と言った。
「『一応』とか言うくらいなら、今すぐ辞めろ」
「・・・・・・」
「顔だけで売れるほど、この世界は甘くない」
「っ・・・」
それは、今現在シェラが痛感していることである。
「歌ってみろ」
「え」
「『え』じゃない。お前、やる気あるのか?」
辞めろと言ったり歌えと言ったり、どこまでも自分勝手でとことん馬鹿にしたような口調にやはり腹が立ったけれど。
──この男、絶対見返してやるっ!
そう決意し、すぅっと息を吸い込んだ。
CDデビューはしたものの、番組で歌ったのは1回だけ。
売れ行きだって全然良くない。
大御所と呼ばれるような作詞家や作曲家が手掛けたわけではないけれど、曲を馬鹿にしているわけではない。
けれど、シェラの顔が女の子のようだからか、曲調もどことなく可愛らしいもの。
かといって、最近流行りの『男の娘』路線で売ろうとしているのかといえば、そんなこともない。
扱いが中途半端なのは、だいぶ前から感じていること。
──こんなところで負けてたまるか!
せめて、心は強く持って。
ア・カペラで歌っていたシェラに、男は一歩近づいた。
す、と手を上げると、指先が腹に触れてシェラは一瞬歌うことを止めた。
「続けろ」
淡々とした口調で言う男の行動が気になってしかたなかったけれど、言われた通りに再び歌い出す。
そうする間にもやはり男の手はシェラの腹部を中心として、あちこちに触れている。
──な、なんだこいつ!
セクハラか?! と混乱しかける頭で、それでも歌うことはやめずにいたシェラ。
──あーもう、何かいい匂いするし、気が散る!!
他の業界関係者にもされていたことと同じだ、と思うのに、何だか頬が熱くなる。
確かにこの人はかっこいいと思うけど、でも自分だって男だぞ、と。
余計なことばかり考えながら歌っていたシェラだったが。
──ドン。
「──っ、かはっ・・・」
いきなり腹を殴られて、思わず息を詰めた。
鈍い痛みに、腹を抱えてうずくまる。
「・・・なに、す・・・」
床に膝をついて、遙か頭上の男を睨みつける。
「立て」
「っ・・・その前に」
言うことがあるだろう! と怒鳴りたかったが、殴られた腹へのダメージが相当大きい。
うまく声も出せない。
「お前、本当に何になるつもりでここにいるんだ?」
疑問でも嫌悪でもなく、その声には憐憫が含まれている気がした。
「さっさと立て」
「・・・・・・」
どうにか立ち上がったシェラに、背を向けた男は、やはり偉そうに「ついてこい」とだけ言って歩き出した。
少し迷ったけれど、今はこのどこまでも俺様な男についていくしかない。
ビルの中を歩いて向かった先は、スタジオのようだった。
「・・・なに、するんですか」
訊ねたシェラには答えず、男はドアを開けて中に入った。
「レティー」
「ん? おぉ、ヴァッツか。めっずらしー」
近寄ってきたのは、金茶の髪と瞳の華奢な男だった。
猫のような眼をしていて、見ようによっては可愛らしく見えなくもない顔立ち。
「これ、適当にやってくれ」
物のように示されたのが自分だと気づくのに、シェラは結構な時間がかかった。
「ん? あーら、可愛いお嬢ちゃんだこと」
「・・・男です」
「そりゃあ見れば分かるけどさ」
「・・・・・・」
見ただけでシェラの性別を判断出来る人間は、実はそう多くない。
業界の人間──特に脂ぎったオジサン──には、女の子扱いされることも少なくない。
はっきりいって嫌だったし気持ち悪かったが、そういう世界なのだろうということは何となくわかっていたことだ。
「で? 適当に?」
「適当に」
猫眼の男に頷いて、話は終わったとばかりに踵を返す敏腕プロデューサー。
「ちょっと!」
思わず引き止めたシェラに一応は振り返った男だが、何を言うわけでもない。
ついついシェラも黙りこんでしまって沈黙が訪れた。
「なんだ」
「な、何だって・・・それはこっちの台詞です。何しろって言うんですか」
「それはそいつに聞け」
顎で猫眼の男を示す。
随分と気安い関係らしい。
「説明くらいしてくれても」
「今のお前とは、話すだけ無駄だ」
「なっ!」
「鍛えて出直してこい」
それだけ言うと、本当に出て行ってしまった。
「・・・なんだ、あれ」
呆然と呟いたシェラの背後で、くすくすと笑う気配。
振り返ると、糸のように目を細めて笑っている男。
「・・・何ですか」
「気ぃ強いね」
「・・・余計なお世話です」
「大事なことよ~? そうでないと、この世界やってけないし」
「・・・・・・」
「さて。それじゃあ始めますか」
「始める、って・・・」
不安に眉を下げるシェラに向かって、猫眼の男はにんまりと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「──とりあえず、体力測定」
**********
まずは基礎から。
演劇やってたときは、発声練習中に腹殴られても平気だったのになぁ・・・今じゃ・・・ははは。身体も硬いし。身体硬くて腹筋背筋ないから腰痛もひどい、という。大事ですよ、筋力って。
ライソナ結婚式話で現在書いているヴァンツァーが、あまりにもヘタレているので、ダウ反発(笑)
手掛けたアーティストは必ずブレイクするという、業界において知らぬものはいない伝説のプロデューサー。
そんな男のもとを、シェラは訪れていた。
「・・・・・・」
重厚な樫の木の扉の前で、ごくり、と喉を鳴らした。
雪のような銀髪と天使のように愛らしい美貌をしたシェラだったので、中学生の頃に親戚のおばさんが勝手にアイドル発掘オーディションのようなものに応募してしまった。
親兄弟には反対されたけれど、シェラ自身そういうものに興味がなかったわけではない。
おそらくその美貌によるところが大きいのだろうが、シェラは見事オーディションに合格し、今の事務所に在籍することとなった。
何本かテレビにも出たし、CDも出したけれど、結果は芳しくない。
『ものすごい可愛いけど、それだけ』
というのが、世間と業界のシェラへの評価であった。
こんな世界に身を置いているくらいだから、シェラだとて売れたい。
また、売れないタレントに対して、事務所というものは冷たいものだ。
中には可愛がってくれる人もいたが、粘着質な視線と汗ばんだいやらしい手にベタベタ触れれるのを我慢することと引き換えだった。
それでも、ごくごく僅かだけれど味方もいて、その中でも『どうしてこの人がタレントじゃないんだろう?』と思うような金髪美形のマネージャに紹介されたのが、件のプロデューサーであった。
──コンコン。
扉を叩き、応えがあってから中に入る。
「あ・・・あの・・・シェラ・ファロットです。ナシアス・ジャンペールさんから紹介・・・され、て・・・」
部屋に入るなり、まず挨拶しなければ、と早口に自己紹介をしようとしていたシェラは、大きなデスクに頬杖をついてこちらを見てくる男を視界に入れると声を失った。
「話は聞いている」
決して大きくはないけれど、よく通る低い声。
かなり硬質で、感情を排除したような声音だったけれど、間違いなく美声の部類に入る声だった。
それに何より、男自身の美貌が凄まじい。
艶やかな黒髪に、白い肌、切れ長の瞳はサファイアのような青で、鼻梁はすっと通っている。
形の良い唇には愛想笑いのひとつも浮かんでいなかったけれど、それがまたストイックな印象を与えてきて胸が高鳴る。
「それで?」
「・・・はい?」
「何をしに来た」
そう言って立ち上がると、かなりの長身であることが分かった。
ダークスーツに身を包んだ身体は、相当鍛えられているのだろう、肩は広く、腰は細く、素晴らしい男ぶりである。
ゆっくりと近づいてくる男にどぎまぎしていたシェラは、訊ねられたことにも答えられないでいた。
「口が聞けないのか?」
「──へっ?!」
目の前に長身と美貌があって、やはり目が離せない。
頭ひとつ分近く身長差があるため、自然と見上げる形になる。
ぽーっと見惚れているシェラを見て、男は嫌そうに眉を寄せた。
「帰れ」
「え、ちょ」
「ナシアスの頼みだから聞いてやろうかと思ったが、お前のような馬鹿の相手をするほど俺は暇じゃない」
「なっ!」
さすがにカチン、ときたシェラは食ってかかろうとしたけれど、きつい視線ひとつで黙らされてしまった。
「お前は何がしたいんだ」
「・・・えっと」
「役者? 歌手? タレント?」
「・・・一応・・・歌手・・・?」
自信なさ気に呟いたシェラに、ヴァンツァーはひと言「辞めろ」と言った。
「『一応』とか言うくらいなら、今すぐ辞めろ」
「・・・・・・」
「顔だけで売れるほど、この世界は甘くない」
「っ・・・」
それは、今現在シェラが痛感していることである。
「歌ってみろ」
「え」
「『え』じゃない。お前、やる気あるのか?」
辞めろと言ったり歌えと言ったり、どこまでも自分勝手でとことん馬鹿にしたような口調にやはり腹が立ったけれど。
──この男、絶対見返してやるっ!
そう決意し、すぅっと息を吸い込んだ。
CDデビューはしたものの、番組で歌ったのは1回だけ。
売れ行きだって全然良くない。
大御所と呼ばれるような作詞家や作曲家が手掛けたわけではないけれど、曲を馬鹿にしているわけではない。
けれど、シェラの顔が女の子のようだからか、曲調もどことなく可愛らしいもの。
かといって、最近流行りの『男の娘』路線で売ろうとしているのかといえば、そんなこともない。
扱いが中途半端なのは、だいぶ前から感じていること。
──こんなところで負けてたまるか!
せめて、心は強く持って。
ア・カペラで歌っていたシェラに、男は一歩近づいた。
す、と手を上げると、指先が腹に触れてシェラは一瞬歌うことを止めた。
「続けろ」
淡々とした口調で言う男の行動が気になってしかたなかったけれど、言われた通りに再び歌い出す。
そうする間にもやはり男の手はシェラの腹部を中心として、あちこちに触れている。
──な、なんだこいつ!
セクハラか?! と混乱しかける頭で、それでも歌うことはやめずにいたシェラ。
──あーもう、何かいい匂いするし、気が散る!!
他の業界関係者にもされていたことと同じだ、と思うのに、何だか頬が熱くなる。
確かにこの人はかっこいいと思うけど、でも自分だって男だぞ、と。
余計なことばかり考えながら歌っていたシェラだったが。
──ドン。
「──っ、かはっ・・・」
いきなり腹を殴られて、思わず息を詰めた。
鈍い痛みに、腹を抱えてうずくまる。
「・・・なに、す・・・」
床に膝をついて、遙か頭上の男を睨みつける。
「立て」
「っ・・・その前に」
言うことがあるだろう! と怒鳴りたかったが、殴られた腹へのダメージが相当大きい。
うまく声も出せない。
「お前、本当に何になるつもりでここにいるんだ?」
疑問でも嫌悪でもなく、その声には憐憫が含まれている気がした。
「さっさと立て」
「・・・・・・」
どうにか立ち上がったシェラに、背を向けた男は、やはり偉そうに「ついてこい」とだけ言って歩き出した。
少し迷ったけれど、今はこのどこまでも俺様な男についていくしかない。
ビルの中を歩いて向かった先は、スタジオのようだった。
「・・・なに、するんですか」
訊ねたシェラには答えず、男はドアを開けて中に入った。
「レティー」
「ん? おぉ、ヴァッツか。めっずらしー」
近寄ってきたのは、金茶の髪と瞳の華奢な男だった。
猫のような眼をしていて、見ようによっては可愛らしく見えなくもない顔立ち。
「これ、適当にやってくれ」
物のように示されたのが自分だと気づくのに、シェラは結構な時間がかかった。
「ん? あーら、可愛いお嬢ちゃんだこと」
「・・・男です」
「そりゃあ見れば分かるけどさ」
「・・・・・・」
見ただけでシェラの性別を判断出来る人間は、実はそう多くない。
業界の人間──特に脂ぎったオジサン──には、女の子扱いされることも少なくない。
はっきりいって嫌だったし気持ち悪かったが、そういう世界なのだろうということは何となくわかっていたことだ。
「で? 適当に?」
「適当に」
猫眼の男に頷いて、話は終わったとばかりに踵を返す敏腕プロデューサー。
「ちょっと!」
思わず引き止めたシェラに一応は振り返った男だが、何を言うわけでもない。
ついついシェラも黙りこんでしまって沈黙が訪れた。
「なんだ」
「な、何だって・・・それはこっちの台詞です。何しろって言うんですか」
「それはそいつに聞け」
顎で猫眼の男を示す。
随分と気安い関係らしい。
「説明くらいしてくれても」
「今のお前とは、話すだけ無駄だ」
「なっ!」
「鍛えて出直してこい」
それだけ言うと、本当に出て行ってしまった。
「・・・なんだ、あれ」
呆然と呟いたシェラの背後で、くすくすと笑う気配。
振り返ると、糸のように目を細めて笑っている男。
「・・・何ですか」
「気ぃ強いね」
「・・・余計なお世話です」
「大事なことよ~? そうでないと、この世界やってけないし」
「・・・・・・」
「さて。それじゃあ始めますか」
「始める、って・・・」
不安に眉を下げるシェラに向かって、猫眼の男はにんまりと意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「──とりあえず、体力測定」
**********
まずは基礎から。
演劇やってたときは、発声練習中に腹殴られても平気だったのになぁ・・・今じゃ・・・ははは。身体も硬いし。身体硬くて腹筋背筋ないから腰痛もひどい、という。大事ですよ、筋力って。
ライソナ結婚式話で現在書いているヴァンツァーが、あまりにもヘタレているので、ダウ反発(笑)
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