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──きっと、受胎告知にやってきた天使ガブリエルは、あんな人だ。

そう、子ども心に彼は思った。
普段は昼寝した熊みたいに凡庸に見えるのに、フィギュアスケーターとして氷上ではまるで王様のようになる父ウォルに連れられて見に行ったのは、ロマンティック・バレエの代表格『ジゼル』だった。
妻を病で亡くし、怪我で現役を引退してからは失意に沈むこともあったウォル。
けれど、ウォルが息子に与える愛情はそれまでと変わりなく、スケーターとしての才覚を早くから現してきた息子に厳しくも愛情に溢れた指導を行った。
亡くなった母ともよく行ったというバレエ鑑賞。
この『ジゼル』は、病弱な人間の少女が身分を偽った貴族の青年に恋をし、その恋に破れて命を落とすまでが第１幕。
死んだ少女が精霊となり、精霊たちの暮らす森で貴族の青年と再会し、別れを告げるのが第２幕。
特に第２幕では身体が震えるのを感じたヴァンツァーだ。
これは、本当に人間なのか、と。
彼女の周りだけ、空気が澄んでいる気がした。
照明の効果だと言われればそれまでだが、何か後光のようなものすら差している気がしたのだ。

「──素晴らしかった！　人間のときの、儚げだけれど明るく元気な少女も良かったけれど、やっぱり精霊になってからが特に！　もう、あなたは精霊そのもので、舞台の上で体重がないかのように軽やかに・・・ええっと、そう、舞台の上数センチのところを浮いているみたいに！！」

藍色の瞳をきらきらと輝かせ、興奮に頬を染める美少年。
どうやらこの舞台のプリマは父の知り合いらしく、終演後の控え室へと通してもらえたのだ。
そのときの感動と興奮は言葉では表せない。
もともと頭の回転の速い少年なのだけれど、頭に中に浮かんでくる映像があまりにめまぐるしくて言葉が追いつかないのだ。
とにかく、ありとあらゆる賞賛の言葉を口にした。

「はっはっは。これがここまで興奮するのは珍しい。よほどあなたのジゼルが気に入ったようだ。しかし、ヴァンツァー。まずは挨拶が先だろう？」
「あ・・・すみません。ヴァンツァーといいます」
「ラティーナと呼んで下さい」
「はい、ラティーナ」

じーっと真っ直ぐラティーナの目を見つめるヴァンツァー。
ラティーナは、にこやかにその視線を受け止めている。

「いやしかし、今日の舞台はまた一段と素晴らしかったな」
「光栄ですわ。舞台に立つときは、いつでも一番良いものをお見せするようには心がけておりますけれど、それでも、今日はちょっとはりきっていしまいました」

ちいさく舌を出す様子が可愛らしくて、ヴァンツァーはくすくすと笑った。

「ヴァンツァーは、ハイスクール？」
「いえ、ジュニアハイです」
「──中学生？」

背が高く、大人びた雰囲気の少年の年齢に、ラティーナは目を丸くした。

「あ、でも、次の大会からシニアに上がるんです」
「シニア？」
「フィギュアスケートだ」

ウォルの言葉に、ラティーナは「まぁ」と大輪の花が咲くような笑みを零した。

「ヴァンツァーもフィギュアをするの？」
「これでもなかなか将来有望でな」
「あなたが仰るんですから、間違いありませんわね」

親馬鹿ぶりを発揮するウォルに、ラティーナはコロコロと鈴が転がるような声で笑った。
ヴァンツァーの父であるウォルも、かつてはフィギュアスケーターであった。
世界選手権でこそ優勝経験はないものの、オリンピックでも金メダルを獲得した名スケーターだ。
怪我が原因で現役を退きはしたが、現在もコーチをしたり、スケート連盟の審査員をしたりとフィギュアスケート界に携わっている。

「ぼくも、父のようにオリンピックで金メダルを取ります」

希望に満ちた少年の瞳に、ラティーナは深く頷いた。

「きっと叶いますわ。──あなたが、その瞳の輝きをなくさなければ」

そのときはそれがどういう意味だか分からなかったヴァンツァーだったけれど、数年もしないうちに彼女の言葉を苦い思いとともに噛み締めることとなる。

「──さて。喝采を浴びたプリマドンナ殿は、我ら下々の者との食事など、ご一緒して下さるかな？」

仰々しい物言いをするウォルに、ラティーナは満面の笑みで『Yes』を返した。
ヴァンツァーは、美しく聡明なプリマをひと目見たときから、心がざわつくような感覚を覚えていた。
それからも何かにつけて父とラティーナの舞台を見にいったり、食事をともにすることがあった。

「ラティーナは、ずっとプリマなの？」
「光栄なことに１９歳でエトワールに任命していただいてからは、今のところクビにはなっていないわ」

何度も顔を合わせて話をするうちに、だんだんと打ち解けて話せるようにもなってきた。
ヴァンツァーはまだ中学生ながら大変な美少年であり、同年代はおろかかなり年上の女性からも熱のこもった目で見られることが多かった。
だから、『普通に話せる』女性というものの存在は大変稀有だった。
また、上品な上に機智に富んだ会話の出来るラティーナだったので、彼女と話をする時間は本当に有意義だったのだ。

「じゃあ、もしクビになったら、ぼくとアイスダンスをしよう」
「ふふ。素敵ね」
「もちろん、プリマと踊るんだったら、ぼくもシングルの世界選手権で優勝して、世界一の選手になるから」
「えぇ、楽しみにしているわ」


──父とラティーナの再婚を聞かされたのは、それからしばらくしてのことだった。

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現世の神が俺にささやいたのさ。

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「シェラです！　よろしくお願いします！」

元気いっぱいににっこりと笑って頭を下げる銀髪の美少女。
目の前には長い黒髪を束ね、お団子に纏めた妙齢の女性。
品の良い顔立ちの、美しい女性である。
素晴らしく姿勢の良い、凛とした雰囲気の大人の女性に、シェラはぽーっと頬を染めて憧れの視線を向けた。
妙齢の美女はくすくすと品良く笑みを零し、「こちらこそ」と返した。

「ラティーナと呼んで下さい」
「はい！　ラティーナ先生！！」

うきうき、わくわく、と顔に書いている少女を、ラティーナは愛娘を見るような目で見つめた。

「あなたが頼みごとなんて珍しいと思ったら、こんな可愛らしい子を連れてきてくれるなんて」

嬉しいわ、と見上げるのは無愛想ながら絶世の美貌を誇る長身の青年。

「お知り合いなんですか？」

興味津々といった感じで訊ねたシェラに、ラティーナは「えぇ」と頷いた。

「母です」
「──えっ？！　若っ！！」
「義理の、ですけど」
「あ・・・」

ちょっと困ったような顔をしているシェラ。
ラティーナはふふっ、と微笑んでヴァンツァーを見つめるが、当の本人はぶすっとした顔をしている。

「嬉しいわ。こんな風に頼ってもらえて」
「──じゃあ、あとは適当にやってくれ」

それだけ言うと、ヴァンツァーはさっさとどこかへ行ってしまった。

「ちょっ！　ヴァンツァー！！」

んもぅ、と腰に手を当てるシェラ。
「すみません」と、何だかシェラの方が申し訳なくなって頭を下げる。
ラティーナは首を振った。

「自分と１０くらいしか違わないんだもの。あまり良く思ってなくて当然だわ」
「でも、いい歳してあの態度は・・・」

これには明るく笑ったラティーナである。
何だかシェラの方が年上みたいに思えたのだ。

「いいのよ。だって、こうやってわたしに大事なお弟子さんを預けてくれるんですもの。はりきっちゃうわ」

シェラはほわぁぁぁ、と尊敬のまなざしを向けた。

「あの、あんな態度ですけど、ヴァンツァー言ってました」
「何て？」
「『全部盗んで来い』って」

これには目を丸くしたラティーナだ。

「それって、先生のこと、すごく、すごく尊敬してるってことですよね？」

きっと照れてるんですよ、と言ってニシシ、と笑ったシェラに、ラティーナは慈愛に満ちた笑みを向けたのだった。

「バレエ、本格的にやるのって初めてなんです！　すごく楽しみ！！」
「わたしも、こんなに可愛くて元気いっぱいの生徒さんを見られるなんて、光栄だわ」

えへへ、と頬を染めているシェラだったが、直後ラティーナへの見方を改めることとなる。
その淑女然とした雰囲気からは想像もつかないことであったが、ラティーナの指導はヴァンツァーの方がやさしいんじゃないか、と思うくらいに厳しいものだったのである。


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ぐんぐん伸びてちょーだい。

ラティーナ義母は、俺的神設定（コラ）
まずい。ヴァンツァーが余計ヘタレる・・・フィギュアのヴァンツァーだけはかっこ良くいてくれ・・・頼む・・・。

１０：５３　ご無沙汰しております。
8月の帰省中にに一人暮らししている地元の母と慕っていた方が亡くなり、ちょっと忙しくして訪ねるのを控えておりました。
テンションも低かったですしね・・・
いまでも、名前を出したり、別れの歌を聴いたり、病の話をしたりすると、ふいに泣けてきます。
でも、また橘さんのところを覗きにきてみたら、懐かしい子供時代のお話（早く帰ってきてねｗ）もあったりして、私の心も癒されまくりです。最高ですね、また明日ねって・・・そりゃ、泣きたくなるね
とっても、癒されたのがあの植物たちの命名お披露目の日記です!!!!笑っちゃいましたよ。
どの子もなんてぴったりなんでしょう!!!
ピンク好きのカノンたん、姿勢の綺麗なソナたん
そして御大ナシアス様とか最高です。たまりません！
すばらしい!!!!の一言です。
リリアさんってどなただかまだ思い出せていないのですが、(^^;)スミマセン・・・
でも、癒されまくり、笑いまくりました。
ありがとうございます。
笑うってホントに元気を出す原動力になるなって思います。ほんわかするお子様のお話は特に私の栄養剤です。
ぜひぜひまたよろしくお願いしますね。
では、またお邪魔いたします! by らい

らい様
親しい方との別れというのは、いくつになっても辛いですね。出会いがあれば別れもあるというのは分かっていても、どうしても寂しくなってしまいます。私は失くさないと気づかない馬鹿者なのですが、親戚の方々から「ちょこちょこ連絡寄越しなさい」とか、「たまには遊びに来なさい」とか、「ご飯食べに来なさい」とか、色々声を掛けてもらっていても、何だか寄り付けないでいます。近況を色々聞かれたりするので対応するのが面倒なのかも知れません。実は失くしたときが怖いから交わらないようにしているのかも知れません。でも、それってきっと違うんですよね。それも分かっていても、己を曝け出して人と関わるというのは、やはり怖いです。──なーんて、己の煩悩と腐れた脳内を曝け出している私が言っても、何にもなりませんが（笑）
あー、うちの子たちご覧いただきましたか！！　可愛いんです！！（親馬鹿）　ソナたんが元気ないんですけど、カノンはヘコんでるときにお日様に当ててお水を上げると、シャン！　とするんです。そうか、そうか、そんなにキニアンが好きか、とニヤニヤしながら見守ってます。ソナたんも、早く元気になって欲しいなぁ・・・。ナシアス様とバルロはとても、とても丈夫なので、冬の間は放って・・・コホン、のびのびとしていただいて、春になったらもう少し大きな鉢に植えようかと思います。セダム・バルロなんて、あの子生育力がかなり強いので、ジャングル化する恐れがあるんですよねぇ・・・さすがバルロの繁殖力（笑）
リリアたんは、サンセベリアという国の王妃様ですね。ヘタレ王弟からヘタレ国王になったオルテス君の、可愛い、可愛いお嫁さんです。リィが誘拐（笑）して、オルテス君をデルフィニアに味方させるきっかけになった、という。ふわふわしていて、とても可愛い方です。・・・確か、たぶん、記憶が確かならば（笑）リリアたんがあまりにも可愛いので、橘の中でオルテス君にはもれなくロリコンのレッテルが貼られています。別にロリコンじゃないんですけど、だってリリアたんが可愛いから・・・（コラ）
小ネタも、ちびちゃんたちを書いたのは久々だったのですが、あの子たちは本当に和みます。癒されるというか、和む（笑）もう、何をしても可愛くて。怒ってても可愛いですからね（笑）いつの間にか４歳児が高校生とか成人になってしまいましたが、時々ちびちゃんたちも書いて、私も和もうと思います（＾＾）


拍手を下さった皆様、ありがとうございます。何でしょうか。午後急に増えた拍手は、スケーターシェラたんへのエールでしょうか（笑）私は今日、動画で天然デー輔と天然コヅのQ&Aの回答を見ていて、和んだり笑ったりしました。デー輔が『「○○選手の○○が欲しい」を埋めて下さい』と訊かれて『ランビエールのスピン』と答えていたのには、おおお！　と感心いたしました。ランビのスピンが手に入ったら、きみは無敵です（笑）同じ質問に、コヅは『アメリカ選手のオリンピックジャケット！』と答えていました。そーゆーことじゃねーよ（笑）有香ねーさんに頼め！！（笑）コヅの天然っぷりが大好きな橘です。いえ、ふたりとも天然なんですが。だって、コヅってば可愛いんです。『ファンに言われて嬉しかったことは？』という質問に、『褒められたら嬉しいです』って・・・・・・可愛すぎて鼻血出るかと思いました。あのちょっと舌っ足らずな口調で言うんですよ（言ってないけど）ちょっと照れながら。はにかんで。おばちゃんがなんぼでも褒めたる！！　って言いたくなるでしょう？！（笑）
でもね、残念なんです。テロ朝が馬鹿だから、中国大会のエキシビはCSでしか放送されないんです。今季のコヅのエキシビ、有香ねーさんが作ったエキシ、ちょーかっこいいんですよ。全身白い衣装で、あの美しいイーグルのオンパレード。カート先生のエキシも可愛くて好きなんですけど、いやー、有香ねーさんいい仕事するわ。そりゃアボたんもかっこ良くなるわ。コヅはどんどんかっこ良くなるね。FSのときの誘うような指先・・・どこまでも連れて行って下さい、と言いたくなります（コラ）
あー、コヅのエキシ見たいよー！！　と騒いで、橘はニコ動に入り浸るのです・・・。

２：２９　またもや素敵な時間にこんばんわ（笑）。
GP中国。
みきてぃの衣装の素晴らしい色気に、興奮気味でございます。あれは、彼女のスタイルを1.5割増しにしているデザインですね。あれこそ、衣装というものですわ～
もとのスタイルが素晴らしくバランスが取れているので、あの衣装は素敵に無敵（笑）。
さりげにハイレグなのも、さすがと思ってみたり。
…そして。
モロゾフ、痩せたと思いませんか？
私の目の錯覚かなぁ（笑）。 by DINA

DINA様
素敵な時間ですねー。橘はもう２２時過ぎにはどうしても眠くなってしまって、２４時には夢の中でした（笑）
GP中国、やはりみきてぃに興奮されました？（笑）いや、なんぞあの色気。峰不二子もびっくりの色気でした。媚びている感じのない、かっこいい色気ですね。決していやらしくはないという。そして、出ましたルッツーループ（笑）スルツカヤか、という（笑）回転不足というか、DG取られたようですが、今年は行きますね。FSでの４回転も。あー、楽しみです！
モロ、痩せたのかやつれたのか（コラ）いや、でもヤグディンの振り付けしているときのモロって、顎外れるくらいイケメンだったので、是非その頃に戻っていただきたい。服も、いつもお洒落さんですしね。ジゴロ、ジゴロ（笑）


７：３４　ハロウィン読みました。甘々で読んでるだけで幸せになってしまいますねｖｖ
ところで、何度チャレンジしても地下室にどうしても入れません…
私の頭では、どこが間違っているのか理解できないので、ヒントを頂けたらありがたいです。
ちなみに、打ち込んでいるのは、
１．
２．
３．　です。
ネット環境にないので、基本はマンガ喫茶で見ているのですが、それが原因なんでしょうか…
女神～楽しみにしています。出来たら、いつでも最初から読めるように、数話ずつで良いのでnovelへの移動を希望します。よろしくお願いします。 by れにゃ

れにゃ様
おはようございます。ハロウィン、楽しんでいただけて良かったです（＾＾）一応地下に入るのに入力した文字は伏字で（笑）あー、惜しいですね！　１の綴りが最初の１文字だけ違います。アルファベットの最初の方の文字が入ります。３は後者ですね。これで入れるはずです。ネットに接続する場所は特に関係ないです。リンクを張っていないだけで、パスワードも何も設定していない、隠していないページなので（笑）さぁ、奈落の底まであと１歩です！！（コラ）
『女神～』、そろそろ移します（笑）今年の頭くらいから書き始めているので、ネットに繋ぐ環境によっては読み返せないですよね（＾＾；）ほとんど話が繋がっていないらくがき状態ですが、まぁ、それも良し。ちょっとお待ち下さいね～（＾＾）


拍手を下さった皆様、ありがとうございます。来週は友人の結婚式です。式から参加させていただくのは初めてなので、とても楽しみです。幸せになっておくれ～。