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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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昨日は、うちの課長と同僚が新潟に出張予定でした。午後になったら出るって話だったのに、いつまでたってもいなくならない。どうしてだろう? と思っているときに、何気なくやふーにゅーすを見たら、『日本海側大荒れ』との見出し。金沢とか、大変だったみたいですね。
友人の旦那さんで、有名な嵐男さん(雨男の強化版)がいらっしゃるんですが、昨日東京に来るっていう話を聞いていたんですよね。でも東京は快晴。何気なく友人に、「日本海側とか行ってないよね? 金沢大荒れらしいけど」というようなメールをしたら、「え。金沢寄ってる」とのこと。

わーらったーーーーーーーっ。

うちの会社の人たちはその日本海側大荒れが響いて出張行くのが今日からになりました(笑)

**********

──きっと、受胎告知にやってきた天使ガブリエルは、あんな人だ。

そう、子ども心に彼は思った。
普段は昼寝した熊みたいに凡庸に見えるのに、フィギュアスケーターとして氷上ではまるで王様のようになる父ウォルに連れられて見に行ったのは、ロマンティック・バレエの代表格『ジゼル』だった。
妻を病で亡くし、怪我で現役を引退してからは失意に沈むこともあったウォル。
けれど、ウォルが息子に与える愛情はそれまでと変わりなく、スケーターとしての才覚を早くから現してきた息子に厳しくも愛情に溢れた指導を行った。
亡くなった母ともよく行ったというバレエ鑑賞。
この『ジゼル』は、病弱な人間の少女が身分を偽った貴族の青年に恋をし、その恋に破れて命を落とすまでが第1幕。
死んだ少女が精霊となり、精霊たちの暮らす森で貴族の青年と再会し、別れを告げるのが第2幕。
特に第2幕では身体が震えるのを感じたヴァンツァーだ。
これは、本当に人間なのか、と。
彼女の周りだけ、空気が澄んでいる気がした。
照明の効果だと言われればそれまでだが、何か後光のようなものすら差している気がしたのだ。

「──素晴らしかった! 人間のときの、儚げだけれど明るく元気な少女も良かったけれど、やっぱり精霊になってからが特に! もう、あなたは精霊そのもので、舞台の上で体重がないかのように軽やかに・・・ええっと、そう、舞台の上数センチのところを浮いているみたいに!!」

藍色の瞳をきらきらと輝かせ、興奮に頬を染める美少年。
どうやらこの舞台のプリマは父の知り合いらしく、終演後の控え室へと通してもらえたのだ。
そのときの感動と興奮は言葉では表せない。
もともと頭の回転の速い少年なのだけれど、頭に中に浮かんでくる映像があまりにめまぐるしくて言葉が追いつかないのだ。
とにかく、ありとあらゆる賞賛の言葉を口にした。

「はっはっは。これがここまで興奮するのは珍しい。よほどあなたのジゼルが気に入ったようだ。しかし、ヴァンツァー。まずは挨拶が先だろう?」
「あ・・・すみません。ヴァンツァーといいます」
「ラティーナと呼んで下さい」
「はい、ラティーナ」

じーっと真っ直ぐラティーナの目を見つめるヴァンツァー。
ラティーナは、にこやかにその視線を受け止めている。

「いやしかし、今日の舞台はまた一段と素晴らしかったな」
「光栄ですわ。舞台に立つときは、いつでも一番良いものをお見せするようには心がけておりますけれど、それでも、今日はちょっとはりきっていしまいました」

ちいさく舌を出す様子が可愛らしくて、ヴァンツァーはくすくすと笑った。

「ヴァンツァーは、ハイスクール?」
「いえ、ジュニアハイです」
「──中学生?」

背が高く、大人びた雰囲気の少年の年齢に、ラティーナは目を丸くした。

「あ、でも、次の大会からシニアに上がるんです」
「シニア?」
「フィギュアスケートだ」

ウォルの言葉に、ラティーナは「まぁ」と大輪の花が咲くような笑みを零した。

「ヴァンツァーもフィギュアをするの?」
「これでもなかなか将来有望でな」
「あなたが仰るんですから、間違いありませんわね」

親馬鹿ぶりを発揮するウォルに、ラティーナはコロコロと鈴が転がるような声で笑った。
ヴァンツァーの父であるウォルも、かつてはフィギュアスケーターであった。
世界選手権でこそ優勝経験はないものの、オリンピックでも金メダルを獲得した名スケーターだ。
怪我が原因で現役を退きはしたが、現在もコーチをしたり、スケート連盟の審査員をしたりとフィギュアスケート界に携わっている。

「ぼくも、父のようにオリンピックで金メダルを取ります」

希望に満ちた少年の瞳に、ラティーナは深く頷いた。

「きっと叶いますわ。──あなたが、その瞳の輝きをなくさなければ」

そのときはそれがどういう意味だか分からなかったヴァンツァーだったけれど、数年もしないうちに彼女の言葉を苦い思いとともに噛み締めることとなる。

「──さて。喝采を浴びたプリマドンナ殿は、我ら下々の者との食事など、ご一緒して下さるかな?」

仰々しい物言いをするウォルに、ラティーナは満面の笑みで『Yes』を返した。
ヴァンツァーは、美しく聡明なプリマをひと目見たときから、心がざわつくような感覚を覚えていた。
それからも何かにつけて父とラティーナの舞台を見にいったり、食事をともにすることがあった。

「ラティーナは、ずっとプリマなの?」
「光栄なことに19歳でエトワールに任命していただいてからは、今のところクビにはなっていないわ」

何度も顔を合わせて話をするうちに、だんだんと打ち解けて話せるようにもなってきた。
ヴァンツァーはまだ中学生ながら大変な美少年であり、同年代はおろかかなり年上の女性からも熱のこもった目で見られることが多かった。
だから、『普通に話せる』女性というものの存在は大変稀有だった。
また、上品な上に機智に富んだ会話の出来るラティーナだったので、彼女と話をする時間は本当に有意義だったのだ。

「じゃあ、もしクビになったら、ぼくとアイスダンスをしよう」
「ふふ。素敵ね」
「もちろん、プリマと踊るんだったら、ぼくもシングルの世界選手権で優勝して、世界一の選手になるから」
「えぇ、楽しみにしているわ」


──父とラティーナの再婚を聞かされたのは、それからしばらくしてのことだった。

**********

現世の神が俺にささやいたのさ。
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