小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
小ネタが検索しやすくなっている(笑)やる気になれば仕事は速い橘ですが、やる気になるまでが長いのでゴールは一緒です(コラ)
皆様にとっても、少しは使いやすくなったでしょうか? どの程度お応え出来るかは分かりませんが、ご要望があれば仰って下さい。気分次第で仕事の速さは変わりますが、出来る限りのことはしたいと思います。
それにしても、ファロット一家+αを結構書いてたんだなぁ・・・。
あー、新しいPCが欲しいぜ・・・9万か・・・くっ!
皆様にとっても、少しは使いやすくなったでしょうか? どの程度お応え出来るかは分かりませんが、ご要望があれば仰って下さい。気分次第で仕事の速さは変わりますが、出来る限りのことはしたいと思います。
それにしても、ファロット一家+αを結構書いてたんだなぁ・・・。
あー、新しいPCが欲しいぜ・・・9万か・・・くっ!
**********
昨シーズンは、納得のいく結果ではなかった。
それでも、一からジャンプの修正を初めたその年で既に世界の舞台で表彰台に立つこともあった少女に、周囲のスタッフはむろんのこと、ファンですら驚嘆していた。
けれど、まだ波があるのは事実。
もっと確実なものにしなくては、2年後に迫ったオリンピックでは戦うことが出来ない。
今年シニアに上がってきた大国の選手は、十四、五歳でありながら二十歳前後の選手の技術レベルを身につけている。
少しずつではあるがジャンプの感触を掴んできた、再スタートの2年目。
シェラはもう1年かけて、フリースケーティングの『愛の夢』を完成させたい、と申し出た。
「納得する演技がしたい」
そう告げる少女の瞳の強さに、コーチもサポート陣も頷いた。
少女の言い分ももっともであったし、また、未完のまま終わらせるには、このプログラムはあまりにもったいなかった。
振り付けをしたマーガレットという女性は、美しい淑女であったがとても芯が強い。
シェラのために作った『愛の夢』も、やさしい曲調と繊細で美しい振り付けが目を引くが、実はその構成は恐ろしく難易度が高い。
男子でも、6種類すべての3回転ジャンプを試合で決められる選手はそうそういない。
そして、演技ひとつひとつの繋ぎも濃いものだ。
ジャンプの直後にスピンやステップが入り、ふわりふわりと空を舞うようにやわらかく動く手足は休むことを知らない。
どの選手でも、演技に緩急をつけようとすれば立ち止まるものだが、マーガレットの振り付けにそんなものはなかった。
強いて言うならば、スピン。
軸がブレず、一定の速度を保ったまま正確な回転を刻むシェラのスピンだからこそ生まれる情緒。
回転の最後ほんの3回ほどで意図的に速度を落とすことによって、リタルダンドすら表現してしまう。
「うん、美しいね」
そして、彼の言葉がシェラを支えていた。
拍手と笑顔でリンクサイドに戻ってくるシェラを迎える壮年の男。
シェラも笑顔で近寄っていく。
「2年目ということもあって、演技にも、気持ちにも余裕がある」
「その分課題がいっぱいです」
そうは言うけれど、シェラの笑顔は晴れやかだ。
大人になってから左利きを右利きに直すのが難しいように、長年かけて身につけてしまった癖を正すというのは苦しいものだ。
そのまま演技を続けていても、世界トップレベルの評価はもらえるだろう。
けれど、そうはしなかった。
その時々で自分に出来る最高の演技をしているけれど、ジャンプでしっくりきていない部分があるのも確かだった。
体型が変わる前は、もっともっと軽々と跳べていたというのに。
そうして、『跳びたい』という思いと『跳ばなければ』という思いが、凝り固まってしまったのだ。
「ルッツのエッジも、去年はほぼフラットだったが、今年はアウトエッジになっている」
「まだちょっと意識しちゃうんですけど・・・」
「大丈夫。そのうち、寝ていてもトリプルルッツが跳べるようになるよ」
茶目っ気たっぷりの言葉に、シェラはくすくすと笑った。
「もうすぐグランプリ初戦だね」
「はい! 楽しみです!」
スケートが大好きで、試合も大好き。
この気持ちは、ずっと変わっていない。
「わたしも、きみの演技が大好きだよ」
そうやさしく微笑んで祝福のキスを贈る。
「おーおー。天下の伯爵様がでろ甘でやんの」
ベンチからそちらを眺めていたレティシアの言葉にも、隣にいる男は眉ひとつ動かさない。
「伯爵からキスされる選手なんて、片手で足りるくらいしか見たことねぇ」
どの選手も、歴史に名を残すほどの名スケーターだった。
「お嬢ちゃんも懐いちゃってまぁ可愛いったら。──どっかの誰かさんとは対照的だ」
「放っておけ」
「そのうち、コーチの座まで取られんじゃねーの?」
「別に、いい」
「──は?」
「あれが飛べるようになるなら、それでいい」
『跳ぶ』のではなく、『飛ぶ』。
ジャンプのことだけでは、決してない。
痛めた翼を癒して、また空高く羽ばたけるように。
レティシアはため息を零した。
「・・・そんなに可愛いなら、何でもっとやさしく」
「俺の仕事じゃない」
「・・・・・・」
頑固者、とちいさく呟いたレティシアに、ヴァンツァーは何も返さなかった。
**********
・・・かっこいいヴァンツァーがいない・・・
本当は、N杯の演技を交えて書きたかったんですが、やはり私の話は書きたいところまで進まない運命らしいですね。そちらはまたおいおい。
昨シーズンは、納得のいく結果ではなかった。
それでも、一からジャンプの修正を初めたその年で既に世界の舞台で表彰台に立つこともあった少女に、周囲のスタッフはむろんのこと、ファンですら驚嘆していた。
けれど、まだ波があるのは事実。
もっと確実なものにしなくては、2年後に迫ったオリンピックでは戦うことが出来ない。
今年シニアに上がってきた大国の選手は、十四、五歳でありながら二十歳前後の選手の技術レベルを身につけている。
少しずつではあるがジャンプの感触を掴んできた、再スタートの2年目。
シェラはもう1年かけて、フリースケーティングの『愛の夢』を完成させたい、と申し出た。
「納得する演技がしたい」
そう告げる少女の瞳の強さに、コーチもサポート陣も頷いた。
少女の言い分ももっともであったし、また、未完のまま終わらせるには、このプログラムはあまりにもったいなかった。
振り付けをしたマーガレットという女性は、美しい淑女であったがとても芯が強い。
シェラのために作った『愛の夢』も、やさしい曲調と繊細で美しい振り付けが目を引くが、実はその構成は恐ろしく難易度が高い。
男子でも、6種類すべての3回転ジャンプを試合で決められる選手はそうそういない。
そして、演技ひとつひとつの繋ぎも濃いものだ。
ジャンプの直後にスピンやステップが入り、ふわりふわりと空を舞うようにやわらかく動く手足は休むことを知らない。
どの選手でも、演技に緩急をつけようとすれば立ち止まるものだが、マーガレットの振り付けにそんなものはなかった。
強いて言うならば、スピン。
軸がブレず、一定の速度を保ったまま正確な回転を刻むシェラのスピンだからこそ生まれる情緒。
回転の最後ほんの3回ほどで意図的に速度を落とすことによって、リタルダンドすら表現してしまう。
「うん、美しいね」
そして、彼の言葉がシェラを支えていた。
拍手と笑顔でリンクサイドに戻ってくるシェラを迎える壮年の男。
シェラも笑顔で近寄っていく。
「2年目ということもあって、演技にも、気持ちにも余裕がある」
「その分課題がいっぱいです」
そうは言うけれど、シェラの笑顔は晴れやかだ。
大人になってから左利きを右利きに直すのが難しいように、長年かけて身につけてしまった癖を正すというのは苦しいものだ。
そのまま演技を続けていても、世界トップレベルの評価はもらえるだろう。
けれど、そうはしなかった。
その時々で自分に出来る最高の演技をしているけれど、ジャンプでしっくりきていない部分があるのも確かだった。
体型が変わる前は、もっともっと軽々と跳べていたというのに。
そうして、『跳びたい』という思いと『跳ばなければ』という思いが、凝り固まってしまったのだ。
「ルッツのエッジも、去年はほぼフラットだったが、今年はアウトエッジになっている」
「まだちょっと意識しちゃうんですけど・・・」
「大丈夫。そのうち、寝ていてもトリプルルッツが跳べるようになるよ」
茶目っ気たっぷりの言葉に、シェラはくすくすと笑った。
「もうすぐグランプリ初戦だね」
「はい! 楽しみです!」
スケートが大好きで、試合も大好き。
この気持ちは、ずっと変わっていない。
「わたしも、きみの演技が大好きだよ」
そうやさしく微笑んで祝福のキスを贈る。
「おーおー。天下の伯爵様がでろ甘でやんの」
ベンチからそちらを眺めていたレティシアの言葉にも、隣にいる男は眉ひとつ動かさない。
「伯爵からキスされる選手なんて、片手で足りるくらいしか見たことねぇ」
どの選手も、歴史に名を残すほどの名スケーターだった。
「お嬢ちゃんも懐いちゃってまぁ可愛いったら。──どっかの誰かさんとは対照的だ」
「放っておけ」
「そのうち、コーチの座まで取られんじゃねーの?」
「別に、いい」
「──は?」
「あれが飛べるようになるなら、それでいい」
『跳ぶ』のではなく、『飛ぶ』。
ジャンプのことだけでは、決してない。
痛めた翼を癒して、また空高く羽ばたけるように。
レティシアはため息を零した。
「・・・そんなに可愛いなら、何でもっとやさしく」
「俺の仕事じゃない」
「・・・・・・」
頑固者、とちいさく呟いたレティシアに、ヴァンツァーは何も返さなかった。
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・・・かっこいいヴァンツァーがいない・・・
本当は、N杯の演技を交えて書きたかったんですが、やはり私の話は書きたいところまで進まない運命らしいですね。そちらはまたおいおい。
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