台風だってさ。台風を理由に、早く帰ろう、そうしよう。

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きゃっきゃ言ってはしゃいでいる双子を見て、その彼氏たちはコーヒー片手に微笑した。
本日は、高校生の夏休み最終日。
キニアンの運転で、清涼な水の流れる川辺へと遊びに来ていた。
ファロット家にも山や川はあるが、自宅では気分が出ない、という双子のために、彼氏たちが動いたのである。
とはいえ、自称・車と相性の悪いライアンは最初からキニアンに運転を任せ、自分は後部座席でソナタといちゃいちゃしていた。
頭に来ないと言えば嘘になるが、まぁ、隣にカノンがいるからいいか、と思う程度には、今日のキニアンは寛大であった。

「・・・やっぱり、可愛いよねぇ～」

小川で戯れる双子を前にほにゃあ、と相好を崩すライアンに、キニアンは「まぁな」とだけ返した。

「アー君。可愛いときは可愛いって言うの。まさか、またお兄ちゃんに『言葉が足りない！』とか激怒されてないでしょうね？」
「・・・・・・善処はしてる」
「んもぅ・・・」

ため息を吐く美女のような美青年に、キニアンは「あんたこそ」と振った。

「おれ？」
「本当に毎日、毎晩、好きだの何だの言ってるのか？」
「うん」

即答が返ってきて、逆に言葉に詰まったキニアンであった。

「だってさ、正直、あんな綺麗な子、二度と出逢えないかも知れないよ？」
「あぁ、骨格？」

よく骨だの筋肉だのにひと目惚れするよな、と呆れた顔になるキニアンに、ライアンはなぜか腹を抱えて爆笑した。

「そんなの、口実に決まってるじゃない」
「──は？！」
「確かに、おれはソナタちゃんの骨格に惚れ込んでるけど、まさかそれだけで声かけないでしょ」
「・・・・・・ちょっと待て」
「うん？」
「・・・あんた、まさか・・・本気でナンパしたのか？」
「うん。大成功」

Yeah！　とブイサインをする金髪碧眼の美人に、キニアンは頭を抱えてしまった。

「・・・ホントかよ・・・」
「ホント、綺麗だよねぇ」

うっとり眺めているのは、ソナタの骨格もそうなのだろうが、きっとあの顔なのだろう。

「・・・結局、顔かよ」
「いや、それもちょっと違う」
「え？」
「もちろん顔だって綺麗なんだけどさ」

今までソナタを見ていた碧眼が、キニアンに向けられる。
いつも笑みを絶やさない瞳が、ほんの少しだけ真剣味を帯びる。

「おれはね、あの空気が好きなんだ」
「・・・空気？」
「そ。あの子の周りは、今時珍しいくらい歪みがないんだ。一緒にいて息苦しくなることがない」

よく分からないのだが、まぁ、確かにあの双子と一緒にいて嫌な思いをしたことはない。
女王様とて、我が儘放題ではあるが、そこが可愛いのだ。

「あの真っ直ぐなまなざしと空気に、ひと目惚れ。あの子の周りだけ、浮き上がって見えたんだ」
「・・・・・・」

その感覚は自分にも覚えがある。
だから、キニアンもカノンに視線を向けた。
気づいたらしいカノンが、笑顔でぶんぶん手を振ってくる。
余程楽しいらしい。
ちいさく笑って、手を振り返してやる。

「・・・確かに。なんだかんだ言って、純粋なんだろうなぁ」

呟くキニアンに、ライアンはぷっ、と吹き出した。
ジロリ、ともともときついまなざしを更にきつくしたキニアンに、ライアンは「ごめん、ごめん」と反省の色なんてまったくない表情で言った。

「でも──おれはアー君も、あっち組だと思うよ？」

『あっち組』が『どっち組』なのかよく分からなかったが、まぁ、何でもいいか、と思って再び双子に目を向けた。
川の中の双子は、太陽にきらきらと反射する水の中で綺麗な笑顔を浮かべていた。


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記念小説書けよ、自分。

いやでも、ライアンは決して天然ではないのです。彼はある意味、ヴァンツァー以上かも知れない（笑）