小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
行ってみよ。
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指示された部屋の扉を開けると、室内は夕日に染め上げられていた。
その窓辺に、華奢なロココ調の丸テーブルと椅子が二脚。
片方の椅子には、すでに先客がいた。
長い脚を組んで座っているその男を視界に入れた瞬間、──身体が震えた。
何をするでもなく、ただ黙って頬杖をつき、ぼんやりと窓の外を眺めている・・・だけ。
けれど、その鋼のような肉体から発される退廃的な雰囲気は一種異様なほどで、シェラは思わず息を呑んだ。
「・・・・・・」
静まり返った室内に喉の鳴る音が響いた気すらする。
その音に気づいたわけでもないだろうが、男がゆっくりと首を巡らせてこちらを向く。
ぞくり、とくるような妍麗な美貌。
逆光で漆黒にも見える紺色の瞳に、涙が溢れそうになる。
唇を噛めば、ゆるり、と口端が三日月型に吊り上げられた。
「始めるか──俺が、退屈で死ぬ前に」
感情の見えない声に、
──・・・あぁ、『ヴァンツァー』だ・・・。
そう、思った。
「──というのに・・・」
額に青筋立てる天使のような美貌に、男はきょとん、とした顔で首を傾げた。
「どうした?」
「どうしたじゃない!! お前は3分もあの姿を保っていられないのか?!」
「あれは、肩が凝るな」
「・・・・・・昔のお前は、常にああだったよ」
「よくあんな疲れる態度が取れるものだ」
「二十年前のお前に言ってやれ・・・」
ぐったりと項垂れるシェラは、現在『定位置』とばかりに、ヴァンツァーの頭を膝に乗せている。
音もなく、動いたことすら分からないうちに間合いに入られた、と思ったら、次の瞬間には長椅子に押し倒されていた。
反撃に出ようと思ったら、『ごろん』とばかりにこの男が横になったのだ。
違う意味で頭が真っ白になった。
──私の青春を返せ。
とか、言ってみたくもなろうというもの。
絶対間違ってない。
「とりあえず、他のやつらが来るまでは休憩だ」
「・・・始めるんじゃなかったのか」
「気が変わった」
「・・・・・・」
そういう、猫みたいに気まぐれなところは相変わらずだな、と思いシェラは苦笑を浮かべた。
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こっちのが筆が進むという魔法。
あぁ、夢と魔法のねずみの海は、今年はハロウィンがあるらしいです。行きたいなぁ・・・。
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