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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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お疲れちゃんなので、ちょこっと癒しを・・・。


**********

──パシュン。

軽い空気の音とともに、ドアが開く。
一歩中に足を踏み入れ、キニアンは思わず目を丸くした。
忙しなく行き来する従業員と、常にその中心で指示を与えている男。
幾つもの音や声が複雑に混じろうと、キニアンの耳は正確にそれを聞き取る。
見たこともないくらい真剣な顔で従業員と話していたかと思えば、手渡された資料片手に商談相手からと思しき電話を受ける。
自宅でシェラや子どもたちに向ける甘い視線とはまったく異なる男の顔に、なんだか知らないがドキドキしたキニアンだった。
そして不思議なことに、これだけ音と声にあふれた空間でも、彼は頭痛を覚えることがなかった。
活気があるのと煩いのは違うのだな、とキニアンは感嘆のため息を零した。
そうして、この場にいることが居た堪れなくなった。
どう考えても場違いだ。
そろり、と入ってきたドアから出て行こうとしたとき。

──あ。

電話を切ったヴァンツァーと、目が合った。
その途端、無表情のままツカツカと歩み寄られ、思わず一歩引いたキニアンだった。

──やば・・・怒られるか・・・?

邪魔だ、と言われたら、さすがに哀しい。
目の前に立つ美貌の男とは、ちょうど目線が合う。

「あ、あの、すいません、俺・・・」

反射的に謝ろうとしたキニアンだったけれど。

──むぎゅ。

「──・・・へ?」

──ぎゅぅぅぅぅぅうう。

「──え、ちょ、ヴァンツァー・・・?」

何で俺抱きしめられてるんだろう? と目をぱちくりさせたキニアンだった。

「・・・アル」
「っ・・・」

その切ないような甘い声で名前を呼ばれた瞬間、かぁぁぁぁぁっ、と赤面してしまった。

──何て声で呼ぶんだ、この人はっ!!

俺が耳弱いの知っててわざとやってるんじゃないだろうな、と。
決して嫌悪のためではない鳥肌を立てている身体をじたばたさせ、どうにか抱きついてきた男を引き離した。

「・・・ヴァンツァー、なん・・・どうしたんですか?」

思わず「何なんですか?」と言いそうになってしまったとしても、誰も彼を責められないだろう。
ヴァンツァーはキニアンの問いかけには答えず、じーっと青年の顔を見つめている。

「え、ヴァンツァー・・・?」

男とはいえ、ここまで破壊力抜群の美形に見つめられるとさすがにドキドキと心臓が煩くなる。
目線は同じはずなのに、何でちょっと上目遣いなんだろう、この人、と。
カノンの小悪魔はシェラ譲りかと思っていたが、もしかすると父親譲りでもあるのかも知れない。

「あの」

──むぎゅ。

──ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・。

また抱きつかれて、思わず困惑の表情を浮かべたキニアンだった。

「・・・落ち着く」
「──ヴァンツァー?」
「癒される・・・」
「・・・・・・」

あぁ、忙しくて疲れているんだな、と思った心やさしい青年は、義理の父親となる男の背中をゆっくりとさすってやった。
ほぅ、と耳元で息をつくのが聞こえて、目元を緩めた。

「家に帰ったら、思う存分シェラに甘えて下さいね」

それまでは俺が代わりをしますから、と告げる青年に。

「・・・最近シェラは冷たいんだ」

と拗ねた口調で返してくるのがなんだか可愛くて、ちいさく笑ってしまった。

「アル・・・」

ほんの少し咎めるような口調だったけれど、きっと怒っていない。

「そんなことないですよ」
「そうか・・・?」
「俺の耳は確かです」

えへん、と自信ありげに胸を反らす青年を見て、ヴァンツァーはくすっと笑った。

「アルがそう言うなら」
「任せて下さい」

最近板についてきた笑顔を浮かべる青年に、ヴァンツァーはもう一度ぎゅっと抱きついた。

その様子を見ていた職員たちの間で、

「シェラでなくてもこれは引くわ・・・」
「・・・ギャップ萌えならぬ、ギャップ引きね・・・」
「そうかな? カノン君が大きくなったみたいで、可愛いと思うけど」
「お前は大物だな」

そんな会話がされているのだった。

**********

きょうの、わんこ・・・とおっさん。
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