小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
カノキニクリスマス裏の後日談的なブツ。
**********
あの日から数日経った夜のこと。
シッサスの酒場に、ヴァンツァーを誘った。
「あの薬、どこで手に入れたんです?」
賑やかな店内ではあったが、若干声を低くして訊ねる。
「まぁ、ちょっとした伝手があってな」
「わざわざ、俺のために?」
これには苦笑したヴァンツァーだった。
「・・・アルは、鈍感なのか鋭いのか、分からないな」
「はい?」
「用意したはいいものの、しばらく使うこともなさそうだったから・・・というのが、本音かな」
これには思わず首を捻った。
「使わない? だってシェラ──まさか・・・」
グラスを取り落としそうになり、慌ててテーブルに置いた。
「・・・ヴァンツァー・・・俺に、『まだ抱いてなかったのか』とか言いましたよね」
「言った」
「・・・それ、自分で言ってて切なくなりませんでした?」
「なった」
「・・・・・・」
思わず頭を抱えてしまった。
まさか、この百戦錬磨っぽい美貌の男性が、意中の女性──便宜上──に手を出していないなんて。
天地がひっくり返った気分だ。
「カノンが俺たちの子だというのは『恐ろしい』ことで、俺たちが夫婦だというのは『世迷言』だそうだ」
「・・・何でそんなに毛嫌いされてるんですか」
「未だかつてないくらい、落とそうという努力はしているんだがな」
一番の難敵だ、とどこか愉しそうな口調で話すのを見て、信じられない気分になった。
「・・・だって、ふたり一緒に暮らしてるじゃないですか」
「あれは半分王妃のところにいる」
「それでも」
「まぁ、失敗があるとすれば・・・第一印象が悪かったかな」
大真面目な様子でそんなことを言う。
「何したんですか」
「襲いかかった」
「──は?!」
思わず大声を上げたが、騒がしい店内ではさして気に留める客もいないようだった。
「な、何してるんですか!」
「別に、手篭めにしようとしたわけじゃない」
「じゃあ何ですか!」
「後腐れがないように、息の根を止めておこうかと」
「・・・ヴァンツァー、結構酔ってるでしょう」
「これくらいでは酔わん」
ひらひらとグラスを振る男の目は確かに正気の色をしていたが、話の内容がどうにも怪しい。
「アルからも、あれに言ってやってくれ」
「・・・何をですか」
「ヴァンツァーはいい人ですよ、お勧め物件ですよ、って」
「・・・それ、俺の口から言われて嬉しいですか?」
「ないよりマシ程度には」
「・・・・・・」
手段は選ばないらしい。
この人の美貌と美声なら、女の十人や二十人、簡単に落とせそうなのに。
そう考えてはっとした。
「ヴァンツァー、まさか・・・」
「うん?」
「過去の女遊びを、全部シェラに知られているとか」
「遊びで女を抱いたことはないな」
「・・・・・・」
何かかっこいいこと言ってる。
ちょっと言ってみたい──はっ、そうじゃない。
「ヴァンツァーはきっとモテるでしょうから、過去の女性関係は清算しておかないと、信用してもらえないかも知れませんよ」
「清算するまでもない」
「え?」
「同じ女と2度寝たことはないからな」
「・・・・・・」
この人、どんな恋愛遍歴してるんだろう・・・。
「だが、『信用してもらえない』というのは、当たっているかも知れんな」
「──ヴァンツァー?」
「外堀を埋めていく作業は嫌いじゃないんだが、結果が見えないのはなぁ」
珍しいことに、だらしなくテーブルに頬杖をついている。
やっぱり見た目より酔っているのかも知れない。
「ヴァンツァー」
「うん?」
「シェラには、何て言って告白したんですか?」
「・・・?」
きょとん、とした顔をされて、こちらがきょとん、としてしまった。
いや、そんな男前の顔にあどけない表情を浮かべられても。
「好きだとか、愛してるとか、結婚してくれとか。何て言ったんです?」
少し考える仕草をしたあと、ヴァンツァーは首を横に振った。
「・・・は?」
「何も」
「・・・よく聴こえませんでした」
「何も言ってない」
「・・・・・・」
「だが、分かるだろう、普通?」
「今までの女性たちにも、そのように?」
「大抵向こうが勝手に熱を上げる」
「・・・まぁ、そうでしょうけども」
あぁ・・・根本的にダメだ、この人・・・。
「・・・分かりました。俺も男です。この前のお礼に、ひと肌脱ぎましょう!」
かくして、恋愛初心者な俺の更に上を行く恋愛音痴な男前と、どうやら『恋愛』そのものを理解していないらしい天使の、恋のキューピッド役をすることになってしまったのだった。
**********
続かない。
やべ。せっかくかっこいいヴァンツァーで終わらせてたのに、どうしてもオチをつけないと気が済まないこの性格をどうにかしたい・・・。
あの日から数日経った夜のこと。
シッサスの酒場に、ヴァンツァーを誘った。
「あの薬、どこで手に入れたんです?」
賑やかな店内ではあったが、若干声を低くして訊ねる。
「まぁ、ちょっとした伝手があってな」
「わざわざ、俺のために?」
これには苦笑したヴァンツァーだった。
「・・・アルは、鈍感なのか鋭いのか、分からないな」
「はい?」
「用意したはいいものの、しばらく使うこともなさそうだったから・・・というのが、本音かな」
これには思わず首を捻った。
「使わない? だってシェラ──まさか・・・」
グラスを取り落としそうになり、慌ててテーブルに置いた。
「・・・ヴァンツァー・・・俺に、『まだ抱いてなかったのか』とか言いましたよね」
「言った」
「・・・それ、自分で言ってて切なくなりませんでした?」
「なった」
「・・・・・・」
思わず頭を抱えてしまった。
まさか、この百戦錬磨っぽい美貌の男性が、意中の女性──便宜上──に手を出していないなんて。
天地がひっくり返った気分だ。
「カノンが俺たちの子だというのは『恐ろしい』ことで、俺たちが夫婦だというのは『世迷言』だそうだ」
「・・・何でそんなに毛嫌いされてるんですか」
「未だかつてないくらい、落とそうという努力はしているんだがな」
一番の難敵だ、とどこか愉しそうな口調で話すのを見て、信じられない気分になった。
「・・・だって、ふたり一緒に暮らしてるじゃないですか」
「あれは半分王妃のところにいる」
「それでも」
「まぁ、失敗があるとすれば・・・第一印象が悪かったかな」
大真面目な様子でそんなことを言う。
「何したんですか」
「襲いかかった」
「──は?!」
思わず大声を上げたが、騒がしい店内ではさして気に留める客もいないようだった。
「な、何してるんですか!」
「別に、手篭めにしようとしたわけじゃない」
「じゃあ何ですか!」
「後腐れがないように、息の根を止めておこうかと」
「・・・ヴァンツァー、結構酔ってるでしょう」
「これくらいでは酔わん」
ひらひらとグラスを振る男の目は確かに正気の色をしていたが、話の内容がどうにも怪しい。
「アルからも、あれに言ってやってくれ」
「・・・何をですか」
「ヴァンツァーはいい人ですよ、お勧め物件ですよ、って」
「・・・それ、俺の口から言われて嬉しいですか?」
「ないよりマシ程度には」
「・・・・・・」
手段は選ばないらしい。
この人の美貌と美声なら、女の十人や二十人、簡単に落とせそうなのに。
そう考えてはっとした。
「ヴァンツァー、まさか・・・」
「うん?」
「過去の女遊びを、全部シェラに知られているとか」
「遊びで女を抱いたことはないな」
「・・・・・・」
何かかっこいいこと言ってる。
ちょっと言ってみたい──はっ、そうじゃない。
「ヴァンツァーはきっとモテるでしょうから、過去の女性関係は清算しておかないと、信用してもらえないかも知れませんよ」
「清算するまでもない」
「え?」
「同じ女と2度寝たことはないからな」
「・・・・・・」
この人、どんな恋愛遍歴してるんだろう・・・。
「だが、『信用してもらえない』というのは、当たっているかも知れんな」
「──ヴァンツァー?」
「外堀を埋めていく作業は嫌いじゃないんだが、結果が見えないのはなぁ」
珍しいことに、だらしなくテーブルに頬杖をついている。
やっぱり見た目より酔っているのかも知れない。
「ヴァンツァー」
「うん?」
「シェラには、何て言って告白したんですか?」
「・・・?」
きょとん、とした顔をされて、こちらがきょとん、としてしまった。
いや、そんな男前の顔にあどけない表情を浮かべられても。
「好きだとか、愛してるとか、結婚してくれとか。何て言ったんです?」
少し考える仕草をしたあと、ヴァンツァーは首を横に振った。
「・・・は?」
「何も」
「・・・よく聴こえませんでした」
「何も言ってない」
「・・・・・・」
「だが、分かるだろう、普通?」
「今までの女性たちにも、そのように?」
「大抵向こうが勝手に熱を上げる」
「・・・まぁ、そうでしょうけども」
あぁ・・・根本的にダメだ、この人・・・。
「・・・分かりました。俺も男です。この前のお礼に、ひと肌脱ぎましょう!」
かくして、恋愛初心者な俺の更に上を行く恋愛音痴な男前と、どうやら『恋愛』そのものを理解していないらしい天使の、恋のキューピッド役をすることになってしまったのだった。
**********
続かない。
やべ。せっかくかっこいいヴァンツァーで終わらせてたのに、どうしてもオチをつけないと気が済まないこの性格をどうにかしたい・・・。
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