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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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病原菌ウイルスだけでなくコンピュータウイルスも大流行している今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
ただでさえくそ忙しい時期に余計な仕事増やしやがって・・・とは思いつつも、スパムメールの類はどんどん巧妙化してきているので、開いて感染した人のサポートをしつつ、自分は開かないよう気を引き締める日々でございます。

久々に外出もなく家にいられるので、小ネタでも書こうかと思います。


**********

「パパ~~~」
「パパ~~~」

リビングのドアを開けてすっ飛んできた銀色の髪の天使たちは、父の向かいに座る女性を目にしてピタッと足を止めた。
色違いの瞳がほわっと見開かれ、にこにこぉっと笑みが浮かぶ。

「「──アンちゃん!!」」
「はぁい、天使ちゃんたち」

ひらひら、と手を振ったビアンカは、ふたりが手に持つ紙に目を落とした。

「ヴァンツァーに用事だったら、どうぞ?」

促されたアリアとリチェルカーレは、「そうだった!」とばかりに顔を見合わせると、それぞれ手にしていた画用紙をふたりに向けた。

「まあ!」

ビアンカは、驚いたように目を瞠った。

「みてみて!」
「すごいの!」

興奮で頬を薔薇色に染めたふたりをそっくりそのまま写したような、愛らしい姿が描かれている。

「アリアとリチェが描いたの?」
「「ううん、フーちゃん!」」

訊ねるビアンカに、アリアとリチェルカーレは畳み掛けるように口を開く。

「フーちゃんすごいの!」
「フーちゃんじょうず!」
「リチェのことかいてくれたの!」
「アリアも!」

見てみて! と差し出された画用紙を手に取り、ビアンカはため息を零した。

「・・・すごいわ」

感動のあまり、それしか口にできない。
鉛筆のやわらかな線からは、何の刺々しさも激しさもなく、ただただ愛しいものに対するやさしさだけが溢れていた。
それだけで、彼自身がどれほど穏やかで繊細な子なのかが分かる。

「素敵ね!」
「「うん!!」」

ビアンカから返された画用紙を、今度は父に渡す。
ヴァンツァーの藍色の瞳も、あたたかい色を浮かべている。

「良かったな」
「「うん!!」」

きゅうっと、ソファに腰掛ける父の脚に抱きついたふたりは、ゴロゴロと喉を鳴らして懐く猫のようで、愛らしさが限界突破している。
抱っこをせがむふたりを嬉しそうに抱き上げ、膝に載せたヴァンツァーに、ビアンカはくすくすと笑顔を向けた。

「アリアとリチェは、パパのことが大好きね」
「「だいすき!」」

画用紙を折らないように気をつけつつ、厚い胸に両側から抱きついてくる愛娘の様子に、ヴァンツァー思わず頬を緩めた。
すりすり~っと額を擦り付けられ、つむじの上にキスを落とす。
ますます嬉しそうにきゃっきゃと声をあげる天使とそれを大事そうに抱える美貌の男の様子は、一幅の絵画と言われても納得してしまうような美しさだ。

「パパのどんなところが好き?」
「「──おかお!!」」

間髪入れず帰ってきた言葉にビアンカは目を丸くし、ヴァンツァーは吹き出した。
間違いなくシェラの子だ、とこっそり思う。

「かっこいい!」
「やさしい!」
「あとつよくて」
「「──やさしい!!」」

ビアンカもちいさく吹き出した。

「・・・アリアとリチェのパパは、とってもやさしいのね」
「「うん!!」」

見ているだけでこちらが幸せになるような笑みを浮かべて頷く様子に、目を細めてまた頭に唇を落とすヴァンツァー。

「あとね、リチェたちをまもってくれてるの!」
「──守って?」
「まいにちいっぱいおしごとして」
「アリアたちがおいしいごはんたべられるのも」
「あったかいおふとんでねられるのも」
「「パパがまもってくれてるの!!」」

ね~、と顔を見合わせる銀色の天使をまじまじと見つめ、ちらっとその上にある男の顔を見たビアンカは苦笑した。

「泣きそうになってるわよ──パパ」
「・・・俺の娘は天使だ」

大真面目な様子でそんなことを言うから、ビアンカは明るい声を上げて笑った。
ひとしきり父親に懐いて満足したらしいアリアとリチェルカーレは、大事そうに画用紙を抱え、「またね~」と手を振ってリビングから出ていった。
こちらも手を振ってふたりを見送ったビアンカは、「素敵な家族ね」と呟いた。

「もちろん、うちだって負けてないけど!」

えへん、と自慢気に胸を反らす様子に、ヴァンツァーは微笑した。

「シェラは、本当にあなたが好きなのね」
「──シェラ?」

なぜ? と首を傾げてテーブルの珈琲に手を伸ばしたヴァンツァーに、ビアンカは呆れてしまった。

「アリアとリチェが言ってたじゃないの」

シェラの話題は一度も出ていないが、とやはり首を傾げるヴァンツァーに、ビアンカは「こういう男だったわ」と嘆息した。

「パパが守ってくれてるって」
「それが?」
「シェラがそう言っているからでしょう」
「──は?」

本気で分かっていないらしく、美貌の男は不思議そうに瞬きしている。

「一般的な家庭では、父親よりも母親の方が子どもと過ごす時間は多いのよ」
「だろうな」
「だから、子どもの父親に対する評価は、言い方悪いけど、ほとんどが母親からの刷り込みよ」
「・・・」
「母親が父親を褒めれば、子どもは自然と父親を慕うようになるわ」

もちろん、あなたも本当に子どもたちを大事にしているんでしょうけど、とビアンカは微笑んだ。

「逆に、母親からボロカスに言われる父親は、子どもたちからも馬鹿にされるのよ」

一理ある、と思ったヴァンツァーだった。

「あなた、あれね」

ビアンカは少し表情を引き締め、じっとヴァンツァーを見つめた。

「他人の心理を掴むのに長けてるように見えて、自分に対する評価はさっぱりね」

自己評価が低いわけではない。
己が世間一般から見ればそれなりに有能であることを、ヴァンツァーは理解していた。

「──ねぇ、シェラ?」

投げかけられた言葉に、シェラは苦笑した。

「・・・何のお話でしょうか?」
「子どもたちといるとき、ヴァンツァーのこと褒めまくってるんでしょう?」
「褒めまくっては・・・」

正当な評価をしているとは思っているが、過剰に褒めたりはしていない。

「事実を伝えているだけですよ。子どもたちは私を慕ってくれていますが、私よりもこの男の方が余程子どもたちを可愛がっていますし、やさしいですから」

かつて、ビアンカがそう評したように。

「冷たく見えて、懐の深い男です」
「今はもう冷たくも見えないわよ」
「そうかも知れませんね」

ふふ、と微笑みを浮かべ、シェラはテーブルに皿を置いた。

「わぁ! あなたの作るりんごのタルト、絶品よね!」

嬉しいわ、と手を打ち合わせる。

「──ヴァンツァーも食べるの?」
「酸味が少し強めのりんごで、これはこいつも好きなんです」
「あら、ごちそうさま」

少し居心地が悪そうにしているヴァンツァーであったが、それからしばらく三人で楽しいティータイムを過ごした。


**********

子どもと食べ物を書かせたら、最強だという自覚は私にもあります(笑)
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