小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
アレ。我ながら、発想が天才よな。
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心臓が、止まるかと思った。
「「──ちち、スパイ! はは、ころしや!」」
にっこりにこにこ太陽のような笑顔を向けてきたアリアとリチェルカーレの言葉に、ザッと血の気が引いた夫婦は素早く視線を交わした。
──まさかお前。
──言うか。
双子の子どもたちはすべてを知っているが、まだ七つにも満たない四つ子には自分たちの過去を話していないシェラとヴァンツァーは、ではなぜ、と眉間に皺を寄せた。
「・・・あーちゃん、りっちゃん・・・ど、どういうことかな?」
頬を引き攣らせつつ訊ねると、色違いの瞳をきらきらさせたふたりは「「まんが!」」と声を揃えた。
「漫画・・・?」
「ランちゃんが貸してくれた漫画だよ」
「ライアンが?」
ロンドの言葉にシェラが瞬きをすると、フーガが単行本を差し出してきた。
「敏腕スパイの男性と凄腕殺し屋の女性と超能力者の女の子が、お互いの素性を知らずに偽装家族になってドタバタするお話・・・かな」
思わず黙り込んだ夫婦は、受け取った漫画と互いの顔をチラチラと見遣る。
──何かどっかで聞いた設定。
いや、自分たちは本物の夫婦だし、子どもたちだって実子だけれど。
「女の子が可愛いんだよ。──あーちゃんとりっちゃんみたいだよね!」
むぎゅっと妹たちを抱きしめるロンドに、夫婦は「ははは・・・」と乾いた笑いを漏らした。
「その子はエスパーだから、養父や養母の本当の姿も知ってるんだけど、まだちいさいから情報が繋がらなくて。登場人物たちが知ってる情報と、ぼくたち読者が知ってることの乖離が面白いと思う」
純粋に物語を楽しんでいるらしいフーガに、ヴァンツァーは苦笑した。
「「だからパパしょうぶ!!」」
「──え?」
何が「だから」なのかさっぱり分からず、ヴァンツァーは藍色の瞳を瞬かせた。
「アリアとリチェと」
「ロンちゃんとフーちゃんと」
「「──しょうぶ!!」」
ずいっと娘たちが差し出してきたのはアクションロッド。
さすがに暗殺術を教えたりはしないが、遊びの一環──をちょっとだいぶ逸脱する程度には子どもたちに体術や剣術を仕込んでいる。
「えー・・・」
珍しく不服そうな声を上げる夫に、内心で「珍しい」と思ったシェラだった。
いつもならば、どんなことでも二つ返事で頷くというのに。
「やってやればいいだろう」
「ではお前がやるか──相手は四人いっぺんだが?」
「・・・・・・」
ジト、と恨みがましい視線を向けてくる夫からそっと視線を逸したシェラは、子どもたちを手招きした。
嬉しそうにシェラの周りに集まった子どもたちをクルッと反転させる。
「みんな良かったねパパが遊んでくれるって!!」
「お」
「「「「きゃあ!!」」」」
ヴァンツァーの抗議の声は、子どもたちの歓声にかき消された。
「・・・プロテクターをつけなさい」
それが条件だ、と言われた子どもたちは、こくこく頷いて子ども部屋へと飛んでいった。
「シェラ」
「何だ」
「文句を言うなよ」
「は? 何がだ」
重い腰を上げたヴァンツァーは、とても真剣な表情で言った。
「──手加減は出来んぞ」
まさかそんな──と笑い飛ばせないほど、静かな表情だった。
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週末に続き書けるかなぁ?
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