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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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去年このブログでも書きましたが、昨日は1月31日、『愛妻の日』です。確か、小悪魔になりたいと騒ぐシェラと、「え、何言ってんの、この子?」なヴァンツァーの話だった気がします。そうそう、たぶん、その頃まだ双子には彼氏がいなかったんだよね。

そんなわけで、今年はせっかくだから月9しようかと思います・・・が、今考えて書いてるので、書き切れなかったらごめんなさい(笑)


**********

異国の街とはいえ、ビルボードのチャートで1位を取るようなアーティストの顔を知らぬものがいるはずもなく。
「別にいいのに」と訴える本人の意思を断固拒否し、シェラは久々の恋人とのデートを楽しんでいた。

──だって、せっかくのデートなのに、騒がれたら嫌だもんね。

隣を歩く長身の恋人は、デニムにパーカーと至ってラフな服装で、帽子とダサい黒縁眼鏡も相まってどこにでもいる大学生のようにしか見えない。
この国へ来てからちょっと性格の変わった恋人は、以前のように自分の容姿を毛嫌いしなくなった。
それは良いことだと思うのだが、あの美貌を晒してのデートでは、人だかりが出来て歩くことすらままならなくなるのだ──実際経験したことがある。

「美味しかったね」
「うん。また行こうね」

そんな風に微笑を交わしていられることが、この上もなく幸せだ。
こんな日が訪れるなんて、別れを決めたあの日から、考えることもなかったのだから。

「──やぁ、彼女! 可愛いねー」

不意に、目の前に立ちはだかった男にそう声をかけられてシェラは目を丸くした。
女に間違えられるのはしょっちゅうだったので気にするだけ馬鹿らしいのだが、隣に男がいるときでも声をかけてくるのは、この国の習慣か何かなのだろうか。
手を繋いで歩いているのだから、恋人どうしだと気づいても良さそうなものなのに。
いや、もしかしたら分かっていてやっているのかも知れない。
軽そうな外見と話し方ではあるが、女の子にはよくモテそうだ、と思える程度には整った顔をしている。

──ヴァンツァーのが1万倍かっこいいけど。

だから、シェラは男を無視してヴァンツァーの手を引き、歩き出した。
経験上、こういうのは取り合わない方がいい。

「あー、ちょっと待ってって。ねぇ、俺とお茶しない?」

ズンズン歩いていくシェラに、シェラの正面に立ったまま後ろの方へ歩いていく、という器用な真似をしてみせる。
正直『ウザいなぁ』と思いはしたが、こういう男の言葉に乗ってしまっては、話が長くなるのだ。

「隣、彼氏?」

──そうだよ、だからどっか行け。

「もったいないよ。きみみたいに可愛い子がさ」

──馬鹿じゃないの、私にもったいないんだっていうの。

「あー、ねぇったら!」

男が立ち止まったので、ぶつかりそうになってシェラも立ち止まった。
ちらり、と隣を見遣るが、帽子で表情がよく見えない。
先ほどまでは口許が楽しそうに笑みを刻んでいたのにそれもないから、あまり機嫌が良くないことだけは分かるのだが。

──まずいなぁ・・・。

ため息を零し、シェラは「退いて下さい」と言ってみた。
退かないだろうことは分かっていたけれど、こういうときの常套句だ。

「あ、口きいてくれた! ねぇ、ねぇ、俺とデートしない?」
「見て分かりませんか? デート中です」

──もぅ! 数少ないオフなのに、邪魔しないでよ!

「えー、俺、これでも結構モテるんだぜ?」

──だからどうした! こっちには億単位のファンがいるんだぞ!!

ぷりぷり怒っていたシェラだったが、隣の恋人の様子が気がかりでならない。
母国にいた頃は『草食系天然王子』路線をひた走っていた男だが、人間環境が変われば変わるものである。
もちろん、どんなヴァンツァーだって好きなのだけれど。

「絶対俺の方がいいって」

同じ台詞を隣の恋人が言ったのを聞いたことがあるが、全然信憑性がない。
ナンパ男だって不細工なわけではないけれど、こちらは眼が肥えまくっているのだ。

「なぁ、──そんなダサい男放っておいてさ!」

さっと血の気が引いたシェラだった。

──あー、馬鹿! それ禁句!!

「──楽しそうなところ悪いんだけど」

場の空気に似合わない、わざと明るく聴こえるように発された声音。

「あ、い、いいよ」

シェラは慌てて恋人の手を引き、歩き出そうとした。
けれど、ハードな仕事をこなすために鍛えられた長身は、ナンパ男を見つめたまま動こうとしない。

──あー、お願いだから!

「・・・何だよ、いたの? 空気みたいに、存在感のないヤツだな」

──こーの馬鹿! 大馬鹿! そんなこと言ったら・・・

「へぇ・・・?」

すっと低くなる声音。
シェラはもう天を仰いで祈りたい気分だった。

「──誰が、存在感ないって?」

「神様」と呟いたシェラの横で、帽子と眼鏡を外す男。
途端にナンパ男が息を呑む。
それはそうだ。
この顔を知らない人間は、この国にはいないのだから。

「久々のオフを、可愛い恋人と楽しんでるんだけど・・・邪魔しないでもらえる?」

にっこりと微笑む超絶美形のアーティストに、ナンパ男は走り去り、周囲にいた人々が遠巻きにざわめき出す。

「・・・何で顔だすの」
「だって、あいつしつこかったから」
「だって、じゃないの。んもぅ、バレちゃったじゃない」
「あぁ、じゃあ」

生来の美貌を曝け出した男は、とても、それはもう、とても、とても魅力的な笑みを浮かべて言った。

「せっかくだから、みんなに俺の恋人は可愛いんだぞ、って自慢しながら歩こうかな」


なんだか、ぐったりしてしまったシェラなのだった。


**********

さ、仕事、仕事。
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