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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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なる設定が、海外発症・・・間違ってないけど・・・発祥で流行っているらしい。日本でも、ウケているらしい。
橘にとって、『オメガ』と言えばFFシリーズ最強の裏ボス(笑)そして、ヴィンセントのカオスと対をなすハイウェポンだったりする。

だから「なんだ、FFの話か」と思っていたが、そうではないらしい。

さて。詳しい設定を書かず、いきなり小ネタいってみようか。あ、ちゃんとヴァンシェラですよ(笑)リーマンものかなぁ?
性質上、義務教育前後の方にはあんまり良くない描写がちらほらあるかも知れません。軽く注意。

そして無駄に長い(^^;)



**********

その日、シェラは朝からとても忙しかった。
朝イチで会議に出席する役員のための資料を揃え、その後はひっきりなしにかかってくる電話の対応、午後までに纏めておきたかったデータもあり、気づいたときには昼休み突入のチャイムが鳴っていた。

──まずい・・・っ!

同僚たちが、何ごとか話しながら食事へ向かう。
その声はどれも楽しげだったが、シェラは舌打ちすらしたい気分だった。
今、端末に入力しているデータは、あと5分もあれば完成するだろう。
しかし、その5分が命取りになる可能性が高い。
平素のシェラであれば、コンプリートさせてから席を立っただろう。
だが、今は──これからの1週間は、常に時計を気にしていなければいけない。
3秒ほど迷ったが、結局彼は出来たところまでで保存をかけ、仕事を諦めた。
発作が始まってしまったら、仕事どころか立ち上がることすら出来なくなる。

──・・・大丈夫・・・まだ、切れていない・・・。

どこか祈るようにそう考え、シェラは鞄を引っ掴んでオフィスを出た。

──早く・・・早く、薬・・・。

考える間に、身体が熱を持ってくる。
視界がぼやけ、思考が霞む。
エレベーターやトイレのような閉鎖空間はまずい、と判断することは出来たが、この日はそれが裏目に出た。
普段ならばまず使われない役員室近くの外階段を使おうと閉じている鉄扉に手を伸ばしたら、その扉が外から開いて心臓が止まりそうになった。

「──なっ」

驚愕の声を上げたシェラだったが、驚いたのは相手も同じらしい。
逆光で黒にも見える青い瞳が、軽く瞠られていた。

「し、失礼いたしました・・・副社長」

早く通り過ぎてくれ、と願いを込めながら、深く頭を下げる。
心臓はドクドクと煽っていて、目の奥は泣きそうに熱い。
それもこれも、目の前にいる男がいけない。

「きみは秘書課の」
「・・・はい」

頭を下げたまま、シェラは出来るだけ低く、短く答えた。
口から出る吐息すら熱くて、それ以上長い台詞を口にしたら甘えた声を漏らしてしまいそうだった。

「具合でも悪いのか?」
「いえ・・・」
「だが、震えて・・・」

早く行ってくれ! とほとんど泣きそうになっているシェラの言葉をどう取ったのか、男はシェラの肩に軽く触れた。

「──やっ!」

電流が流れたような刺激に、シェラは思わず顔を上げてしまった。
視界に飛び込んでくるのは、先ほどと同じように驚きに彩られた端麗な美貌。
艶やかな黒髪、色気すら漂う完璧な造作の白皙、細身ではあるが脆弱ではない長身。
この上もなく仕事は出来るが鉄面皮で知られる辣腕の持ち主。
そこに存在するだけで他者を惹きつけて止まない、絶対王者の風格を持つ──【ALPHA】以外の何ものでもない男。

「──・・・きみは・・・」

その低音の声すらも、今のシェラには強すぎる刺激だ。

「失礼しま──っ!」

無礼は承知で横を通り過ぎようとしたシェラは、手を掴まれ、壁に押し付けられた。

「はなっ──んぅっ!」

叫ぼうとした口は、男のそれに塞がれてしまった。
顎を掴まれ、開けさせられた口内に舌が入り込む。

「んっ! ん、ふぅ・・・っ」

粘膜が触れ合ってしまったら、もうダメだ。
一気に高まった熱は脳までも侵し、身体から力が抜けていく。

──すご・・・きもち、ぃ・・・。

自分から舌を絡め、あまつさえ腰まで押し付けるように長身に縋り付いても、シェラにその自覚はない。
ただ、ふわふわと夢見心地でありながら強烈な快感に全身が支配される。

「・・・そう、煽ってくれるな。ただでさえ、きみの匂いに理性が飛びそうなんだ」

ちゅっ、と音を立てて離れた唇に更に舌を伸ばそうとしたシェラだったけれど、男の指に止められてしまった。
その指すら舐めようとしたら、くすくすと笑われた。
顔を上げたら、溢れた涙でぼんやりとした視界いっぱいに男の美貌があり。

「・・・ほしぃ、の・・・」

覚束ない口調で告げると、頬の涙を拭われた。

「1分待て」
「や・・・」

むずかる子どものように首を振るシェラの銀髪を撫でて宥めると、男はポケットから取り出した携帯でどこかに電話をかけた。
その間もシェラは、甘えるように男の肩口に頭を擦りつけている。

「行くぞ」
「・・・いく?」

電話を終えたらしい男が、シェラの腰を抱いて外階段への扉を開いた。

「急な商談が入った」
「え・・・?」
「──と、いうことになっている」

にやり、と端正な美貌を歪めると、何とも言えない淫靡さが漂う。
ゾクリ、と背筋が震え、身体の奥──本来、男にはあるはずのない器官が疼きだす。
今この場で服を脱ぎ捨てたい衝動に駆られるのをどうやって止めればいいのか、シェラは知らない。

「きみは、【OMEGA】だったのか」

ほとんど抱えられるようにして男の車に乗せられ、気づいたらベッドの上であられもない声を上げていた。
次に気づいたときにはもう夜で、全身酷い有様の自分に、シェラは絶望した。

「・・・わた、し・・・」

こうならないように、【OMEGA】としての性を抑える薬を摂取していた。
【OMEGA】因子を抱える人類は、【ALPHA】や【BETA】に比べて圧倒的に数が少ない。
社会的地位の高いエリート種である【ALPHA】も【BETA】に比べれば少数ではあるが、【OMEGA】よりはずっと多い。
女はもちろん、男であっても、【OMEGA】であれば直腸の奥に子宮と同じ役目を果たす器官があり、妊娠することが出来る。
【OMEGA】の男とは逆に、【ALPHA】の女は男性器に似た器官を持ち、【OMEGA】の男や、その他の女を妊娠させられる。
つまり、どんな因子を抱えた、どんな性別の相手であろうとも子を成せる【OMEGA】は、種の繁栄のため、表向きは大切にされた。
しかし、数ヶ月に一度の発情期を迎えれば性行為以外のほとんどに意識が向かなくなるため、社会的に重要な地位に就くことは難しく、『誰にでも尻尾(腰)を振る犬(淫乱)』と蔑まれていた。
【ALPHA】の両親からなぜ【OMEGA】の自分が生まれたのか・・・シェラはその運命を酷く呪った。
幼い頃から天使ともてはやされ、少々強引で支配欲の強い傾向にある【ALPHA】にしてはやさしげで嫋やかな風貌だと言われてはいたのだが、まさか【OMEGA】であったとは。
けれど両親からの愛情は本物で、思春期──最初の発情期を迎えたときも、腕の良い医者の知人から発情を抑える薬をもらってきてくれたのだ。
そんな両親の愛情に応えるためにも、自分は【OMEGA】の性になど負けず、立派な社会人となるのだ、と心に決めていたのに。

「わた・・・・・・」

横たわったベッドの上でほとほとと泣くシェラの髪を、大きな手が撫でる。
冷淡な人間だと評価され、シェラも職場で目にする限りはその通りの人物だと思っていたのに。
宥めるようなその手は、とてもあたたかくて、両親と同じようにやさしかった。

「すまない・・・初めて、だったんだな」

乱れてはいても、シェラが物慣れない様子であることに男は気づいていた。
頭では分かってはいたが、【OMEGA】が発情期に放出するフェロモンに、【ALPHA】である男は抗えない。
それこそ獣のように【OMEGA】を貪り食うだけ。
【OMEGA】と違い、【ALPHA】はその衝動を薬で抑えることが出来ない。
社会的優位種でありながら、そんな自身の性を厭う【ALPHA】は、実は【OMEGA】以上に多い。
ほとんど引き裂くように抱いてしまったことを、男は詫びた。

「くすり・・・」
「薬? 抑制剤か?」

【OMEGA】の性衝動は、薬である程度抑えることが出来る。
だから、シェラも発情期の前後には決してそれを手放さなかった。
だが、シェラは力なく首を振った。

「・・・ひにん」
「──避妊?」
「・・・避妊薬・・・飲んで、ない・・・」

呟いてまた、涙を零す。
いかなる種と交わっても子を成せる【OMEGA】は、発情期に避妊薬や避妊具なしに性行為をすれば、高確率で妊娠する。
しかも、相手は【ALPHA】。
【ALPHA】の男は【BETA】の男に比べれば普段は性行為に対して淡白で自制がきく方ではあるが、それは相手が同じ【ALPHA】か【BETA】だった場合だ。
【OMEGA】を相手にした【ALPHA】は極度の興奮状態に陥って本能的に相手を妊娠させようとし、精を放つまで相手の中から抜け出ることはない。
この日の男もそうだった。

「どうし・・・わたし・・・」

つい先程まで情欲に紅潮していた顔は恐怖と絶望に青褪めている。
しかも相手は自分が勤める会社の役員。
せっかく【OMEGA】であることを隠して懸命に働いてきたのに、すべて水の泡になってしまった。

「俺の子を産むのは、嫌か?」

枕に額を押し付けて泣いていたシェラは、聞こえてきた声に思わず顔を上げた。

「・・・副社長?」
「ヴァンツァー、だ」
「え・・・」
「きみは気に入らないかも知れないが・・・」

そう苦笑を浮かべた男は、あのやさしい手つきでシェラの頭を撫でた。

「どうやらきみは、俺の『つがい』らしい」
「──つがい・・・?」
「少なくとも俺はそう感じた」
「・・・・・・」
「きみの匂いも、少し弱くなった」

【ALPHA】と【OMEGA】の間にだけ存在する、『つがい』という概念。
一生、その相手だけを愛し、愛されて生きていく、もっとも幸福な関係。
運命のつがいと出会った【ALPHA】や【OMEGA】は、それまでに恋人や伴侶がいたとしても別れてつがいと添い遂げるという。
そして、つがいを見つけた【OMEGA】は、その相手である【ALPHA】以外に発情することはなくなる。
また、つがいである【ALPHA】以外に、【OMEGA】のフェロモンは感じ取れなくなる。

「──あなたが・・・わたしの、つがい・・・?」

トクトクと心臓が鳴る。
それは、【OMEGA】であることが露見するかもしれない恐怖に怯えていたあの廊下のときとはまったく違った。

「私の・・・」
「俺に特定の相手はいない。きみは?」

シェラは半ば反射的に首を振った。

「なら、きみは俺のものだ」
「──っ!」

ふ、と眇められた瞳が猛禽のそれのようで、本能的な恐怖と、それを凌駕する甘い疼きに、シェラは固まってしまった。

「さっきは、手荒に抱いて申し訳なかった」
「・・・・・・」

殊勝なことを言っているが、身動きひとつ取れないでいるシェラに覆い被さるその眼は捕食者のそれだ。
【ALPHA】は、生まれながらの支配者。
それを、まざまざと見せつけられる。

「──そうそう、商談の件だが」
「・・・はい?」

突然何の話だろう、と首を捻ったシェラだった。

「ちょっと長引きそうだから、数日は社に戻れないことになる予定だ」
「──なっ!」
「きみの上司はなかなか物分かりがいい。急いでいるから近くにいたきみを連れていくと言ったら、ふたつ返事で頷いた。俺の秘書を任せられるくらいだから、きみは優秀なんだろうな」
「・・・・・・」

ちゅっ、と額に落とされた口づけは、驚くほどに性を感じさせず。

「さぁ。──今度はゆっくりとしようか」

けれど、ぺろり、とまだ閉じているシェラの唇を舌がなぞった一瞬後には、あらゆる性を惹きつける【OMEGA】ですら敵わないほどの色気を滴らせる。

「言っておくが、『Yes』以外の答えは認めない」
「・・・・・・」

この男のつがいとなることが自分の幸せなのかどうかは分からないシェラだったけれど。
両親を見ているから、他者に対して冷淡だと思われやすい【ALPHA】の態度が、実は傷つきやすい心の裏返しだというのも知っていて。

「──・・・はい、ヴァンツァー・・・」

そうしてこの日初めて、シェラは微笑みを浮かべた。

──このひとが傷つくのは、いや・・・。

そうしてシェラは、それまでとは打って変わって焦れったいほどの愛撫に悶えさせられながらも、どこか心が軽くなるのを感じていた。

──この気持ちが愛情なのかどうかは、これから知っていけばいい。

そう、思った。


**********

なげーわ。

こんだけ書けるのに、なぜ記念小説が上がらない・・・。
『筆が乗る』っていうのは、こういうのを言うんですよ(コラ)
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