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「──貴様！」

その日シェラは、いつものように激昂していた。

「何度言えば分かるんだ！　お前、実は馬鹿なのか？！」

広いリビングに響き渡る声で叫ぶが、背後の──シェラにのしかかるようにして背中を預けてきている男は、素知らぬ顔で手にした本のページを捲っている。
何を読んでいるのか知らないが、聞こえていないなら、更に大きな声を出すまでだ、とシェラは息を吸い込んだ。

「煩い」
「──聞こえてるなら返事くらいしろ！」
「お前は少し声を抑えろ」
「それはお前が──」

背もたれ代わりにされていたシェラが振り返ろうとすると、己の意思よりも速く視界が変わった。

「きゃんきゃん煩いところは、女のようだな」

あまり動かない表情ながら、呆れていることがありありと分かる男の顔を下から見上げ、シェラは怒りに身を震わせた。
引き倒された頭は、ヴァンツァーの脚の上。

──なんだ、この屈辱的な格好は！！

膝枕なんて、冗談じゃない！　と憤ったシェラ。
言われた台詞よりも体勢が問題だと思い、くわっ！　と大きく口を開こうとした。

「本当に、見た目は美しいのに残念な男だな」
「・・・な・・・？」

言われたことの意味が分からず、目をぱちくりさせる。

「お前は昔から、口を開くと台なしになる」
「・・・・・・」

何を言っているのだろうか、この男は。
困惑の極地にあるシェラの頭は、疑問符でいっぱいになってまともな思考が出来ないでいた。

「詩でも口ずさむのが似合いの唇から罵倒しか出てこないというのは、些か問題だと思うぞ？」
「・・・・・・」

本格的に頭が痛くなってきたシェラだった。

「・・・誰が言わせている」
「そんなに感情を表に出していたのでは、行者として務まらんだろう」
「──貴様！！」
「ほら、それだ」

また大声を出そうとしたシェラの口を、大きな手が軽く塞ぐ。
噛み付いてやろうかと思ったシェラだったが、反対の手が額の少し上辺りをポンポンと、まるで宥めるように撫でてきたものだから、怒りも忘れて目を瞠ってしまった。

「そう毛を逆立てずとも、お前とやり合う気はない」
「・・・・・・」
「この世界では、啀み合う理由もなかろう」
「・・・・・・」
「何を憤ることがある」
「私を背もたれにするな」

ヴァンツァーの手をはがしてきっぱりと言い切り、馬鹿かこいつ、と妙に冷静になったシェラだった。
なぜ憤らないと思うのか、まったくもって理解出来ない。
シェラも鍛えてはいるが、筋骨質な成人の男の全体重を預けられれば『重い』と感じる。
それを、何の断りもなく行って来る男の気が知れない──いや、知りたいとも思わないのだが。

「背もたれにすることが問題なのか？」
「当たり前だ」
「分かった。ならばやめよう」

あまりに素直に頷かれて、少々拍子抜けしたシェラだったが、分かったのならそれでいい、と身を起こした。

「──おい！」

すると、それを見越したかのように、ヴァンツァーの頭が膝の上に乗った。

「お前、ほんと馬鹿なのか？！」
「背もたれにはしていない」
「膝枕もダメに決まっている！」
「なぜ？」
「なぜって・・・」

はた、と考えこんでしまったシェラだった。
先ほどは、体重を掛けられて重かった。
重いから邪魔だった。
けれど、今は頭だけ。
さして重さは感じない。
何がダメなのだろう・・・？　と考えそうになって、はっとした。

「そ、その手には乗らない！」

考えたら終わりだ、とばかりに、シェラはヴァンツァーの頭を押しやった。
身を起こした男は、とても不服そうだ。
無表情のくせに不満そうなのが分かるというのもどうかと思うが。

「とにかく、ダメなものはダメ！」
「どこならいいんだ？」
「ど、どこ・・・？」
「背中と膝がダメなら、どこならいいんだ？」

いっそあどけないくらいの様子で首を傾げられ、シェラも一瞬首を捻った。
そして、ぷるぷるっ、と首を振ったのだった。

「ど、どこもダメだ！　立派なソファがあるんだから、そっちでいいじゃないか！」
「今はソファの気分じゃない」
「お前の気分など知るか！　私の意見はどこへ行った！」
「だから、どこならいいんだ、と訊いただろうが」
「・・・それで譲歩したと思うなよ・・・？」

まるで呪詛のような声を出すシェラに、ヴァンツァーは肩をすくめて見せた。
聞き分けのない子どもにするような仕草だった。

──・・・何だろう、このイラッと感。

シェラは久々に、素手で殴るだけでは飽き足りないような気分になってきた。

「お前は、一体なにを考えているんだ」

額に手を当て、深くため息を零したシェラは、次の瞬間ぐいっ、と顎を持ち上げられて瞠目した。
焦点が合わなくなりそうな距離に、深く澄んだ藍色の瞳。
昔のような昏さも、濁りもない、どこか愉しそうな色をした綺麗な目だった。
思わず息を呑んだシェラの唇に、目の前の男の吐息が触れる。

「──お前は・・・何を考えている・・・？」

瞳の奥を覗きこまれる感覚に、シェラは奥歯を噛み締めた。
顎を掴んでいる男にもそれが伝わったのだろうことに、また苛立ちが募る。

「～～～～お前には関係ない！！」

ヴァンツァーの手を振り払ったシェラの顔は、怒りか羞恥か、真っ赤になっている。
そんなシェラの様子を見て、ヴァンツァーは「くっ」、と喉を鳴らして笑った。

「そうか・・・それは残念だな」

ゆったりと形の良い唇に笑みを刻んだ男は、憎らしいくらい美しい顔をしていた。
己の激しい動悸の理由は、この上もないほどの怒りのせいだ、とシェラは自身に言い聞かせた。


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デキてるの？　デキてないの？

こういう、よく分からん焦れったいのが好きです。

かなちゃんの演技が、素晴らしく良かった！　まぁ、シークエンスの２Aがいつものようにシングルになっちゃったり、ループがURになっちゃったり、ちょこちょこ減点はあったけど、全体的にすごく良かったんだよ。カメの振り付け良いよね。カメの振り付けは、激しさと気品が同居してて、見ててドキドキする。それをよく表現してると思いますよ。
あのシークエンスが３回転と２回転のコンビネーションになればなぁ・・・３F-２Tとか。シークエンスはもったいないよ。かなちゃんはアクセル苦手だし、せっかく前半の３回転が綺麗に決まっても、シークエンスじゃ６０％だか７０％の点数しかもらえないんだもの。来季の課題ですね。でも、出来はすごく良かったので、あれで１２３ってこたーねーと思うわけよ。１２６は出ててもいーんじゃねーかと。まぁ、ジャッジの考えることは、ただのファンの私には分かりません。

真央たん！　真央たん！　アクセル認定おめ！！　着氷乱れたけど、回転は認められてるから、来季に繋がりますよ！！　３Aの次に３F-３Loとかどんな鬼構成、と思いましたが、残念ながら３Fで着氷が乱れてループがつけられなかったのですよ。でも、さすが、その後の単独ループの予定のところに２Loをつけてリカバリ。お見事でした。ほかは言うことないです。サルコウなんてモリモリ加点もらってたし、ルッツはeついてますけど、３回転回ってますもの。
最近の真央たんの演技は、転倒って全然見ないのよね。着氷乱れることはあるけど、ジャンプの修正を始めた当初のような転倒がまったくない。すごくね？　どんなに上手い選手でも、結構転倒してると思うんですよ。でも、真央たんは立つんだよなぁ。跳んでいるときに、着氷の姿勢が出来ているからでしょうね。空中での姿勢が綺麗だから、着氷時にエッジがズレたり、無理な方向に傾いたりしていないのではないか、と。こういうのも、ジャンプの修正の成果だと思うんですよ。
前半でジャンプのちょっとしたミスがあったからか、最後のステップなんて全身全霊でしたしね。でも、優雅で美しい。黒鳥の力強さと美しさが、よく出ていたと思います。来季はきっと、もっとすごい高みに到達するのでしょう。３A認定されるようになったから、来季は３－３が認定されると良いですね。２A-３Tはほぼ完璧に跳べるようになってますし、来季はすごいものを魅せてくれそうで楽しみです。

女王様。ノーミスはすごいよね。ジャンプノーミスはとてもすごいことですよ。３Lz-３Tも綺麗でしたしね。とてもすごいことなんですが、１４８点っておかしくね？（笑）男子に換算すると軽く１６０点ですけど、３Aを跳べない選手で１６０点出せる男子っていかほどおられます？　いねーよな（笑）じゃあ、彼女が４回転跳んだのかっつったら、そんなことあるわけねーし。しかも、男子は女子よりもジャンプの要素が１つ多い。
まぁ、技術点も頭おかしいんですが、笑っちゃうのがPCSで。ほぼ９点台ばっかりなんですけど、１０点満点をつけているジャッジも何人かいるわけですよ。で、１０点って、Pちゃんのスキルでもほぼ出ないわけ。出るときもあるけどね。でも、複数のジャッジがつけないから、最低点と最高点が切られる今の採点方式だと、採用されない点数なわけですよ。女王様のスケーティングスキルとPちゃんのそれを比べて、Pちゃんが下ってこたー絶対ないと思うんですよ。そもそも、女王様の演技は、ジャンプの繋ぎもないですからね。そりゃあ、繋ぎがなかったら、単独でジャンプの練習してるときみたいに、綺麗に決まりますよ。真央たんが、全日本の前に３A跳べるようになってても、佐藤先生が「曲の中で跳んでないからダメ」とおっしゃったのは、ジャンプだけ跳べても、曲の流れの中で、繋ぎのステップを入れつつ跳べなければ意味がないからで。ジャンプ跳ぶだけだったら、高難度の３－３だって跳べる選手はいっぱいいますよ。ソトニコワちゃんだって、３Lz-３Lo跳べるはずです。
スピードはすごかった。女王様は昔からスピードはよく出る選手なんだけど、そりゃあ、繋ぎがなかったらスピード出ますよ（笑）漕げばいいんだもん（笑）ステップでスピードが落ちる中でスピードを残しつつ、流れのあるジャンプを跳ばなければいけないから大変なわけで。
あ、あと、女子の上位選手で、２Aを２回入れてる選手はとても少ないです。それも、入れている選手は２A-３Tとセカンドに３回転を持ってきているので、女王様のように２A-２T-２Loのような２回転構成じゃないので、点数としては１点も違わないけど、難易度が桁違いです。五輪の頃は２A-３T跳べてたのに、跳べなくなっちゃったんだね・・・何か哀しいわ・・・。

あぁ、何だかこんなにたくさん書いているとまるで興味があるみたいで嫌なんですけど（笑）んー、繋ぎのないジャンプばかりの技術点で加点１６点稼いで、PCSも９点台・・・女王様の技術点の基礎点って、そんなに高くないんですよ。ジャンプだけ見ると、今回世界選手権に出場した女子選手の中では７～８番目くらい。もちろんトップはダントツで真央たんなんですけど、基礎点が高くないのに最終的に加点でこれってことは、誰も勝てないよなぁ・・・真央たんの今季の構成の演技で、完璧に滑れたら１４０点は出るかも知れない数字だと思うんですよ。でも、３A入れて、３F-３Lo入れて、２A-３T入れて、スピン、ステップオールレベル４でその点数だろうということは、普通の女子選手には出せない点数ということで・・・

あー、もう！　別に１位だったのはいいんだよ。どんな内容だろうと、ノーミスだったんだからな。言いたいことは山ほどあるけど、順位はいい。採点をどうにかしろ。ほんと、女子選手は、よくやる気なくさないよなぁ・・・すごいと思うんですよ。私だったら、アホらしくてとっくに辞めてると思います。高みを目指し続ける本物のアスリートの皆さんは、美しいなぁ・・・。

おっほ、テン君覚醒！　あの４Tはすごいね。加点２．２９ついたんだってさ。でも納得（笑）また、全体的にジャンプが安定してるよね。今季のSB１２８だったのが１７４って、どんな覚醒っぷり（笑）フリップが１つ抜けちゃったのが悔しいなぁ・・・あれが入ってれば優勝だったのに・・・というか、あのFSの演技は普通に優勝に値する素晴らしい演技だったのに・・・さすがカナダ大会。３Aの１本を後半に持ってこられると、もっともっと伸びますね。テン君、テン様になられましたな。五輪もこの調子で伸びていったら、すごいことになりそうですね！

ゆづの演技は、安定していたテン君とは逆に、満身創痍感があって、見ていて泣けてきました。満身創痍のヤグディンの演技を見ているときのような・・・こう、ジャンプも何もかも、決して調子は良くないんだけど、でも持ってるものを全部出しきる！　という気迫が。魂までさらけ出して戦っているかのような情熱が感じられて、そこに感動するんだよなぁ。ちなみに、『お茶の間イタリア語実況』の動画を見たんですが、もう、オカンたちの解説がやさしい、やさしい。ゆづのこと大好きなんだなー。あったかい解説で、解説って、そういうものだよね、と思いながらぼろぼろ泣いてました。あー、ゆづ、すごいよ！　きみは漢だ！　決して満足のいく演技ではなかったと思うけど、スケーティングに費やす余裕や気づいかいを、全部ジャンプに込めたんだろうな。絶対、何が何でも着氷してやる！　という気迫がすごかった。６分間練習では１回もジャンプが決まってなかったというのを聞いて、それでも第１滑走の本番で決めてくれたきみは漢だ！　ありがとう！！　膝、よく治療して下さいね。五輪でもあなたの演技を見たいです。

ジュベがグラディエーターやるというのを聞いて。ほんとヤグディン好きだな、おまい（笑）ヤグディンのグラデはすごかった。でも、今回のジュベのグラディエーターもすごかった。何かね、もう、ただかっこいいんだ。戦ってる男というのは、もうそれだけでかっこいいのさ。順位とか得点とかどうでも良くて。ジャンプが抜けようが回転不足だろうが、ザヤっちゃってようが、感動出来るものは感動出来るんだよね。もう、滑っててくれるだけで嬉しい。ありがとう、ジュベ！　相変わらず身体硬いけど、そんなとこも大好きだよ！（笑）

大輔。悔しかっただろうなぁ。特に今シーズンはジャンプが絶不調で。アクセルなんて、跳んでも跳んでも上手くいかなくて。今回も、FSの前半はとても良かったのよね。冒頭の４回展はURだったけど、３A決まってことが嬉しくて。そこからのスピンやステップもすごく良かったんだけど、やっぱり後半で３A決めたかったよなぁ、と。しかもコンビネーションにしないといけないジャンプだったので、URな上にGOEも－３で、転倒分の－１もあり・・・点数残ってないですからね。しかも、コンビネーション決まったの１つだけ。３つ入れられるコンビネーションなのに、１つしか入らないと、その分点はぐんと低くなるわけで。演技に関しても、珍しく音と合っていないというか、上滑りしているというか。この悔しさは、是非来季にぶつけて下さい！　五輪３枠取ってくれて、ありがとう！！


とりあえず、以上！

女王様。おお、まず３－３跳べたことに驚き（笑）あんだけ身体重そうで漕がないと滑れないのに、よく跳んだな。ただし、本来なら回転不足だけどな。でも、まぁ、回転不足だろうと何だろうと、一線を退いていながら高難度の３－３を跳べる辺り、ちゃんと能力を伸ばしてあげれば、素晴らしい選手になっただろうになぁ。あ、あと、フリップに「e」がついてたことにも驚き。意外とまともに採点されている（笑）意外とね。プロトコル見たけど、ジャンプのGOEマイナスしてるジャッジもいたし。いつもより酷くない採点（笑）SPなのに息切れひどかったけど、FSスタミナもつのかなぁ・・・嫌々滑ってるのに、世界選手権で１－１－１のコンボになっちゃったら可哀想だもんなぁ。FS完走出来るといいね。

あっこちゃん。３－３がものすごい惜しかったんだ。あれがステップアウトしなければ、もっと出来栄え点も貰えてたでしょうに。でも、あっこちゃんの演技は目が死んでないからね。どんなに失敗しても、じっと前を見据えてるところが尊敬出来ます。ジャンプ不調のシーズンだっただけに、ここで決めて欲しかった気持ちは強いですが、でもFSもカメ作の素晴らしいプログラムがあるし、あとはもう、鳥さんになって羽ばたいて下さい。

今大会、女子の上位選手、ほとんどステップレベル４でしてねぇ。プロトコル見て笑ったんですよ。認定が甘いのか、実際すげーのか、ステップはカウント仕切れないから見てて興奮するかどうかが私の判断基準なんだけど（笑）レベル４はすげーわよ。

かなちゃん。あー、かなちゃんのステップは良いね。スケーティングがゴリゴリ言わなくなったら素晴らしく良くなったよね。シニアデビュー当時のあの笑顔全開の演技は１回見たらお腹いっぱいだったんですが、今季のプロは良いねー。私は静かな、雨の降るような音のする音楽が大好きでね。曲で誤魔化せないから、プログラムとスケーティングの勝負になるでしょ。曲がグイグイ引っ張っていくんじゃなくて、演者がプログラムを創りあげないといけない。そういうのが好き。演技後半で３－３も決めたし、フリップの脚だけは直して欲しいけど、他は何も言うことない。美しい。何でこれが１位じゃないのか・・・いや、確かに女王様は３Lz-３Tだけどな？　でも、絶対負けてないと思うんだよ。PCSなんて、もっと高くてもいいと思うんだけどなぁ・・・。FSはカメのタンゴだからね。かっこ良く決めちゃって下さい！

真央たん。おー、もう３Aガンガンいけますね。昔のような力みがなくなって、とてもスムーズな動作で、２Aも３Aも跳び方変わらねーんじゃねーか、っていう。どうしてもタッチフットがあるけど、フリーレッグの処理が綺麗になれば、この前みたいに加点もたくさんもらえるだろうし。認定されるアクセル跳べることがすげーわ。フリップがURなのと、何よりループが１回転なのが痛いですね。ループで５点損してるものねぇ・・・しかも単独３回転の要素が抜けてるから、GOE必ず－３だしね。でも、「あ、やっちゃった！」って顔が可愛かった（笑）しかし、フリップの認定辛いな。あれが認定されないのに、女王様の３－３は認定されるのか・・・分からん。最近スピンがレベル４取れないのは、やはり腰を痛めているのかなぁ・・・相当無理な練習もしているでしょうし、彼女は天才だけど、才能の上に胡座をかかないからな。失敗はあったけど、アクセルは認定されてるし、真央たんが笑ってるからそれでいい！！　点数見て、生ぬるい顔で「ふ～ん」みたいな表情してるのがいいわ（笑）白鳥、楽しみにしてるよーーー！！

コストナーねーさん、かっこいいわ。衣装と選曲がいつも素敵。すげースピードからジャンプ跳ぶから、リンクの狭い今大会はちょっと心配してたんですけどね。結構壁ギリで跳んでたりする。３－３の転倒が悔しいところでしょうけど、ステップは相変わらず素晴らしくていらっしゃる。３－３，認定されていたようですね。やっぱり、認定されるかどうかって大きいのよね。URだと７０％だし、５点以上基礎点のつくループ以上のジャンプでも、URだと取られると２A分の点数しかもらえないですしね。でも、さすがに６６点は高い気がする・・・６２点・・・行っても６４点じゃないでしょうかね？　絶対評価とはいえ、かなちゃんが負ける要素が何ひとつないよ。本人の「え・・・？　は？」って顔がすべてを物語っているよな。FSはミスなく終えられるといいですね！！


はてさて。明日は男子FSで、明後日が女子FS。みなさん、今季の集大成です。持てるものをすべて出しきって素晴らしい演技をして下さい！！　ちょー楽しみにしてる！！

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「ねぇ、アリスぅ」

いつも以上に舌っ足らずな甘えた声に、夕飯の準備をしていた青年はキッチンの入口に目を遣った。
お尻の辺りで手を組んでもじもじしている姿は大変可愛らしいが、ご飯の催促だろうか？　それとも食後のデザートのリクエストだろうか？　と内心で首を傾げる。

「あのね、あのね」
「何ですか？」

ちょこちょこと寄ってきて、つんつん、と袖を引かれる。
これは本格的に、何かお願いごとでもあろうのだろう、と嬉しくもくすぐったい気持ちで穏やかな視線を返せば、カノンは期待に満ちた瞳でキニアンを見つめて言った。

「ぼく、アリスのお嫁さん？」
「──へ？」

シチューの鍋を混ぜる手を止め、きょとん、とした顔になる青年に、カノンはむぅ、と唇を尖らせた。

「お嫁さん？　違うの？」
「え、あ、はい・・・およめさん・・・です・・・？」
「──だよねぇ！！」

肯定の言葉を返すと、カノンは極上の笑みを浮かべて見せた。
まぶしっ、と若干怯んだキニアンだったが、なぜ突然そんなことを言い出したのかが気になった。

「なに、今更──はっ！　もしかして、やっぱり指輪気に入らなかったのか？！」

半年前に渡した指輪は、今もしっかりカノンの左手で輝いている。
渡した当初は風呂に入るときや手を洗うときに外そうかどうしようか迷っていたり、でもなくしたら、と悩んでいたりする姿を微笑ましく思っていたものだが、最近はずっと肌身離さずつけていてくれる。
それがとても嬉しかったのだが、やはり何か思うところがあるのだろうか。

「そんなわけないじゃん。これぼくのだもん」

アリスにだって、返してあげないよーだ！　と言って笑う顔が可愛くて、クラッと眩暈がしたキニアンだった。
最近、ただひたすらにカノンを甘やかしたくて仕方がなく、何だかダメ男街道まっしぐらな気がしてしまう青年だったが、もう、この顔が見られるならそれだけでいい気がする。

「そっかぁ、お嫁さんかぁ・・・ふふふ」

本人が嬉しそうなのは大変喜ばしいことだったが、一体どうしてしまったというのだろうか。

「なに、結婚式でも挙げたくなったの？」

キニアンが何気なくそう告げると、菫色の瞳が真ん丸になった。

「あれ、違った？」
「・・・なんで、そんなこと言うの？」
「なんとなく」

本当に、ただなんとなくそう思っただけなのだけれど、カノンの表情がみるみるうちに曇ってしまった正直焦った青年だった。

──おい！　ちょっと前まで機嫌よく笑ってただろう！

何でだ！！　と狼狽する青年のことなどつゆ知らず、カノンはしょんぼりとした様子で項垂れている。

「・・・ぼく、アリスのお嫁さんだもん・・・」
「あぁ、うん、そうだけど」
「だから、それでいいんだもん」
「・・・・・・」

全然良くないんでしょうが、とため息を零したキニアンは、ちょっと身を屈めてカノンの顔を下から覗き込んだ。

「シンデレラ城がいいですか？」
「──・・・え・・・？」

これ以上は無理だ、というくらい大きく見開かれる瞳。
不安気に揺れるそれを宥めるように、キニアン努めてやさしく微笑んだ。

「他の場所がいい？　でも、好きだろう、ねずみーランド？」
「・・・・・・」

ぱくぱく、と唇を動かしていたカノンがやがて「お・・・お金」と呟くものだから、キニアンは思わず吹き出してしまった。

「んー。確かに、今すぐに、って言われたら厳しいかも」
「・・・・・・」
「半年か、１年か・・・足りない分は、一所懸命働いて貯めますよ」
「ち、ちが・・・」
「え？」
「お、お金、ぼ、ぼく出す！」
「──はい？」
「ぼ、ぼく・・・ちち、貯金、あ、あ、あるからっ！　お、おおお、お金ならあるからっ！！」
「・・・・・・」
「あ、あああ、アリスは、いいの！　何にもしなくて、いいの！　き、気が変わらないでいてくれたら、それでいいの！！」

どうしよう、どうしよう、と額に手を当ててあたふたしているカノンの姿を見て、キニアンはとりあえずコンロの火を止めた。
そして、

「ちょっと落ち着け」

と言って、おもむろにカノンを抱きしめたのだった。
かぁぁぁぁ、と顔を紅くする様子は大層可愛らしかったが、今の発言はいただけない。

「何にもしなくていい、ってことはないだろう？」
「・・・・・・」
「それに、気が変わるって何だ」

ちょっと怒ったような声音に、カノンは恐る恐る顔を上げた。
やはり、いつもよりちょっと険しい表情をしている。
いや、仏頂面──に見える──は割りといつもなのだが、それでもやさしく微笑むことが多くなってきたというのに。

「・・・怒ってる・・・？」
「怒ってないよ。呆れてるけど」
「むぅ・・・」
「むぅ、じゃありません」

尖ったカノンの唇を、片手でむぎゅっと掴んで嗜める。

「俺が嫌だって言うと思ったのか？」
「そういうわけでも・・・ないけど」
「気が変わると思ったんだろう？」
「だって・・・」
「ん？」
「だって、注目浴びるんだよ？　アリス、そういうのあんまり好きじゃないじゃん」
「まぁな」
「ほら」
「でも、お前といたら注目浴びるのなんてしょっちゅうだし」
「──ほえ？」

あどけなく解けた眉間に、そっと唇を寄せる。
また、白い顔が紅くなった。

「俺の『お嫁さん』はとっても美人なので、人が避けて歩くんですよ？」

知ってました？　とからかうような口調で問えば、カノンはぽかん、とした顔になった。
まさか自分の容姿が優れいていることに気づいていないということはないだろうが、「何だ、その顔」と訊いてみたキニアンだった。

「およめさん・・・？」
「違うの？」
「びじん・・・？」
「そうだろ？」
「・・・・・・」

ゆっくりと考えてたらしいが、やがてきらきらと菫色の瞳が輝き出した。

「あ・・・あったりまえじゃん！　ぼくが美人なんて、当然でしょ、シェラと父さんの子なんだから！！」

そんなことを言いつつも、その顔には『もっと褒めて』と書いてある。
思わずくすっと笑ってしまったキニアンだった。

「はいはい。その、俺の美人なお嫁さんは、結婚式を挙げたいんですね？」
「うん！」

素直で大変よろしい。
くすくす笑ったキニアンは、ふわふわの銀髪を撫でてやった。

「いつがいいですか？　ジューン・ブライド？」
「でも、６月は雨が降るよ」
「まぁな」
「夏は暑いし、冬は寒い」
「ぷっ。お前、結構現実的なのな」

頭脳は明晰だけれど、どこか夢見がちな乙女のようなところがあるカノンだと思っていたのに、これは新しい発見だった。

「春は風が強いし、秋がいいかなぁ？」
「俺はいつでもいいですよ」
「えへへ」
「ゆっくり考えような」
「うん！　ねぇ、お腹空いた！！」

あーもー可愛いなぁ、と相好を崩した青年は、「はいはい」と言ってコンロの火を再度熾したのだった。


＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

平和そうでよろしいんじゃないでしょうか。
頑張れ、俺。