小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
メダルやるからさっさと国に帰れ。
世界フィギュア女子SPの感想です。冒頭で分かると思いますが、気分悪くなるかも知れないから、読まない方がいいかも知れませんよ。一応フィギュア小ネタも書きますけどね。
男子は、まぁ、Pチャンやっぱり上手いよね。面白くないし、感動しないし、繰り返し見たいとは思わないんだけど、間違いなく上手いんだよ。彼のスケーティングスキルは世界最高レベルです。彼には技術がある。だから、点数も出過ぎだとは思うけど、出ても「まぁ、完璧っちゃー完璧だったし。4回転ガンガン決めてたし」と思えるんですよ。
けど、女子のあの結果はないわ。しーちゃんがあんなにぶち切れてるの初めて見た(笑)「完璧に滑ったのは安藤選手だけ。キムヨナ選手は試合の感覚が戻っていない。フリーはもっと試合感覚が必要とされる」と、彼女がここまで言うのは珍しいと思うくらいに、顔引きつらせて切れてましたね。そら切れるわ。私も切れた(笑)
男子に関しては、コヅの演技は神だった。4回転決まったこともそうだけど、それ以上に演技全体に覇気があった。あんなに激しいオーラを出して滑る子だったか、と思うくらい強かった。動きも、最初から最後まで大きかったし。テクニカルは98。加点のないエレメンツはありませんでした。4回転なんて、2点以上の加点がついてる。TESはPチャン超えてるからね。だから、ようはPCSだろ。相変わらずのPCS=パトリック・チャン・スコア。操作し放題だからな。
あの演技は、殿やデー輔の無念を晴らす意味もあったんじゃないかな。勝手な想像だけどね。「やったー!」って、あんなに嬉しそうなコヅと佐藤先生夫妻は初めて見たよ。素晴らしい演技をありがとう。あの180は妥当だろ。170を下回るわけがない。もちろんiPodに落としましたよ(笑)
コヅの演技も感動したけど、実は一番どきどきわくわくしたのは、やっぱりデー輔だったな。何かの陰謀か、というビスが外れたアクシデントのあと、よくあれだけ滑った。きっと、一番観客を惹きつけたのは彼だと思う。『道』もそうだったけど、たとえ4回転跳べなくても、ジャンプで転倒しても、そんなの関係ないときっと誰もが思ったと思う。天性のダンサーだからね。あなたは、スケートの神様からも、観客からも、間違いなく愛されている。もちろん私も大好きです。これからの演技も楽しみにしています。
殿・・・殿・・・計算ドリル、頑張ろうね。っていうか、そもそも4回転ジャンパーは失敗したときのことを考えてプログラムを組まないといけない。4Tが失敗して3Tになったときのために、セカンドはループにしたり、2回転にしたりするはずなんだ、普通は。コーチも悪いよな。いや、練習ではそうしていたけど、殿が忘れたっていうのも濃厚だけど・・・。セカンドに3回転つけられても、我慢しなきゃいけないときがあるんだよ、4回転ジャンパーは。
アモディオ君の曲に歌が入っていたのは、やはりわざとだったそうです。観客に、更には日本の皆さんに楽しんで欲しいから、と。コーチもモロだしね。きっと、SP終わって既に誰が勝つかジャッジやISUの間で話しがついているのが分かったから、抗議の意味も込めてそうしたんでしょうね。気持ちは分かる。そういうパフォーマンスは必要だと思うよ。特に、この腐ったジャッジシステム見てるとね。ありがとうと言わせて下さい。
さて、女子。みき様は圧巻だったな。あんなにやわらかい演技も出来るようになったのか、と感動しました。ジャンプもスピンもステップもすべて、素晴らしい演技をありがとう。絶対に65しか出ないなんてことはない。最低でも68。3-3なくても、70行ったっておかしくない演技だったと思う。まぁ、最終グループ第1滑走じゃ、点数出ないけどね。最終滑走者に点数出すために。みき様のフリーの点数を考えると、SPでは上回ってないと絶対表彰台乗れないからね。
かなちゃんは、緊張していたのかちょっと表情硬かったけど、いい演技だったよ。大舞台で3-3決める度胸もあるしね。これからマスゴミの下げとか叩きとかが始まるかも知れないけど、楽しんで滑ることだけは忘れないで欲しいな。これも、60は行かないけど54ってこたーないだろ。
フラットさんの演技、橘はとても好きです。特に今季。彼女のステップには魂がこもっている。見ていると、心が震える演技です。もちろん技術はあるんだけど、それだけじゃないんだよ。私はキニアン並に感性だけで生きているので、難しいことも専門的なことも分からないけど、その演技に心があるかどうかだけは見れば分かる。心のない演技って、見てても気持ち悪いし、2度見たいとは思わない。彼女は時々音痴だけど、でも気持ちは真っ直ぐに伝わってくる。素晴らしい選手です。
マカロワたんも、レオノワたんも、さすが氷とバレエの国の選手、気持ちのいい演技をするよね。ロシアンは、ジュニアを含め、これからどんどん力をつけてくる。ソチが楽しみです。
キーラ姐さんとアリッサたんは、妖精さんだった。可憐だ。女性らしいスケーティングですよね。あぁ、可愛いなぁ、って思う。すごく大事なこと。見ている人に愛されるというのは、理屈じゃないだけに一番難しい。
この辺までは、ジャッジには不満もあるけど、まぁ、割と穏やかに見ていたんですけどね。
真央のアクセルは、決まらないことになっている。完璧に決まったらアンダーローテ。着氷乱れたらダウングレードって事前に決められてるんじゃ、そりゃあ決まらないだろうよ。確かに、スピードはなかったかも知れない。始まる前も、ちょっと表情からしてナーバスだった。でも、60行かない演技でもない。少なくとも、3Loと3F-2Lo、スピンにステップは良かったよ。3Aの両足着氷以外に、何かあったか? 回転も、どんなに悪くてもアンダーローテだろ。コンビネーションジャンプも回転不足だそうですが、ジャッジの頭が回転不足なので、仕方ないですよね。っていうか、真央ちゃん細すぎて・・・4大陸から、ものすごい痩せてる。だからスピートとかパワーがないのかな・・・。
まぁ、男子同様テクニカル天野の評価には何も期待していないが。真央ちゃんが楽しく滑れればそれで文句ないんだけど、やっと戻ってきた笑顔が、また失われてしまうのかな・・・。それが一番怖い。
そもそも、ジャンプ修正1年目で世界選手権の舞台に立っていることが驚異的なんだ。修正出来ず、潰れる選手なんていくらでもいる。しかも、多少着氷乱れるとはいえ、3Aを転倒もせずに跳べる。FSでは6種のトリプルを入れる。苦手と言っているサルコウだって、跳べないわけじゃない。逆に回り過ぎてしまうから苦手なんだよ。だから、わざと入り方を難しくして回り過ぎないようにしている。昔は4Sの練習してたくらいだ。これがどれくらいすごいことか、分からない人間には一生分からないんだろうな。あ、人間じゃないのか。マスゴミと猫以下の蛇ジャッジだもんな。
あー。我ながらひどい言葉遣いだ。ごめんなさい。
とりあえず、女子はひとりを除いて概ね3点~5点は低かった。そのひとりは、少なくとも10点は高かった。なんだろうね。Pチャンは技術があるからまだ納得しようと思えば出来るんだけど。私の眼は間違っているのかな。
何より、あれの何が『ジゼル』なのかを一度聞いてみたい。『ジゼル』を見て『怖い』とか、『寒い』と思ったのは生まれて初めてだ。ウィリーの女王ならともかく、少なくともジゼルじゃない。呪い殺されそうだな、おい。新しい経験をさせてくれてありがとう。よく氷とバレエの国で、あのプログラムを滑れたな。感心する。
さて。これでフィギュア小ネタを書くと、またヴァンツァーが荒れるんだよなぁ・・・なんせ、ぼくが荒れてるからね(笑)
世界フィギュア女子SPの感想です。冒頭で分かると思いますが、気分悪くなるかも知れないから、読まない方がいいかも知れませんよ。一応フィギュア小ネタも書きますけどね。
男子は、まぁ、Pチャンやっぱり上手いよね。面白くないし、感動しないし、繰り返し見たいとは思わないんだけど、間違いなく上手いんだよ。彼のスケーティングスキルは世界最高レベルです。彼には技術がある。だから、点数も出過ぎだとは思うけど、出ても「まぁ、完璧っちゃー完璧だったし。4回転ガンガン決めてたし」と思えるんですよ。
けど、女子のあの結果はないわ。しーちゃんがあんなにぶち切れてるの初めて見た(笑)「完璧に滑ったのは安藤選手だけ。キムヨナ選手は試合の感覚が戻っていない。フリーはもっと試合感覚が必要とされる」と、彼女がここまで言うのは珍しいと思うくらいに、顔引きつらせて切れてましたね。そら切れるわ。私も切れた(笑)
男子に関しては、コヅの演技は神だった。4回転決まったこともそうだけど、それ以上に演技全体に覇気があった。あんなに激しいオーラを出して滑る子だったか、と思うくらい強かった。動きも、最初から最後まで大きかったし。テクニカルは98。加点のないエレメンツはありませんでした。4回転なんて、2点以上の加点がついてる。TESはPチャン超えてるからね。だから、ようはPCSだろ。相変わらずのPCS=パトリック・チャン・スコア。操作し放題だからな。
あの演技は、殿やデー輔の無念を晴らす意味もあったんじゃないかな。勝手な想像だけどね。「やったー!」って、あんなに嬉しそうなコヅと佐藤先生夫妻は初めて見たよ。素晴らしい演技をありがとう。あの180は妥当だろ。170を下回るわけがない。もちろんiPodに落としましたよ(笑)
コヅの演技も感動したけど、実は一番どきどきわくわくしたのは、やっぱりデー輔だったな。何かの陰謀か、というビスが外れたアクシデントのあと、よくあれだけ滑った。きっと、一番観客を惹きつけたのは彼だと思う。『道』もそうだったけど、たとえ4回転跳べなくても、ジャンプで転倒しても、そんなの関係ないときっと誰もが思ったと思う。天性のダンサーだからね。あなたは、スケートの神様からも、観客からも、間違いなく愛されている。もちろん私も大好きです。これからの演技も楽しみにしています。
殿・・・殿・・・計算ドリル、頑張ろうね。っていうか、そもそも4回転ジャンパーは失敗したときのことを考えてプログラムを組まないといけない。4Tが失敗して3Tになったときのために、セカンドはループにしたり、2回転にしたりするはずなんだ、普通は。コーチも悪いよな。いや、練習ではそうしていたけど、殿が忘れたっていうのも濃厚だけど・・・。セカンドに3回転つけられても、我慢しなきゃいけないときがあるんだよ、4回転ジャンパーは。
アモディオ君の曲に歌が入っていたのは、やはりわざとだったそうです。観客に、更には日本の皆さんに楽しんで欲しいから、と。コーチもモロだしね。きっと、SP終わって既に誰が勝つかジャッジやISUの間で話しがついているのが分かったから、抗議の意味も込めてそうしたんでしょうね。気持ちは分かる。そういうパフォーマンスは必要だと思うよ。特に、この腐ったジャッジシステム見てるとね。ありがとうと言わせて下さい。
さて、女子。みき様は圧巻だったな。あんなにやわらかい演技も出来るようになったのか、と感動しました。ジャンプもスピンもステップもすべて、素晴らしい演技をありがとう。絶対に65しか出ないなんてことはない。最低でも68。3-3なくても、70行ったっておかしくない演技だったと思う。まぁ、最終グループ第1滑走じゃ、点数出ないけどね。最終滑走者に点数出すために。みき様のフリーの点数を考えると、SPでは上回ってないと絶対表彰台乗れないからね。
かなちゃんは、緊張していたのかちょっと表情硬かったけど、いい演技だったよ。大舞台で3-3決める度胸もあるしね。これからマスゴミの下げとか叩きとかが始まるかも知れないけど、楽しんで滑ることだけは忘れないで欲しいな。これも、60は行かないけど54ってこたーないだろ。
フラットさんの演技、橘はとても好きです。特に今季。彼女のステップには魂がこもっている。見ていると、心が震える演技です。もちろん技術はあるんだけど、それだけじゃないんだよ。私はキニアン並に感性だけで生きているので、難しいことも専門的なことも分からないけど、その演技に心があるかどうかだけは見れば分かる。心のない演技って、見てても気持ち悪いし、2度見たいとは思わない。彼女は時々音痴だけど、でも気持ちは真っ直ぐに伝わってくる。素晴らしい選手です。
マカロワたんも、レオノワたんも、さすが氷とバレエの国の選手、気持ちのいい演技をするよね。ロシアンは、ジュニアを含め、これからどんどん力をつけてくる。ソチが楽しみです。
キーラ姐さんとアリッサたんは、妖精さんだった。可憐だ。女性らしいスケーティングですよね。あぁ、可愛いなぁ、って思う。すごく大事なこと。見ている人に愛されるというのは、理屈じゃないだけに一番難しい。
この辺までは、ジャッジには不満もあるけど、まぁ、割と穏やかに見ていたんですけどね。
真央のアクセルは、決まらないことになっている。完璧に決まったらアンダーローテ。着氷乱れたらダウングレードって事前に決められてるんじゃ、そりゃあ決まらないだろうよ。確かに、スピードはなかったかも知れない。始まる前も、ちょっと表情からしてナーバスだった。でも、60行かない演技でもない。少なくとも、3Loと3F-2Lo、スピンにステップは良かったよ。3Aの両足着氷以外に、何かあったか? 回転も、どんなに悪くてもアンダーローテだろ。コンビネーションジャンプも回転不足だそうですが、ジャッジの頭が回転不足なので、仕方ないですよね。っていうか、真央ちゃん細すぎて・・・4大陸から、ものすごい痩せてる。だからスピートとかパワーがないのかな・・・。
まぁ、男子同様テクニカル天野の評価には何も期待していないが。真央ちゃんが楽しく滑れればそれで文句ないんだけど、やっと戻ってきた笑顔が、また失われてしまうのかな・・・。それが一番怖い。
そもそも、ジャンプ修正1年目で世界選手権の舞台に立っていることが驚異的なんだ。修正出来ず、潰れる選手なんていくらでもいる。しかも、多少着氷乱れるとはいえ、3Aを転倒もせずに跳べる。FSでは6種のトリプルを入れる。苦手と言っているサルコウだって、跳べないわけじゃない。逆に回り過ぎてしまうから苦手なんだよ。だから、わざと入り方を難しくして回り過ぎないようにしている。昔は4Sの練習してたくらいだ。これがどれくらいすごいことか、分からない人間には一生分からないんだろうな。あ、人間じゃないのか。マスゴミと猫以下の蛇ジャッジだもんな。
あー。我ながらひどい言葉遣いだ。ごめんなさい。
とりあえず、女子はひとりを除いて概ね3点~5点は低かった。そのひとりは、少なくとも10点は高かった。なんだろうね。Pチャンは技術があるからまだ納得しようと思えば出来るんだけど。私の眼は間違っているのかな。
何より、あれの何が『ジゼル』なのかを一度聞いてみたい。『ジゼル』を見て『怖い』とか、『寒い』と思ったのは生まれて初めてだ。ウィリーの女王ならともかく、少なくともジゼルじゃない。呪い殺されそうだな、おい。新しい経験をさせてくれてありがとう。よく氷とバレエの国で、あのプログラムを滑れたな。感心する。
さて。これでフィギュア小ネタを書くと、またヴァンツァーが荒れるんだよなぁ・・・なんせ、ぼくが荒れてるからね(笑)
**********
とても、静かだった。
痛いくらいの静寂。
これなら、怒鳴って物に当たり散らしている方がまだマシだ、とレティシアは内心でため息を零した。
整いすぎて冷たい印象を与える美貌と、無口で無表情なところから、冷静沈着だと思われがちな友人。
彼が実はかなりの激情家だと知っているだけに、出来ればこの空間から逃げ出したいと思うレティシアだった。
しかし、残念ながら滞在先のホテルは同室。
生来賑やかな性格をしているレティシアは、自分の心臓の音まで聞こえてきそうなくらいに重苦しいまでの沈黙は正直苦手だ。
ラウンジに行って酒でも飲めばいいのだが、今、目の前にいる友人から離れるのもちょっと心配だった。
ソファに脚を組んで座っているだけの男がなぜこんなに恐ろしく感じるのか、理由は分かるがそれを話題にしようとは間違っても思わない。
命は惜しい。
「レティー」
部屋に戻ってきて30分。
ようやく破られた沈黙に、レティシアは少し身構えた。
「・・・はいよ」
軽く視線を落としている貴公子然とした美貌に目をやると、ふ、と口許に笑みが刻まれた。
昔、この男が現役スケーターだった頃に時々見た、レティシアの大嫌いな笑い方だった。
「──・・・疲れた」
案の定、そんな台詞が紡がれた。
レティシアは、大仰にため息を吐くと殊更大きな声で言った。
「サンドバッグにでも何でもなってやるから、──自傷だけはやめろよ」
後半は、声を低めて。
琥珀の瞳に茶化すような色はない。
ヴァンツァーは、視線を上げるとゆったりと微笑んだ。
「しないよ」
嘘吐け、とは内心に留めたレティシアだった。
自傷といっても、刃物などで身体を傷つけるわけではない。
ただ、艶のある黒髪が突然金髪になったり、ピアスの数を増やしたり、物に当たって拳を砕きかけたり。
反抗期の子どものようだが、ほんの数年前まで実際にやっていたのだ。
レティシアは、こういう表情をするときのこの男の言葉を、絶対に信用しないようにしていた。
今はまだ、自分に向かって内心を口にしているだけマシなのだ。
「俺が殴ったら、自慢の顔の形が変わるぞ」
くすくすと、何がおかしいのか笑いながらそんなことを言う。
「誰が顔っつったよ。腹だよ腹。決まってんだろ」
「お前の腹なんか殴ったら、俺の手が痛いから嫌だ」
「俺もいてーよ」
「────でもきっと、あいつはもっと痛い」
「・・・・・・」
ふぅ、と軽く息を吐き出すヴァンツァー。
「好きなだけで試合に勝てれば苦労しない。どんなにスケートが好きでも、勝てない選手はいくらでもいる」
「・・・・・・」
「でも、好きだと思う気持ちまで潰す権利は、誰にもないと思うんだ」
「・・・・・・」
また、笑顔が見られなくなるのだろうか。
跳ぶことを怖がって、笑えなくなるのだろうか。
「1年かけて、やっと少し笑うようになったんだがな」
「お前、何だかんだ言ってお嬢ちゃん大好きだよな」
「あぁ、そうだな」
素直に頷かれ、ぎょっとしたレティシアだった。
「あの強さには、憧れる。俺は、逃げたクチだからな」
「ヴァッツ・・・」
「あんなに細い身体で、こんなに苦しい思いをして、何でそこまでしてやるんだって訊いたら、あいつは馬鹿みたいに笑って答えるんだ。──『スケートが好きだから』、と」
「・・・・・・」
「あいつが観客に笑顔を与えたいと思うのと同じように、観客もあいつの笑顔を見たがっている。ただそれだけのことが、どうしてこんなに難しいんだろうな」
「・・・・・・」
何ひとつ、返す言葉がない。
何を言っても空虚なだけだ。
「別に、勝たなくていいんだ。表彰台に乗らなくてもいい。勝ち続けるあいつを見たいわけじゃない」
この男にしては珍しく、弱気とも取れる言葉。
けれど違う。
「だが、笑顔を浮かべているあいつは・・・自分の演技に満足出来たあいつは、必ず表彰台に乗っていなければならない」
「・・・・・・」
「乗らないわけがないんだ。俺は、そう思う」
『思う』とは言いながら、この男は事実しか口にしない。
夢を抱くことも、希望を語ることもしない。
まだ20代の男のそんな態度はひどく哀しいが、だからこそ、彼がそう言うということは、それは現実になるということだ。
「俺も、そう思うよ」
レティシアはそう返した。
「表彰台の、出来れば真ん中に、立たせてやりたい」
そうして、再び沈黙が訪れた。
その沈黙を破ったのは、チャイムの音だった。
顔を見合わせる男ふたり。
立ち上がったのは、レティシアだった。
ドアを開けると、目線の少し下に、予想した顔。
「・・・入っても、いい?」
笑顔を浮かべようとしているが、その頬は強張っていて血色が良くない。
どうぞ、と答えたレティシアの横を通って、シェラは室内に入った。
「何か用か」
「ヴァッツ」
「用、ってほどじゃないんだけど・・・」
座んな、とレティシアはシェラにソファを勧めた。
こくん、と頷いて、シェラはひとり掛けのスツールに腰を下ろした。
レティシアは近くの壁に背中を預けて立っている。
「・・・何か、ひとりでいると余計なことばっかり考えちゃって」
へへ、と笑う少女。
そんなシェラに、ヴァンツァーは言った。
「フリーは棄権しろ」
「──え?」
「おい、ヴァッツ」
「出なくていい」
「・・・どういう、意味?」
余計に表情を強張らせるシェラに、ヴァンツァーは軽く肩をすくめた。
「そのままだ。こんな茶番劇に、出る必要はない」
「茶番・・・」
「そうだろう?」
「でも」
「メッキのメダルが欲しいなら、いくらでもくれてやればいい」
「・・・・・・」
「お前がその茶番に付き合う必要はない」
言って、すっかり冷めた珈琲に手を伸ばす。
シェラは俯き、膝の上で手を握っている。
「なんなら、エキシビの曲でも流すか? 男子みたいに──」
「──出るよ」
ヴァンツァーの言葉を遮るように、シェラははっきりとした口調で言った。
上げられた顔に色はなかったが、それでも菫色の瞳には力があった。
「出る。フリーも、出る」
「やめておけ。お前のアクセルは、2回転の判定しか受けない」
「他のエレメンツもある」
「コンビネーションは回転不足。まともなGOEがつくと思うか?」
「それでも!」
きゅっと唇を噛んだシェラは、睨むようにヴァンツァーを見つめた。
「・・・見に来てくれたお客さんが、たくさんいる。テレビの前にも。その人たちに背中を向けて逃げ出すなんて、絶対しない」
「客だって馬鹿じゃない。むしろ、客の方が分かってるさ」
「逃げないっ!」
澄んだ色の瞳に、涙が浮かぶ。
「・・・絶対、逃げない」
「絶望するだけだ」
「そんなの、今更だ」
苦しい思いなんて、いくらでもしてきた。
結果がついてこないことも、涙を流したことも。
張り裂けるほどに胸を痛めたことも、数えきれない。
「戦わないで逃げ出すなんて、絶対にしない」
負けたくない。
けれど、戦うこともせずに逃げれば、二度とこの場所に戻って来られなくなる。
その資格がなくなる。
「死んでも嫌だ」
きっぱりとそう言い切ったシェラに、レティシアは微苦笑を浮かべた。
こんなに細くて、見た目は天使のように可愛い女の子だというのに、その中身は戦士だ。
大の男ですら迫力負けするような、戦う天使だった。
だが、少なくとも表面上ヴァンツァーの様子は変わらない。
「4大陸から見ても、明らかなパワー不足だ。体重も落ち過ぎている」
「・・・分かってる」
「開催日が変更になった影響が大きい」
「そんなの誰でも一緒だ」
「それ以上に、今のお前は精神的に」
「──分かってる!!」
きっ、とコーチを睨みつけたシェラは、白い頬をひと筋涙で濡らしながら、震える声を抑えて言った。
「それでも・・・私は、負けない」
相変わらずの無表情でシェラの視線を受け止めていたヴァンツァーは、やがて「分かった」と呟いた。
「なら、明日に備えて早く寝ろ」
「・・・はい」
立ち上がり、入り口まで自らシェラを見送る。
「・・・おやすみなさい」
ぺこり、と頭を下げて背を向けるシェラ。
「あぁ、シェラ」
呼び止められ、振り返るシェラ。
「なに────」
一瞬、時が止まる。
「おやすみ」
それだけ言って、ヴァンツァーはドアを閉めた。
呆然と立ち尽くしたシェラは、今何が起きたのか、呼吸すら止めて考えていた。
**********
昨日の夜書き始めましたが、冷静になろう、と2時過ぎに寝ました。
朝起きて書き出したら、涙が止まらなくなった。
どうか、笑顔が見られますように・・・。
とても、静かだった。
痛いくらいの静寂。
これなら、怒鳴って物に当たり散らしている方がまだマシだ、とレティシアは内心でため息を零した。
整いすぎて冷たい印象を与える美貌と、無口で無表情なところから、冷静沈着だと思われがちな友人。
彼が実はかなりの激情家だと知っているだけに、出来ればこの空間から逃げ出したいと思うレティシアだった。
しかし、残念ながら滞在先のホテルは同室。
生来賑やかな性格をしているレティシアは、自分の心臓の音まで聞こえてきそうなくらいに重苦しいまでの沈黙は正直苦手だ。
ラウンジに行って酒でも飲めばいいのだが、今、目の前にいる友人から離れるのもちょっと心配だった。
ソファに脚を組んで座っているだけの男がなぜこんなに恐ろしく感じるのか、理由は分かるがそれを話題にしようとは間違っても思わない。
命は惜しい。
「レティー」
部屋に戻ってきて30分。
ようやく破られた沈黙に、レティシアは少し身構えた。
「・・・はいよ」
軽く視線を落としている貴公子然とした美貌に目をやると、ふ、と口許に笑みが刻まれた。
昔、この男が現役スケーターだった頃に時々見た、レティシアの大嫌いな笑い方だった。
「──・・・疲れた」
案の定、そんな台詞が紡がれた。
レティシアは、大仰にため息を吐くと殊更大きな声で言った。
「サンドバッグにでも何でもなってやるから、──自傷だけはやめろよ」
後半は、声を低めて。
琥珀の瞳に茶化すような色はない。
ヴァンツァーは、視線を上げるとゆったりと微笑んだ。
「しないよ」
嘘吐け、とは内心に留めたレティシアだった。
自傷といっても、刃物などで身体を傷つけるわけではない。
ただ、艶のある黒髪が突然金髪になったり、ピアスの数を増やしたり、物に当たって拳を砕きかけたり。
反抗期の子どものようだが、ほんの数年前まで実際にやっていたのだ。
レティシアは、こういう表情をするときのこの男の言葉を、絶対に信用しないようにしていた。
今はまだ、自分に向かって内心を口にしているだけマシなのだ。
「俺が殴ったら、自慢の顔の形が変わるぞ」
くすくすと、何がおかしいのか笑いながらそんなことを言う。
「誰が顔っつったよ。腹だよ腹。決まってんだろ」
「お前の腹なんか殴ったら、俺の手が痛いから嫌だ」
「俺もいてーよ」
「────でもきっと、あいつはもっと痛い」
「・・・・・・」
ふぅ、と軽く息を吐き出すヴァンツァー。
「好きなだけで試合に勝てれば苦労しない。どんなにスケートが好きでも、勝てない選手はいくらでもいる」
「・・・・・・」
「でも、好きだと思う気持ちまで潰す権利は、誰にもないと思うんだ」
「・・・・・・」
また、笑顔が見られなくなるのだろうか。
跳ぶことを怖がって、笑えなくなるのだろうか。
「1年かけて、やっと少し笑うようになったんだがな」
「お前、何だかんだ言ってお嬢ちゃん大好きだよな」
「あぁ、そうだな」
素直に頷かれ、ぎょっとしたレティシアだった。
「あの強さには、憧れる。俺は、逃げたクチだからな」
「ヴァッツ・・・」
「あんなに細い身体で、こんなに苦しい思いをして、何でそこまでしてやるんだって訊いたら、あいつは馬鹿みたいに笑って答えるんだ。──『スケートが好きだから』、と」
「・・・・・・」
「あいつが観客に笑顔を与えたいと思うのと同じように、観客もあいつの笑顔を見たがっている。ただそれだけのことが、どうしてこんなに難しいんだろうな」
「・・・・・・」
何ひとつ、返す言葉がない。
何を言っても空虚なだけだ。
「別に、勝たなくていいんだ。表彰台に乗らなくてもいい。勝ち続けるあいつを見たいわけじゃない」
この男にしては珍しく、弱気とも取れる言葉。
けれど違う。
「だが、笑顔を浮かべているあいつは・・・自分の演技に満足出来たあいつは、必ず表彰台に乗っていなければならない」
「・・・・・・」
「乗らないわけがないんだ。俺は、そう思う」
『思う』とは言いながら、この男は事実しか口にしない。
夢を抱くことも、希望を語ることもしない。
まだ20代の男のそんな態度はひどく哀しいが、だからこそ、彼がそう言うということは、それは現実になるということだ。
「俺も、そう思うよ」
レティシアはそう返した。
「表彰台の、出来れば真ん中に、立たせてやりたい」
そうして、再び沈黙が訪れた。
その沈黙を破ったのは、チャイムの音だった。
顔を見合わせる男ふたり。
立ち上がったのは、レティシアだった。
ドアを開けると、目線の少し下に、予想した顔。
「・・・入っても、いい?」
笑顔を浮かべようとしているが、その頬は強張っていて血色が良くない。
どうぞ、と答えたレティシアの横を通って、シェラは室内に入った。
「何か用か」
「ヴァッツ」
「用、ってほどじゃないんだけど・・・」
座んな、とレティシアはシェラにソファを勧めた。
こくん、と頷いて、シェラはひとり掛けのスツールに腰を下ろした。
レティシアは近くの壁に背中を預けて立っている。
「・・・何か、ひとりでいると余計なことばっかり考えちゃって」
へへ、と笑う少女。
そんなシェラに、ヴァンツァーは言った。
「フリーは棄権しろ」
「──え?」
「おい、ヴァッツ」
「出なくていい」
「・・・どういう、意味?」
余計に表情を強張らせるシェラに、ヴァンツァーは軽く肩をすくめた。
「そのままだ。こんな茶番劇に、出る必要はない」
「茶番・・・」
「そうだろう?」
「でも」
「メッキのメダルが欲しいなら、いくらでもくれてやればいい」
「・・・・・・」
「お前がその茶番に付き合う必要はない」
言って、すっかり冷めた珈琲に手を伸ばす。
シェラは俯き、膝の上で手を握っている。
「なんなら、エキシビの曲でも流すか? 男子みたいに──」
「──出るよ」
ヴァンツァーの言葉を遮るように、シェラははっきりとした口調で言った。
上げられた顔に色はなかったが、それでも菫色の瞳には力があった。
「出る。フリーも、出る」
「やめておけ。お前のアクセルは、2回転の判定しか受けない」
「他のエレメンツもある」
「コンビネーションは回転不足。まともなGOEがつくと思うか?」
「それでも!」
きゅっと唇を噛んだシェラは、睨むようにヴァンツァーを見つめた。
「・・・見に来てくれたお客さんが、たくさんいる。テレビの前にも。その人たちに背中を向けて逃げ出すなんて、絶対しない」
「客だって馬鹿じゃない。むしろ、客の方が分かってるさ」
「逃げないっ!」
澄んだ色の瞳に、涙が浮かぶ。
「・・・絶対、逃げない」
「絶望するだけだ」
「そんなの、今更だ」
苦しい思いなんて、いくらでもしてきた。
結果がついてこないことも、涙を流したことも。
張り裂けるほどに胸を痛めたことも、数えきれない。
「戦わないで逃げ出すなんて、絶対にしない」
負けたくない。
けれど、戦うこともせずに逃げれば、二度とこの場所に戻って来られなくなる。
その資格がなくなる。
「死んでも嫌だ」
きっぱりとそう言い切ったシェラに、レティシアは微苦笑を浮かべた。
こんなに細くて、見た目は天使のように可愛い女の子だというのに、その中身は戦士だ。
大の男ですら迫力負けするような、戦う天使だった。
だが、少なくとも表面上ヴァンツァーの様子は変わらない。
「4大陸から見ても、明らかなパワー不足だ。体重も落ち過ぎている」
「・・・分かってる」
「開催日が変更になった影響が大きい」
「そんなの誰でも一緒だ」
「それ以上に、今のお前は精神的に」
「──分かってる!!」
きっ、とコーチを睨みつけたシェラは、白い頬をひと筋涙で濡らしながら、震える声を抑えて言った。
「それでも・・・私は、負けない」
相変わらずの無表情でシェラの視線を受け止めていたヴァンツァーは、やがて「分かった」と呟いた。
「なら、明日に備えて早く寝ろ」
「・・・はい」
立ち上がり、入り口まで自らシェラを見送る。
「・・・おやすみなさい」
ぺこり、と頭を下げて背を向けるシェラ。
「あぁ、シェラ」
呼び止められ、振り返るシェラ。
「なに────」
一瞬、時が止まる。
「おやすみ」
それだけ言って、ヴァンツァーはドアを閉めた。
呆然と立ち尽くしたシェラは、今何が起きたのか、呼吸すら止めて考えていた。
**********
昨日の夜書き始めましたが、冷静になろう、と2時過ぎに寝ました。
朝起きて書き出したら、涙が止まらなくなった。
どうか、笑顔が見られますように・・・。
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