小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
フィギュア小ネタ。
だって、あまりにもモロが池面だったから・・・何か悔しい・・・
だって、あまりにもモロが池面だったから・・・何か悔しい・・・
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──きっと、ひと目惚れ、だったんだろう。
筆頭公爵家の嫡男であるモロゾフ少年は、粉雪舞い散る冬のある日、父に連れられて登城しました。
貴族の少年とはいえ、普通は緊張して萎縮してしまうものですが、この少年にそんな懸念は無用です。
黒い瞳にはふてぶてしいまでの余裕の表情が浮かんでいます。
細身の身体を、赤と黒を基調とした仕立ての良い服に包み、一応父の後ろに付き従う形で城内を歩きます。
きつめの顔立ちながら、なかなかの美少年です。
実際、社交界ではご婦人方に結構な人気があります。
しかし彼は、どんなに美人でも女性には興味Nothingです。当たりがちょーキツいです。
・・・何でこんな面倒なこと。
襟元のスカーフを引き抜きたくなっているモロゾフ少年。
彼はこういう堅苦しい格好も場所も、大嫌いなのです。
ぶっちゃけ公爵になるとかならないとか、どうでもいいのです。
それなのに、今朝「喜べ!」とお父様に叩き起こされ、あれよあれよという間に侍女たちに着替えさせられ、気づいたらお城です。
にまにま笑っている父が気持ち悪くて、「何なんですか」と訊ねたら、「お前は、王子のご学友に選ばれたのだ」とのこと。
まぁ、筆頭公爵家ですから、それくらいはよくあることです。
しかし、十二歳の王子の学友に、十六歳の自分が選ばれるというのはどういうことでしょうか。
・・・馬鹿にするにも程がある。
この年頃で四歳の差があるというのでは、まるっきり子どものお守りです。
しかも、モロゾフ少年、態度が大きいなりに学院ではかなりの優等生です。
いくら王子とはいえ、気に入らない人間に頭を下げる気なんてまったくありません。
また、それが許される環境で育ってもきました。
なので、謁見の間ではなく直接王子の私室に通されても「早く帰りたいな」くらいのことしか思っていませんでした。
──王子の姿を、目の当たりにするまでは。
正直なところ、整った顔立ちの子どもではありますが、大国の王子というにはいささか野暮ったさが抜け切らない感があります。
金色の髪に、淡いグリーンにも見える青い瞳の、色白で気弱そうな男の子です。
それというのも、王子は幼い頃から病弱で、日光浴程度しか外に出たことがないのです。
しかし。
「・・・そなた、名は何と申す」
まだ声変わりをしていない、細く硬い声がそう告げました。
整った顔立ちが険しく見えるのは、侮られまいと必死だからでしょうか。
頭ひとつ分は確実にちいさな王子は、背筋を伸ばしてモロゾフ少年を見据えています。
その射抜くような視線に、モロゾフ少年は唇を歪めました。
「失礼ながら、殿下。人に名前を訊くときは、まずご自分から名乗るものでございます」
「──これ、ニコライ!! 王子に何と言う口のききかたを!!」
父親が隣で激怒していても、モロゾフ少年はどこ吹く風、聴いちゃいません。
ひた、と王子を見ています。
睨むようにしてこちらを見つめてくる王子に、モロゾフ少年は「さぁ、どうなんだ」と言わんばかりにゆったりと唇を持ち上げました。
「・・・アレクセイ・・・アレクセイ・ヤグディン」
「ごきげんよう、アレクセイ殿下。わたしはニコライ・モロゾフ」
「ニコライ・・・聖人の名前だな」
「えぇ」
「──似合わん」
病弱な王子にばっさりと言い切られ、モロゾフは器用に片眉を持ち上げました。
「そなた、顔は美しいが、性格は相当に悪そうだ」
「言われたことはありませんね」
「ふん。今更指摘してくれる知己がいないだけであろう」
この言葉に、思わず笑みを浮かべたモロゾフです。
社交界のご婦人方が夢中になる、危険な香りのする笑みです、まさしくジゴロです。
「では、殿下がその『知己』になって下さる、と?」
「どうしても、と言うなら、なってやっても良い」
腰に手をあて、ツン、と顎を逸らす様子に、モロゾフはゆったりと笑みを深めました。
あああ、王子、危険ですお逃げ下さい!!(←私情)
「・・・そなたは、非常に優秀な男だと聞いた。何でも、アカデミーの教授たちが諸手を上げるとか」
ほんの少し上目遣いになって、王子はそう言いました。
臣下とはいえ年上に対して生意気な口をきいてしまった、と後悔しているのでしょうか。
いいんです、そんなこと考えないで、相手はどうせモロゾフなんですから。
「それが?」
ちょっとは否定しなさいよ、あなたホント可愛くないんだから(←私怨)
「・・・ぼ・・・わたしは、王子だからな。強く、賢くあらねばならない」
澄んだ碧眼をモロゾフに向けた王子は言いました。
王子の父である現国王は病床にあり、王子の細い肩には王国の未来が懸かっているのです。
「──アレクセイ・ヤグディンの名の下に命じる。ニコライ、わたしを、高みへ連れて行け」
青白いほどの白皙が、微かな興奮のためか朱に染まっていきます。
可愛い。ひたすら可愛い!!(興奮)
そんな王子に対して──隣にいた父親が仰天したのですが──モロゾフは膝を折りました。
細く白い指先を取り、ご婦人にするようにそっと唇を寄せます。
羨ましい、真剣に羨ましい!!(怨)
「・・・十年」
モロゾフは、王子を見上げて口許に微笑を浮かべました。
「十年後、あなたは並ぶもののない王になっているでしょう」
「・・・そんなにかかるのか」
「学ばねばならないことは山のようにあります。──途中で音を上げたくなるかも知れませんね」
「馬鹿にするな。わたしは世界を治める王となるのだ。弱音など吐くものか」
「──よろしい。ではわたしがあなたを、世界──いえ、有史において最高の王にしてあげましょう」
すっと立ち上がったモロゾフに、王子はこっくりと頷きを返したのです。
「──・・・あの頃は可愛かったのに・・・ちょっと怯えながら、でも強気に見上げてくる目とか、腰にキたもんなぁ」
はぁ、と盛大にため息を吐くのは、ジゴロの面影なんて全然なくなってしまったメタボ気味のモロゾフ公爵です。
「あなたにだけは言われたくありませんね。──昔のあなたは細身の刃のような美少年だったのに」
もったいない、とヤグディン陛下はこれ見よがしに嘆息を返します。
おかーさんも全面的に陛下に賛成です。
「・・・十年で並ぶもののない王にしたはずだ。約束は果たした」
確かにそれはそうですが、その口にききかたが我慢なりません、むきー。
しかし、心のひろ~い陛下は、にっこりと美しく微笑みました。
「えぇ、そうですね。──・・・あなたは、何も知らないわたしに、まず閨での営みを教えてくれました」
「いっ──!!」
そんな風に『高み』へ連れて行けと言ったつもりはないんですがねぇ、と半裸の状態で、乗り上げた男の脇腹をつねり上げてヤグディン様は仰います。
モロゾフ、もんどりうってます、でもマウントポジション取られて身動き取れませんざまぁみろうけけ。
「・・・あぁ、やっぱりだいぶお肉がついてますね・・・」
「・・・三十超えれば、普通だろう、これくらい」
「強く美しいものしか認めないあなたが、よく言いますね」
睥睨されたモロゾフは、バツが悪そうに顔を逸らしました。
陛下、やっぱりにっこりと微笑みます、美しいです。
「──ダイエットして下さい」
「──は?」
「聞こえませんでしたか? 痩せろ、と言ったんですよ」
「・・・別にいいだろうが、そんなもの」
「何ですって?」
パシン、とモロゾフの右頬を手の甲で叩いた陛下、素敵です。
叩かれた頬を押さえたモロゾフ、上に乗っかっている陛下に喰ってかかります。
「俺はそんな暴力的な人間に仕立てた覚えはないぞ!」
「勘違いなさらないで下さいね──これは『躾け』です」
「・・・」
「大事ですよねぇ、躾けって。臣下を正しい道へ導くのも、王の役目です」
「・・・『下僕を調教する』の間違いだろうが・・・」
「何か仰いましたか?」
「・・・いいえ、何も。我が親愛なる皇帝陛下」
「よろしい」
嫣然と微笑むヤグディン様は、それはそれはお美しくて、モロゾフさん「この顔は好きなんだよなぁ」と胸中で呟きました。
本当に、あの野暮ったかった少年が十年後──二十二歳になる頃には、抜群の美貌を誇る美青年に成長したのですから、自分の眼は確かだ、と思うモロゾフさんです。
ヤグディン様はまだ二十代ですが、誰よりも強く、美しい、全世界に君臨する至高の存在なのです。
ちょっと手放せません。
可愛い男の子をつまみ食いするのも大好きなモロゾフさんですが、この皇帝陛下以上の逸材には出逢ったことがありません。
「わたしも、昔のあなたの顔と身体は好きでしたよ」
だから、捨てられたくなかったらダイエットして下さいね、とちいさい頃から家族よりも近くで過ごしてきた男のことなら、何でもお見通しな皇帝陛下なのでした。
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モロゾフさん、25歳の頃のあなたは、本気で池面でした・・・合掌・・・(コラ)
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