小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
そうだ。子ネタで癒されよう・・・そうしよう・・・ぶつぶつ・・・
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「お待たせいたしました。苺パフェでございます」
にっこりと微笑んだウェイトレスが運んできたそれに、カノンは「は~い」と満面の笑みを返した。
そのきらきらとした笑顔にまず当のウェイトレスがパフェを落としそうになり、周囲にいた女性たちもきゃーきゃー騒ぎ、男性たちまでもが「うっ」とくぐもった声を上げたとか上げないとか。
「・・・お前、ほんと甘いの好きだよな」
「うん、好きー」
向かいに座るキニアンは、食後の珈琲片手に、行儀が悪いことは百も承知で頬杖をついた。
菫の瞳をいつにも増して輝かせている美少年は、「いただきます」と言ってから柄の長いスプーンを手にした。
何せ、高さ35cmを誇る巨大パフェだ。
このレストランの名物らしい。
女性が食べている姿はそこかしこで見かけるが、少年とはいえ男が食べている姿はあまり見ない。
「食事もあれだけ食べてたのに・・・別腹ってやつか?」
「ちょっと違う。パフェのために、『別腹』の分を空けておくの」
「・・・・・・」
恐れ入る食欲だ。
まぁ、食べないよりは食べた方がいい。
それに、カノンは何でも美味しそうに食べるから、見ていて気持ちが良い。
「アリスも食べればいいのに」
「厭味か、それは」
甘味が苦手な自分にそんなことを言うとは。
食べられないわけではないけれど、あまり糖分を摂ると頭痛がしてくる、という体質のため、積極的に甘いものを食べようとは思わないのだ。
「ブラックの珈琲だけなんて、かっこつけちゃってさ」
「別にかっこつけてるわけじゃ」
「父さんもそうなんだ。確かに甘いもの苦手だけど、何も『俺の身体は珈琲で出来てるんだ』みたいに珈琲飲まなくても良くない?」
「人それぞれだろう」
「シェラだってそんなに甘いもの食べる方じゃないけど、食後のデザートはちょっとくらい食べるよ」
「だから」
「ソナタは甘いの大好きだし。みんなで食事に行くと大抵ぼくとソナタは大量に」
「──カノン」
調子良く喋っていた少年に、待ったをかける。
きょとん、とした顔で見つめられ、キニアンは軽く嘆息した。
「食べるなら、一生懸命食べてやれよ。それ」
喋りながらじゃ食べた気しないだろう、と言ってくる、座っていてさえ長身だと分かる少年に、カノンは「あぁ」と納得したようだった。
「妬いてるんだ?」
「・・・お前はどういう思考回路をしているんだ」
「だって、ぼくが家族の話ばっかりするからやきもち妬いたんでしょう?」
「違う」
「嘘だぁ」
「・・・いいから食べろよ」
バツが悪そうに顔を背けた少年に、カノンはにっこりと微笑んでスプーンを差し出した。
そこには、丸々とした大きな苺。
ちらり、とそれを見たキニアンは「何だよ」と呟いた。
「あげる」
「・・・いいよ」
「あげる」
「好きなんだろう、苺」
「うん。だからあげる」
「・・・・・・」
言葉の意図を測り兼ねているキニアンに、カノンはにっこりと微笑んだままでこう言った。
「食べないと、ぼくここで裸踊りするけど」
「・・・どんな脅しだそれは」
頭を抱えたキニアンである。
ざわり、と周囲が色めきたっていることに気づかないわけでもあるまいに。
「脅してないよ。『お願い』してるの」
にっこりと可愛らしく微笑む天使の皮を被った女王様に、もちろん白旗を上げるのはいつもキニアンの方だ。
「・・・分かった。食べるよ」
「うん。──はい、あ~ん」
「──は?!」
緑の目を瞠り、寡黙な彼にしては珍しく店内に響き渡るような大声を出した。
慌てて周囲を見渡し、テーブル越しに身を乗り出すようにしてにこにこ機嫌良さそう笑ってスプーンを持っているカノンに小声で告げた。
「──出来るか、そんなこと」
「口開ければいいだけだって」
「自分で」
「裸踊り」
「・・・・・・・・・・・・」
可愛い顔をしていても、カノンはやると言ったらやる男だ。
シェラに似て、かなり頑固な性格をしている。
それを知っているだけに、キニアンは非常に迷い、迷いに迷って、──結局最終的には折れたのだ。
「最初から大人しく口開けてればいいのに」
「・・・うるさい」
「はい、あ~ん」
「・・・・・・」
俯くようにして口を開けた少年に苺を食べさせてやりながら、彼の整った顔をじっと見つめるカノン。
「・・・何だよ」
思い切り顔を顰める少年に、カノンはやはり天使のように可愛らしい微笑を向けた。
「アリスが苺みたいだ」
「・・・もう、お前、ほんと黙れ・・・」
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平和だ。そうそう。こういうのがイイんだよ。頑張れ、私。
しかし、いつまで経っても『ツン』にならん・・・
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