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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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誰もいないのでお昼寝の時間に充てたいと思います(コラ)

ウィルス○スター入れてると、CPUがQuadだろうと、メモリが4GBだろうと、まったく関係なく重いのよね・・・このスペックでこれじゃあ、他の人は仕事にならないだろうなぁ・・・。

30日の休みは何しようかなー。


**********

「──あなたはどうして、シェラの情緒面のケアをしないんだ?!」

足音も高らかに部屋に入ってきた男が、憤慨した様子で声を荒げる。
けれど、怒鳴りつけられた方は涼しい顔を崩さない。
それどころか、「何の話だ」と手元の資料に目を戻してしまった。
まったく興味がなさそうなその態度に、男──ダンは顔を真っ赤にして机に手を叩きつけた。

「メディアが何と言っているか知っているのか?! 『シェラの演技は幼稚で稚拙。技術はあるが、表現力に乏しく芸術点が出ない』。それなのにあなたは、来る日も来る日も技術面の向上ばかりに目をやって、演技全体の出来栄えや芸術面には触れようともしない!」

ほとんどひと息にそこまで言い切った男に、ヴァンツァーは『それが?』という顔を向けた。
普段はつとめて温厚であると自他ともに認める男の顔が、鬼の形相になる。

「──あなたは、シェラを勝たせようという気があるのか?!」
「頭は元気か?」

しれっとした顔でそんなことを言われ、ダンは頭の血管が切れるのではないかと思った。

「俺が勝たせるわけじゃない。やるのはあいつだ」
「あなたはシェラのコーチだ」
「『俺の言う通り滑っていれば勝てる』なんて保証があるなら、オーロン辺りが喜んで金を積むぞ」
「・・・・・・」

痛烈な皮肉だったが、ダンの腹の虫はおさまらない様子だ。

「・・・シェラは、まだ19歳だ。結果が出ず、周囲からの期待に押しつぶされそうになっている」
「それで?」
「技術ばかり磨いても、今の採点方式では何の意味もない。どんなに難しいジャンプを跳んでも、加点とプログラムコンポーネンツで簡単に覆されてしまうんだ」
「だから?」
「──っ、あなたは、どうしてそう平然としていられるんだ! コーチとしてのプライドはないのか?!」

この言葉に、ヴァンツァーは低く笑った。
嘲笑うような、冷笑だった。

「プロとアマチュアの違いが分かるか?」
「・・・なに?」
「この2者には、ひとつだけ決定的に違うものがある」

何で今そんな話に、という顔になったダンではあったが、ぶっきらぼうな調子で「さぁ」と呟いた。

「・・・表現の幅が広がることか? それを職業としている、とか」
「前者は、ルールの有無。たかが外的要因だ。後者は問題外だな」
「・・・・・・じゃあ、何だ」

苛々と爪先で床を叩きながら、ダンは面倒くさそうに訊ねた。

「──『再現性』だ」
「・・・なに?」
「同じものを繰り返し客に見せることが出来るか。違いはそれだけだ」
「・・・何が言いたい」
「金を稼ぐなら、アマチュアでも出来る。競技大会でも高額の賞金が出るし、広告で稼ぐ選手もいる。プロとアマの間に、金銭は介入しない。確かにアマチュアはルールに縛られるが、それは試合だからだ。エキシビションでは歌の入った曲や道具を使うことも許されている」
「・・・・・・」
「知っていると思うが、連盟への登録を削除すれば『アマチュアではなくなる』。その状態で客を呼んで演技をすれば、それはプロなのだろう。だが、ジャンプのたびに転倒して、ステップは踏み外し、音と動きはバラバラなスケーターの演技を、高い金を払ってまで見たいと思うか?」

ダンは困惑の表情になって黙って耳を傾けていた。

「自分を『プロ』だ、その道の玄人だ、と言い張るなら、ジャンプは決めて当たり前。スピンもステップも、高レヴェルを維持して当然。その上で芸術性を求められ、なおかつ、『どの客にも同じ演技を見せなければならない』。その、意識の高さだ」
「・・・・・・」
「アマチュアでも、それだけの意識の高さで試合に臨んでいる選手を何人か知っている。高得点が出ても、自分の演技に納得がいかなければ『今の点数は出過ぎだった』と口に出来る、そういう選手だ」

ダンも、そういった選手がいることは知っている。
もちろんどの選手だって真剣に試合に臨んでいるし、最高の演技を見せようと努力している。
それでも、体調やそのときのメンタルの影響で、どうしても演技に波が出てしまうものだ。

「いかに理想とする演技を、常に、同じ水準で維持出来るか。それは、最終的には何があっても崩れない演技とメンタルの強さに繋がる」

はっとしたダンだ。

「確かに、競技に出ているのはアマチュアだ。だが、その道を極めるものとして、プロの矜持を持たなければリンクに立つ資格はない」
「・・・だが、シェラはまだ」
「年齢は関係ない。むしろ、出来るだけ早いうちから叩き込む必要がある」
「・・・そこまで考えて」

いっそ感動しそうになったダンである。
この無愛想で口が悪く、普段は言葉を省くだけ省いて勝手に納得しているような男は、実は誰よりもフィギュアというものや観客に対して真摯なのではないか、と思い始めていた。
競技だから点数は出る。
だが、彼がどんなにメディアや他のフィギュア関係者に叩かれても己の考え、己の指導を変えようとしないのは、時代やルールに流されない、普遍的な価値のある選手とプログラムを作り、育てたいからなのではないか、と。

「それに」

ヴァンツァーは珍しく、くすり、と笑みを零した。

「あの馬鹿は、難易度を上げることに同意はしても、下げることには頑として頷かない」
「・・・それは、まぁ」
「『まだパーフェクトに滑っていない』という台詞を、何度も聞いたと思うが?」
「・・・・・・」
「あいつにとっては、与えられた要素を完璧にこなして、初めてスタートに立ったことになるんだ」
「だが、演技の質は」
「ピカソの絵を見て『幼稚園児が描いたようだ』と言うヤツはいても、幼稚園児の絵に億単位の金を出すヤツはいないだろう? 技術のない芸術家などいない。技術という土台があるからこそ、どんなに表現の幅を広げても、芯はブレることなく見るものの心を打つんだ。技術は感性を裏付ける道具でしかない。だが、感性だけが鋭くても、それを表現する術がないのでは宝の持ち腐れだ」

ダンはゆっくりと頷いた。

「・・・あなたを、誤解していたようだ。すまない」
「別に、誤解してもらったままでも構わんが?」

俺の仕事は変わらん、と表情ひとつ動かすことなく告げる青年に、ダンは初めて笑みを向けた。

「いや、これからもよろしく頼む。シェラの演技は人に元気を勇気を与える。そのシェラ自身が、少し元気がないようだったからピリピリしてしまって・・・きついことを言った」
「気にしていない」
「じゃあ、また」
「あぁ」

ダンが出て行くと、ヴァンツァーは深くため息を零した。
そうして、机の影、自分の足元でくすくすと笑っている少女に視線を落とした。

「・・・お前、あんな暑苦しいヤツらと付き合ってきたのか?」
「ダンは、真面目~なの。すごくいい人だよ?」
「人が好いのは分かるが、何だってあんな『怒るのも全力投球です』みたいな・・・」
「あはは。そりゃあ、ヴァンツァーが無愛想なのがいけないよ」
「俺のせいか」
「そりゃそうだよ。もったいないなぁ~、っていつも思ってる」
「もったいない?」
「うん。顔綺麗なのに、口悪いし、笑わないし」
「悪かったな」
「うん」

にこにこ笑って大きく頷いたシェラに、またため息を零す。

「──でも、誰よりもスケートが好きなの、知ってるよ」
「・・・・・・」

へへっ、とはにかんだように笑う少女に、特大のため息を零して、「そりゃどうも」と返した。



**********

ん~、シェラ可愛い(笑)
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