小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
お馬鹿な場面が頭の中でぐるぐるしています。
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その日、ソナタは数日間は夢に出て来そうなほど、衝撃的な場面を目撃した。
「──・・・なに、これ・・・」
唖然として立ち尽くした少女は、自宅のリビングのソファにあり得ない光景が広がっているのに驚愕を隠せない。
たとえば、シェラが洗濯物を取り込んだまま畳まずに放っておいたとしても、ここまでの衝撃は受けなかったに違いない。
また、泥棒でも入ったのか、というくらいに部屋の中がしっちゃかめっちゃかだったとしても、こんなに驚かなかっただろう。
「・・・なにしてるの・・・?」
震える身体を懸命に抑え込み消え入りそうな声で呟くと、ちょうどソナタから見て真っ正面に座っている美貌の男がちいさく微笑んだ。
「──抱っこ」
その妖艶なまでの美貌の主からまさか『抱っこ』なる単語が出てこようとは、誰が想像できただろう。
ソナタは思い切り頭を抱えた。
「・・・それは見れば分かるけど」
「昼過ぎから、ずっとこうなんだ」
「・・・まさか」
「俺もそう思う」
男の膝の上には、天使のような寝顔を晒している長い銀髪の主。
男の胸に頭を預けて眠る様子は、安心しきっている。
まるで、何があってもこの腕の中にいれば大丈夫だ、と絶対の守護を得たように。
「まぁ、年に1度あるかないかの、デレ期ってやつかな」
「・・・眠いだけなんじゃないの?」
「デレ期だと思うことにした」
「・・・・・・」
大真面目な顔でそんなことを言う父が、何だか気の毒になったソナタだった。
「・・・で、そっちは?」
腕組みをして視線を向けると、これまたハンサムな青年がヴァンツァーたちの向かいのソファに腰掛けており、その膝の上にも同じく銀髪の天使が眠っていた。
しかし、こちらはヴァンツァーとは違ってどうしたらいいのか分からず赤い顔であたふたしている。
「なんか・・・シェラさんが寝てるの見たら、『ぼくも』とか言って・・・」
「はぁん。そっちもデレ期なわけね」
「いや、こっちこそ、眠いだけなんだと思うぞ。最近忙しかったみたいだし」
「相変わらず空気読めないのね」
「・・・お前、さらっと酷いこと言うよな」
ため息を零したものの、キニアンは腕の中の天使が目覚めないように身じろぎひとつしようとしない。
それでも、すやすやと眠る美貌を見つめる若葉色の瞳はやさしく、口許には珍しく笑みが浮かんでいる。
意識していないに違いない元・クラスメイトの姿に、ソナタは内心で嘆息した。
「シェラに用事だったか?」
「ううん。ライアンが制作に入って構ってもらえないから、シェラで遊びに来たんだけど・・・」
『と』ではないことに、誰もツッコミを入れようとしない。
暗黙の了解というか、皆がそう思っているのだろう。
ソナタはよく寝ているふたりを交互に見遣って苦笑した。
「わたしも、あとでぎゅーってしてもらおう、っと」
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平和って、いいよね・・・(しみじみ)
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