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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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声優の林原さんが、「歌うことは私の天命」と言っていた。自分を歌を聞いて元気になる人がいるなら、歌い続けるのだ、と。

じゃあ、今私がこうして物書きしてるのも、天命かなぁ、と。そんなアリガタイものを書いているつもりはないけれど、最近頭で書かなくなってきたなー、と思います。そこに、何か形はよく分からないけどほんわかした、あったかいものがあるんだよ、というのを感じ取ってもらえていたら、嬉しいな。

たとえば、シェラが楽しそうに料理をしていたり、双子がふりふりエプロンつけたシェラ見て「「萌え~」」とか叫んでたり、それ見てヴァンツァーがくすっと口許を綻ばせたり。そういう、何気ないのがいいんだ。特別な事件なんて起こる必要はなくて、毎日がきらきらした特別な日なんだ、って思えたら、素敵だよね。
そんな中に双子の彼氏たちがやってきて、お互いの服を取り替えっこして遊んでる双子を見つけたり。ワンピース着て髪にきらきらのピンつけて、唇にグロスなカノンが上目遣いで「変?」って訊くと、キニアンが「大丈夫だ、問題ない!」(使ってみたかった)って鼻血を堪える風景とか。男装の麗人なソナタが、「シェラの真似っこ」とか言って「ふっへへ」(使ってみry)って笑ったりするのを見て「なぁんだ、おれじゃないんだ。でも可愛い」とか言って抱きしめてみたり。

ほら、これだけでもう幸せ(笑)

**********

グランプリ・シリーズ2戦目は、5位だった。
だが、1戦目より12点も得点は上がったし、順位も上げた。
何より、入るジャンプが増えた。
跳ぶことは出来てきている。
あとは、本当にほんの少しの気持ちの問題。
タイミングを掴めるかどうかだけなのだ。
もちろん、そこが難しいところではあるのだけれど、今回のジャンプの修正は10回跳べば10回とも違う跳び方をしていたものを、同じように跳べるようにしているのだから、それが何より重要だった。
違う跳び方をするから、ほんの少しタイミングが合わないと途端に跳べなくなってしまう。
自分の中でもしっくりこない。
シェラのように回転の速さで跳ぶスケーターは、そうであることが多い。
自分の中で「これだ」という跳び方が掴めれば、昨季のアクセルのようにほとんど百発百中にすることが出来るはずだ。

「どうしてかしら。シェラの演技を観ていると、涙が出てくるの」

ラティーナは、隣にいる夫にそう告げた。
夫婦で応援に駆けつけた会場では、エキシビションが行われている。
芸術の国は、リンクを囲う広告ですら、青一色で構成するこだわりよう。
今は氷も青い照明で染められ、ゼラを入れない生のピンスポットで選手を浮かび上がらせる。
美しい会場で、夢のように美しいスケーティングを見せるシェラは、純白の衣装に身を包んでいる。
2アクセルはさすがの美しさだが、回転が抜けてしまうジャンプもある。
それでも、こんなにも心が震える。
それは、彼女がひとつひとつの動きをとても大切にし、指先まで美しい所作を見せているからだ。
優雅だけれど、決して簡単なプログラムではない。
難しいプログラムを優雅に舞って見せるというのは、とても大変なことだとラティーナはよく知っている。
どこかのメディアが『粗雑な演技だった』と酷評していたが、とんでもない。
確かに回転不足だったり、エッジエラーを取られたジャンプはあったが、他のエレメンツは全選手中群を抜いていた。
演技構成点は決して低いものではない。
一流のバレリーナと同じほどの技術と芸術性を、彼女は兼ね備えている。
何より、2アクセルならばこんなにも美しく跳べるというのに、それでも3アクセルにこだわる彼女の可愛らしい外見に似合わぬ頑固さとチャレンジ精神が、ラティーナは大好きだった。

「・・・あの子の笑顔が見たいわ」

エキシビションで見せる笑顔を、試合でも。
彼女の涙を見ると、こちらも胸が痛む。
きっと彼女の目指す場所があまりにも高いから、その悔し涙もとても崇高なものに思えるからだろう。

「見られるさ」

ウォルは風の精霊のように美しく舞う少女の姿を見つめながら、そっと妻の手を握った。
シェラを見る彼の瞳は我が子を見るようにやさしい。
息子の弟子は自分の弟子も同然で、またふたり揃って頑固者なところも誰に似たのか笑みを誘う。

「カリンが言っていた」

カリンとは、フィギュア界では名伯楽と呼ばれる指導者の名だ。
彼自身は直接指導を仰いだことはないが、出身国が同じであり、交流もある。

「3年ほど前だったか。『あと10年はシェラが世界の頂点に君臨する』と。それは、彼女が常に進化し続けているからだ」

トップアスリートとしての必須要件。
決して、立ち止まってはいけない。
現状に満足したところから、退化が始まる。
上を目指すものだけが、その高みにいることを許される。

「カリンは彼女が大好きでな。ここ数年カリンの作ったプログラムで滑ったシェラは、最初こそ賛否は分かれたが確実に階段を上り続けてきた。それは、カリンが常に『今』のシェラに滑れるプログラムよりも、遥かに高難度のプログラムを作ってきたからだ。彼女が指導者として偉大な理由は、そういうところにある。うちの息子も、まだまだ新米ながらカリンのやり方には感じるところがあるらしい」
「シェラも、それに食いついていったものね」
「可愛い外見に似合わず、スッポンのような精神を持った子だからな。あなたの指導にも、ついていっているようだし」
「あら。わたしだってシェラが可愛いもの。──途中で諦めてしまったり、難度を下げてもらうこともできたでしょうにね」
「ヴァンツァーから聞いたことがある。シェラの口癖だそうだが・・・」

5位ながらアンコールの拍手に迎えられたシェラは、華麗にスピンを決めている。
素晴らしい柔軟性と難しいポジションだ。

「──『完璧に滑ってから考える』、だそうだ」

これにはポカン、としてしまったラティーナだ。
ウォルはさすがに困ったような顔をしている。

「まだ完璧に滑ってないのに、プログラムを変えるかどうかなんて考えられない。──そういう子なんだな」
「そんなところまでヴァンツァーに似ているのね」
「案外、良いコンビなのではないかと思っている」
「そうね」

くすくす笑ったラティーナは、他の観客同様、シェラに惜しみない拍手を与えた。


**********

みんなに愛されるスケーターになりなさい。
そうすればきっと自然に、あなたの演技には愛が溢れるようになるのだから。
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