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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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仕事帰りに、駅近くの肉屋で焼き鳥を買った。注文してから焼いてくれるので、居酒屋チェーンの一度茹でた焼き鳥なんかとは旨さが格段に違う。しかも肉が大きくて、タレが焦げた匂いがたまらん。
色々買って、さぁお会計。

店主:「777円ですね」
橘:「ぷっ」
店主:「スリーセブンですね」
橘:「ねー。何か嬉しいですよねー」
店主:「はい、おつり」
橘:「ども~」

何か、勝った気になるよね(笑)この感動、プライスレス。

そんな感動のあとに、こんな小ネタで大丈夫か?
大丈夫だ、もんだry

**********

「またダメだったなぁ」

見下ろした足元に、神々しいまでの金髪を血と泥で汚した青年。
ボロボロに剥がれ落ちた装備のおかげで、彼はほとんどジーンズ一枚の姿で横たわっていた。
ブラックデニムに、シースルーの黒いシャツを羽織ったルシフェルは、その美しい顔に傷がつくどころか、埃ひとつ被っていない。

「本気を出さないと、死ぬぞ?」

呆れた声で告げるルシフェルの表情は、敵と対峙しているようにはとても見えない。
イーノックのサポートをしていたとき同様、飄々としながらも大きな子どもを見るような瞳で青年を見つめている。
何万年も生きている彼にとって、天に召し上げられたとはいえ、人間のイーノックなど赤ん坊以前の生命だ。
腰に手を当て、前屈みになってうつ伏せに倒れているイーノックの顔を覗き込む。
息はしている。
骨の数本は折れているだろうが、書記官のくせに頑強な肉体を持つ青年だから、そうそうのことでは死なない。
それは、幾度となく繰り返されてきた堕天使たちとの死闘を見ていれば分かる。

「……な、ぜ……」

肋骨が折れているのかも知れない。
ひゅーひゅーと、声を出すこともままならないようだ。
ルシフェルはのんびりとした様子でポケットから携帯電話を取り出した。

「なぜ、って。そりゃあ、神の命令は絶対だからね」

ひらひら、と携帯を振って見せる。
──と、ちょうど着信音が鳴った。

「もしもし──やぁ、きみか」

親しげな様子で話すルシフェルを、イーノックは見上げることすら出来ない。
ただ、壁を隔てているように聴こえづらくなった耳を澄ませること以外、何も出来ない。

「あぁ、またダメだったよ。こいつはひとのいうことを聞かないからな」

何を言っている、と霞みそうになる頭でイーノックは考えた。
ルシフェルの言うことを聞くということは、彼と戦うということだ。
そんなこと、出来るわけがない。
幼い頃天界に召し上げられた自分に、未来の世界から持ってきたとか何とか言って、何だかよく分からないものを色々押し付けてくれた天使長。
アークエンジェルたちは奔放なルシフェルによく怒っていたけれど、格が違うというのに制裁を加えもせず、「ろっとぉ」と呟いてさっさと逃げてしまうような、規格外の天使だった。
甘いお菓子や、綺麗な細工物、山のような本をくれたりもした。
尊敬と、畏怖と、敬愛と。
天使の長に失礼のないように、と接していた自分に、「堅苦しいの嫌いなんだ」とまず敬語で話すことを禁止された。
天使長の言葉に逆らうことなど出来るわけもなかったが、幼かったその頃の自分は、その扱いを特別なことのように嬉しく感じていたものだ。

「じゃあ、また連絡するよ」

電話を切ったルシフェルは、しゃがみ込んでイーノックの顔にかかる髪を払った。

「さぁ、もう一度だ」

指を鳴らそうとしたルシフェルだったが、イーノックに足首を掴まれて思わず動きを止めた。
筋骨質な身体からは想像も出来ない、弱々しい力。
自分の身の丈の倍以上もある巨大な堕天使に向かっていった男とはとても思えない。

「・・・もう、いい・・・」

紡がれた言葉も、ひどく覇気のないものだった。
呼吸が苦しいのか、激しく咳き込むと血を吐いた。
内臓が傷ついているのかも知れない。

「そんな身体じゃ、本当に死んでしまうぞ」

呆れた口調で諭す天使に、イーノックはもう一度「もういい」と繰り返した。

「お前が死ねば、神の洪水計画が実行される。それでもいいのか?」
「・・・・・・」

しばらく間があったあと、イーノックは呟いた。

「・・・神、の・・・ご意思、は・・・どこに・・・」
「さてね。それは聞いちゃいけないことになっている」
「どう、して・・・あなたと・・・」
「わたしが堕天使だからさ」
「だ、から・・・!」

キッ、と顔を上げてきた青年の瞳は、恐ろしいくらいに澄んだ空の青。
吸い込まれそうなほど透明なその色に、ルシフェルは微笑した。

「わたしはな、イーノック。人間が大嫌いなんだ」
「──・・・・・・」
「無知で、欲深くて、愚かで、矮小で。塵芥とも思っていなかった」
「・・・・・・」
「たかだか数十年の命で、せかせか動いて、あくせく働いて、子孫を残して死んでいく。何が面白いのか、さっぱりだ」
「ルシ、フェル」
「──しかも、彼らは同族で殺しあう。意味もなく、だ」
「・・・・・・」
「他のどんな生物も、そんな愚かなことはしない。神は、原初はそんな風に人間を作らなかった」
「だが」
「わたしが大嫌いだったアダムとイヴも、愚かではあったがそんな醜悪さは持っていなかった」
「・・・ルシ、フェル・・・」

身体を起こそうとして、力が入らず顔から地面に突っ伏す。

「神は言っている。──ここで死ぬ運命(さだめ)ではないと」

異質な黒髪の天使は、紅の瞳を笑ませると指を鳴らした。
それだけで、傷が癒えていった。

「エゼキエルが人間を愛するのも、サリエルが人と愛し合いたいと願ったのも、まったく理解出来なかったよ。アザゼルが『進化』に眼をつけたのは、面白いと思ったがね。人間は、たった数万年の間に目覚ましい進化を遂げた。彼らの造るものは面白い」
「・・・・・・」
「だが、それだけだ」
「ルシフェル」
「──それだけなのに、どうしてお前は、人間のためにそんなに傷ついてまで戦う?」
「・・・・・・」
「人間とは、それほどまでに価値のある存在か?」

蔑むというよりは、心底疑問で仕方ない、といった感じのする口調。
イーノックはゆっくりと身体を起こした。
傷が癒えたとはいえ、骨は軋むようだし、痛みが完全に消えたわけではない。
地面に座り込むと、しゃがんでいるルシフェルと同じ目線になった。

「・・・価値は、他人が決めるものではない・・・と、わたしは思う」

イーノックの言葉に、ルシフェルは目を丸くした。

「あなたにとっては愚かでも、アザゼルたちには眩しく映った。どちらも、真実なのだろうと思う。価値とは、自らが選び取るものなのだ、と」

イーノックは、精悍な顔をくしゃり、と歪ませた。

「あなたが言ったんだ。『人が持つ唯一絶対の力──それは自らの意思で進むべき道を選択することだ』と。わたしにとって最良の未来とは、あなたと戦う運命の中にあるのではない」
「だが、わたしを倒さなければ地上は」
「地上は救う。あなたとも戦わない」

言葉を遮りにっこりと笑ってそんな無謀なことを言う青年に、ルシフェルは呆れた顔を向けた。
神は、善ではない。
悪でもないが、どちらかであってくれた方がまだマシだと思うほど、掴みどころのない存在だ。
その力は強大無比。
洪水どころか、指一本で地上を灰に還すことも出来る。
かつては神にも等しいと賞賛された自分の力だが、実際は獅子と仔猫ほども差があった。

「堕天使すべてを捕獲しなければ、地上は粛清される」
「そんなことはない」

イーノックは、きらきらとした瞳でルシフェルに告げた。

「神は言っている──『すべてを救え』、と」
「──・・・・・・」
「地上だけではない。アザゼルも、エゼキエルも、他の堕天使たちも──もちろん、あなたも。わたしはすべてを救ってみせる」

きっぱりと言い切った青年に、ルシフェルは「どうやって?」と訊ねた。
イーノックは答えた。

「それには、あなたのサポートが必要だ」

これには呆れるのを通り越して、思わず笑ってしまったルシフェルだ。

「ふっ・・・へへへ。きみは相変わらずひとの話を聞かないな」
「聞いている。大丈夫だ、問題ない」

まったく、その自信はどこから湧いてくるのかね、と呟いたルシフェルは、最後にひとつだけ訊ねた。

「目的地は?」

イーノックは決意に満ちた表情で答えた。

「天界──第七天国(セヴンス・ヘヴン)」


**********

ん~、大きなわんこと、散歩で振り回される飼い主ってとこか。所謂、『お前の母ちゃん大天使』。
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