小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
見逃した(笑)いや、動画で見たから、安心して小説書いてゲームしてたら、21時過ぎてた(笑)コヅかっけーなー。3Aが安定すれば、もっと点伸びるんだろうなー。しかし、あの開脚ジャンプとステップは何? どうしてあのエッジワークでコケないの??? 3Aがクリーンだったら、80超えてただろうなー。ファイナルが楽しみです。いや、出るだろ(笑)
真央たんは、ほんとものすごい美人になって、キーラ姐さんと同じくらい見ててどきどきする(笑)メイクの仕方がいいのかな。大人の女性って感じで、今季のタンゴの曲調にぴったり。タラママのすごいところってさ、その人の今までにない一面を引き出すところにあるんだよね。きっと彼女には見えてるんだよ、そういうのが。それってもう才能としか言えなくて、そこがタラママの指導者としての偉大さなんだよなー。ふわふわドーリィな真央たんももちろん妖精さんみたいで綺麗で可愛いんだけど、『鐘』のときの力強さと荘厳さとか、シュニトケの『タンゴ』の妖しさとか、選手に幅を与えようとしているところがすごい。脚本もそうなんだけど、ある程度役者に合わせて書くのって楽だし、それなりの評価をもらえる。でも、そういうの全部なしにして、天空にある虹の欠片を取りに行かせることって、そうそうできない。自分への評価を気にする人間には、絶対に出来ないことなんだ。
まだ恐々というかかなり慎重に滑ってる感じがするけど、ジャンプもN杯のときみたいに抜けずに、着氷乱れとか転倒だから、跳ぶことは出来るようになってきてるんじゃないかなー、と思って、少しずつ良くなっていく滑りにわくわくしています。6分間練習だと、3Aもフリップも成功していたみたいだし。助走とか溜めが短くなってて、成功すれば加点要素になるだろうな。エッジだけの矯正じゃなくて、跳び方そのものの修正だからね。大変だと思う。ジャンプの天才のみきてぃだって、エッジの矯正で1シーズン使ってるしね。
ってか、3Aで3-3(予定)で単独3回転って、真央たんひとりで男子プロ滑ってんだぜ、コレ(笑)もうさ、3AをSPに入れることが当然のような感じになってますけど、どうしてそこまで自分を追い込む! ってプロだよな。相変わらずタラママのプログラムは時間調整できる場所ないし(笑)でも、そんな風に挑戦し続ける真央たんが大好きだ。
真央たんは、ほんとものすごい美人になって、キーラ姐さんと同じくらい見ててどきどきする(笑)メイクの仕方がいいのかな。大人の女性って感じで、今季のタンゴの曲調にぴったり。タラママのすごいところってさ、その人の今までにない一面を引き出すところにあるんだよね。きっと彼女には見えてるんだよ、そういうのが。それってもう才能としか言えなくて、そこがタラママの指導者としての偉大さなんだよなー。ふわふわドーリィな真央たんももちろん妖精さんみたいで綺麗で可愛いんだけど、『鐘』のときの力強さと荘厳さとか、シュニトケの『タンゴ』の妖しさとか、選手に幅を与えようとしているところがすごい。脚本もそうなんだけど、ある程度役者に合わせて書くのって楽だし、それなりの評価をもらえる。でも、そういうの全部なしにして、天空にある虹の欠片を取りに行かせることって、そうそうできない。自分への評価を気にする人間には、絶対に出来ないことなんだ。
まだ恐々というかかなり慎重に滑ってる感じがするけど、ジャンプもN杯のときみたいに抜けずに、着氷乱れとか転倒だから、跳ぶことは出来るようになってきてるんじゃないかなー、と思って、少しずつ良くなっていく滑りにわくわくしています。6分間練習だと、3Aもフリップも成功していたみたいだし。助走とか溜めが短くなってて、成功すれば加点要素になるだろうな。エッジだけの矯正じゃなくて、跳び方そのものの修正だからね。大変だと思う。ジャンプの天才のみきてぃだって、エッジの矯正で1シーズン使ってるしね。
ってか、3Aで3-3(予定)で単独3回転って、真央たんひとりで男子プロ滑ってんだぜ、コレ(笑)もうさ、3AをSPに入れることが当然のような感じになってますけど、どうしてそこまで自分を追い込む! ってプロだよな。相変わらずタラママのプログラムは時間調整できる場所ないし(笑)でも、そんな風に挑戦し続ける真央たんが大好きだ。
**********
ショートプログラムの結果は、12選手中7位。
1位との点差は10点だ。
フリーの構成を考えれば逆転できない点数ではない──去年までの、シェラであれば。
練習では跳べている。
ショートの前の6分間練習でも、綺麗に着氷出来た。
練習の成果は、確実に身についてきていた。
「・・・・・・」
選手たちの宿泊するホテルの一室。
シェラはパソコン画面に映る自分の演技をじっと見つめていた。
試合後にもスタッフを交えてミーティングを行ったが、もう一度見ておきたくてヴァンツァーの部屋を訪ねてきたのだ。
「足は痛めていないか?」
珍しく、心配するような言葉をかけてくるコーチに黙って頷いた。
3アクセルを跳んだとき、着氷に失敗して膝をついた。
堪えようとして堪え切れなかったため、無理な力がかかって痛めなかったか気にしてくれているらしい。
「調子は着実に上がってきている。踏み切り時の力の入り方も、だいぶ抑えられてきた。あとは勢いだ」
「・・・慎重に、なりすぎたかな」
「この前タイムオーバーを取られて曲のスピードを少し上げたからな。まだ慣れないんだろう」
「練習では、上手く出来るのに」
俯いているシェラの目は、ただひたすらに画面の中の自分を追っている──否、もしかするとその瞳には何も映っていないのかも知れない。
嘆息したヴァンツァーは、テーブルから離れると珈琲を淹れるためポットに向かった。
「ラティーナが言っていた」
「──え?」
「『白鳥の湖』のオディールや、『ドン・キホーテ』のキトリは32回ものグラン・フェッテを行う。最高難度の技術だ」
「うん。見せてもらったよ。先生のは、軸が全然ブレないの。すごく綺麗だった」
「32回、回ったか」
「うん。完璧に32回」
ヴァンツァーは、珍しく口許に笑みを浮かべた。
何だかドキッとしてしまったシェラだ。
「『完璧に』32回のグラン・フェッテを回り切るために、彼女は練習でその倍回るそうだ」
「──は?!」
「64回も回れれば、32回くらい完璧に回り切るだろうよ」
「・・・・・・」
「彼女は自分の技術に絶対の自信と誇りを持っている。だが、それは才能だけで身につくものじゃない。何年もの血の滲むような練習があってこそだ」
「・・・私には、まだ練習が足りないってことだよね」
「違う」
「え・・・?」
呆れたような顔になったヴァンツァーは、シェラの前にあたたかいお茶の入ったカップを置いた。
「お前は、出来るんだ」
「──ヴァンツァー・・・?」
「お前に足りないのは練習じゃない。──自信だ」
「・・・・・・」
「会場を覆いつくすくらいの気概を持て。お前は跳べるし、勝てる。練習で1万回も跳んでるんだから、試合でたった1回が成功しないわけがない」
この言葉に、シェラは少し笑った。
「それ、ルウにも言われた。どうしてもアクセル跳べなくて、何回も転んで・・・もう跳べない、って言った私に。『今まで何万回も跳んできたんだから、急に跳べなくなったりしないよ』って」
心が負けると、翼も折れる。
それまで高く飛べていたのに、飛び方が分からなくなってしまった鳥のように。
傷ついた翼が癒えても、また折れることを恐れて飛べなくなってしまう。
「・・・怖いのかなぁ」
ぽつり、と漏らされる呟き。
ヴァンツァーは、何も返さなかった。
「試合で負けることは、悔しいけど怖くない。でも、どれだけ頑張っても思ったように勝てなかったり、また跳べないのか、って言われたり・・・そういうのは、やっぱりちょっと、怖い・・・かな」
へへっ、と笑おうとしているが、何を言わんとしているのかは分かる。
シェラが、ジャンプの修正をしたいと言い出した理由だ。
特に昨季の試合で負けたときは、ほとんどが加点と芸術点の差。
そこに誰かの何らかの意思が介在していたかどうかはともかく、踏み切りや着氷に乱れがなければそれだけ点も高くなる──何より、スケーティングそのものが格段に美しくなる。
ほんの少しの歪みもない、完璧なジャンプが跳びたい。
そう言ったときのシェラは、強い瞳をしていた。
「別に失くすものなんてないんだけど・・・応援してくれる人のために、勝ちたいなぁ・・・」
シェラはそう言うが、世界選手権で2度も優勝すれば、保守的になってもおかしくない。
負ける前に引退する選手もいるだろう。
単純に、シェラは次の五輪に出るという目標があるから守りの体勢に入ることがないだけ。
失くすものがないわけではない。
今回のジャンプの修正には時間がかかる。
エッジだけでなく、跳び方そのものを変えているからだ。
今のようにジャンプが上手く跳べず、修正もままならず、結果が出なくて失意のままに引退することになるかも知れない。
それでも、やると決めたからにはこの華奢な少女はやり切るのだろう、とどこか楽観視している自分がいることにヴァンツァーは気づいていた。
信頼と呼ぶには淡いが、漠然と、大丈夫な気がするのだ。
そんな不確かなものは、信じたことがないというのに。
「まぁ、勝てばいいんじゃないか?」
「むぅ。まーた、簡単に言うぅ・・・」
恨めしそうに唇を尖らせるシェラに、珈琲カップを手にした男は当然のような顔で返した。
「簡単だろう? ジャンプは跳べばいいし、試合には勝てばいい。そうしたい、と思う自分がいるなら、あとはひたすらそこを目指すだけだ」
「──・・・・・・」
「お前が見ているのは、昨日、今日の試合に勝つことじゃないはずだ。4年後、誰にも何も言わせないくらいに完璧に勝つことだろう?」
「・・・ヴァンツァー」
「4年後に絶対的な勝利を手にする人間が、今燻っていてどうする。壁があるなら超えればいいだけだ。超えようと思えば、道はどこかにある」
今という足元を見ていたのでは、その道も見えなくなってしまう。
小馬鹿にしたような口調なのだが、不思議と力が湧いてくるような言葉だった。
「気にするな、と言っても、どうせお前は馬鹿だから余計なことばかり考えるだろうがな」
「はいはい、どうせ馬鹿ですよーだ」
いーーーーーっ、と自分の唇を指で横に思い切り引っ張った。
ブス、と言われて言い返そうとしたら、携帯の着メロが鳴った。
メールを受信した音だ。
誰からだろう、と画面を見ると、見知ったスケーターの名前があった。
「──アスティンだ」
独特の世界観が人気の両性的な美貌のスケーターは、現役時代のヴァンツァーに憧れていたということもあり、親交を交わすようになってから時々こうしてメールや電話でのやり取りをするようになった。
どこか女性的にも見えるとてもよく気のつく青年で、ファンを大事にするから国内外問わず人気が高い。
「またどこかでショッピングした戦利品かな~」
くすくす笑ってメールを開く。
かの青年は無類の買い物好きで、スケーターながらファッション誌でモデルもするほど服装には煩い。
時々街で見つけた服や小物の写真を送ってきてくれるのだ。
「──あ・・・」
そこに書いてあったのは、洋服のことではなかった。
『 おつかれさま 』
と、労いの言葉から始まる文章だ。
『 そちらの時間だと、そろそろ寝る時間かな? 会場へは行けなかったけれど、中継放送があったので見ていました。ジャンプ、惜しかったね 』
そんな風に書かれた冒頭。
いつでも穏やかな笑顔を浮かべている彼の顔が自然と浮かんできた。
『 少しスケーティングに元気がないように思ったけれど、悩んでいる? 』
心の中で、ひとつ頷く。
まだ、どうしても頭で考えてしまうのだ。
これは今の時期には仕方のないことだと、自分でもよく分かっている。
『 何だかシェラはほんの数ヶ月の間に見違えるように美人になっていて、少し驚いているんだ 』
またまた~、とちいさく笑う。
『 ワールドの頃までは『可愛い女の子』って感じだったけれど、メイクを変えたのかな? すごくセクシーな『大人の女性』って感じだ。今季のタンゴは大人の女性の踊りだから、すごく魅力的だ 』
誇張だとしても、どこぞのコーチのように『ブス』とか言われるよりも、ずっと嬉しい。
『 だから、顔を上げて 』
「──・・・・・・」
くすくす笑って画面を見ていたシェラは、思わず言葉を失くした。
『 上手くいかないことってあるよね。ぼくもたくさんある。でも、そういうときこそ前を、上を見るんだ 』
「アスティン・・・」
『 今はとても苦しい時期だと思う。ヴァンツァー以外にも、色々レッスンを受けているんでしょう? 人が変わると見方も変わるから、色々な意見を耳にするようになってそれも大変だと思う。でも、俯いちゃいけないよ 』
思わず唇を噛み締めた。
それは、色々な人から言われる。
ヴァンツァーにも、だ。
失敗したのは分かっている。
悔しいのも分かっている。
だからこそ、毅然とした態度を崩すな、と。
ジャンプの修正をするのと同じくらい、難しいことだった。
元来素直な性格をしているシェラは、考えていることが顔に出やすい。
だから、失敗すれば俯くし、曲に追いつけなくなると焦りが出る。
試合経験は豊富だが、まだ20歳になったばかりの彼女に、鋼鉄の心臓を持てというのは酷な話だった。
『 今、きみには試練が与えられている。誰にでも与えられるものじゃない。乗り越えられる人にしか、与えられないものだ 』
ぎゅっと、胸が締め付けられた。
以前、同じ台詞を尊敬するスケーターに言われたことがある。
その人は、『みんなに愛されるスケーターになりなさい』と言ってくれた。
『 どんなに酷い出来でも、たとえ100回転んでも、世界がきみに与えているものを信じるんだよ 』
『フリーも楽しみにしているよ、きみのファンより』と綴って結ばれたメール。
画面をじっと見つめたままでいるシェラは、胸が熱くなるのを感じた。
あんな風に失敗して、自己ベストの点数より20点以上も低い点数だったのに、こんな風にあたたかい言葉をかけてくれる人がいる。
「・・・ヴァンツァー」
「何だ」
テーブルに頬杖をついているコーチに、シェラは泣き笑いの表情を浮かべた。
「フリー、楽しみにしてる、って」
「ふぅん」
「アスティンも、応援してくれる人たちも──ヴァンツァーも、気長だね」
「は?」
「よーしっ、頑張らなきゃ!」
むんっ、と拳を握ったシェラに、ヴァンツァーは胡乱気なまなざしを送った。
そうして、あくびを噛み殺すと「じゃあ明日に備えてとっとと自分の部屋に戻れ」と手を振ってみせた。
しっしっ、と追い出すようなその仕草にも、シェラはにこにこ笑って立ち上がった。
「これからもよろしくお願いします、コーチ!」
「・・・気持ち悪いから変な呼び方をするな」
「へへっ。おやすみなさい!」
夜中に近いというのに元気いっぱいのシェラが出て行くのを、ヴァンツァーは疲れた表情で見送った。
**********
・・・ヴァンツァー、フリマワサレテハイケナイノデス・・・ヘタレルノデス・・・
あー、アスティンかっけー。ってか、ウィアー君が素敵。彼の言葉は、いつでも胸に響きます。イイ子なんだよなー。
追記:アスティンの台詞、ちょっと記憶があやふやな部分があったみたい。「たとえひどい滑りでも、10回転んでも~」らしい。ニュアンス、ニュアンス(笑)気持ちが伝わればいいのよ。
ショートプログラムの結果は、12選手中7位。
1位との点差は10点だ。
フリーの構成を考えれば逆転できない点数ではない──去年までの、シェラであれば。
練習では跳べている。
ショートの前の6分間練習でも、綺麗に着氷出来た。
練習の成果は、確実に身についてきていた。
「・・・・・・」
選手たちの宿泊するホテルの一室。
シェラはパソコン画面に映る自分の演技をじっと見つめていた。
試合後にもスタッフを交えてミーティングを行ったが、もう一度見ておきたくてヴァンツァーの部屋を訪ねてきたのだ。
「足は痛めていないか?」
珍しく、心配するような言葉をかけてくるコーチに黙って頷いた。
3アクセルを跳んだとき、着氷に失敗して膝をついた。
堪えようとして堪え切れなかったため、無理な力がかかって痛めなかったか気にしてくれているらしい。
「調子は着実に上がってきている。踏み切り時の力の入り方も、だいぶ抑えられてきた。あとは勢いだ」
「・・・慎重に、なりすぎたかな」
「この前タイムオーバーを取られて曲のスピードを少し上げたからな。まだ慣れないんだろう」
「練習では、上手く出来るのに」
俯いているシェラの目は、ただひたすらに画面の中の自分を追っている──否、もしかするとその瞳には何も映っていないのかも知れない。
嘆息したヴァンツァーは、テーブルから離れると珈琲を淹れるためポットに向かった。
「ラティーナが言っていた」
「──え?」
「『白鳥の湖』のオディールや、『ドン・キホーテ』のキトリは32回ものグラン・フェッテを行う。最高難度の技術だ」
「うん。見せてもらったよ。先生のは、軸が全然ブレないの。すごく綺麗だった」
「32回、回ったか」
「うん。完璧に32回」
ヴァンツァーは、珍しく口許に笑みを浮かべた。
何だかドキッとしてしまったシェラだ。
「『完璧に』32回のグラン・フェッテを回り切るために、彼女は練習でその倍回るそうだ」
「──は?!」
「64回も回れれば、32回くらい完璧に回り切るだろうよ」
「・・・・・・」
「彼女は自分の技術に絶対の自信と誇りを持っている。だが、それは才能だけで身につくものじゃない。何年もの血の滲むような練習があってこそだ」
「・・・私には、まだ練習が足りないってことだよね」
「違う」
「え・・・?」
呆れたような顔になったヴァンツァーは、シェラの前にあたたかいお茶の入ったカップを置いた。
「お前は、出来るんだ」
「──ヴァンツァー・・・?」
「お前に足りないのは練習じゃない。──自信だ」
「・・・・・・」
「会場を覆いつくすくらいの気概を持て。お前は跳べるし、勝てる。練習で1万回も跳んでるんだから、試合でたった1回が成功しないわけがない」
この言葉に、シェラは少し笑った。
「それ、ルウにも言われた。どうしてもアクセル跳べなくて、何回も転んで・・・もう跳べない、って言った私に。『今まで何万回も跳んできたんだから、急に跳べなくなったりしないよ』って」
心が負けると、翼も折れる。
それまで高く飛べていたのに、飛び方が分からなくなってしまった鳥のように。
傷ついた翼が癒えても、また折れることを恐れて飛べなくなってしまう。
「・・・怖いのかなぁ」
ぽつり、と漏らされる呟き。
ヴァンツァーは、何も返さなかった。
「試合で負けることは、悔しいけど怖くない。でも、どれだけ頑張っても思ったように勝てなかったり、また跳べないのか、って言われたり・・・そういうのは、やっぱりちょっと、怖い・・・かな」
へへっ、と笑おうとしているが、何を言わんとしているのかは分かる。
シェラが、ジャンプの修正をしたいと言い出した理由だ。
特に昨季の試合で負けたときは、ほとんどが加点と芸術点の差。
そこに誰かの何らかの意思が介在していたかどうかはともかく、踏み切りや着氷に乱れがなければそれだけ点も高くなる──何より、スケーティングそのものが格段に美しくなる。
ほんの少しの歪みもない、完璧なジャンプが跳びたい。
そう言ったときのシェラは、強い瞳をしていた。
「別に失くすものなんてないんだけど・・・応援してくれる人のために、勝ちたいなぁ・・・」
シェラはそう言うが、世界選手権で2度も優勝すれば、保守的になってもおかしくない。
負ける前に引退する選手もいるだろう。
単純に、シェラは次の五輪に出るという目標があるから守りの体勢に入ることがないだけ。
失くすものがないわけではない。
今回のジャンプの修正には時間がかかる。
エッジだけでなく、跳び方そのものを変えているからだ。
今のようにジャンプが上手く跳べず、修正もままならず、結果が出なくて失意のままに引退することになるかも知れない。
それでも、やると決めたからにはこの華奢な少女はやり切るのだろう、とどこか楽観視している自分がいることにヴァンツァーは気づいていた。
信頼と呼ぶには淡いが、漠然と、大丈夫な気がするのだ。
そんな不確かなものは、信じたことがないというのに。
「まぁ、勝てばいいんじゃないか?」
「むぅ。まーた、簡単に言うぅ・・・」
恨めしそうに唇を尖らせるシェラに、珈琲カップを手にした男は当然のような顔で返した。
「簡単だろう? ジャンプは跳べばいいし、試合には勝てばいい。そうしたい、と思う自分がいるなら、あとはひたすらそこを目指すだけだ」
「──・・・・・・」
「お前が見ているのは、昨日、今日の試合に勝つことじゃないはずだ。4年後、誰にも何も言わせないくらいに完璧に勝つことだろう?」
「・・・ヴァンツァー」
「4年後に絶対的な勝利を手にする人間が、今燻っていてどうする。壁があるなら超えればいいだけだ。超えようと思えば、道はどこかにある」
今という足元を見ていたのでは、その道も見えなくなってしまう。
小馬鹿にしたような口調なのだが、不思議と力が湧いてくるような言葉だった。
「気にするな、と言っても、どうせお前は馬鹿だから余計なことばかり考えるだろうがな」
「はいはい、どうせ馬鹿ですよーだ」
いーーーーーっ、と自分の唇を指で横に思い切り引っ張った。
ブス、と言われて言い返そうとしたら、携帯の着メロが鳴った。
メールを受信した音だ。
誰からだろう、と画面を見ると、見知ったスケーターの名前があった。
「──アスティンだ」
独特の世界観が人気の両性的な美貌のスケーターは、現役時代のヴァンツァーに憧れていたということもあり、親交を交わすようになってから時々こうしてメールや電話でのやり取りをするようになった。
どこか女性的にも見えるとてもよく気のつく青年で、ファンを大事にするから国内外問わず人気が高い。
「またどこかでショッピングした戦利品かな~」
くすくす笑ってメールを開く。
かの青年は無類の買い物好きで、スケーターながらファッション誌でモデルもするほど服装には煩い。
時々街で見つけた服や小物の写真を送ってきてくれるのだ。
「──あ・・・」
そこに書いてあったのは、洋服のことではなかった。
『 おつかれさま 』
と、労いの言葉から始まる文章だ。
『 そちらの時間だと、そろそろ寝る時間かな? 会場へは行けなかったけれど、中継放送があったので見ていました。ジャンプ、惜しかったね 』
そんな風に書かれた冒頭。
いつでも穏やかな笑顔を浮かべている彼の顔が自然と浮かんできた。
『 少しスケーティングに元気がないように思ったけれど、悩んでいる? 』
心の中で、ひとつ頷く。
まだ、どうしても頭で考えてしまうのだ。
これは今の時期には仕方のないことだと、自分でもよく分かっている。
『 何だかシェラはほんの数ヶ月の間に見違えるように美人になっていて、少し驚いているんだ 』
またまた~、とちいさく笑う。
『 ワールドの頃までは『可愛い女の子』って感じだったけれど、メイクを変えたのかな? すごくセクシーな『大人の女性』って感じだ。今季のタンゴは大人の女性の踊りだから、すごく魅力的だ 』
誇張だとしても、どこぞのコーチのように『ブス』とか言われるよりも、ずっと嬉しい。
『 だから、顔を上げて 』
「──・・・・・・」
くすくす笑って画面を見ていたシェラは、思わず言葉を失くした。
『 上手くいかないことってあるよね。ぼくもたくさんある。でも、そういうときこそ前を、上を見るんだ 』
「アスティン・・・」
『 今はとても苦しい時期だと思う。ヴァンツァー以外にも、色々レッスンを受けているんでしょう? 人が変わると見方も変わるから、色々な意見を耳にするようになってそれも大変だと思う。でも、俯いちゃいけないよ 』
思わず唇を噛み締めた。
それは、色々な人から言われる。
ヴァンツァーにも、だ。
失敗したのは分かっている。
悔しいのも分かっている。
だからこそ、毅然とした態度を崩すな、と。
ジャンプの修正をするのと同じくらい、難しいことだった。
元来素直な性格をしているシェラは、考えていることが顔に出やすい。
だから、失敗すれば俯くし、曲に追いつけなくなると焦りが出る。
試合経験は豊富だが、まだ20歳になったばかりの彼女に、鋼鉄の心臓を持てというのは酷な話だった。
『 今、きみには試練が与えられている。誰にでも与えられるものじゃない。乗り越えられる人にしか、与えられないものだ 』
ぎゅっと、胸が締め付けられた。
以前、同じ台詞を尊敬するスケーターに言われたことがある。
その人は、『みんなに愛されるスケーターになりなさい』と言ってくれた。
『 どんなに酷い出来でも、たとえ100回転んでも、世界がきみに与えているものを信じるんだよ 』
『フリーも楽しみにしているよ、きみのファンより』と綴って結ばれたメール。
画面をじっと見つめたままでいるシェラは、胸が熱くなるのを感じた。
あんな風に失敗して、自己ベストの点数より20点以上も低い点数だったのに、こんな風にあたたかい言葉をかけてくれる人がいる。
「・・・ヴァンツァー」
「何だ」
テーブルに頬杖をついているコーチに、シェラは泣き笑いの表情を浮かべた。
「フリー、楽しみにしてる、って」
「ふぅん」
「アスティンも、応援してくれる人たちも──ヴァンツァーも、気長だね」
「は?」
「よーしっ、頑張らなきゃ!」
むんっ、と拳を握ったシェラに、ヴァンツァーは胡乱気なまなざしを送った。
そうして、あくびを噛み殺すと「じゃあ明日に備えてとっとと自分の部屋に戻れ」と手を振ってみせた。
しっしっ、と追い出すようなその仕草にも、シェラはにこにこ笑って立ち上がった。
「これからもよろしくお願いします、コーチ!」
「・・・気持ち悪いから変な呼び方をするな」
「へへっ。おやすみなさい!」
夜中に近いというのに元気いっぱいのシェラが出て行くのを、ヴァンツァーは疲れた表情で見送った。
**********
・・・ヴァンツァー、フリマワサレテハイケナイノデス・・・ヘタレルノデス・・・
あー、アスティンかっけー。ってか、ウィアー君が素敵。彼の言葉は、いつでも胸に響きます。イイ子なんだよなー。
追記:アスティンの台詞、ちょっと記憶があやふやな部分があったみたい。「たとえひどい滑りでも、10回転んでも~」らしい。ニュアンス、ニュアンス(笑)気持ちが伝わればいいのよ。
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