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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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今年はただひたすらに、働いた1年でございました。小さいながらも部署の責任者になって2年目。出来るようになったこと、スキル不足で出来ないこと、人手不足で実現したいレベルまで出来ないことなど、たくさんの成長や課題がありました。

今日は昨日の自分よりも成長していること。
今日の私に出来なくても、明日の私には出来る。
誰かに出来ることなら、私にだって出来る。

これが、ここ数年自分に言い聞かせていること。毎日が、自分への投資です。

・・・とか書いてますが、結構しんどいですけどね。今年もほとんど更新出来なくてごめんなさい。そういえば、今のドメインのサイト作って1年になるんですね。はや。

妹の家で過ごすことの多い年末ですが、今年は自宅なので年内最後の小ネタでも書いてみましょうか。


**********

シェラは料理上手だ。
やろうと思えば、1年365日食卓に違う食べ物を並べることだって出来る。
そんなシェラも、元旦は主婦をお休み──簡単な盛り付けをするくらいで、あとはすべて前日までに用意をしておくのだ。
だから、大晦日は朝から食材と格闘するのが常である。

「フーちゃん、手伝ってもらっちゃってごめんね・・・アーちゃんたちと遊んでてもいいんだよ?」

困ったように眉を下げるシェラに、フーガは首を振った。

「そっちはロンがいるから大丈夫。俺、ロッドよりも料理の方が好きだから」

にこっと微笑めば黒い天使のように麗しいフーガは、長い黒髪を妹たちに結ってもらって、キッチンでシェラの手伝いをしている。
ロンドはプレイルームで妹二人のアクションロッドの相手をしている──おそらく、同時に。
わんこのように人懐っこい笑顔のせいかどこか抜けた印象のあるロンドだが、身長のさして変わらないフーガを軽々と抱き上げられるくらいには力がある。
両親から手ほどきを受けている武術の類も、護身術の域は超えている。
妹ふたりに関して言えば、アリアの動作は舞うように美しく、リチェルカーレは俊敏だ。
特にリチェルカーレは、10本に1本はシェラから勝利を奪うほどの腕前である。
フーガも身体を動かすのは好きだけれど、リチェルカーレの相手をするのは正直大変だ。

「大丈夫。アリアもフーちゃんも、リチェが守ってあげる」

そう、キリッとした表情で言い切ったリチェルカーレは、誰に似たのか喧嘩っぱや──否、抜きが速い。
妹ふたりを何者からも守るのだ、と思っていた幼少期を懐かしく思うフーガだった。

「これくらいでどう?」

小豆を炊いていたフーガは、菜箸でひと粒摘んでシェラに渡した。
指先で豆を潰し、芯の硬さを確かめる。

「──うん、ばっちりだ!」

にっこりと笑みを浮かべたシェラに、フーガも笑顔を返した。
いつもは一緒に料理をしている長男の婿様は、本日年末リサイタル。
年越しまでには帰ってくるが、カノンもついて行っているため調理面での戦力が乏しい。

「シェラのお赤飯、俺好きだよ」
「ありがとう」
「ひめはじめは2日かな?」
「──ほわっ?!」

別の鍋の上にザルを置いて煮汁と豆に分けていたフーガの言葉に、シェラは仰天した。

「シェラ?」

一方のフーガはきょとん、とした顔をしている。

「ふ、フーちゃ・・・な、なな、なにいっ・・・」
「え、何? シェラ真っ赤だけど」

大丈夫? と心配そうな顔付きの息子は純真そのもの。
あんな言葉が出てくるなんて、想像も出来ない清廉潔白な様子だ。

「フーちゃん、どこでそんな・・・」
「え? 何が?」
「だから」

えーっと、と言葉を濁していたシェラの耳に、くすくすと笑う声が届いた。
ダイニングテーブルでひたすらえんどうの筋を取っていたヴァンツァーだ。

「・・・なぜ笑う」

地の底から響いてくるようなシェラの声にも涼しい顔で、ヴァンツァーはえんどうの入ったザルと筋を入れたビニール袋を手にキッチンへやってきた。

「赤飯はおこわだろう?」
「それが?」

ヴァンツァーにだけはつっけんどんな態度を取るシェラなので、対応が雑だ。
気にした様子のないヴァンツァーは、筋をゴミ箱に捨て、えんどうを茹でるための湯を沸かし始めた。

「おこわは『強飯』といって、もち米を使った硬い蒸し米のことだ」
「それくらいは知っている」
「正月は火を使わない。それが、火や水を使って料理をするようになるときを、『火水始め』と言った」
「──ひ、め・・・はじめ?」
「やわらかいご飯を『姫飯』とも呼んだから、強飯からやわらかいご飯に戻すことも『姫始め』と言うことがある」
「・・・」

絶句しているシェラを尻目に、ヴァンツァーは愛息子に笑みを向けた。

「そうだろう、フーガ?」
「うん。シェラのお赤飯は美味しいけど、この量だと何日ももたないから」

だから、2日には普通のご飯になるかと思って──と告げる息子を前に、シェラは恥ずかしさの余り顔を覆った。

「シェラ? どうしたの?!」

まさか泣いてしまったのだろうか、とオロオロする少年に、ヴァンツァーは耳打ちした。

「──えっ?!」

初めて知った衝撃の内容に、フーガの顔も炊けたばかりの小豆のように真っ赤になった。


**********

何も知らない純情フーちゃんに、ヴァンツァーさんが余計な知識を植え付けましたとさ。
あとでしこたまシェラに叱られればいい。

それでは皆様、よいお年をお迎えください。


2019年大晦日
橘久遠 拝
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