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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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少しあたたかかったです。三寒四温になってきたかな。あたたかければ電気の消費量も少なくて済み、停電の不安が少し減ります。『計画(とは名ばかり)停電』のおかげで、停電するのかしないのかわからないことが一番困ります。停電するならしてもいいから。予定時間過ぎてしばらく経って、「あ、しないのかな」とか思ったときにバチン、ってそれが一番困るんです。やるならやれ。作った電気が余る分には誰も困らないから。
この3連休は停電しないようですが、節電は心がけようと思います。

栃木と茨城でも、震度4とか5の地震が続いています。1ヶ月くらいは余震が続くようですが、これ以上被害が拡大しないことを祈るばかりです。

あと、フィギュアの世界選手権や国別対抗戦を10月に日本で開催とかまだ言っている日本スケ連は、一度滅びた方がいいと思う。次のシーズンもグランプリシリーズも始まるのに・・・オフシーズンがなくなる選手の負担を考えて下さい。


**********

「「──・・・音が違う」」

自由曲の前奏が始まったとき、ごくごくちいさな声で双子が同時に呟いた。
何がどう違うのかは分からなかったけれど、今までの13校の伴奏者が弾いていたものとは違う楽器なのではないかと思うほど、その違いは明らかだった。

「そうなの?」

今までの出場校を知らないライアンも、演奏の邪魔にならないように小声で訊ねた。
ソナタはこくり、と頷いて返事に代えた。
すぐに歌が始まったので、それ以上は誰も口を開かなかった。

たとえるなら、ピアノの音は春の木漏れ日。
歌声は萌えいづる若葉。

──煌めけ

歌詞の通り、まさに大樹の下から太陽を見上げるような、そんな歌声と伴奏だった。
ファルセットで声を出すと、どうしても音が篭もりがちになる。
すると、歌詞が聞き取りづらくなってしまう。
かといって地声で歌ったのでは音にやわらかさが出ず、また個々の声質ばかりが強調されて綺麗なハーモニーとならない。
また、この曲は音の上下が激しく、特に急に音が下がることがあるために低音を当てることが難しい。
しかし、本来混声ながら女声のみで歌われているカイン校合唱部による歌は、歌詞のフレーズひとつひとつまで聞き取ることが出来、また低音だろうと高音だろうと、音が外れることもない。
だからこそ、美しいハーモニーが生まれていた。
何より、どこかのパートが出すぎてしまうということがなかった。
プロの合唱団が歌っているような歌声──否、高校生という、きらきらと輝く生命そのままの勢いと明るさをもって歌われるこの合唱部の歌の方を好ましく感じる者も少なくないはずだ。
テクニックをひけらかすでもなく、声を張り上げるわけでもない。
授業の合間の休み時間や昼休み、放課後など、少女たちが何気ない話に微笑み、さざめくように笑い、友人と過ごすかけがえのない今日という日に感謝する。
そんな、特別でないことが特別な毎日を想像出来るような歌声だった。
歌声だけでなく、伴奏も。
譜面や鍵盤にはほとんど視線を落とさず、指揮者と、歌う少女たちに目を向けている伴奏者。
ほぼピアノの最低音から最高音までを使うというのに、大きな手による伴奏は危うくなることを知らない。
難しい曲というのは、弾くことに集中してしまうから、どうしても歌声とのバランスが取りづらくなる。
無駄な力が入ってしまうことで、時に歌声を殺すほど大きくなってしまったりするものだ。
けれど、登場するなり会場からちいさくはない歓声を浴びた青年は、眉間に皺を寄せるどころか、どこか楽しそうな表情を浮かべて演奏していた。
少女たちの歌声に耳を傾けながら、出すぎることも、引っ込むこともなく最良の伴奏を提供する。
伴奏はあくまで伴奏であって主旋律ではないということを改めて認識させられる音だった。
だが、印象が薄いわけではない。
きらきら、と。
高音部分は本当にそんな風に聴こえる音だった。
低音は豊かに。
どっしりと根を張った大樹が、その下で休む若者たちを見守るように。

──どこまでも響け!

そう思って歌い、伴奏していることがはっきりと分かる合唱に、会場からは惜しみない拍手が送られた。
歌い終わった少女たちも満足そうに微笑んでいる。
キニアンもまた。
伴奏者が起立し、指揮者が客席に向かって礼をする。
講評をする審査員たちも手を叩いており、その表情は評価を下す審判というよりも、純粋に演奏を楽しむ音楽家の顔だった。


全15組の演奏が終わり、審査員による評価と講評の準備のため、休憩となった。
ホール内や外の待合部分で、出場者と観覧者が今日の感想などを話している。
そこでひとり、ものすごい勢いで質問攻めにあっている青年がいた。
少女たちに比べると頭1個分以上は背の高い青年だ。
曲のこと、伴奏のこと、同じ地区大会に出場していた学校の生徒からはなぜ伴奏者が変わったのか。
少女たちの勢いに気圧されながらも律儀にひとつひとつの質問に答えていた青年だったが、「メアドと携番教えて下さい!」には目を丸くした。

「へ? え・・・メアド・・・?」

何でそんな話になったんだ、という顔をしている青年の目の前で、少女たちは「ずるーい!」「あ、じゃああたしも!」「わたしにも!!」などと口々に言ってはキニアンを押しつぶさん勢いだ。
その勢いと大人数の声のボリュームに、発達しすぎた耳の機能を最小限までちいさくする。
それでも頭痛を覚えそうになっているキニアンの耳に、名前を呼ぶ涼やかな声が届いた。
どんなに耳のボリュームを下げていたって、この声だけは聞き逃すことはない。

「──カノン」

良かった、助けてくれ、という安堵の表情を浮かべている青年に、銀髪に菫色の瞳の天使のような美少年はにっこりと微笑んだ。

「モテモテじゃん」
「いや、あの・・・」

微笑んでいるというのに、目が笑っていない。
怖い・・・ひたすら怖い。
正直迷惑しています、と言いたいのだけれど、少女たちのことを考えるととても口には出来ない心やさしい青年。
それが更にカノンを苛立たせることになるのだけれど、キニアンにはどうしようもない。
少女たちは、突然現れた美少年に驚いて目を丸くし、まじまじとその美しい顔を眺めている。
それでも、カノンからキニアンまでの距離は縮まらない。
内心舌打ちしたカノンは、最終手段だ、とばかりにある人物を後ろ手に手招きした。
呼ばれた人物を見て、少女たちは息を止めた。
漆黒の髪に、夜空のような藍色の瞳、白い肌に通った鼻梁。
非の打ち所のない美貌と、鍛えられた長身。
そして、漂うというよりは無駄に垂れ流されている大人の色気。
ぽーっと少女たちが見惚れている男は、その妍麗な美貌に笑みを浮かべた。
それだけのことで腰が砕けそうになっている少女たちに構わず、その人物は口を開いた。

「アル、時間があるなら、少しいいか?」

紡がれる低音の美声に、少女たちの頭からキニアンのことなど吹っ飛んだ。
当の青年はこれ幸いとばかりにヴァンツァーとカノンの元へ向かった。
そうして、夢見心地な様子でヴァンツァーを見ている少女たちを残し、その場を去ったのだった。

「・・・はぁ~、助かった~」

ほっとして胸を撫で下ろすキニアンに、シェラがくすくすと笑う。

「アー君、かっこいいもんね。今日スーツだし」
「ピアノ弾くと3割増だし」
「お兄ちゃんがやきもち妬くのも仕方ないね」
「──妬いてません!」

ぷくっと頬を膨らませるカノンは、頭を撫でられて隣を見上げた。

「可愛い」
「・・・だから、知ってます」

ヴァンツァーの言葉に憮然とした表情を浮かべるカノン。
そんな様子にも、ファロット一家+α(- キニアン)は、にこにこと微笑むばかり。

「アー君、お疲れ様」
「ほんとに、全員で来たんですね・・・」

シェラの労いの言葉に苦笑するキニアン。

「そりゃあ。うちの未来のお婿さんが出るんだもん」

ちょっと嫌そうな顔をするカノンを尻目にくすくすと笑ったシェラは、「私には音楽のことはよく分からないけど」と前置きをした。

「カイン校の歌が、一番やさしかった」
「え?」
「耳にも、心にも。一番、やさしかった」

何となくシェラの言わんとしていることが分かったキニアンは、その端正な容貌に笑みを浮かべた。

「今日は、俺が知っている中で一番綺麗だったんです」
「うん」
「午前中の練習のときは少し硬かったんですけど、女子ってやっぱり肝が据わってるなぁ、と」
「うん。アー君が楽しそうだったから、よく分かったよ」

シェラの言葉に、晴れやかな笑みを浮かべる青年。

「大陸大会、行けるといいね」

ライアンの言葉に、頷いたものの少し首を傾げたキニアンだ。

「今回1回きりかと思うと、少し寂しいけどな・・・」

自分はあくまで代理であって、正規の部員ではない。
本来の伴奏者の体調が戻れば、役目は終わりだ。

「また鬼指導すればいいじゃない」
「え・・・?」
「もし次の大会に行けたらの話だけど。間1ヶ月くらいあるんでしょう? その間に、また鬼指導すれば?」

ソナタの言葉に、ぱちぱちと瞬きをする。

「鬼って・・・俺、そんなに厳しくしたつもりないけど」

まるで自覚のないキニアンに、ソナタは呆れた表情を向けた。
けれど、本当に鬼のような父親の指導を受けているキニアンにとっては、今回の自分は基本的なことを伝えたに過ぎず、特別なことは何もしていない。
音を外さずに当てる方法と、相手の声を聴いて美しいハーモニーを生み出す方法。
そんなことしか言っていないのだ。
不思議そうな顔をしているキニアンに、ソナタはとても真面目な顔で言った。

「さっきの女の子たちにも同じように指導してあげたら? 30分で波が引くと思うわ」

けだし、至言である。


*****

審査の結果、カイン校は2位であった。
1位はソナタが『最後のスーパーブロー』と称した学校であったが、自分たちの学校名がアナウンスされたとき、カイン校の生徒たちの喜びと歓声はすさまじいものがあった。
涙を流している生徒もいる。
キニアンは、1階席の自分たちの席で、どこかほっとした表情を浮かべている。

──続きまして、講評です。

アナウンスの声で、ステージに用意された審査員席に袖から審査員たちがやってくる。

──今回は、特別審査員といたしまして・・・

最後にステージに現れた人物に、キニアンは瞠目した。

「──・・・マリア・・・?」

そこには、彼の母親が立っていた。
ということは、母は今日ずっとこの会場にいて、カイン校の歌も、自分のピアノも客席で聴いていたことになる。
そんな話はまったく聞いていなかったので、心臓が妙な煽り方をしている。
冷や汗まで流れている。

──やばい・・・。

やばい、まずい、ちょっと用事を思い出したから今すぐ帰ろうそうしよう。
そんなことを考えているキニアンだったが、会場は大物音楽家の登場にどよめいている。
心底逃げたかったが、キニアンは並んだ席の真ん中に座っており、抜け出すには左右どちらか、人の前を通って行かなければならない。
大興奮の会場でそんなことが出来るわけもなく、非常に居心地の悪い思いを味わっていた。

──どうしよう、どうしよう、どうしよう・・・。

そんなことばかり考えているキニアンの前で、7名いる審査員たちは次々に講評を進めていった。
各校良いところと、手直しすべきところを挙げ、すべての出場校に労いの言葉と次への期待を述べていく。
最後に、マリアの番となった。

「出場校の皆さん、今日は素晴らしい演奏をありがとうございました」

可愛らしいまでの容姿とは正反対にその性格は容赦のないマリアだったので、その言葉に嘘偽りは一切ない。
浮かべられた笑顔も、彼女が心から満足していることを表していた。

「わたしは専ら演奏をするばかりで教鞭をとったことがないので、他の先生方のように上手く言葉を纏められないかも知れませんが、今日の感想を述べさせていただきます」

思わずゴクリ、と喉を鳴らしたキニアンであった。
周囲の少年少女が皆期待に瞳を輝かせているのとは対照的であった。
マリアは上位3校までを後に残し、それ以外は演奏順に講評を行った。

「特に1位と2位に関しては、審査員の評価は真っ二つだったと言っていいくらい、差がありませんでした。演奏スタイルも、表現もまったく違う2校なので、評価をつけること自体がナンセンスですが・・・」

苦笑したマリアは、ひとつだけはっきりと言えることがある、と静まり返る会場に向けて言葉を発した。

「1位のグラード学院は、ほぼ完成された歌声でした。おそらく、プロの声楽家を目指している学生さんもいるのでしょう。高校生とは思えないほど、完成度の高い演奏でした」

第一線で活躍するプロの音楽家からの高い評価に、学院の生徒たちは誇らしげな表情を浮かべた。
カイン校の生徒も、他の学校の生徒も、納得の表情である。

「2位のカイン校ですが・・・」

どきっ、と心臓が跳ねるのを、キニアンは止められなかった。
意外とまともなことを言っているな、と肉親に対してとはいえ失礼なことを考えていた青年だったが、自分が携わった演奏に対する評価を受けるのは何だか居たたまれない。
ゴクリ、と息を呑むキニアンとカイン校合唱部の面々。
マリアは、にっこりと微笑んだ。

「わたしは、皆さんの歌が一番好きでした」

これには目を瞠ったキニアンである。
それは少女たちも同じだったのだろう。
一瞬して、言われた言葉を理解したのだろう、ちいさな悲鳴のような歓声が上がる。

「今回のこの州大会だけでなく、先のことを考えると、おそらく現時点から一番伸びるのがカイン校の演奏だと思います。はっきりと言えばひとりひとりが高い技術を持っているわけではないでしょう。それでも、たくさん練習したのだろうことが分かる演奏でした。人数の関係でしょうか、オクターブ上のアルトというのも、面白い発想だな、と思いました」

何より、と天上の音楽を奏でる芸術家は言葉を続けた。

「歌うことが好きで好きで、楽しくてたまらない。そんな気持ちが強く伝わってきました」

──とても楽しいひと時を、ありがとう。

そんな風に微笑まれ、また思わず涙ぐむ生徒もいた。
キニアンも、口端を持ち上げた。
思えば、音楽は楽しむものなのだ、と教えてくれたのは、この母だった。
いつだってそう。
どんな超絶技巧曲でも、子守唄のように静かな曲でも、演奏することそのものに喜びを見出し、楽器を道具ではなく友人のように扱う。

──嫌々やるくらいならやめてしまいなさい。

幼い頃たった一度だけ、巧く演奏出来ないことに苛立って、ヴァイオリンの弓を床に投げつけたことがあった。
そんな自分に、マリアはひと言そう言って弓を拾った。
そのヴァイオリンと弓は、マリアが普段使っている高価なものとは比べ物にならない無銘のものだったけれど、彼女が音楽と出会うきっかけになった大切なものだったのだ、と後から知った。
殴られるより胸が痛んで大泣きして謝った記憶がある。
過去の思い出に苦笑したキニアンの前で、マリアは講評を終えた。
会場からお礼代わりの拍手が起こり、彼もまたそれに倣った。

「ありがとう」

会場を出るとき、合唱部の部長がそう言ってきた。
その口調がどこかつっけんどんなのは、おそらく彼女の癖なのだろう。

「あなたのおかげだわ」
「良かったな。次の大会に進めて」
「それもあるけど」

首を傾げたキニアンに、少女は軽く目を伏せて言った。

「突然のことに焦って、不安で・・・楽しいって気持ち、忘れそうになってた」

だから、ありがとう。
そう言って微笑む少女に、キニアンも笑みを浮かべた。

「役に立ったなら、良かった」
「でも・・・」
「うん?」
「審査員に、あなたのお母様が・・・」
「あぁ。俺も知らなかった」

知っていたら何が何でもこの話は断っていた、というのは内心に留めた。

「・・・じゃあ、別にあなたがいたから、ってわけじゃないのね・・・?」

どこか不安そうな顔をする少女に、キニアンは少し表情を引き締めた。

「あの人は、音楽に関しては絶対に身内を贔屓したりしない」
「あ・・・ごめんなさい。失礼なことを言ったわよね・・・」
「いや、そういうことじゃなくて・・・」

何て言うのかな、と頬を掻く青年。

「音楽が絡むと、周りが見えなくなる、っていうか・・・」

呟きに、少女は一瞬目を瞠り、くすくすと笑った。

「似たもの親子なのね」
「・・・残念なことに、よく言われます」

本当に残念そうにしているキニアンに、また笑みを誘われる。

「キニアーン! 車乗ってけばー?!」

離れたところから、自分を呼ぶ少女の声が聞こえる。
振り返ると、眼福を通り越して目の毒でしかない一家が揃ってこちらを見ている。

「あ、じゃあ俺行くから」
「えぇ。また学校で」
「うん──あ、そうだ」

駆け出そうとして振り返った青年に、少女は首を傾げた。

「あんた、さっきみたいに笑ってる方がいいぞ?」

それだけ、と言って手を振って行ってしまった。
残された少女は、しばらく言われたことを頭の中で反芻して、ようやくそれを理解した途端に顔を真っ赤にしたのだった。


**********

なげーよ・・・ようやく終わりました。なげーよ。

かっこ良くて、天然誑しのキニアンでした。あと、可愛いカノン(笑)
自由曲と課題曲は、中学生向けだよなぁ、とは思いつつも、さして曲を知らないので適当に知っているのにしてしまいました。完全に捏造すると話書きづらくなるのでね。

はぁ~、書いた~って感じだ(笑)
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