小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
もう、朝6時頃はすっかり明るくなりましたね。ようやく出勤するか、という気になる明るさになりました。暗い中出勤すると、夜なのに・・・と思ってしまいますからねぇ・・・。でも、まだ寒いです。
せめて、頭の中だけでもあったかくしましょう。ぼく間違ってない。
せめて、頭の中だけでもあったかくしましょう。ぼく間違ってない。
**********
第3控え室。
出場校それぞれに与えられた控え室の1室では、本番用の衣装に着替える生徒たちの姿がある。
午前中に音楽室と本番が行われるホールでの声出しを兼ねた練習およびリハーサルがあった。
緊張感を持ちながらも、カイン校合唱部の少女たちは期待と興奮に満ちた表情をしている。
その明るさが歌声にも良い影響を与えることは言うまでもない。
カイン校に制服はないが、少女たちはひと揃いの衣装を身に着けている。
上は白のブラウス、リボンとスカートは灰色と水色のチェックだ。
本来は伴奏も同様の衣装を着ているべきだが、急遽代理になったキニアンにそんな用意はない。
彼は、グレーのスーツを見に纏っている。
いつもは下ろしている前髪も、今日は額を出すようにセットしている。
「さすがだな、ぴったりだ」
ちょっと嬉しそうな顔で、キニアンは呟いた。
実はこのスーツ、ヴァンツァーに頼んだものである。
寮にはスーツなど置いていないから、困った彼は本職に相談したのだ。
そうしたら、快く貸してくれた、というわけだ。
身長はともかく、骨格はまったく違うので、これはヴァンツァーの服というわけではないのだろう。
よくこんな急に合うサイズが見つかったなぁ、と思ったキニアンだったけれど、仕事柄様々なサイズの服を作っているのだろう、とひとり納得していた。
むろん、彼はメンバーで唯一の男なので、着替えは控え室でなく手洗いで済ませた。
何とも色気のない更衣室だったが、バスケ部の部室だとて染み付いた汗臭さのおかげで大差ないと言えた。
「しっかし・・・全員来るのか・・・」
はぁ、とため息を零し、控え室へ戻る。
ノックをして、入室の許可をもらうと中へ入った。
入った瞬間、ちいさな歓声が上がった。
端正な容貌と、仕立ての良いスーツに身を包んだ長身に、少女たちは鬼のような指導をされたことなど忘れてしばし見入った。
きつめの顔立ちながら、美少年──否、美青年の部類に入る男ではあるのだ。
ただ、当の本人はいつものようにきょとん、とした顔をしていたのだが。
それでも練習初日のように彼に纏わりつく少女がいないのは、指導の厳しさを思い返してのことだろう。
いくら美形でも、口煩いのはちょっと・・・と思っているに違いない。
音楽さえ絡まなければ、彼はとても誠実でやさしい男なのだが、そんなことは付き合いの短い少女たちの知るところではない。
また、彼自身も騒がれることを望んでいない。
可愛い恋人ひとりが傍にいれば十分なのである。
──まぁ、その恋人にすげなくされて落ち込んでいたわけだが。
午後になって本番まであと少しとなった今、後ほど会場にやってくるのだろうカノンたちのことを思うと、何だか胃が痛くなる思いがした。
チェロだろうがピアノだろうが、演奏をするときに緊張したことなどほとんどない。
それなのに、バスケの試合前のように、手に汗握る心地がする。
──・・・何て言って、謝ろうかなぁ・・・。
合唱部の生徒たちにとっては大事なコンクール前だというのに、キニアンはそればかりを考えていた。
**********
もうちょっと続く。
第3控え室。
出場校それぞれに与えられた控え室の1室では、本番用の衣装に着替える生徒たちの姿がある。
午前中に音楽室と本番が行われるホールでの声出しを兼ねた練習およびリハーサルがあった。
緊張感を持ちながらも、カイン校合唱部の少女たちは期待と興奮に満ちた表情をしている。
その明るさが歌声にも良い影響を与えることは言うまでもない。
カイン校に制服はないが、少女たちはひと揃いの衣装を身に着けている。
上は白のブラウス、リボンとスカートは灰色と水色のチェックだ。
本来は伴奏も同様の衣装を着ているべきだが、急遽代理になったキニアンにそんな用意はない。
彼は、グレーのスーツを見に纏っている。
いつもは下ろしている前髪も、今日は額を出すようにセットしている。
「さすがだな、ぴったりだ」
ちょっと嬉しそうな顔で、キニアンは呟いた。
実はこのスーツ、ヴァンツァーに頼んだものである。
寮にはスーツなど置いていないから、困った彼は本職に相談したのだ。
そうしたら、快く貸してくれた、というわけだ。
身長はともかく、骨格はまったく違うので、これはヴァンツァーの服というわけではないのだろう。
よくこんな急に合うサイズが見つかったなぁ、と思ったキニアンだったけれど、仕事柄様々なサイズの服を作っているのだろう、とひとり納得していた。
むろん、彼はメンバーで唯一の男なので、着替えは控え室でなく手洗いで済ませた。
何とも色気のない更衣室だったが、バスケ部の部室だとて染み付いた汗臭さのおかげで大差ないと言えた。
「しっかし・・・全員来るのか・・・」
はぁ、とため息を零し、控え室へ戻る。
ノックをして、入室の許可をもらうと中へ入った。
入った瞬間、ちいさな歓声が上がった。
端正な容貌と、仕立ての良いスーツに身を包んだ長身に、少女たちは鬼のような指導をされたことなど忘れてしばし見入った。
きつめの顔立ちながら、美少年──否、美青年の部類に入る男ではあるのだ。
ただ、当の本人はいつものようにきょとん、とした顔をしていたのだが。
それでも練習初日のように彼に纏わりつく少女がいないのは、指導の厳しさを思い返してのことだろう。
いくら美形でも、口煩いのはちょっと・・・と思っているに違いない。
音楽さえ絡まなければ、彼はとても誠実でやさしい男なのだが、そんなことは付き合いの短い少女たちの知るところではない。
また、彼自身も騒がれることを望んでいない。
可愛い恋人ひとりが傍にいれば十分なのである。
──まぁ、その恋人にすげなくされて落ち込んでいたわけだが。
午後になって本番まであと少しとなった今、後ほど会場にやってくるのだろうカノンたちのことを思うと、何だか胃が痛くなる思いがした。
チェロだろうがピアノだろうが、演奏をするときに緊張したことなどほとんどない。
それなのに、バスケの試合前のように、手に汗握る心地がする。
──・・・何て言って、謝ろうかなぁ・・・。
合唱部の生徒たちにとっては大事なコンクール前だというのに、キニアンはそればかりを考えていた。
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もうちょっと続く。
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