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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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いや、だってカノンが可愛いから・・・しかし、異様に長い話になったな・・・これもサイトに移すか・・・。

そういえば・・・私には従兄弟がいるのですが、彼ら兄弟ですごい逸話が・・・

兄弟で、兄の方が運転するバイクでふたりが出かけてたとき、後ろから来た車が横に並んだときにクラクションを鳴らされたので、兄の方が何だ、と思って振り返ったら・・・

──弟、後ろで寝てやがった・・・

どんだけ大物なんだ、と兄は大爆笑だったらしいですが、バイクのリアで寝られる従兄弟を本気でスゲーと思いましたよ。私も何回か乗せてもらいましたが、最初はやっぱり怖くて掴まる手に力入るし、慣れてきても寝るまでは(笑)まぁ、兄の方はテクニックがあるので安心して乗っていられるのですが、それにしても寝るって(爆)
兄の方は、後ろに私を乗せているのに両手を離してバイク運転するような危険な人なので、良い子の皆様は、絶対こんな大人になっちゃいけませんよ。ちなみに、弟の方は「車は左ハンドルじゃないと運転出来ない・・・」と国産車の左ハンドルに乗っています。料金所で困るらしいです。毎回シートベルト外して身を乗り出してます(笑)超一流大学出てるのに、どっか抜けてるそんな彼が大好きですよ。


**********

さすがに、ほんのちょっと緊張していた。
真剣を使って訓練をすることもあるから、怖いという意味ではなくて──興奮していた、と言った方が正しいのかも知れない。
父ほど頼り甲斐があるわけではないが、自分よりは広い背中に身体を預けていれば、安心出来た。
服を通して感じるぬくもりが、嬉しかった。
エア・カーに乗っていたのでは、絶対に感じられない温度と距離。
こんな風に抱きついていたって、誰もおかしいと思わない。
いくら女子顔負けの美貌を誇っていても、カノンは男の子だ。
本人だって、そこを気にしていないわけではない。

「──か?」

何か話しかけられたようだが、風が強くて上手く聴こえない。

「え! 何!!」

フルフェイスのヘルメット越しでは自分で喋っている声を聴き取るのも大変なのだ。

「大丈夫か!!」

キニアンも負けずに大きな声で返してきた。
カノンは思わず微笑んだ。

「うん、大丈夫! 風、気持ちいいね!!」

そう返せば、ほんの少し笑ったことが、背中越しに伝わってきた。

ほら。
やっぱりいいな。
この距離、すごくいい。

キニアンの身体に回している腕に少し力を込めれば、──ほんの一瞬だけ、片手を離したキニアンが、ポケットの中にある手を服の上から叩いた。
ヘルメットの中、カノンは頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。



制限速度よりも遅い速度で走っていたが、それでも車のときとは感じるスピードがまったく違う。
キニアンの背中があるからこそ、カノンはドライブを楽しめた。
もしも、キニアンが感じているのと同じスピードを感じることになったら、運動神経抜群の彼といえども多少は身体に力が入っただろう。
一時間半ほどドライブを楽しみ、ふたりは人のいない海岸へと訪れていた。
夏になれば海水浴客で賑わうが、今の時期はサーフィンをする人の影もまばらだ。
陽が長くなったので夕暮れ前には海に着くことが出来、バイクを降りたカノンは、ヘルメットを取ってもらって大きく息を吸い込んだ。

「──ぷはぁ!」

身体を伸ばすカノンに、キニアンは苦笑して訊ねた。

「疲れたか?」
「ううん、全然!! すっごい風が気持ち良かった!!」
「そうか?」
「うん。ちょっとヘルメットが苦しかっただけで、すっごいすっごい楽しかった!!」

面白いことに、景色の流れる速さまで、車のときとは違って見える。
リアに乗っているから前方は見えないし、強い風が当たれば身体が持って行かれそうになる。
カーブに合わせて身体を傾けることも必要で、『一緒に乗っている』という感覚はバイクの方がずっと強い。

「ぼく、一度でいいから、アリスがどんな景色見てるのか見てみたかったの」
「・・・・・・」
「アリスがバイク好きなの、分かった気がする」

作り笑いではない。
この女王様は、今、心からの満面の笑みを浮かべている。
まだ興奮が冷めないのか、頬は薔薇色に染まっているし、菫色の瞳はいつも以上にきらきらと輝いている。

「行こ?」

そう言って手を差し出すカノンの手を反射的に握り返して、駐車スペースから砂浜へと降りていった。
夕暮れまではまだ多少時間がある。
金色に輝く水面と、風が運んでくる潮の香り、人の気配のない寄せる波音だけが支配する場所。

「ん~、気持ちいい~」

ね、と笑顔を向けて見上げてくる女王様に、キニアンも微笑を返した。

「・・・バイク乗ってたからかな。何か、アリス機嫌いいね」
「そうか?」
「うん。何か・・・笑った顔が、やさしい」

言われて首を捻るキニアン。
普段はそんなに仏頂面なのかと思い、反省しかけたのだが、はたと気づいた。

「──あぁ、それ違うぞ」
「え?」
「バイク乗ってたからじゃなくて、お前が笑ってるからだ」
「・・・え・・・」
「お前が嬉しそうに笑ってるから、俺もつられたんだろうな」
「・・・・・・」

目を真ん丸にしているカノンに、キニアンは「何だ?」と首を傾げた。

「・・・天然って、こわぁい」
「はぁ?」
「かっこつけて言ってるんじゃないんだもんなぁ・・・」
「何言ってんだ、お前」
「ちょっとだけ、父さんが苦労してるの分かった気がするよ」
「だから、何訳の分からないこと言ってるんだよ」

よく分かっていない彼氏に、カノンは言ってやった。

「アリスがぼくのこと大好きだって話」

みるみるうちにキニアンの顔が赤く染まっていったのは、太陽が水平線へと沈み出したせいというわけでもないだろう。
百九十ある男を可愛いと思ってしまうのだから、自分も相当キているな、とカノンは内心で嘆息した。
それでも、絶対無敵の女王様は、そんな内心は綺麗さっぱり隠してにっこりと微笑んだ。

「キスして」
「──はぁ?!」
「キス。して」
「ば、馬鹿言うな! こんなところで出来るわけないだろう?!」
「いいじゃん。誰もいないし」
「そういう問題じゃなくて」
「沈む夕日を背に、都会の喧騒を離れ波音だけを聴いて、ちょー可愛くてちょー美人でちょーキュートな恋人と一緒にいるのに、ここでキスしないなんて男が廃るよ?」
「・・・・・・」

ぐっ、と詰まったキニアンである。
何だかんだ言ったって、彼もこういったシチュエーションは頭の中でシミュレートしたクチなのだ。
それでも、せがまれてキスをするというのが何だかイタダケナイ。
黙っていると、女王様はもうひとつ提案してきた。

「自分からキスするのと、ぼくに砂浜へ押し倒されて砂だらけの状態でキスされるのと、どっちがいい?」

どっちにしてもするんですか・・・と思ったキニアンである。
当然だ。
女王様の言葉は絶対なのだから。
ほら、と夕日に銀髪を赤く染めて目を瞑るカノンは、それはもう、文句ナシに可愛いわけで。
こんな脅迫めいたおねだりさえなければ、『イイ雰囲気』を作って自分から、と考えないでもなかったわけだが、どうしてこの女王様はいつも自分の先を行くのか。
しばらく迷っていたキニアンだったが、やがて諦めたように嘆息し、素早くカノンの頬に唇を落とした。

「──・・・ア~リ~ス~・・・」

そこじゃないだろう、と目で語るカノンに、キニアンは「勘弁してくれ」と首を振った。
カノンは深くため息を吐き、己の頭の中の『調教リスト』に、『乞われたら喜んでキスをする』という項目も付け加えた。
まだまだ、前途多難の『彼氏改造計画』である。
父によく似た雰囲気を持っているキニアンなのだから、ああいう風に立派な下僕に仕立て上げることが可能なはずなのだ。
ただ、今はちょっと思春期特有の無駄なプライドが邪魔をしているだけなのである。

「じゃあ、お姫様抱っこ」
「え・・・」
「お姫様抱っこで、アリス海の中入っていって」
「えっ!」
「最低、膝まで水に浸かってね?」
「──えぇっ?!」
「だって、せっかく綺麗な海なのに、ここからじゃよく見えないんだもん」
「・・・夏にでも来ればいいだろうが」
「混んでるからヤだ」
「仕方ないだろう?」

カノンは頬を膨らませた。

「・・・分かった。海水パンツ一丁で波打ち際で水遊びしてるぼくが男どもの悪しき欲望の的になっちゃえばいいって思ってるんでしょ」
「──はぁ?! 何だよ、それ」
「盗撮とかバンバンされて、闇で売り払われて、あーんなことや、こーんなことに使われちゃうんだ」
「・・・・・・」
「ぼくの知らないところで、ぼくの身体が穢されていっても、アリス平気なんだ・・・」

うるうると涙目になって震えているカノンを見てキニアンはさっさと靴や靴下を脱ぐと、身長の割りに軽い身体をひょい、と抱き上げた。
若干驚いて目を瞠ったカノンだったが、見下ろした緑の瞳が真剣そのものでそちらの方がびっくりした。

「ちゃんと掴まってろよ」
「・・・うん」

こくり、と頷くと、カノンはキニアンの首にきゅっと抱きついた。
静かに打ち寄せる波に、足首まで浸かる。
その冷たさに、カノンを抱き上げる腕に力を込めた。

「・・・アリス、怒ってる・・・?」
「怒ってないよ」
「ほんと・・・?」
「ほんと」
「・・・・・・」

じっと恋人の顔を見つめたカノンは、耳元で呟いた。

「・・・嫌いになっちゃ、やだよ?」

唐突なその台詞に、目を瞠るキニアン。

「アリスの一番は、ぼくじゃなきゃダメなんだからね・・・?」

何を今更、と思わないでもないキニアンだったが、もう半ば以上水平線に沈んだ夕日を真っ直ぐに見つめて答えた。

「──Yes, Her majesty.

言えば、カノンは顔を上げて微笑んだ。
そして、ちゅっ、とキニアンの唇に己のそれを重ねたのだ。
危うくバランスを崩しかけたキニアンだったが、寸でのところで何とか堪える。

「──あっぶないな!」
「だって、したかったんだもん」
「陸地ならともかく、こんなところでするなよ!」
「さっきアリスしてくれなかったもん」

ぷくっと頬を膨らませる女王様に、キニアンは呆れた顔を向けた。

「お前も相当俺のこと好きだよな」
「うん」
「・・・・・・」
「何そのびっくりした顔。ぼくが好きでもない男と付き合ったり、バイクのリアに乗せてくれ、とか言うと思ってたわけ?」

ちょー傷つく、とご立腹の女王様に、「悪い」という言葉が自然と口をついて出た。
とりあえず身体が冷えてきたので、「戻ってもいいよ」という女王様のお言葉に従って砂浜に戻る。
濡れた足に砂が張り付いて気持ち悪い。
手や足を洗う場所があったので、そこへ赴き足を洗って靴を履く。
そこからまた波打ち際まで戻って、夕日が沈む様を見ていた。

「あ~あ、沈んじゃった」

夕日は、沈み出すと水平線から引っ張られているかのような速さで沈んでいく。
空は、瞬く間に藍色に染まった。

「でも、綺麗だった。──ありがとう」

素直に礼を言って笑顔を向けてくる女王様に、キスをした──今度は、ちゃんと唇に。
何で今更、という顔をしてくる女王様だったが、なるほど、と気づいたらしい。

「暗くなってからするなんて、アリスや~らし~」
「・・・・・・煩いな」

ぶっきらぼうな口調でそう返すと、キニアンは「帰るぞ」と踵を返した。
不満そうな声を上げるカノンだったが、キニアンには『シェラさんが心配しないうちにカノンを無事に送り届ける』という大事な使命があるのだ。
来たとき同様ヘルメットを被せてやろうとすると、カノンが俯き加減で服の裾を引いてきた。

「何だ」
「うん・・・あのね、ちょっとだけでいいから、遠回りして帰ろ・・・?」
「シェラさん、心配するぞ」
「だから、ちょっとだけ」
「でも」
「・・・だって、これ、最後なんだもん」

バイクに乗せてもらえるのは、これが最後。
約束したのだから、それは守らないといけない。
恋人の見ている景色と風を感じることが出来るのは、これが最後。
だったら、もう少しだけ。
裾を握る手に力を込めれば、頭上からため息が落ちてきた。
怒られるのかな、と唇を噛んだカノンだったが、頭を撫でられて顔を跳ね上げた。

「・・・また、乗せてやるよ」
「──え?!」
「あ、でも、基本は車だからな」
「・・・いいの?」
「楽しかったんだろう?」
「──うん、すごく!!」

もう暗くなっていたが、それでもカノンのきらきらとした笑顔ははっきりと見えて。

──この顔には弱いんだよなぁ・・・。

どんなカノンにだって弱いキニアンだったが、女王様の笑顔が無敵であることは間違いない。

「じゃあ、帰るぞ」
「うん。──でも、遠回りはするんだからね?」

もうちょっと一緒にいよう? という女王様の言葉の裏をどれだけ汲み取れているのかは分からないが、キニアンはヘルメットを被せたカノンを抱き上げてリアに乗せると、バイクに跨りエンジンをかけた。

「──Yes, Her majesty.」

背中にぬくもりを感じての小旅行に、彼自身も大きな満足と幸福を覚えていた。



**********

これで、数日後キニアンからカノンにヘルメットのプレゼントがあるわけですよ。校内で。公衆の面前で。「ロッカーにでも入れておけ」という言葉とともに。
ふふふふふ。『彼氏改造計画』、着々と進んでおります。
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