小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
続いたらしい・・・
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どれくらい、そうしていただろうか。
時計を確認すると、せいぜい2、3分だったのだが、もっと長いことそうしていた気がする。
「・・・・・・心臓の音、する」
ぽつり、と呟く声が、直接身体の内側から聴こえるようだった。
「まぁ、生きてるからな」
当たり前のことを答えてみて、馬鹿なことを言ったものだ、とため息が零れる。
けれど、カノンは軽く背中に回していた腕に力を込めた。
普段なら間違ってもしてもらえない可愛らしい仕草に、キニアンは煩く喚く心臓をどうしようか、と狼狽した。
これだけ密着しているのだから、気づかれたら、「ばっかじゃないの」とか言われるに決まっている。
「・・・落ち着く」
けれど、返ってきたのはこれまた可愛らしい台詞で、我が耳を疑ったものである。
もう、本当にどうしていいのか分からず、一生懸命回らない頭をフル回転させ、少ない語彙の中から何か良さそうな単語を引っ張り出す。
「・・・それは、何より」
けれど出てきたのは自分でも言った直後に「最悪だ・・・」と絶望するくらい馬鹿馬鹿しいものだった。
これは真剣にイロイロ本を読んで勉強した方がいいんじゃないだろうか、そうだ、確かライアンが「詩集を読むと女の子にモテる」と言っていた、じゃあ今度読んでみよう、とか思った。
「──ぷっ」
けれど、そんな必死なキニアンの思考すら笑うように、カノンが吹き出した。
「・・・え?」
「ちょーウケる」
「・・・・・・」
言葉のわりにはやはりあまり元気がないのだけれど、それでも、笑ってくれてほっとした。
女王様は女王様だけれど、カノンはやはり笑っている顔が可愛いと思うのだ。
「──あー、すっきりした! ありがと」
そう言って上げられた顔にはトレードマークの笑顔があって、それが作ったものでないと分かったからこそキニアンも僅かに表情を緩めた。
「・・・いや・・・別に、何もしてないけど・・・」
「落ち着いた」
「そっか」
「うん」
にっこり笑ったカノンは、そっと身体を離した。
名残惜しい気もしたキニアンだったが、そこは大人しくしておいた。
「じゃあ、ぼく帰るね」
「妹は?」
「ソナタ? とっくに帰ったよ?」
「え、じゃあお前ひとりか?」
「うん。もちろん」
「・・・・・・」
少し考える顔になったキニアンは、「ちょっと待ってろ」と言った。
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もうちょっと続いてみる。
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