小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
自分は天才なんじゃねーか、と思うことはありませんか?(コラ)
昨日、ちょっとオリジナルの方の話を読み返していたら、意外と面白くて(笑)もう、たぶん年単位で更新してないんですけど(笑)「『05』って書いてあるけど、5月って、何年の5月だよ」みたいな(笑)
橘の書く攻めはヘタレるというジンクスが実しやかにささやかれるくらいですから(←いや、事実だし)、オリジナルの方でも、超絶美形の実力者(けんとまほーのふぁんたじーなので)であるはずの男が、受け(候補)のうるきゅんな涙にヤられてクラクラしている様子などが散見しております・・・。なぜだ・・・なぜかっこいいままでいられない・・・。
いや、違うんだ。言い訳をさせてもらえるなら、橘の書く攻めは、受けを愛し過ぎているんだ、そうだ、そうだ、そうなんだ・・・もう、べんけーのナキドコロなんて話では収まらないくらいの弱みなんだ、そうなんだ。愛が溢れているのだよ、ふふふふふ・・・(コラ)
そんなわけで、久々にオリジナルも書きたいなー、なんて、思っちゃったら最後なんですけどねー。どこぞの少女向け小説家のように、いろんなところに手を出して全部未完、みたいなことになるわけです。でも、まぁ、橘の場合は仕事じゃないし(笑)自分と、時間があるときに読みに来てくださるお客様がそのとき楽しければいいわけで。
なんだかんだいって、最近平和だよなー。余計な情報をシャットアウトすると、こんなにも人は穏やかでいられるのか、というくらいここ1年くらい平和だ(笑)また、サイトはともかく、小ネタは平和な話ばっかり書いてるからなー(笑)
可愛い子たちの穏やかでハッピーな生活を描いて、私もハッピーになるんだぜ☆
・・・という、相変わらず長い前フリのあとに、小ネタいってみよ。
昨日、ちょっとオリジナルの方の話を読み返していたら、意外と面白くて(笑)もう、たぶん年単位で更新してないんですけど(笑)「『05』って書いてあるけど、5月って、何年の5月だよ」みたいな(笑)
橘の書く攻めはヘタレるというジンクスが実しやかにささやかれるくらいですから(←いや、事実だし)、オリジナルの方でも、超絶美形の実力者(けんとまほーのふぁんたじーなので)であるはずの男が、受け(候補)のうるきゅんな涙にヤられてクラクラしている様子などが散見しております・・・。なぜだ・・・なぜかっこいいままでいられない・・・。
いや、違うんだ。言い訳をさせてもらえるなら、橘の書く攻めは、受けを愛し過ぎているんだ、そうだ、そうだ、そうなんだ・・・もう、べんけーのナキドコロなんて話では収まらないくらいの弱みなんだ、そうなんだ。愛が溢れているのだよ、ふふふふふ・・・(コラ)
そんなわけで、久々にオリジナルも書きたいなー、なんて、思っちゃったら最後なんですけどねー。どこぞの少女向け小説家のように、いろんなところに手を出して全部未完、みたいなことになるわけです。でも、まぁ、橘の場合は仕事じゃないし(笑)自分と、時間があるときに読みに来てくださるお客様がそのとき楽しければいいわけで。
なんだかんだいって、最近平和だよなー。余計な情報をシャットアウトすると、こんなにも人は穏やかでいられるのか、というくらいここ1年くらい平和だ(笑)また、サイトはともかく、小ネタは平和な話ばっかり書いてるからなー(笑)
可愛い子たちの穏やかでハッピーな生活を描いて、私もハッピーになるんだぜ☆
・・・という、相変わらず長い前フリのあとに、小ネタいってみよ。
**********
「「──もーいっかい!」」
イェイ! とノリノリなのは、シェラとライアンだ。
女性歌手の歌を歌っているカノンに、「「かーわーいーいー」」を連発するふたり。
キュートな女の子の歌が異様に似合うカノンは、歌い終わると「へへっ」とはにかんだ笑顔を見せた。
そして、少し心配そうな顔で隣に座る彼氏を見遣ったのである。
「・・・耳、平気?」
音楽一家に生まれ育ち、自身も将来は音楽家を目指す少年の耳は、一説によると犬笛すら聞き取ってしまうというほどに発達している──まぁ、犬笛の場合、本能なのではないか、という説もあるが。
都会の喧騒ですら頭痛の種になるというのだから、さして広くもない密室でのカラオケは、相当堪えるのではないか、と思うわけだ。
普段の生活では、耳に入ってくる音を制限しているらしい。
自己防衛本能の一種ということだったが、それでも普通の人間と同じようには聴こえるのだ。
カノンの心配に反して、普段無口で無愛想で空気も読めないくせに、人一倍やさしくて変なところで気を使う少年は、「平気だよ」とちいさく笑みを浮かべた。
「上手いんだな」
「・・・ありがと」
お世辞なんて言える男ではないから、きっと正直な感想なのだろうけれど、音に関してはプロフェッショナルにそう言われると何だか照れる。
「アリスは? 歌わないの?」
「あー・・・俺、歌苦手なんだ」
「そうなの?」
「この声も好きじゃないし」
「えー、イイ声じゃん」
ウーロン茶片手に、次に歌うソナタにマイクを渡してやりながら、ライアンはきょとん、とした顔になった。
「低めでかっこいいと思うけどなー」
美女然とした外見とは裏腹にハスキーな声のライアンに、キニアンはうーん、と眉を寄せた。
「何ていうか、このちょっと篭った感じが・・・」
「「「コヤス系イケメンヴォイス!」」」
声を揃えたシェラとソナタとライアンに、キニアンは「誰だ、それ?」という顔で首を捻っている。
ね~、ときゃっきゃ言っていた3人だったが、ソナタの歌う曲の前奏が流れたのでそちらに意識を傾ける。
「いーえるてぃーか~。似合う、似合う」
「イキモノガカリとか、マイラバとか可愛いよね」
「失礼ですけど、シェラさん、結構若い曲知ってるなぁ~」
「子どもたちの見たり聴いたりするものはひと通り」
「母の鑑だなぁ」
「たくさん話したいから」
家族の会話は大切だ、と微笑む聖母は、こういう場所が驚くほど似合わない男に目を向けた。
「どっかの誰かさんがどう思ってるかは知らないけど」
軽い厭味だったが、貴族然とした美貌の男は持て余し気味の長い脚を組んで、子どもたちの歌に耳を傾けている。
家族以外のことにはびっくりするほど興味関心のない──贔屓目に見れば極度の『マイホームパパ』な男は音楽鑑賞が趣味で、子どもたちにピアノやヴァイオリンを教えたりもしている。
もちろん本職のようにはいかないが、激務の合間に良い気晴らしになるらしい。
そんな男だから、カラオケとはいえまったく関心がない、ということはないのだろうけれど。
「こういう曲、知ってるか?」
「知ってるよ」
歌を邪魔しないように配慮されたシェラのちいさな問いかけに、ヴァンツァーは短く答えた。
ほぅ、と目を丸くしたシェラだった。
それに対して、ヴァンツァーは「家族の好みはひと通り」とシェラの真似をして口許に笑みを浮かべた。
「ふぅん」
何かを考える顔つきになったシェラだったが、ちょうどソナタの歌に集中しようと思い、その話はそこで途切れた。
「じゃあ、次ライアンね」
「おれ? うーん、何歌おうかなぁ」
「カラオケって、よく行く?」
「ん~、友達とはね。騒げるし、飲み放題あるし、フリータイムで入れば長い時間遊べるから──まぁ、あんまり『歌を聴く』って感じじゃないけどね。みんな好き勝手喋ってるし」
「どんなの歌うの?」
興味津々といった感じに瞳を輝かせるソナタに、ライアンはくすっと笑った。
「どんなのがいい?」
「得意なのは?」
「何でも歌うよ」
「──すごーい! 上手いんだ?」
「下手ではない、かな」
言うわりには、その華やかな美貌は自信に満ちていた。
ほわぁぁぁ、と嬉しそうな顔になったソナタは、じゃあ、じゃあ、と年上の彼氏におねだりをした。
「女の子口説くときに歌う歌!」
これには思わず破顔したライアンだった。
それ以外の面々は目を真ん丸にしている。
「ソナタちゃんらしいなぁ」
「そうかな?」
「そうだよ。だって、それって他の女の子口説くときに、どういう歌を歌ってたのか、ってことでしょう?」
「うん」
「そういうのって、聴きたくなくない?」
「そうなの?」
よく分かんない、と首を捻る少女に、ライアンは碧眼を細めた。
「じゃあ、ソナタちゃんのために、本気出しちゃおうかな」
おお、何かすごそう! とパチパチ手を叩いたソナタにまた笑みを向けると、ライアンは曲を入れた。
流れるジャズに、流行の歌は知らなくても、こういった曲調には興味のあるキニアンも意識を向けた。
──Fly Me to the Moon
『詩人は簡単なことだって小難しい言い回しをするけれど、鈍感なきみのために通訳しながらいくよ』、という歌詞だ。
『月に連れて行って』は、つまり『手を繋いで、キスをして』
『心を歌で満たして永遠に歌わせて』は、つまり『ずっときみを待っていた』
『慕っているのはきみだけ』つまり・・・その・・・『愛してる!』
歌い終わると、同じ顔をした母娘は「「かっこ可愛い~」」を連発した。
カノンまで、ちょっと羨ましそうな顔をしている。
それを目撃してしまって些かむっとしたキニアンだったが、確かにかっこいい。
ほんの少し照れたような可愛さを滲ませているのが、またわざとらしくなくて巧いのだ。
あれをすぐ隣で聴かせられたら、女のひとりやふたり簡単に落とせるかも知れない。
そんなことを考えていたら、菫色の瞳がじっとこちらを見つめてきていて、ビクッ、として身を引いた。
「・・・カノンさん?」
「歌って」
「・・・はい?」
「アリスも歌って」
「いや、だから俺は」
「いいから歌って」
「・・・無理だって」
確かにかっこいいかも知れないが、あんな恥ずかしい歌を人前で歌えるわけがないだろう、と口には出さないが正直な緑の瞳が物語っている。
そんなキニアンを見て、シェラはくすくす笑った。
「今の、ライアンの歌っていうより、カノンとアー君の歌だね」
「あ、おれも思った。アー君鈍感だからなー」
「そうそう」
ねー、と合意するふたりに、キニアンは首を傾げた。
だからね、とシェラが天使の笑みを浮かべる。
「『つまり、ぼくもアリスのかっこいいところ見たいんだ!』っていう、メッセージ?」
「──なっ、ちがっ!」
「お兄ちゃん、ほんと可愛いなー」
「ぎゅー、ってして、いっぱいキスしたくなるよね」
「なるなる~」
赤い顔で否定しようとしているカノンをよそに、シェラたちはとても楽しそうだ。
「か、勝手なこと言わないでよ! ぼく、そんなこと思ってないんだから!」
「あー、分かる、分かる。『ホントはライアンなんかより、アリスの方がずっとずっとかっこいいんだから!』ってことだよね?」
「ち、違うったら!!」
あーもーヤバい可愛い、とか言っているライアンにポコポコ怒っているカノンの頭を、若葉色した瞳がじっと見つめている。
「・・・そうなの?」
「違うって言ってるでしょ?! 真に受けないでよ!!」
「あぁ、うん・・・だよな」
苦笑した少年に、『なぜそこで引き下がる!』とやきもきして叫びたくなった外野たち。
ヴァンツァーひとりが、素知らぬ顔をして珈琲を啜っている。
こういう場所のアルコールは、珈琲や紅茶以上にイタダケナイ。
珈琲もさすがにハンドドリップではないが、インスタントでないだけマシだった。
「じゃあ、俺歌わな」
「でも歌って」
「え・・・」
何でだよ、という顔をした少年に、無敵の女王様はずいっ、とマイクを差し出した。
「アリスが女の子口説けるなんて思ってないから、ああいうのじゃなくていい」
「・・・何か怒ってる・・・?」
「は? 怒るわけなくない?」
「いや、まぁ、そうなんですけど・・・」
「早く歌ってよ」
引く気などまったくない女王様に、シェラたちはやはりくすくす笑って、
『ぼく以外の女の子口説いた歌なんて聴きたくないんだから』
『アリスのかっこいいところ見たいの!』
『早くして、我慢出来ない!』
だの何だのアフレコしているのに、カノンはやはり「違うっ!」と噛み付いた。
途端に、「「「かーわーいーいー」」」という三重奏。
ぷぅ、と頬を膨らませたカノンにマイクを握らされたキニアンは、それはそれは深くため息を零した。
「・・・何でもいいんだな?」
「──うん」
「みんな、知らないかも知れないぞ?」
「いいよ」
はぁ、ともうひとつため息を吐くと、キニアンは曲を選択した。
**********
午後の眠気覚ましに。
続く・・・かも知んない。
どうせなら、ヴァンツァーにも歌わせよう。
「「──もーいっかい!」」
イェイ! とノリノリなのは、シェラとライアンだ。
女性歌手の歌を歌っているカノンに、「「かーわーいーいー」」を連発するふたり。
キュートな女の子の歌が異様に似合うカノンは、歌い終わると「へへっ」とはにかんだ笑顔を見せた。
そして、少し心配そうな顔で隣に座る彼氏を見遣ったのである。
「・・・耳、平気?」
音楽一家に生まれ育ち、自身も将来は音楽家を目指す少年の耳は、一説によると犬笛すら聞き取ってしまうというほどに発達している──まぁ、犬笛の場合、本能なのではないか、という説もあるが。
都会の喧騒ですら頭痛の種になるというのだから、さして広くもない密室でのカラオケは、相当堪えるのではないか、と思うわけだ。
普段の生活では、耳に入ってくる音を制限しているらしい。
自己防衛本能の一種ということだったが、それでも普通の人間と同じようには聴こえるのだ。
カノンの心配に反して、普段無口で無愛想で空気も読めないくせに、人一倍やさしくて変なところで気を使う少年は、「平気だよ」とちいさく笑みを浮かべた。
「上手いんだな」
「・・・ありがと」
お世辞なんて言える男ではないから、きっと正直な感想なのだろうけれど、音に関してはプロフェッショナルにそう言われると何だか照れる。
「アリスは? 歌わないの?」
「あー・・・俺、歌苦手なんだ」
「そうなの?」
「この声も好きじゃないし」
「えー、イイ声じゃん」
ウーロン茶片手に、次に歌うソナタにマイクを渡してやりながら、ライアンはきょとん、とした顔になった。
「低めでかっこいいと思うけどなー」
美女然とした外見とは裏腹にハスキーな声のライアンに、キニアンはうーん、と眉を寄せた。
「何ていうか、このちょっと篭った感じが・・・」
「「「コヤス系イケメンヴォイス!」」」
声を揃えたシェラとソナタとライアンに、キニアンは「誰だ、それ?」という顔で首を捻っている。
ね~、ときゃっきゃ言っていた3人だったが、ソナタの歌う曲の前奏が流れたのでそちらに意識を傾ける。
「いーえるてぃーか~。似合う、似合う」
「イキモノガカリとか、マイラバとか可愛いよね」
「失礼ですけど、シェラさん、結構若い曲知ってるなぁ~」
「子どもたちの見たり聴いたりするものはひと通り」
「母の鑑だなぁ」
「たくさん話したいから」
家族の会話は大切だ、と微笑む聖母は、こういう場所が驚くほど似合わない男に目を向けた。
「どっかの誰かさんがどう思ってるかは知らないけど」
軽い厭味だったが、貴族然とした美貌の男は持て余し気味の長い脚を組んで、子どもたちの歌に耳を傾けている。
家族以外のことにはびっくりするほど興味関心のない──贔屓目に見れば極度の『マイホームパパ』な男は音楽鑑賞が趣味で、子どもたちにピアノやヴァイオリンを教えたりもしている。
もちろん本職のようにはいかないが、激務の合間に良い気晴らしになるらしい。
そんな男だから、カラオケとはいえまったく関心がない、ということはないのだろうけれど。
「こういう曲、知ってるか?」
「知ってるよ」
歌を邪魔しないように配慮されたシェラのちいさな問いかけに、ヴァンツァーは短く答えた。
ほぅ、と目を丸くしたシェラだった。
それに対して、ヴァンツァーは「家族の好みはひと通り」とシェラの真似をして口許に笑みを浮かべた。
「ふぅん」
何かを考える顔つきになったシェラだったが、ちょうどソナタの歌に集中しようと思い、その話はそこで途切れた。
「じゃあ、次ライアンね」
「おれ? うーん、何歌おうかなぁ」
「カラオケって、よく行く?」
「ん~、友達とはね。騒げるし、飲み放題あるし、フリータイムで入れば長い時間遊べるから──まぁ、あんまり『歌を聴く』って感じじゃないけどね。みんな好き勝手喋ってるし」
「どんなの歌うの?」
興味津々といった感じに瞳を輝かせるソナタに、ライアンはくすっと笑った。
「どんなのがいい?」
「得意なのは?」
「何でも歌うよ」
「──すごーい! 上手いんだ?」
「下手ではない、かな」
言うわりには、その華やかな美貌は自信に満ちていた。
ほわぁぁぁ、と嬉しそうな顔になったソナタは、じゃあ、じゃあ、と年上の彼氏におねだりをした。
「女の子口説くときに歌う歌!」
これには思わず破顔したライアンだった。
それ以外の面々は目を真ん丸にしている。
「ソナタちゃんらしいなぁ」
「そうかな?」
「そうだよ。だって、それって他の女の子口説くときに、どういう歌を歌ってたのか、ってことでしょう?」
「うん」
「そういうのって、聴きたくなくない?」
「そうなの?」
よく分かんない、と首を捻る少女に、ライアンは碧眼を細めた。
「じゃあ、ソナタちゃんのために、本気出しちゃおうかな」
おお、何かすごそう! とパチパチ手を叩いたソナタにまた笑みを向けると、ライアンは曲を入れた。
流れるジャズに、流行の歌は知らなくても、こういった曲調には興味のあるキニアンも意識を向けた。
──Fly Me to the Moon
『詩人は簡単なことだって小難しい言い回しをするけれど、鈍感なきみのために通訳しながらいくよ』、という歌詞だ。
『月に連れて行って』は、つまり『手を繋いで、キスをして』
『心を歌で満たして永遠に歌わせて』は、つまり『ずっときみを待っていた』
『慕っているのはきみだけ』つまり・・・その・・・『愛してる!』
歌い終わると、同じ顔をした母娘は「「かっこ可愛い~」」を連発した。
カノンまで、ちょっと羨ましそうな顔をしている。
それを目撃してしまって些かむっとしたキニアンだったが、確かにかっこいい。
ほんの少し照れたような可愛さを滲ませているのが、またわざとらしくなくて巧いのだ。
あれをすぐ隣で聴かせられたら、女のひとりやふたり簡単に落とせるかも知れない。
そんなことを考えていたら、菫色の瞳がじっとこちらを見つめてきていて、ビクッ、として身を引いた。
「・・・カノンさん?」
「歌って」
「・・・はい?」
「アリスも歌って」
「いや、だから俺は」
「いいから歌って」
「・・・無理だって」
確かにかっこいいかも知れないが、あんな恥ずかしい歌を人前で歌えるわけがないだろう、と口には出さないが正直な緑の瞳が物語っている。
そんなキニアンを見て、シェラはくすくす笑った。
「今の、ライアンの歌っていうより、カノンとアー君の歌だね」
「あ、おれも思った。アー君鈍感だからなー」
「そうそう」
ねー、と合意するふたりに、キニアンは首を傾げた。
だからね、とシェラが天使の笑みを浮かべる。
「『つまり、ぼくもアリスのかっこいいところ見たいんだ!』っていう、メッセージ?」
「──なっ、ちがっ!」
「お兄ちゃん、ほんと可愛いなー」
「ぎゅー、ってして、いっぱいキスしたくなるよね」
「なるなる~」
赤い顔で否定しようとしているカノンをよそに、シェラたちはとても楽しそうだ。
「か、勝手なこと言わないでよ! ぼく、そんなこと思ってないんだから!」
「あー、分かる、分かる。『ホントはライアンなんかより、アリスの方がずっとずっとかっこいいんだから!』ってことだよね?」
「ち、違うったら!!」
あーもーヤバい可愛い、とか言っているライアンにポコポコ怒っているカノンの頭を、若葉色した瞳がじっと見つめている。
「・・・そうなの?」
「違うって言ってるでしょ?! 真に受けないでよ!!」
「あぁ、うん・・・だよな」
苦笑した少年に、『なぜそこで引き下がる!』とやきもきして叫びたくなった外野たち。
ヴァンツァーひとりが、素知らぬ顔をして珈琲を啜っている。
こういう場所のアルコールは、珈琲や紅茶以上にイタダケナイ。
珈琲もさすがにハンドドリップではないが、インスタントでないだけマシだった。
「じゃあ、俺歌わな」
「でも歌って」
「え・・・」
何でだよ、という顔をした少年に、無敵の女王様はずいっ、とマイクを差し出した。
「アリスが女の子口説けるなんて思ってないから、ああいうのじゃなくていい」
「・・・何か怒ってる・・・?」
「は? 怒るわけなくない?」
「いや、まぁ、そうなんですけど・・・」
「早く歌ってよ」
引く気などまったくない女王様に、シェラたちはやはりくすくす笑って、
『ぼく以外の女の子口説いた歌なんて聴きたくないんだから』
『アリスのかっこいいところ見たいの!』
『早くして、我慢出来ない!』
だの何だのアフレコしているのに、カノンはやはり「違うっ!」と噛み付いた。
途端に、「「「かーわーいーいー」」」という三重奏。
ぷぅ、と頬を膨らませたカノンにマイクを握らされたキニアンは、それはそれは深くため息を零した。
「・・・何でもいいんだな?」
「──うん」
「みんな、知らないかも知れないぞ?」
「いいよ」
はぁ、ともうひとつため息を吐くと、キニアンは曲を選択した。
**********
午後の眠気覚ましに。
続く・・・かも知んない。
どうせなら、ヴァンツァーにも歌わせよう。
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