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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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お残業。ま、残業代はきっちりいただきますよ。

**********

衣はこんがりキツネ色。
たらり、たらぁり、とソースをかけて。
銀のフォークがサックリ刺さり、小気味良い音に胸躍る。
サクサクサクッ、とナイフを入れれば、湯気がふわりと立ち上り。
追っ付け漂う玉ねぎと肉の甘い香り。
ふぅ~、ふぅ~と熱を冷まし、お口の中に入れましたれば──。

──はふっ、はふっ!

熱い、熱い──でも、美味しい!!
口の中に入れたことで、より強くひき肉と玉ねぎの甘みを感じ、ジュワリ、と広がる肉汁に相好が崩れるのを止められない。

「「くぅ~~~~~~~! 美味しい!!」」

さすがは双子。
カノンとソナタは同じようなポーズ──フォークとナイフをぎゅっと握りしめ、固く目を閉じ、手足をバタバタさせそうな勢い──で、同時に叫んだ。

「「──ビバ・メンチカツ!! シェラ、最高!!」」

頬を紅潮させ、可愛らしい顔に満面の笑みを浮かべているのを見たシェラは、とても幸せな気持ちになった。

「ふふ。ありがとう。たくさん食べてね。足りなかったらまた揚げるから」

言われなくとも! という勢いの双子だったのだけれど。
ひとつ目をあっという間に平らげ、ふたつ目のメンチカツを半分ほど食べたところで、パタリ、と手が止まった。

「──どうかしたの?」
「「・・・シェラ」」
「なぁに?」
「怒らないで聞いて欲しいんだ」

深刻そうな顔をするカノンに、シェラの菫色の瞳がきょとん、と丸くなった。

「うん。怒らないよ?」
「ちょっとお行儀の悪いこと、してもいい?」

ソナタまで真剣な顔をしている。
何だかちょっと怖くなったシェラである。

「・・・お行儀の悪いこと・・・?」
「「うん」」

こっくり同時に頷くところを見ると、双子の考えていることは同じらしい。
ゴクリ、と喉を鳴らしたシェラに、双子は声を揃えて言った。

「「──これ、手づかみで食べてもいい?!」」

なかなかお目にかかれないほど必死の形相に、シェラはパチパチと二度ほど瞬きをしてから、「どうぞ・・・」と呆気にとられたように呟いた。

「「──よっしゃー!!」」

ガッツポーズを決めた双子に、熱くないようにだろう、シェラはキッチンから紙ナプキンを持ってきて渡してやった。
双子は2個目のメンチカツを紙ナプキンでくるんではふはふ齧り。

「「んむっふ~~~~~~~~~あははははっ!!」」

盛大な含み笑いをしたと思ったら、今度はケラケラ笑い出す。

──・・・何か変なキノコでも入れただろうか・・・?

と、シェラは真剣に悩みそうになった。

「シェラ」

楽しそうに笑って、幸せそうな顔でメンチカツを頬張っている双子に釘付けだったシェラは、隣から聴こえてきた低音に、つい、

「──あ、いたのか」

と言ってしまった。
ほんの少し眉を寄せたヴァンツァーだったが、そんなシェラの態度はいつものことだ。
そんなことでめげるヴァンツァーではない。

「俺も、ちょっと試したいことがある」
「手づかみ?」
「いや・・・あぁ、いや、手づかみと言えば手づかみだが」
「何だ、はっきりしろ」

だいぶ双子と態度が違う、と思っても、そんなのはいつもの(ry

「これを──トーストに挟んで食べてみたい」

大真面目な顔をした美貌の男に、シェラは表情ひとつ変えずに「食べれば?」と告げた。
双子には甲斐甲斐しく紙ナプキンまで持ってきてあげてたのに、と思っても、それでこそのシェラだ。

「作って下さい」

仕事中だってこんな真剣な表情じゃないかも知れない、と思うような顔つきで頼まれ、シェラは渋々席を立つとキッチンへ向かった。
しかし、なんだかんだ言っても、ちゃんと揚げたてのメンチカツサンドを作ってやる辺り、シェラはきっと、たぶん、おそらく、ちょっとはヴァンツァーのことを好きなのだろう。

「どうぞ」

トーストしたパンに軽くマスタードを塗り、千切りにしたキャベツとソースを絡めたメンチカツを挟み、ザックリと包丁を入れて半分にしたものが、白い皿の上に置かれている。

「いただきます」

行儀よく挨拶をしたヴァンツァーは、両手でパンを掴み、この男にしては驚くほど大きな口を開けて

──ザクリッ。

とトーストを齧ったのである。

──あ、何かいい音した。

とヴァンツァーに注目していたシェラと双子たちだったのだが。

「・・・・・・」

二回ほど咀嚼したヴァンツァーが、彼にしては本当に珍しく行儀の悪いことに、パンを両手で持ったままテーブルに肘をついたのを見て瞠目した。
そのままガックリと項垂れてるのを見て、シェラは眉宇をひそめた。

「・・・なんだ。不味かったのか?」

不味くなるような材料は何も足していないんだが、と心配になる。
そんなシェラの横で、ヴァンツァーはゆるゆると頭を振り、やがてゆっくりと顔を上げた。

「・・・想像以上に美味くて、ちょっと放心していた」
「え」

確かに、軽く涙目だ。
きっとマスタードが強かったとか、そういうことではないのだろう。
ヴァンツァーはこう見えて、結構感動やさんなのである。
そんなヴァンツァーを見て、双子の喉がゴクリと鳴る。

「・・・シェラ。わたしもそれ食べたい」
「ぼくも」
「あ、うん」

ちょっと待ってて、と言って台所に向かったシェラは、ふたり分のメンチカツサンドを作ってやった。

「「──うぉっほーーーーーーーっ!! うははははっ!!」」

食べた双子は、シェラが軽く引くほどのハッスルぶりを披露した。

「・・・そんなに美味しいのか?」
「ほら」

口許に差し出されたのは、ヴァンツァーに作ってやったメンチカツサンドの半分だ。
いつもだったら恥ずかしくて絶対にごめんだったが、今は興味の方が先に立った。
一生懸命大きな口を開けて、ザクッ、と齧る。
菫色の瞳が大きく見開かれ、「むふんっ」とちょっと変な声が出たのはご愛嬌。

「「──シェラ天才!!」」

大絶賛の双子に、確かに今回ばかりは自画自賛したくなったシェラである。

「おかわり」

シェラが齧った分もペロリと平らげたヴァンツァーは、ずいっ、と空いた皿をシェラに向かって差し出した。
どんな料理だって──それこそ、苦手なピーマンの入った料理だって──残さず食べるヴァンツァーだったけれど、「美味しい、美味しい」と食べてもらえるのは料理人にとって無上の幸福だ。

「ぼくも!」
「わたしも!」
「──はいはい」

くすくす笑ったシェラは、今度は自分の分のサンドイッチも作り、楽しい夕飯のひとときを過ごしたのだった。


**********

決してお腹は空いてません(笑)
たまに、無性にメンチカツが食べたくなるときがあるのです。
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