小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
和みましょうよ、ね。
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夕食後にリビングで団欒の時間を過ごすのは、決まりごと。
結婚する前も、今も、それは変わらない。
「シェラ」
呼ばれて、口をつけていた紅茶のカップから顔を上げる。
手招きされて、僅かに首を傾げつつ、隣に席を移す。
「──こっち」
隣に座ろうとしたら、腰に手を添えられて、そのまま膝に乗せられた。
「──ヴァ」
「じっとしてろ」
「・・・・・・」
そう言って、背中から抱きしめられて、肩に顎が乗せられる。
何をするでもなく、ただ腹の前に手を回して、シェラの銀髪に頬を寄せて。
それだけ。
「・・・ヴァンツァー・・・?」
「うん?」
「・・・何してるんだ?」
「抱っこ」
「──・・・・・・」
何歳になっても妖艶な美貌を損なうことのない男の口から出るには相応しくないような気がする単語だ。
けれど、当の男は何だか機嫌が良さそうで、シェラは若干困惑の表情を浮かべた。
「・・・何でまた」
「落ち着く」
「──え?」
「こうしてると、落ち着く」
すり、と頬を摺り寄せてくる仕草が猫のようだ、と頭の片隅で思う。
「・・・こんなんで、落ち着くのか?」
「うん。あったかい」
「・・・・・・」
更に困惑の表情を深めたシェラだった。
まるで子どもだ。
「・・・そうか」
「うん」
けれど、悪い気はしなかったので──というか、確かに溶け合う体温が心地良かったので、シェラは身体から力を抜いた。
「・・・眠くなってきたな」
「寝てもいいぞ。ちゃんと寝室まで運ぶから」
「うん・・・・・・」
うとうとしながら頷いたシェラは、ヴァンツァーの肩に頭を預けた。
「おやすみ」
耳からするりと入ってきた穏やかな低音にちいさく頷くと、シェラはやさしい夢の世界へと旅立ったのである。
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平和が一番いいです。
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