ヤス子ちゃんの歌は、ほんと女の子目線多いよね(笑)しかも、ちょっと病んじゃってる系の女の子ね。ほんとこれ、『シャングリラ』書いた人の曲なのかなぁ?(笑)
さ。さわり部分いってみますかね。たぶん、ヴァンツァー死ぬほどかっこいいと思う(笑)
ジャズの流れる店内は、煩くはない程度に客のさざめきあう声が行き交う。
ダウンライトの明かりが灯された店内には、熱帯魚のいる水槽で仕切られたテーブル席と、カウンター。
足元が危うくなるほどに暗くはないが、隣の席の客の表情までは分からない。
それがまた、どこか秘密めいた雰囲気を醸し出している。
友人から「いい店がある」と言われ、シェラはその日この店に初めて来た。
連れはなく、ひとりきり。
件の友人とは、仕事の都合がなかなかつかず、電話やメールはするけれど、最近会っていない。
今日は何だか飲みたい気分で、雰囲気を偵察がてら店に入った。
躾の行き届いたスーツ姿の男に、カウンター席へと案内された。
ギムレットと、野菜スティックを注文する。
待つ間、そっと不躾にはならない程度に店内を見回した。
仕事帰りのビジネスマンの姿も見られるが、水商売の女の姿もある。
同伴出勤でもするのだろう。
高級クラブの多い界隈だから、そういった客も多いのだろう。
やがて運ばれてきたカクテルを、ひと口喉に流しこむ。
少し苦くて辛い酒は、美味いが頬を緩ませることはない。
そういう酒を頼んでもいない。
瑞々しい野菜を食んでも、零れるのはため息ばかり。
──ふわり、と。
近くを通った香りに、シェラは俯きがちだった顔を上げた。
椅子ひとつ分空けて隣に座った男は、低く、静かな声でスコッチを注文した。
男の、あまりにも淡麗な容貌にシェラは息を呑み、不躾とは分かっていてもじっと見つめてしまった。
さすがに気づいたのだろう、男はゆっくりと視線を流してきた。
薄暗い店内では黒とも見紛う濃紺の瞳は切れ長で、シェラは思わずぞくりと背中を震わせた。
ひと言も発することなく、見せつけるように形の良い唇を持ち上げた男の纏う官能的な香りと美貌に、酒のせいだけではなく思考は鈍っていった。
+++++
何杯飲んだだろう。
それほど強い方ではないのだが、言葉は多くないのに男の話術は巧みで、会話と緊張で渇いた喉を潤すためにシェラはグラスを重ねた。
ふたりの間に距離はなくなり、肩を並べて座っている。
とろん、と一瞬微睡みそうになって、シェラは緩く頭を振った。
怪訝そうな顔をされたので、何でもないと答えたけれど、藍色の瞳は射抜くようにこちらを見つめてくる。
居心地が悪くなって目を逸らそうとした瞬間を見計らったかのように、ふと男が微笑んだ。
酒なんて一滴も入っていなくても思考を麻痺させるのに十分なほど魅力的なそれ。
「つまらないのかと思った」
そんなことを言うから、慌てて首を振ったら、ふらり、と頭が傾いだ。
反動で男の肩に頭がぶつかってしまって、シェラはちいさな声で謝った。
その表情があまりに必死だったから、男はくすくすと笑った。
「あまり強くないのか?」
「・・・・・・」
「それなのに、結構飲んで・・・」
──悪い子だ。
ささやかれて、かっと頬が染まった。
怒りではない。
耳元の声があまりにも甘かったから、勝手に頬が──身体が熱くなっていく。
きゅっと目を閉じると、さらり、と髪に触れる指先を感じた。
耳まで赤くなっているだろう自分を省みて、ただただ恥ずかしくて首をすくめた。
ゆっくりと近づいてくる体温に、余計肩に力が入る。
くすくす、と。
耳元に吐息が触れて、「やめて」と言いたいのに言えない。
何だか泣きそうになって、シェラはゆっくりと顔を上げた。
じっとこちらを見ている男はやはり見たこともないくらいに綺麗な顔をしていて、胸が高鳴るのを感じた。
──否。
胸よりも、もっと直截的な・・・。
やがて、男はほとんど声には出さず、唇だけを動かしてこうささやいた。
──君を食べてしまいたい。
それもいい、と。
シェラはそう思った。
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ここからは、ちょっとここには載せられない内容(笑)
歌詞としては、この辺。
目を閉じたままそっと 唇近づけて
触れそうな距離のまま 「君を食べてしまいたい」
キレイな声をもっと 聞かせてくれないか?
毒針は糸を引き 「どこに刺して欲しいか言って」
ね。後半半分、ここに書いちゃいけない内容でしょ?(笑)まったくもう、ヤス子ちゃんったら。
あまり喋らず、罠を仕掛けているときのヴァンツァーは、めちゃくちゃかっこいいと思う。
結構自分で張った罠に自分でかかっちゃうからダメなんだよな・・・