小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
書きたくて、読みたくて、昨日の朝始業前に書いて下書きに保存したはずのカノキニ小ネタがないんです・・・
確かにとりあえず非公開で保存したのに・・・したのに、ないんです・・・哀しい・・・サーバで障害が起きていたという報告もないし、でも「正常に保存しました」的な文字が出てきたのに・・・
ちょっと思い出しながら書いてみます。でも、思い出せないから思いついたときに書くようにしてるんだけどな・・・。
確かにとりあえず非公開で保存したのに・・・したのに、ないんです・・・哀しい・・・サーバで障害が起きていたという報告もないし、でも「正常に保存しました」的な文字が出てきたのに・・・
ちょっと思い出しながら書いてみます。でも、思い出せないから思いついたときに書くようにしてるんだけどな・・・。
**********
──ただただ、あなたのいる毎日に感謝を。
婿入り道具は、チェロとピアノとヴァイオリン。
音楽家である彼らしい、とファロット一家は笑みを浮かべた。
ある日のこと、カノンはリビングに居並ぶその楽器たちを見て訊ねた。
「あのヴァイオリンも、マリアさんのみたいに高価なものなの?」
「いや、全然。安物」
無二の相棒はチェロだけれど、ピアノとヴァイオリンも彼の友人だ。
どの楽器だってとても綺麗な音を生み出す魔法の手が、カノンは大好きだった。
「ヴァンツァーの持ってるヴァイオリンの方が、ずっといいやつだよ」
「そうなの? だって、アリスが弾くと、どっちも綺麗な音するよ? 楽器って、よく分かんないなぁ・・・」
「俺のチェロ1本と、あのヴァイオリン2千本くらいが、同じ値段かな」
「にせ──?!」
さすがに仰天して、ソファの上で飛び上がったカノンだった。
何でもないような顔で、キニアンは珈琲片手に楽譜を捲っている。
「・・・練習用、とかなの・・・?」
「んー、っていうか、マリアのお下がりなんだ」
「──マリアさん?」
あれれ、と首を捻ったカノンだった。
天才の誉れ高いヴァイオリニストの使う楽器など、それこそ億単位のものだとばかり思っていた。
「マリアがヴァイオリンを始めたきっかけ。修道院のシスターからもらったんだって」
「修道院?」
「事故で両親亡くしてね」
「え・・・」
「あんまり詳しいことは聞いてないけど、10歳くらいとか言ってたかな。親戚も、なかなか引き取り手がなくて」
「あ、あの・・・」
そんな話を自分が聞いてしまってもいいのか、とおろおろし始めるカノンに気づいているのか否か、キニアンは構わず言葉を続ける。
「今じゃあんなに笑ったり怒ったり忙しい人だけど、誰とも口もきかなきゃ、部屋からも出ない日があったらしくて。見かねたシスターが気晴らしになれば、って渡したらしい」
「・・・・・・」
「楽器を『弾く』んじゃなくて、楽器と『お喋り』するんだって、マリアが教えてくれたんだけど。きっと、昔のマリアにとっては、数少ない話し相手だったんだろうな」
「・・・・・・」
俯いてしまったカノンにくすっと笑ったキニアンは、楽譜をテーブルの上に置くとソファに座っているカノンの隣にちょっと乱暴に腰掛けた。
びっくりして顔を上げたカノンをひょい、と抱き上げると、そのまま膝の上に乗せる。
「ぁ・・・ちょ、なに」
「俺、お前がいなかったら、こんなに真剣に楽器と向き合ってなかったかも知れない」
「アリス・・・?」
「今だから言うけど。初めてお前を見たとき、真っ先に【ラファエル】と話したんだ。あの子は誰だろう、また逢えるかな、って」
「・・・・・・」
「それからも、お前を見かけたり、話したりするたびに報告してさ」
ちいさく笑って、「おかしいだろ?」と言う青年に、カノンはふるふると首を振った。
「お前が俺のチェロ聴きたいって言い出さなきゃ、真剣に練習しなかったかもな」
「・・・そんなこと」
「いや、ほんとに。楽器に触ってる時間は落ち着くから好きだったけど、でも、『もっといい音にしたい』とか、『俺の演奏を聴いて喜んだ顔が見たい』とか。お前じゃなきゃ、きっと思わなかった」
こつん、と額を合わせられて、カノンの肩はちいさく震えた。
「ありがとう、カノン」
「・・・・・・」
「俺なんかでいいのか?」
「え?」
「自分で言うのもなんだけど、音楽以外なんにも取り柄ないし。ヴァンツァーとかライアンみたいに、気の利いたことも言えない」
「・・・・・・」
「しょっちゅう怒らせてるし」
くすくす、と。
最近とてもよく笑うようになった男の顔を、カノンはじっと見つめた。
「ぼくだって・・・」
「ん?」
「アリスがいなきゃ、もっと、ずっと・・・ずっと、いい子でいられたのに・・・」
「──カノン?」
「ぼく、最近シェラにまで我が儘言っちゃうし、父さんにもツンツンしちゃうんだからね」
ツンツンしてる自覚はあったのか、と妙なところで感慨深気な顔になるキニアン。
『自分だけ』から卒業してしまったのはちょっと寂しいけれど、でも、それが嫌なわけがない。
「いいじゃん。シェラも喜ぶだろうし、ヴァンツァーは『可愛いな』って思ってるよ」
「・・・だ、だから・・・あ、アリスの・・・」
『おかげ』なんだからね、と。
ぼそっ、とごくごくちいさな声で呟くのがあんまり可愛くて。
「あーもー。お前、最っ高に可愛いな!」
「なっ!!」
滅多に言われない台詞ときついくらいの抱擁に、カノンは頬を真っ赤に染めた。
「あ、あああ、あったり前じゃん!」
ふんっ! と悪態をついているようでいて、逆に抱きついてくる細い身体を思い切り抱き返し。
「──どうぞ、よろしくお願いします」
と呟いたキニアンに。
「・・・こちらこそ」
と、どこかぶっきらぼうな返事が返ったのだった。
**********
おー。何か書けた。マリアさんの話くらいまでが、消えた下書きです。たぶん。
俺の脳みそという名のハードをハイスペックにしたい・・・。
──ただただ、あなたのいる毎日に感謝を。
婿入り道具は、チェロとピアノとヴァイオリン。
音楽家である彼らしい、とファロット一家は笑みを浮かべた。
ある日のこと、カノンはリビングに居並ぶその楽器たちを見て訊ねた。
「あのヴァイオリンも、マリアさんのみたいに高価なものなの?」
「いや、全然。安物」
無二の相棒はチェロだけれど、ピアノとヴァイオリンも彼の友人だ。
どの楽器だってとても綺麗な音を生み出す魔法の手が、カノンは大好きだった。
「ヴァンツァーの持ってるヴァイオリンの方が、ずっといいやつだよ」
「そうなの? だって、アリスが弾くと、どっちも綺麗な音するよ? 楽器って、よく分かんないなぁ・・・」
「俺のチェロ1本と、あのヴァイオリン2千本くらいが、同じ値段かな」
「にせ──?!」
さすがに仰天して、ソファの上で飛び上がったカノンだった。
何でもないような顔で、キニアンは珈琲片手に楽譜を捲っている。
「・・・練習用、とかなの・・・?」
「んー、っていうか、マリアのお下がりなんだ」
「──マリアさん?」
あれれ、と首を捻ったカノンだった。
天才の誉れ高いヴァイオリニストの使う楽器など、それこそ億単位のものだとばかり思っていた。
「マリアがヴァイオリンを始めたきっかけ。修道院のシスターからもらったんだって」
「修道院?」
「事故で両親亡くしてね」
「え・・・」
「あんまり詳しいことは聞いてないけど、10歳くらいとか言ってたかな。親戚も、なかなか引き取り手がなくて」
「あ、あの・・・」
そんな話を自分が聞いてしまってもいいのか、とおろおろし始めるカノンに気づいているのか否か、キニアンは構わず言葉を続ける。
「今じゃあんなに笑ったり怒ったり忙しい人だけど、誰とも口もきかなきゃ、部屋からも出ない日があったらしくて。見かねたシスターが気晴らしになれば、って渡したらしい」
「・・・・・・」
「楽器を『弾く』んじゃなくて、楽器と『お喋り』するんだって、マリアが教えてくれたんだけど。きっと、昔のマリアにとっては、数少ない話し相手だったんだろうな」
「・・・・・・」
俯いてしまったカノンにくすっと笑ったキニアンは、楽譜をテーブルの上に置くとソファに座っているカノンの隣にちょっと乱暴に腰掛けた。
びっくりして顔を上げたカノンをひょい、と抱き上げると、そのまま膝の上に乗せる。
「ぁ・・・ちょ、なに」
「俺、お前がいなかったら、こんなに真剣に楽器と向き合ってなかったかも知れない」
「アリス・・・?」
「今だから言うけど。初めてお前を見たとき、真っ先に【ラファエル】と話したんだ。あの子は誰だろう、また逢えるかな、って」
「・・・・・・」
「それからも、お前を見かけたり、話したりするたびに報告してさ」
ちいさく笑って、「おかしいだろ?」と言う青年に、カノンはふるふると首を振った。
「お前が俺のチェロ聴きたいって言い出さなきゃ、真剣に練習しなかったかもな」
「・・・そんなこと」
「いや、ほんとに。楽器に触ってる時間は落ち着くから好きだったけど、でも、『もっといい音にしたい』とか、『俺の演奏を聴いて喜んだ顔が見たい』とか。お前じゃなきゃ、きっと思わなかった」
こつん、と額を合わせられて、カノンの肩はちいさく震えた。
「ありがとう、カノン」
「・・・・・・」
「俺なんかでいいのか?」
「え?」
「自分で言うのもなんだけど、音楽以外なんにも取り柄ないし。ヴァンツァーとかライアンみたいに、気の利いたことも言えない」
「・・・・・・」
「しょっちゅう怒らせてるし」
くすくす、と。
最近とてもよく笑うようになった男の顔を、カノンはじっと見つめた。
「ぼくだって・・・」
「ん?」
「アリスがいなきゃ、もっと、ずっと・・・ずっと、いい子でいられたのに・・・」
「──カノン?」
「ぼく、最近シェラにまで我が儘言っちゃうし、父さんにもツンツンしちゃうんだからね」
ツンツンしてる自覚はあったのか、と妙なところで感慨深気な顔になるキニアン。
『自分だけ』から卒業してしまったのはちょっと寂しいけれど、でも、それが嫌なわけがない。
「いいじゃん。シェラも喜ぶだろうし、ヴァンツァーは『可愛いな』って思ってるよ」
「・・・だ、だから・・・あ、アリスの・・・」
『おかげ』なんだからね、と。
ぼそっ、とごくごくちいさな声で呟くのがあんまり可愛くて。
「あーもー。お前、最っ高に可愛いな!」
「なっ!!」
滅多に言われない台詞ときついくらいの抱擁に、カノンは頬を真っ赤に染めた。
「あ、あああ、あったり前じゃん!」
ふんっ! と悪態をついているようでいて、逆に抱きついてくる細い身体を思い切り抱き返し。
「──どうぞ、よろしくお願いします」
と呟いたキニアンに。
「・・・こちらこそ」
と、どこかぶっきらぼうな返事が返ったのだった。
**********
おー。何か書けた。マリアさんの話くらいまでが、消えた下書きです。たぶん。
俺の脳みそという名のハードをハイスペックにしたい・・・。
PR
この記事にコメントする