小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
なシェラたんが、友人との会話の中から生まれました。いや、昨日会社の健康診断だったんですけど、採血がなかなか出来なくて。私の腕は血管が深い場所にあるので、取りづらいんですって。取れる人は取れるんですけどね。友人は取りやすいそうですが、たまたま当たった看護師が「あれ? あれ???」な人だったらしく。針刺してから中でグリグリやられると、痛いんですよねぇ・・・。
そんなシェラたん。
そんなシェラたん。
**********
「あ・・・あれ? あれれ???」
困った顔で首を傾げている看護師が、天使みたいな顔した美人でなければ、殴っていたかも知れない。
ナジェックは心からそう思った。
大企業の社長令息であり、30そこそこで専務の地位にいる自分が、なぜこんな痛い目に遭わなければならないのか。
この病院は彼の会社と提携しており、定期健康診断に使っているのだが、一斉健診の時期に時期に多忙だった彼は、こうして後日個別に病院に連絡を取って来ていた。
今日も今日で仕事は山積しており、眉間に皺を寄せながら順番を待っていたのだが、担当が銀髪ポニーテールのミニスカナースだと見るとデレデレと鼻の下を伸ばしたのだった。
新人なのかも知れない。
採血の針をじーーーーっと見つめ、「よしっ!」と気合を入れている時点で嫌な予感がしたのだ。
案の定、腕に触れては首を傾げていた。
それは、針を刺してからも続いたのだ。
「あ・・・あの、ごめんなさい・・・痛いですか・・・?」
潤んだ菫色の瞳で訊ねてくる看護師に「だ、大丈夫だよ」と虚勢を張って笑いかけてやると、ほっとしたように口許が綻んだ。
もう何だかそれだけで仕事の疲れも癒されていく気がしたナジェックだったが、次の瞬間「──い゛っ?!」と思わず声を上げてしまった。
「あっ!! ご、ごめんなさい!!」
いや、謝らなくていいからとりあえず針を抜いてくれ、と思ったナジェックだった。
「あれ・・・あれ・・・おかしいなぁ・・・確かに見つけたと思ったのに・・・」
「・・・俺、あんまり取りづらいって言われないんだけどね」
「そうですよねぇ・・・見つけたのに、どこに隠れちゃったんだろう・・・恥ずかしがらないで出ておいで~」
仔犬でも探すように眉を下げたミニスカナースは、「じゃあ、左手出して下さい」と告げてきて、ナジェックはヒクリ、と頬を引き攣らせた。
しかし、担当を変えてもらって、腕は良かったとしても、年増のオバサンとかじゃ気分が萎えるし・・・と覚悟を決めて左腕を出したナジェックだった。
白衣の天使は、駆血帯を左につけ替えて血管を探り出したが、やはり首を傾げている。
もう嫌な予感しかしなくて、やはり担当を替えてもらおうと声をかけようとしたときのこと。
「──おい、いつまでかかっている」
低い声が、仕切りのカーテンの向こうから聞こえてきた。
シャッ、という音とともにカーテンが開くと、その奥には白衣の男。
男の姿を見たとき、ナジェックは思わず息を飲んだ。
ナジェックは自他共に認める女好きだったが、しかし、その男を見た途端、頬が染まったような気がしたのだ。
それくらい、男の美貌は圧倒的であった。
眼鏡の奥の冷たそうな瞳がまたイイ。
顔の美しさもさることながら、背が高く、白衣の下の肉体はかなり鍛えられていることが分かる。
速い心拍が、採血の失敗によるものだけとはどうしても思えなくて戸惑うナジェック。
「──あ、おに・・・先生!!」
きらきらと瞳を輝かせ、頬を薔薇色に染める看護師。
「まだ終らないのか」
「いいところにいらっしゃいました!」
パタパタと医師のもとへ駆け寄った看護師は、縋りつかんばかりの様子でこう言った。
「先生やって下さい!」
「は?」
「あ、あの・・・ちょっと・・・その、取りづらくて・・・」
銀縁眼鏡の奥の藍色の瞳が、ジロリ、と看護師を睨みつけた。
ひゃっ、と首をすくめた看護師は、『お願い、お願い』とでもいう風に医師を見つめている。
特大のため息を零した医師はツカツカとナジェックの前に立つと、「失礼します」と告げて腕に触れた。
直後、横でそわそわしているミニスカナースにこう言った。
「お前、これが取れないのか?」
「え、あ、はい・・・」
「どうやったらこれで失敗出来るんだ」
「あの、でも、その・・・私も、取れたと思ったんですよ? で、針刺したら逃げちゃって・・・」
「ふぅん。逃げた、ねぇ」
美貌の医師は、無表情のまま顔に似合わない「ちくっとしますよ」という言葉を告げて採血針をナジェックの腕に刺した。
正直、先ほどのミニスカナースの一件があるのでヒヤヒヤしていたナジェックだったが、勢い良く血液が管の中に入っていくのを見るとちょっと感動したものである。
「わぁ!」
どうやら、ミニスカナースも感動したらしい。
パチパチと手を叩いている様子は素直に可愛らしいので、ナジェックはまたデレデレとと鼻の下を伸ばしたのであった。
「先生、すごい!」
「俺は逆にお前がすごいと思うね」
「え?! 私すごいですか?!」
「すごい、すごい──この腕で失敗できるのは、いっそ才能だな」
「え、私才能ありますか?!」
「抜きますよ」と言ってナジェックの腕から針を抜いた医師は、瞳をきらきらさせているミニスカナースの額をペチッ、と叩いた。
「たっ」
叩かれた場所を抑えると、「ひどいです」と唇を尖らせる。
拗ねた様子も可愛いので、採血が上手くいった安堵もあって、ナジェックはだらしなく相好を崩したものである。
腕は悪くても、この顔の可愛さだけで白衣の天使をやっていけるだろうなぁ、と、勝手なことを思う。
そんなナジェックに、美貌の医師はにっこりと微笑みかけた。
ドキーーーッ! と心臓が煽ってきて、心電図でも取っていたら一発で不整脈確定だと思ったナジェック。
「お時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。次の検査で呼ばれるまで、お掛けになってお待ち下さい」
「はい・・・」
ぽーっと見惚れそうになったナジェックは、立ち上がると少々名残惜しそうに採血スペースをあとにした。
と、その耳に、こんな会話が届いたのだ。
「・・・ごめんなさい、お兄ちゃん」
なんと、あのふたりは兄妹だったのか! と、ナジェックは驚嘆した。
確かに滅多に見ない美形だったから、なるほど、血なのかも知れない。
あのふたりが家にいたら、毎日楽しいだろうなぁ、そうだ、このふたりを自分の専属医にしてしまえばいいのではないか? と想像したナジェックの耳に、次はこんな台詞が届いた。
「誰が『お兄ちゃん』だ」
「あ、ごめんなさい・・・先生」
「まったく。しっかりしてくれよ────奥さん」
「・・・はぁい」
てへっ、と自分の頭を叩く様子が思い浮かぶような甘い返事に、ナジェックは『俺×夫婦』も悪くないんじゃないか、と頭の悪いことを考えて待合室へと向かったのだった。
**********
別にナジェックでも誰でも良かった上にストーリーもどうでも良かったんですが、ミニスカナースのドジっ子シェラたんが書きたかっただけです、はい。ごめんなさい。
「あ・・・あれ? あれれ???」
困った顔で首を傾げている看護師が、天使みたいな顔した美人でなければ、殴っていたかも知れない。
ナジェックは心からそう思った。
大企業の社長令息であり、30そこそこで専務の地位にいる自分が、なぜこんな痛い目に遭わなければならないのか。
この病院は彼の会社と提携しており、定期健康診断に使っているのだが、一斉健診の時期に時期に多忙だった彼は、こうして後日個別に病院に連絡を取って来ていた。
今日も今日で仕事は山積しており、眉間に皺を寄せながら順番を待っていたのだが、担当が銀髪ポニーテールのミニスカナースだと見るとデレデレと鼻の下を伸ばしたのだった。
新人なのかも知れない。
採血の針をじーーーーっと見つめ、「よしっ!」と気合を入れている時点で嫌な予感がしたのだ。
案の定、腕に触れては首を傾げていた。
それは、針を刺してからも続いたのだ。
「あ・・・あの、ごめんなさい・・・痛いですか・・・?」
潤んだ菫色の瞳で訊ねてくる看護師に「だ、大丈夫だよ」と虚勢を張って笑いかけてやると、ほっとしたように口許が綻んだ。
もう何だかそれだけで仕事の疲れも癒されていく気がしたナジェックだったが、次の瞬間「──い゛っ?!」と思わず声を上げてしまった。
「あっ!! ご、ごめんなさい!!」
いや、謝らなくていいからとりあえず針を抜いてくれ、と思ったナジェックだった。
「あれ・・・あれ・・・おかしいなぁ・・・確かに見つけたと思ったのに・・・」
「・・・俺、あんまり取りづらいって言われないんだけどね」
「そうですよねぇ・・・見つけたのに、どこに隠れちゃったんだろう・・・恥ずかしがらないで出ておいで~」
仔犬でも探すように眉を下げたミニスカナースは、「じゃあ、左手出して下さい」と告げてきて、ナジェックはヒクリ、と頬を引き攣らせた。
しかし、担当を変えてもらって、腕は良かったとしても、年増のオバサンとかじゃ気分が萎えるし・・・と覚悟を決めて左腕を出したナジェックだった。
白衣の天使は、駆血帯を左につけ替えて血管を探り出したが、やはり首を傾げている。
もう嫌な予感しかしなくて、やはり担当を替えてもらおうと声をかけようとしたときのこと。
「──おい、いつまでかかっている」
低い声が、仕切りのカーテンの向こうから聞こえてきた。
シャッ、という音とともにカーテンが開くと、その奥には白衣の男。
男の姿を見たとき、ナジェックは思わず息を飲んだ。
ナジェックは自他共に認める女好きだったが、しかし、その男を見た途端、頬が染まったような気がしたのだ。
それくらい、男の美貌は圧倒的であった。
眼鏡の奥の冷たそうな瞳がまたイイ。
顔の美しさもさることながら、背が高く、白衣の下の肉体はかなり鍛えられていることが分かる。
速い心拍が、採血の失敗によるものだけとはどうしても思えなくて戸惑うナジェック。
「──あ、おに・・・先生!!」
きらきらと瞳を輝かせ、頬を薔薇色に染める看護師。
「まだ終らないのか」
「いいところにいらっしゃいました!」
パタパタと医師のもとへ駆け寄った看護師は、縋りつかんばかりの様子でこう言った。
「先生やって下さい!」
「は?」
「あ、あの・・・ちょっと・・・その、取りづらくて・・・」
銀縁眼鏡の奥の藍色の瞳が、ジロリ、と看護師を睨みつけた。
ひゃっ、と首をすくめた看護師は、『お願い、お願い』とでもいう風に医師を見つめている。
特大のため息を零した医師はツカツカとナジェックの前に立つと、「失礼します」と告げて腕に触れた。
直後、横でそわそわしているミニスカナースにこう言った。
「お前、これが取れないのか?」
「え、あ、はい・・・」
「どうやったらこれで失敗出来るんだ」
「あの、でも、その・・・私も、取れたと思ったんですよ? で、針刺したら逃げちゃって・・・」
「ふぅん。逃げた、ねぇ」
美貌の医師は、無表情のまま顔に似合わない「ちくっとしますよ」という言葉を告げて採血針をナジェックの腕に刺した。
正直、先ほどのミニスカナースの一件があるのでヒヤヒヤしていたナジェックだったが、勢い良く血液が管の中に入っていくのを見るとちょっと感動したものである。
「わぁ!」
どうやら、ミニスカナースも感動したらしい。
パチパチと手を叩いている様子は素直に可愛らしいので、ナジェックはまたデレデレとと鼻の下を伸ばしたのであった。
「先生、すごい!」
「俺は逆にお前がすごいと思うね」
「え?! 私すごいですか?!」
「すごい、すごい──この腕で失敗できるのは、いっそ才能だな」
「え、私才能ありますか?!」
「抜きますよ」と言ってナジェックの腕から針を抜いた医師は、瞳をきらきらさせているミニスカナースの額をペチッ、と叩いた。
「たっ」
叩かれた場所を抑えると、「ひどいです」と唇を尖らせる。
拗ねた様子も可愛いので、採血が上手くいった安堵もあって、ナジェックはだらしなく相好を崩したものである。
腕は悪くても、この顔の可愛さだけで白衣の天使をやっていけるだろうなぁ、と、勝手なことを思う。
そんなナジェックに、美貌の医師はにっこりと微笑みかけた。
ドキーーーッ! と心臓が煽ってきて、心電図でも取っていたら一発で不整脈確定だと思ったナジェック。
「お時間がかかってしまい、申し訳ありませんでした。次の検査で呼ばれるまで、お掛けになってお待ち下さい」
「はい・・・」
ぽーっと見惚れそうになったナジェックは、立ち上がると少々名残惜しそうに採血スペースをあとにした。
と、その耳に、こんな会話が届いたのだ。
「・・・ごめんなさい、お兄ちゃん」
なんと、あのふたりは兄妹だったのか! と、ナジェックは驚嘆した。
確かに滅多に見ない美形だったから、なるほど、血なのかも知れない。
あのふたりが家にいたら、毎日楽しいだろうなぁ、そうだ、このふたりを自分の専属医にしてしまえばいいのではないか? と想像したナジェックの耳に、次はこんな台詞が届いた。
「誰が『お兄ちゃん』だ」
「あ、ごめんなさい・・・先生」
「まったく。しっかりしてくれよ────奥さん」
「・・・はぁい」
てへっ、と自分の頭を叩く様子が思い浮かぶような甘い返事に、ナジェックは『俺×夫婦』も悪くないんじゃないか、と頭の悪いことを考えて待合室へと向かったのだった。
**********
別にナジェックでも誰でも良かった上にストーリーもどうでも良かったんですが、ミニスカナースのドジっ子シェラたんが書きたかっただけです、はい。ごめんなさい。
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