小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
ええ声をニコ動で補給したから、今なら書ける気がする! FEでもなく、ちゃんとヴァンシェラで。
一応、遅れに遅れたけどヴァンツァー誕でつ。
一応、遅れに遅れたけどヴァンツァー誕でつ。
**********
ヴァンツァーは、私を甘やかす。
真綿でくるむように。
砂糖菓子で飾るように。
やさしくあたたかい腕で抱きしめて、静かに愛をささやく。
とても、とても大事にされていて、笑顔を向けられるのも当たり前になって。
そんな日が、もう何年も続いている。
時々夢なのではないかと思うけれど、この夢は一向に覚める気配がなかった。
眠っていても、起きていても、何だかふわふわほわほわとしたものが私を包み込む。
ヴァンツァーの腕の中で目覚めることが日常になって、目が合った瞬間、じっと私を見つめていた藍色の瞳から力が抜けて、やわらかく解ける。
その瞬間を見るのが──好きだった。
いつもは猫みたいに気紛れな男なのに、そういうときは人懐っこい犬みたいで・・・何だか、可愛い・・・とか、思ったりする。
──だから。
「──やっ!」
力づくでソファに押し付けられ、跳ねた心臓と掴まれた手首が痛んだ。
「ちょっ、ヴァン」
伸し掛かってくる男の力の強さに勝手に身体がすくんだ。
こんなこと、かつては慣れっこで。
今だって、腕が鈍らないように訓練を欠かしたことはなくて。
「ま、まてっ!」
なのに、どうしてこんなに。
「──暴れるなよ」
ゾクッ、とした。
低くて、温度のない声。
こんな声、もう何年も──。
「・・・ゃ」
ひどくちいさな、震えた声。
自分のものとは思えないほど、目の前の男に怯えきっている。
恐る恐る見上げた顔は、相変わらず馬鹿みたいに整っていたけれど・・・。
「大人しくしていないと、怪我をするぞ?」
クッ、と嗤う様が、あまりにも冷たくて。
「・・・ゃだ・・・」
あんなにやさしく微笑んでくれた目が、薄氷のようだった。
「嫌? どうせ最後には、善がって啼くんだろう?」
ただ、首を振った。
どうしてこんな風になってしまったんだろう。
今日は、だって・・・。
「やだ・・・ゃ・・・」
掴まれた手首が痛くて身を捩っても、この拘束が絶対に解けないことを知っている。
力では、どうやっても勝てない。
「・・・やだ」
それが分かっているから、今までこの男は力に訴えたりはしなかったのに。
「や・・・やだ! やだやだやだ!!」
怖くて、哀しくて、苦しくて。
思い切り暴れても、身体全体を使って抑え込まれては私には為す術もなかった。
「やだ・・・ゃ・・・こわ・・・わぃ・・・」
子どものように泣きじゃくるなんてみっともなかったが、怖かった。
「ヴァン・・・ふっ、ぅ・・・」
目の前にいるのが知らない男のようで、ただ、怖かった。
確かにかつてこの男は今みたいに冷たい目をしていたし、私を殺そうとしたこともある。
けれど、新しい生を受けてこの地で暮らすうちに・・・傍で見ているうちに、やさしく笑うようになっていたというのに。
「・・・おこ、らせたなら・・・あやまる、から・・・」
だから、そんな冷たい目で私を見ないで。
いつもみたいに笑って。
やさしく触れて。
「・・・好き、って・・・言って・・・」
しゃくりあげて泣き出した私の肩に、トン、と重みが加わった。
何だろう、とそちらを見れば、黒い頭がそこにあった。
「・・・ヴァン、ツァー・・・?」
どうしたのだろう、と瞬きをすれば、睫毛に溜まった涙がボロボロと零れた。
「────・・・悪かった」
耳に届いたちいさな声に、目を瞠る。
「──え?」
はあ、と大きなため息を零して身体を起こした男は、もう一度「悪かった」と言って私の頬を拭った。
「ヴァンツァー・・・?」
いつもと同じ、やさしい手。
瞳だって、一瞬前の冷たさなど微塵もない、穏やかな夜の藍色。
「・・・なに・・・」
何なのだ、一体。
「・・・驚かせようと、思った」
「──は?」
「今日は、その・・・」
ヴァンツァーの言わんとしていることが分かった。
今日は、4月1日。
世界が嘘で溢れる日。
「──・・・うそ・・・?」
「あぁ」
頷く男の様子に、力が抜けた。
「おい、シェラ」
心配そうにこちらを覗き込んで来るのは、見慣れた瞳と表情。
同じ顔だというのに、浮かべる表情ひとつでこんなにも印象が違う。
「悪かった。泣くとは思っていなかった」
「・・・か」
「え?」
「──ばか! ばか馬鹿バカ!!」
目の前にある肩だの胸だのを思い切り殴りつけてやったが、抵抗らしい抵抗はされなかった。
「こわ・・・怖かったんだぞ!」
「悪かった」
「ほんとに、怖くて!」
「あぁ、悪かった」
お詫びに何でもする、と言ってきた男に、「当たり前だ!」と怒鳴り返した。
「とりあえず、ぎゅってしろ!」
「──は?」
「ぎゅってしろ!!」
「・・・・・・」
困惑の表情を浮かべていた男だったけれど、言われた通りに私を腕の中に収めた。
大きくてあたたかい、慣れた感覚。
まだ鼻を啜っていた私だけれど、ようやく呼吸が出来た気がした。
「・・・そんなことばっかりしてると、もう誕生日祝ってやらないんだからな」
「驚かせようと思ったんだ」
「心臓止まるかと思った!」
「悪かった」
何度も謝罪の言葉を口にして、ぽんぽんと私の背中をあやすように叩く。
その手も、耳元で聞こえる声も、とてもやさしい。
「・・・ばーか、ばーか・・・」
「はいはい」
「ばーか・・・」
ぐすっ、と鼻を鳴らしてヴァンツァーの背に手を回した。
こいつの着てる高い服なんて、鼻水だらけになってしまえばいい。
「なぁ。機嫌を直せ」
「・・・・・・もうしないか」
「もうしないよ」
「本当だな?」
「あぁ」
約束だ、と。
本当に弱り切った声で言うものだから。
「・・・誕生祝い、これでチャラだからな」
「赦してくれるということか?」
「赦さん。──が、お前があんまり情けないから、なかったことにしてやってもいい」
せっかく誕生日のお祝いに、美味しいものを作って、お酒も飲んで、それから・・・その・・・ちょっと、いちゃいちゃしたりもしようかと思っていたのに。
「お前のせいで台無しだ」
「ごめんなさい」
「ふんっ」
グリグリ、と肩口に涙と鼻水を擦り付けてやった。
ザマァミロ。
これで、もう、外にだって出られない。
「・・・今日は、お前の誕生日だけど」
「あぁ」
「お詫びに、今日は一日・・・私を甘やかすこと」
いいな、と命じるように告げると。
「──あぁ、分かった」
そう言って笑ったヴァンツァーの顔が私のよく知ったものだったから。
「・・・ふん。馬鹿め」
少しだけ、機嫌を直してやることにした。
**********
おかしい・・・かっこいいヴァンツァーが行方不明。
なぜだ・・・イケボ山ほど聴いてたのに、なぜだ・・・。
ヴァンツァーは、私を甘やかす。
真綿でくるむように。
砂糖菓子で飾るように。
やさしくあたたかい腕で抱きしめて、静かに愛をささやく。
とても、とても大事にされていて、笑顔を向けられるのも当たり前になって。
そんな日が、もう何年も続いている。
時々夢なのではないかと思うけれど、この夢は一向に覚める気配がなかった。
眠っていても、起きていても、何だかふわふわほわほわとしたものが私を包み込む。
ヴァンツァーの腕の中で目覚めることが日常になって、目が合った瞬間、じっと私を見つめていた藍色の瞳から力が抜けて、やわらかく解ける。
その瞬間を見るのが──好きだった。
いつもは猫みたいに気紛れな男なのに、そういうときは人懐っこい犬みたいで・・・何だか、可愛い・・・とか、思ったりする。
──だから。
「──やっ!」
力づくでソファに押し付けられ、跳ねた心臓と掴まれた手首が痛んだ。
「ちょっ、ヴァン」
伸し掛かってくる男の力の強さに勝手に身体がすくんだ。
こんなこと、かつては慣れっこで。
今だって、腕が鈍らないように訓練を欠かしたことはなくて。
「ま、まてっ!」
なのに、どうしてこんなに。
「──暴れるなよ」
ゾクッ、とした。
低くて、温度のない声。
こんな声、もう何年も──。
「・・・ゃ」
ひどくちいさな、震えた声。
自分のものとは思えないほど、目の前の男に怯えきっている。
恐る恐る見上げた顔は、相変わらず馬鹿みたいに整っていたけれど・・・。
「大人しくしていないと、怪我をするぞ?」
クッ、と嗤う様が、あまりにも冷たくて。
「・・・ゃだ・・・」
あんなにやさしく微笑んでくれた目が、薄氷のようだった。
「嫌? どうせ最後には、善がって啼くんだろう?」
ただ、首を振った。
どうしてこんな風になってしまったんだろう。
今日は、だって・・・。
「やだ・・・ゃ・・・」
掴まれた手首が痛くて身を捩っても、この拘束が絶対に解けないことを知っている。
力では、どうやっても勝てない。
「・・・やだ」
それが分かっているから、今までこの男は力に訴えたりはしなかったのに。
「や・・・やだ! やだやだやだ!!」
怖くて、哀しくて、苦しくて。
思い切り暴れても、身体全体を使って抑え込まれては私には為す術もなかった。
「やだ・・・ゃ・・・こわ・・・わぃ・・・」
子どものように泣きじゃくるなんてみっともなかったが、怖かった。
「ヴァン・・・ふっ、ぅ・・・」
目の前にいるのが知らない男のようで、ただ、怖かった。
確かにかつてこの男は今みたいに冷たい目をしていたし、私を殺そうとしたこともある。
けれど、新しい生を受けてこの地で暮らすうちに・・・傍で見ているうちに、やさしく笑うようになっていたというのに。
「・・・おこ、らせたなら・・・あやまる、から・・・」
だから、そんな冷たい目で私を見ないで。
いつもみたいに笑って。
やさしく触れて。
「・・・好き、って・・・言って・・・」
しゃくりあげて泣き出した私の肩に、トン、と重みが加わった。
何だろう、とそちらを見れば、黒い頭がそこにあった。
「・・・ヴァン、ツァー・・・?」
どうしたのだろう、と瞬きをすれば、睫毛に溜まった涙がボロボロと零れた。
「────・・・悪かった」
耳に届いたちいさな声に、目を瞠る。
「──え?」
はあ、と大きなため息を零して身体を起こした男は、もう一度「悪かった」と言って私の頬を拭った。
「ヴァンツァー・・・?」
いつもと同じ、やさしい手。
瞳だって、一瞬前の冷たさなど微塵もない、穏やかな夜の藍色。
「・・・なに・・・」
何なのだ、一体。
「・・・驚かせようと、思った」
「──は?」
「今日は、その・・・」
ヴァンツァーの言わんとしていることが分かった。
今日は、4月1日。
世界が嘘で溢れる日。
「──・・・うそ・・・?」
「あぁ」
頷く男の様子に、力が抜けた。
「おい、シェラ」
心配そうにこちらを覗き込んで来るのは、見慣れた瞳と表情。
同じ顔だというのに、浮かべる表情ひとつでこんなにも印象が違う。
「悪かった。泣くとは思っていなかった」
「・・・か」
「え?」
「──ばか! ばか馬鹿バカ!!」
目の前にある肩だの胸だのを思い切り殴りつけてやったが、抵抗らしい抵抗はされなかった。
「こわ・・・怖かったんだぞ!」
「悪かった」
「ほんとに、怖くて!」
「あぁ、悪かった」
お詫びに何でもする、と言ってきた男に、「当たり前だ!」と怒鳴り返した。
「とりあえず、ぎゅってしろ!」
「──は?」
「ぎゅってしろ!!」
「・・・・・・」
困惑の表情を浮かべていた男だったけれど、言われた通りに私を腕の中に収めた。
大きくてあたたかい、慣れた感覚。
まだ鼻を啜っていた私だけれど、ようやく呼吸が出来た気がした。
「・・・そんなことばっかりしてると、もう誕生日祝ってやらないんだからな」
「驚かせようと思ったんだ」
「心臓止まるかと思った!」
「悪かった」
何度も謝罪の言葉を口にして、ぽんぽんと私の背中をあやすように叩く。
その手も、耳元で聞こえる声も、とてもやさしい。
「・・・ばーか、ばーか・・・」
「はいはい」
「ばーか・・・」
ぐすっ、と鼻を鳴らしてヴァンツァーの背に手を回した。
こいつの着てる高い服なんて、鼻水だらけになってしまえばいい。
「なぁ。機嫌を直せ」
「・・・・・・もうしないか」
「もうしないよ」
「本当だな?」
「あぁ」
約束だ、と。
本当に弱り切った声で言うものだから。
「・・・誕生祝い、これでチャラだからな」
「赦してくれるということか?」
「赦さん。──が、お前があんまり情けないから、なかったことにしてやってもいい」
せっかく誕生日のお祝いに、美味しいものを作って、お酒も飲んで、それから・・・その・・・ちょっと、いちゃいちゃしたりもしようかと思っていたのに。
「お前のせいで台無しだ」
「ごめんなさい」
「ふんっ」
グリグリ、と肩口に涙と鼻水を擦り付けてやった。
ザマァミロ。
これで、もう、外にだって出られない。
「・・・今日は、お前の誕生日だけど」
「あぁ」
「お詫びに、今日は一日・・・私を甘やかすこと」
いいな、と命じるように告げると。
「──あぁ、分かった」
そう言って笑ったヴァンツァーの顔が私のよく知ったものだったから。
「・・・ふん。馬鹿め」
少しだけ、機嫌を直してやることにした。
**********
おかしい・・・かっこいいヴァンツァーが行方不明。
なぜだ・・・イケボ山ほど聴いてたのに、なぜだ・・・。
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