小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
ただのBLCDです(笑)先月友人から20枚分くらいもらいました。ものっそい量です、ってか時間です(笑)ゆっくり聴こうと思っていたら、思いがけず侍に惚れてしまったのでお預けに。最近ちまちま聴いてます。びっくりするくらいBLモノの本とかCDとかない家だったのに、なんかそれっぽくなりました(笑)
昨日はPCにCD入れてiTuneに落としてたら、キャスト名に三木眞さんの名前があって、「うぉーい、三木眞~」とひどくテンションが上がりました(笑)いや、ここ1ヶ月くらいの私の行動からして、上がるだろ、そりゃ。きゅーちゃん、きゅーちゃん♪ とか思いながら再生ボタンをぽちっとな。
BLのいいところって、先が読めるところですよね。ハーレクインとか。普通、先が読める小説なんて読みたくないんですけど、これは別。「おま、ほん、分かりやすvvvvvv」ってなるのがイイんですよねー、なんか。昨日聴いたのも、とっても分かりやすかったです。で、大抵受けは攻めの態度を違う方向に勘違いするのね(笑)「いや、違うし。何で分かんないかなvvvvv」って、23時とかに爆笑しながら聴いてました。あー、楽しい。
三木眞さんは、攻め全開になると独特の抑揚をつけて話すときがあって、そのちょっとした癖が結構好きなんです。いやー、普段冷静で穏やかなですます口調の男が上から目線になると、何であんなに萌えるのか(笑)やっぱり、橘は低音ボイスに弱いということが判明。同じ声でも、高めに出すのと低められるのとでは、萌え度合いがケタ違いです。どんだけMなの、自分(笑)
そして、そして、やっぱり出てくる子安さん(笑)なんだろ、あの人、どんなに真面目な役でも・・・ってか、真面目な役だからこそ笑えてくるという。すごいなー、これはもう才能だなー。「えへへー、ぼく変態ですぅvvv」くらいが通常運転っぽいからなー。いえ、すごく褒めてます。でも、そうなるとやっぱりキニアンは子安さんじゃなくて、置鮎さんかなぁ?(笑)
今日はどんなの流れるかなぁ。適当に取り込んで聴いてるから、気分はロシアンなんですよねー。ロシアンBL(笑)声フェチな橘にとっては、夢のような時間です。
昨日はPCにCD入れてiTuneに落としてたら、キャスト名に三木眞さんの名前があって、「うぉーい、三木眞~」とひどくテンションが上がりました(笑)いや、ここ1ヶ月くらいの私の行動からして、上がるだろ、そりゃ。きゅーちゃん、きゅーちゃん♪ とか思いながら再生ボタンをぽちっとな。
BLのいいところって、先が読めるところですよね。ハーレクインとか。普通、先が読める小説なんて読みたくないんですけど、これは別。「おま、ほん、分かりやすvvvvvv」ってなるのがイイんですよねー、なんか。昨日聴いたのも、とっても分かりやすかったです。で、大抵受けは攻めの態度を違う方向に勘違いするのね(笑)「いや、違うし。何で分かんないかなvvvvv」って、23時とかに爆笑しながら聴いてました。あー、楽しい。
三木眞さんは、攻め全開になると独特の抑揚をつけて話すときがあって、そのちょっとした癖が結構好きなんです。いやー、普段冷静で穏やかなですます口調の男が上から目線になると、何であんなに萌えるのか(笑)やっぱり、橘は低音ボイスに弱いということが判明。同じ声でも、高めに出すのと低められるのとでは、萌え度合いがケタ違いです。どんだけMなの、自分(笑)
そして、そして、やっぱり出てくる子安さん(笑)なんだろ、あの人、どんなに真面目な役でも・・・ってか、真面目な役だからこそ笑えてくるという。すごいなー、これはもう才能だなー。「えへへー、ぼく変態ですぅvvv」くらいが通常運転っぽいからなー。いえ、すごく褒めてます。でも、そうなるとやっぱりキニアンは子安さんじゃなくて、置鮎さんかなぁ?(笑)
今日はどんなの流れるかなぁ。適当に取り込んで聴いてるから、気分はロシアンなんですよねー。ロシアンBL(笑)声フェチな橘にとっては、夢のような時間です。
**********
「う、わ。やっぱりすごい人だ」
マジックランプ後回しにして良かったな、と一応は話しかけられる格好になったので、「うん」と頷いたカノン。
ブロードウェイ・シアターの前は、既に長蛇の列。
本日の最終公演というだけあって、客足が伸びている。
開演までまだ30分以上あるけれど、早めに中に入れてくれるらしい。
夏場とはいえ16時を過ぎれば陽は傾くが、まだまだ気温は高い。
それでも、海辺だからか吹く風は心地良く、繋いだ手はさらりと乾いてあたたかい。
男どうしで手を繋いでいるからやはりちらちらとこちらを見る人間はいるけれど、長身の青年はまったくもって気にした様子がない。
初めて一緒に来たときは家族と一緒で、見た目に反して照れ屋らしいキニアンは、手を繋ぐのも戸惑っていたところがあったのだけれど。
そういえば、『初めて』も、ここだったなぁ・・・と思い出して、ほんのりとカノンの白い頬が染まった。
飲まされて酔ってなければ、それはもっとずっと先のことになっていたかも知れない。
キニアンはとても真面目だ。
照れくささが先に立つからかちょっと無愛想だけれどやさしいし、いつだってカノンの意見を尊重する。
でもでも、積極的に見えたって、ぼくだって恥ずかしいんだから! というカノンだから、なかなか自分から、という風には運べなかった当時で。
翌朝は、この近くにあるアクセサリーと時計の店で、ペアのネックレスを買った。
今はつけていないけれど、首輪がついたみたいで少しほっとしたのを覚えている。
あぁ、これでこの男のものになれたのかなぁ、と。
気づかないのは当の彼氏くらいのもので、カノンがキニアンにベタ惚れなのは家族ぐるみの付き合いをしている皆が知っている。
そして、しっかり者に見えるカノンが、本当は今みたいに手を引いてもらいたい甘えん坊だということも。
「暑くないか?」
「うん」
平気だよ、とにっこり微笑む天使に、そうか、と返す青年。
そして、列に並んでからさほど経たずに、シアター内へと通されることとなった。
昼間は1階席のかなり前の方に座れたが、さすがに今回はそうもいかず、2階席となった。
それでも最前列には座れたので、ステージを見るのに支障はない。
「あぁ、たぶん、ここの方が音がいいな」
「そうなの?」
「うん。さっきの席だと、ステージに近すぎたかな。マイク使ってるから、スピーカーからの距離もあるし」
「ふぅん。じゃあ、今度から2階かな~」
「ステージに近い方がパフォーマンスの迫力は増すから、あとは好みかな。音楽だけじゃなくて、ダンスもあるから。まぁ、今まで通り2回見て、それぞれ楽しめばいいんじゃないか?」
「・・・アリスってさ」
まじまじと隣に座る男を見つめるカノン。
不思議そうに首を傾げる青年に、思わず、といった感じで告げた。
「すごいね」
「は?」
「よく『楽しむ』って使うよね」
「え? そうか?」
「うん。それ聴くたびに、すごいなぁ、って思うの」
「すごい?」
「うん」
「そうかなぁ・・・まぁ、マリアが『人生楽しんだもん勝ち』って人だから、うつったのかな」
そう苦笑する青年に、カノンはにっこりと笑った。
いつも思うのだけれど、キニアンと話していて気分が悪くなったことがない。
そりゃあ、超がつくほど鈍感で、ニブチンで、空気だって読めなくて、もうもうっ! と思うこともたくさんあるけれど。
先程の両親への評価だって、悪口を言ったわけではなく、彼の目から見た事実だったのだろうし、今日は「いい子だな」とたくさん言ってくれた。
カノンからすれば、そんなキニアンの方がずっとずっと『いい子』でやさしいのに、本当にてんで自覚というものがないのだから。
でもきっと、だからこそ彼はいつだって他者への尊敬の念を忘れないのだろうな、と納得する。
「よしよし、いい子だ」
何だか嬉しくなって茶色い頭を撫でてやると、「な、なんだよ急に」と、あたふたして紅くなるのが可愛くて。
「んー? 真似っこ?」
えへへ、とはにかむように笑うカノンを見て、更に頬を染める感性豊かな音楽家。
「・・・真似、って・・・」
この綺麗な顔だって、やわらかい声だって、腕の中にすっぽり収まる細身の肢体だって──それから、可愛い我が儘だって。
嫌いなところなんてひとつだってなく。
言葉ひとつ、まなざしひとつ、仕草のひとつにも翻弄される。
情けないくらいに惚れていて、ヴァンツァーやアルフレッドのように人に誇れるものなんて何ひとつない身がうらめしい。
彼らのように仕事が出来る男ならもっと自信がついて、大切なものを何からだって護ってやるのだと毅然として立つことが出来るだろうに。
「どしたの?」
「・・・・・・」
そう。
こんな風にあどけない表情をして、幸せいっぱいの顔で笑って。
そんなカノンを、この先一生だって護ってやりたいだなんて・・・とてもではないけれど、今の自分には言えなくて。
「・・・俺、さ」
「うん?」
「俺・・・・・・」
更に言葉を紡ごうとしたとき、場内にベルの音が響いた。
開幕直前のベル。
「あ、始まる」
わくわく、といった感じの顔になってカノンがステージに目を向けたから、結局キニアンは口を噤んだ。
そして、昼の回と同じメンバー、同じ構成のステージは、ほとんど耳にも頭にも入って来なかった。
+++++
『マジカルランプ・シアター』から出ると、太陽はもうほとんど沈んでおり。
カルーセルの電飾が煌びやかに輝いていた。
食欲をそそるカレーのにおいに引き寄せられて、夕飯はシアターに隣接しているレストランへ。
「ここでカレー食べるのは初めてだな」
「実はぼくも」
「そうなの?」
「うん。パスタ大好きだから、いっつもそっち系のレストランにしちゃうの」
「あぁ、そういえばそうかも」
「今度は、また行ったことのないお店に入ろう?」
無邪気な笑顔を向けるカノンに、「そうだな」と返す。
「アリス? どうかした?」
「いや。ほら、行くぞ」
トレーを受け取ると、ダイニングへ向かった。
夜のショーの前とあって、駆け込みで夕飯を摂っている人が多いのかダイニングは大盛況だったが、幸い室内で席が取れた。
もう少し気温が低ければ外でもいいのだけれど、まだだいぶ蒸し暑い。
「そういえば、夜のショーはいいのか? この時間からじゃ、平日でも場所取るのは難しいだろ」
「うん、いいの。せっかく平日に来たんだもん。の~んびりするの」
「分かった」
カノンがいいのなら、それでいい。
ライアンのようにこのテーマパークに特別な思い入れがあるわけでなし、かといって、楽しんでいないわけではない。
やはりどのアトラクションも軒並み5分待ちくらいだと、感じるストレスがケタ違いだ。
待つのはそれほど苦にならない性質だけれど、一度この状況を経験してしまうと、やはり1時間2時間待つのは少々きつい。
つきあい初めのカップルは会話がなかったり、疲れてしまったりで結構喧嘩になることが多いという。
デートスポットの定番ではあるが、待つことが苦手な男は辟易してしまうのかも知れない。
レストランを出ると、陽はすっかり落ちていた。
夜のゴンドラに乗りたいというカノンの希望があってそちらへ向かう道すがら、様々なアトラクションが照明に照らされているのを見た。
街灯もオレンジの光を放っており、世界も、人々も、どこかやさしい色に染められている。
「あ、やってる」
現在『メビテレーニアン・ハーバー』では新しい水上ショーの真っ最中で、花火やLEDライトを使用したフロートが観客の目を楽しませていた。
どこも人々が二重、三重になって世界のスーパースターが魅せる魔法に目を奪われていた。
「・・・見るか?」
「んーん」と首を振るカノンに、やはり「そうか」とだけ返し歩を進めるキニアン。
ほんの半歩前を行く恋人の横顔を、カノンはちらりと盗み見た。
相手の顔色が気になって仕方ない付き合い初めのカップルじゃあるまいし、そんなことをする必要はないのだけれど、何だかいつもとちょっと様子が違うことが気になって。
馬鹿騒ぎをするのが生き甲斐とも言うべき高校生の頃からだって口数は決して多い方ではなかったけれど、今は意識して押し黙っている気がする。
気を悪くするようなこと言ったのかな、と気になってしまうのは・・・。
──・・・べ、別に気にしてなんか・・・。
ちらちらと見ているつもりだったのにいつの間にかじっと見つめてしまっていたらしく、はっとして慌てて目を逸らす。
けれど、いつもならばそんな態度にすら気づいてくれるというのに、今はただひたすら前を見据えて歩いている。
どうして? と思って、また覗うような視線を向けた。
時折上がる花火と、ショーのライト、オレンジの街灯。
様々な色に染められる端正な容貌は、そういえば随分と精悍さを増した。
出逢った頃から長身だったけれど、運動部に所属しているとはいえ青年への過渡期特有の線の細さが目立っていた。
大学に入ってからは専ら楽器とばかり付き合っていてサークル活動もしていなかったはずだが、身体を動かすことは好きみたいだったから、何かスポーツを続けていたのだろう。
そういえば、抱きしめてくれる腕が力強くなり、胸が厚みを増した。
父に比べればやはり身長のわりに細い感じはするが、ずっと頼もしくなった。
飛びついたってちゃんと抱きとめてくれるし、昼間はああ言っていたけれど軽々と抱き上げてもくれる。
そりゃあこっちだって体重増やさないように気をつけてはいるけれど、と考え、また見惚れてしまっていたことに気づいて顔を背けた。
──・・・何で、気づかないんだよ・・・。
自分だって不自然だと思う。
鈍感な男だけれど、いつだって意識は向けていてくれるから、理由は分からないにしても、ちいさな変化にだって気づいてくれるのに。
だから。
「・・・・・・」
きゅっ、と。
俯いたまま、前を行く男の服を引いた。
さすがに気づいた男が立ち止まり、「どうした?」と訊ねてくる。
何も返さないでいると、「カノン?」と呼ぶ声。
それでも服の裾を握ったまま黙っていれば、軽くため息を零す気配。
怒られるのかな、と肩に力が入る。
「どうした? 疲れたか?」
けれど、頭上からはいつも通りやさしい声音。
それでも顔を上げることが出来なくて。
「・・・あそこ、行きたい」
ぶっきらぼうな調子で呟いて指差したのは、波止場の豪華客船。
そこにはラウンジがあって、アルコールを楽しむことが出来る。
「お前、飲めないだろ?」
その通り。
全然まったく飲めない。
そもそも、アルコールの香りが苦手なのだ。
「・・・アリス、飲めばいいじゃん」
むぅ、と唇を尖らせて言えば、「車でしょうが」と返ってきた。
でもでもじゃあ、と反発しようとしたら、「けど」という声が落ちてきた。
そろり、と顔を上げる。
無表情というよりは、どこか真剣味を帯びた顔。
音楽家だからか、男臭いというよりは繊細さに傾いた端正な容貌。
この顔は、決して嫌いではない。
「・・・けど・・・なに?」
「んー、いや・・・」
一度言葉を区切り、ふっ、と目許を緩めた男がその大きな手でぽふり、と頭を撫でてきた。
「この雰囲気の中じゃ、帰りたくなくなる」
「──え?」
菫色の瞳を瞠ったカノンに、キニアンは周囲を軽く見回して言った。
「そういえば、ふたりで来るのは初めてだもんな」
「・・・・・・」
「いつも、ヴァンツァーが部屋を取っていてくれた」
「・・・・・・」
「でも、残念ながら俺はそんなに気のきく男じゃなくてね」
「・・・・・・」
ひたすら黙って聞いていたら、再度若葉色の瞳がこちらを向いた。
「──うち、来るか?」
「──・・・っ」
「明日、講義?」
「・・・・・・アリスは?」
「あるよ」
「ふぅん・・・」
「お前の返事如何によっては、自主休講にするけど?」
「──え・・・?」
心臓が跳ねて、思わず言葉を失った。
「さて、どうしましょうか?」
お姫様、と。
精悍な容貌に薄く笑みが浮かぶ。
──嘘だ、嘘だ。こんなのアリスじゃない。
そうは思っても、ドキドキと煩いくらいの胸は全然おさまる気配がなくて。
──やっぱりビョーキだ。暑さにヤられちゃってるんだ。
そんなことを考えながらも、カノンは恋人の服を掴む手に力を込めた。
──だって、だって・・・・・・そうだ、きっと、ねずみが変な魔法をかけたに違いない。
陽が暮れて、人の顔の判別も難しくなった時刻。
水上で華やかな魔法を使っているねずみが、きっと何かしたんだ。
──だって・・・・・・そうじゃなかったら・・・・・・。
「じゃあ、行こうか?」
「・・・ん」
──こんなに、アリスがかっこいいわけないんだから。
**********
はい、終わりー。
おかしいな。夕暮れ時に、街灯に照らされるキニアンの横顔が何だかちょっとかっこよく見えて、『もうちょっと一緒にいましょうよ』と袖を引くカノンが見たかっただけなのに。
どうしてこんなに長くなった(笑)
はー、久々にたくさん書いた。でも、このキニアンはニセモノに違いない(笑)
「う、わ。やっぱりすごい人だ」
マジックランプ後回しにして良かったな、と一応は話しかけられる格好になったので、「うん」と頷いたカノン。
ブロードウェイ・シアターの前は、既に長蛇の列。
本日の最終公演というだけあって、客足が伸びている。
開演までまだ30分以上あるけれど、早めに中に入れてくれるらしい。
夏場とはいえ16時を過ぎれば陽は傾くが、まだまだ気温は高い。
それでも、海辺だからか吹く風は心地良く、繋いだ手はさらりと乾いてあたたかい。
男どうしで手を繋いでいるからやはりちらちらとこちらを見る人間はいるけれど、長身の青年はまったくもって気にした様子がない。
初めて一緒に来たときは家族と一緒で、見た目に反して照れ屋らしいキニアンは、手を繋ぐのも戸惑っていたところがあったのだけれど。
そういえば、『初めて』も、ここだったなぁ・・・と思い出して、ほんのりとカノンの白い頬が染まった。
飲まされて酔ってなければ、それはもっとずっと先のことになっていたかも知れない。
キニアンはとても真面目だ。
照れくささが先に立つからかちょっと無愛想だけれどやさしいし、いつだってカノンの意見を尊重する。
でもでも、積極的に見えたって、ぼくだって恥ずかしいんだから! というカノンだから、なかなか自分から、という風には運べなかった当時で。
翌朝は、この近くにあるアクセサリーと時計の店で、ペアのネックレスを買った。
今はつけていないけれど、首輪がついたみたいで少しほっとしたのを覚えている。
あぁ、これでこの男のものになれたのかなぁ、と。
気づかないのは当の彼氏くらいのもので、カノンがキニアンにベタ惚れなのは家族ぐるみの付き合いをしている皆が知っている。
そして、しっかり者に見えるカノンが、本当は今みたいに手を引いてもらいたい甘えん坊だということも。
「暑くないか?」
「うん」
平気だよ、とにっこり微笑む天使に、そうか、と返す青年。
そして、列に並んでからさほど経たずに、シアター内へと通されることとなった。
昼間は1階席のかなり前の方に座れたが、さすがに今回はそうもいかず、2階席となった。
それでも最前列には座れたので、ステージを見るのに支障はない。
「あぁ、たぶん、ここの方が音がいいな」
「そうなの?」
「うん。さっきの席だと、ステージに近すぎたかな。マイク使ってるから、スピーカーからの距離もあるし」
「ふぅん。じゃあ、今度から2階かな~」
「ステージに近い方がパフォーマンスの迫力は増すから、あとは好みかな。音楽だけじゃなくて、ダンスもあるから。まぁ、今まで通り2回見て、それぞれ楽しめばいいんじゃないか?」
「・・・アリスってさ」
まじまじと隣に座る男を見つめるカノン。
不思議そうに首を傾げる青年に、思わず、といった感じで告げた。
「すごいね」
「は?」
「よく『楽しむ』って使うよね」
「え? そうか?」
「うん。それ聴くたびに、すごいなぁ、って思うの」
「すごい?」
「うん」
「そうかなぁ・・・まぁ、マリアが『人生楽しんだもん勝ち』って人だから、うつったのかな」
そう苦笑する青年に、カノンはにっこりと笑った。
いつも思うのだけれど、キニアンと話していて気分が悪くなったことがない。
そりゃあ、超がつくほど鈍感で、ニブチンで、空気だって読めなくて、もうもうっ! と思うこともたくさんあるけれど。
先程の両親への評価だって、悪口を言ったわけではなく、彼の目から見た事実だったのだろうし、今日は「いい子だな」とたくさん言ってくれた。
カノンからすれば、そんなキニアンの方がずっとずっと『いい子』でやさしいのに、本当にてんで自覚というものがないのだから。
でもきっと、だからこそ彼はいつだって他者への尊敬の念を忘れないのだろうな、と納得する。
「よしよし、いい子だ」
何だか嬉しくなって茶色い頭を撫でてやると、「な、なんだよ急に」と、あたふたして紅くなるのが可愛くて。
「んー? 真似っこ?」
えへへ、とはにかむように笑うカノンを見て、更に頬を染める感性豊かな音楽家。
「・・・真似、って・・・」
この綺麗な顔だって、やわらかい声だって、腕の中にすっぽり収まる細身の肢体だって──それから、可愛い我が儘だって。
嫌いなところなんてひとつだってなく。
言葉ひとつ、まなざしひとつ、仕草のひとつにも翻弄される。
情けないくらいに惚れていて、ヴァンツァーやアルフレッドのように人に誇れるものなんて何ひとつない身がうらめしい。
彼らのように仕事が出来る男ならもっと自信がついて、大切なものを何からだって護ってやるのだと毅然として立つことが出来るだろうに。
「どしたの?」
「・・・・・・」
そう。
こんな風にあどけない表情をして、幸せいっぱいの顔で笑って。
そんなカノンを、この先一生だって護ってやりたいだなんて・・・とてもではないけれど、今の自分には言えなくて。
「・・・俺、さ」
「うん?」
「俺・・・・・・」
更に言葉を紡ごうとしたとき、場内にベルの音が響いた。
開幕直前のベル。
「あ、始まる」
わくわく、といった感じの顔になってカノンがステージに目を向けたから、結局キニアンは口を噤んだ。
そして、昼の回と同じメンバー、同じ構成のステージは、ほとんど耳にも頭にも入って来なかった。
+++++
『マジカルランプ・シアター』から出ると、太陽はもうほとんど沈んでおり。
カルーセルの電飾が煌びやかに輝いていた。
食欲をそそるカレーのにおいに引き寄せられて、夕飯はシアターに隣接しているレストランへ。
「ここでカレー食べるのは初めてだな」
「実はぼくも」
「そうなの?」
「うん。パスタ大好きだから、いっつもそっち系のレストランにしちゃうの」
「あぁ、そういえばそうかも」
「今度は、また行ったことのないお店に入ろう?」
無邪気な笑顔を向けるカノンに、「そうだな」と返す。
「アリス? どうかした?」
「いや。ほら、行くぞ」
トレーを受け取ると、ダイニングへ向かった。
夜のショーの前とあって、駆け込みで夕飯を摂っている人が多いのかダイニングは大盛況だったが、幸い室内で席が取れた。
もう少し気温が低ければ外でもいいのだけれど、まだだいぶ蒸し暑い。
「そういえば、夜のショーはいいのか? この時間からじゃ、平日でも場所取るのは難しいだろ」
「うん、いいの。せっかく平日に来たんだもん。の~んびりするの」
「分かった」
カノンがいいのなら、それでいい。
ライアンのようにこのテーマパークに特別な思い入れがあるわけでなし、かといって、楽しんでいないわけではない。
やはりどのアトラクションも軒並み5分待ちくらいだと、感じるストレスがケタ違いだ。
待つのはそれほど苦にならない性質だけれど、一度この状況を経験してしまうと、やはり1時間2時間待つのは少々きつい。
つきあい初めのカップルは会話がなかったり、疲れてしまったりで結構喧嘩になることが多いという。
デートスポットの定番ではあるが、待つことが苦手な男は辟易してしまうのかも知れない。
レストランを出ると、陽はすっかり落ちていた。
夜のゴンドラに乗りたいというカノンの希望があってそちらへ向かう道すがら、様々なアトラクションが照明に照らされているのを見た。
街灯もオレンジの光を放っており、世界も、人々も、どこかやさしい色に染められている。
「あ、やってる」
現在『メビテレーニアン・ハーバー』では新しい水上ショーの真っ最中で、花火やLEDライトを使用したフロートが観客の目を楽しませていた。
どこも人々が二重、三重になって世界のスーパースターが魅せる魔法に目を奪われていた。
「・・・見るか?」
「んーん」と首を振るカノンに、やはり「そうか」とだけ返し歩を進めるキニアン。
ほんの半歩前を行く恋人の横顔を、カノンはちらりと盗み見た。
相手の顔色が気になって仕方ない付き合い初めのカップルじゃあるまいし、そんなことをする必要はないのだけれど、何だかいつもとちょっと様子が違うことが気になって。
馬鹿騒ぎをするのが生き甲斐とも言うべき高校生の頃からだって口数は決して多い方ではなかったけれど、今は意識して押し黙っている気がする。
気を悪くするようなこと言ったのかな、と気になってしまうのは・・・。
──・・・べ、別に気にしてなんか・・・。
ちらちらと見ているつもりだったのにいつの間にかじっと見つめてしまっていたらしく、はっとして慌てて目を逸らす。
けれど、いつもならばそんな態度にすら気づいてくれるというのに、今はただひたすら前を見据えて歩いている。
どうして? と思って、また覗うような視線を向けた。
時折上がる花火と、ショーのライト、オレンジの街灯。
様々な色に染められる端正な容貌は、そういえば随分と精悍さを増した。
出逢った頃から長身だったけれど、運動部に所属しているとはいえ青年への過渡期特有の線の細さが目立っていた。
大学に入ってからは専ら楽器とばかり付き合っていてサークル活動もしていなかったはずだが、身体を動かすことは好きみたいだったから、何かスポーツを続けていたのだろう。
そういえば、抱きしめてくれる腕が力強くなり、胸が厚みを増した。
父に比べればやはり身長のわりに細い感じはするが、ずっと頼もしくなった。
飛びついたってちゃんと抱きとめてくれるし、昼間はああ言っていたけれど軽々と抱き上げてもくれる。
そりゃあこっちだって体重増やさないように気をつけてはいるけれど、と考え、また見惚れてしまっていたことに気づいて顔を背けた。
──・・・何で、気づかないんだよ・・・。
自分だって不自然だと思う。
鈍感な男だけれど、いつだって意識は向けていてくれるから、理由は分からないにしても、ちいさな変化にだって気づいてくれるのに。
だから。
「・・・・・・」
きゅっ、と。
俯いたまま、前を行く男の服を引いた。
さすがに気づいた男が立ち止まり、「どうした?」と訊ねてくる。
何も返さないでいると、「カノン?」と呼ぶ声。
それでも服の裾を握ったまま黙っていれば、軽くため息を零す気配。
怒られるのかな、と肩に力が入る。
「どうした? 疲れたか?」
けれど、頭上からはいつも通りやさしい声音。
それでも顔を上げることが出来なくて。
「・・・あそこ、行きたい」
ぶっきらぼうな調子で呟いて指差したのは、波止場の豪華客船。
そこにはラウンジがあって、アルコールを楽しむことが出来る。
「お前、飲めないだろ?」
その通り。
全然まったく飲めない。
そもそも、アルコールの香りが苦手なのだ。
「・・・アリス、飲めばいいじゃん」
むぅ、と唇を尖らせて言えば、「車でしょうが」と返ってきた。
でもでもじゃあ、と反発しようとしたら、「けど」という声が落ちてきた。
そろり、と顔を上げる。
無表情というよりは、どこか真剣味を帯びた顔。
音楽家だからか、男臭いというよりは繊細さに傾いた端正な容貌。
この顔は、決して嫌いではない。
「・・・けど・・・なに?」
「んー、いや・・・」
一度言葉を区切り、ふっ、と目許を緩めた男がその大きな手でぽふり、と頭を撫でてきた。
「この雰囲気の中じゃ、帰りたくなくなる」
「──え?」
菫色の瞳を瞠ったカノンに、キニアンは周囲を軽く見回して言った。
「そういえば、ふたりで来るのは初めてだもんな」
「・・・・・・」
「いつも、ヴァンツァーが部屋を取っていてくれた」
「・・・・・・」
「でも、残念ながら俺はそんなに気のきく男じゃなくてね」
「・・・・・・」
ひたすら黙って聞いていたら、再度若葉色の瞳がこちらを向いた。
「──うち、来るか?」
「──・・・っ」
「明日、講義?」
「・・・・・・アリスは?」
「あるよ」
「ふぅん・・・」
「お前の返事如何によっては、自主休講にするけど?」
「──え・・・?」
心臓が跳ねて、思わず言葉を失った。
「さて、どうしましょうか?」
お姫様、と。
精悍な容貌に薄く笑みが浮かぶ。
──嘘だ、嘘だ。こんなのアリスじゃない。
そうは思っても、ドキドキと煩いくらいの胸は全然おさまる気配がなくて。
──やっぱりビョーキだ。暑さにヤられちゃってるんだ。
そんなことを考えながらも、カノンは恋人の服を掴む手に力を込めた。
──だって、だって・・・・・・そうだ、きっと、ねずみが変な魔法をかけたに違いない。
陽が暮れて、人の顔の判別も難しくなった時刻。
水上で華やかな魔法を使っているねずみが、きっと何かしたんだ。
──だって・・・・・・そうじゃなかったら・・・・・・。
「じゃあ、行こうか?」
「・・・ん」
──こんなに、アリスがかっこいいわけないんだから。
**********
はい、終わりー。
おかしいな。夕暮れ時に、街灯に照らされるキニアンの横顔が何だかちょっとかっこよく見えて、『もうちょっと一緒にいましょうよ』と袖を引くカノンが見たかっただけなのに。
どうしてこんなに長くなった(笑)
はー、久々にたくさん書いた。でも、このキニアンはニセモノに違いない(笑)
PR
この記事にコメントする