小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
当日には小ネタが間に合わなかったけどな。
ヴァンツァー、時々は受けに回ったっていいんだよ!(コラ)
ヴァンツァー、時々は受けに回ったっていいんだよ!(コラ)
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──カチャ。
「父さん、シェラからルース・・・」
ドアを開けたカノンが見たのは、茶色い頭とその正面から覆い被さるようにしている父の顔。
「おかえり」
やけにゆっくりと顔を上げ、妖艶な美貌の男が唇だけ吊り上げて笑った。
切れ長の瞳が挑戦的に見えたのは、まだまだ自分が青いからだろう、とカノンは思った。
父は懐に入れた身内にはとてもやさしいが、昔から人をおちょくって楽しむところがあってぶん殴りたくなる。
一撃入れるどころか掠ることすら出来ないに決まっているのが余計にムカつくので、やらないだけだ。
「ルース借りてきた」
だからカノンはにっこり笑って、父と夫が掛けているソファの前のテーブルに、三段重ねの木箱を置いた。
気分的には叩きつけてやりたいくらいだったが、カノンはそのケースの中身の価値と総額を知っている。
金は父が負担すればいいだけのことだが、同じ石を探すのはかなり大変だ。
「アリス、顔赤いね」
父と夫が座るソファの向かいに、カノンは足を組んでゆったりと座った。
「・・・開けてもらった」
赤い顔でぐったりしている様子が、まるで一戦交えたあとのようだ。
まぁ、訊かずとも分かる。
父はピュアな婿殿が大好きで、夫は(一見)完璧人間な父のことが大好きなのだ。
──両想いかよ、くそっ。
浮気的な意味で何もないのは分かっている。
ライアンの勧めによりピアスを開けさせようとしたのは自分だし、耳元で音がするというのを忘れていたのが悪いのも自分。
「大丈夫だよ」と言って受け取ってくれた夫が、「お揃いの探しに行こうな」と頭を撫でてくれたから、今のこの状況は一万歩譲って赦す。
だが、面白いか面白くないかと言われたら話は別だ。
──最近父さん、ぼくたちがシェラとイチャイチャしてても妬かないし。
小動物たちが固まって遊んでいるのを愛でるような雰囲気がある。
──園長先生かよ。
「えー、ピアスの穴開けるだけで、真っ赤になっちゃうってなにー?」
カノンが睥睨するように棒読みで言えば、ずっと俯いていたキニアンはぎゅっと目を瞑って耳を塞いだ。
──あー、はいはい。耳攻めね、理解理解。
確かに、我が夫に対しては一番有効だな、と思い、カノンは父に目を遣った。
──満足、みたいな顔をしているのが腹立つ。
負けじとにっこり笑ったカノンは、キラキラと輝く様々な種類の宝石が入った箱を開け、あれこれ物色し始めた。
「そっかー。父さん、ぼくの玩具で遊んだんだー。そっかー。ふふふ──ぼくたちのピアス、ダイヤとルビーがいいな! あんまりおっきくなくていいんだ。あ、ぼくこれメインがいいな! アリスはこっち。あとこれと、これと・・・これも! いい? いいよね? いいでしょ? やったー、じゃあ他のルースはシェラに返してくる!」
宝石箱の中には大小いくつものルースが入っているが、細かいものが何十個も透明な袋に入れられているものもあれば、更にひとつひとつがクッションの敷かれたちいさめのケースに入っているものもある。
その中から七色に輝く石と、濃すぎて黒寄りでも、薄すぎてピンク寄りでもない美しい赤い石をいくつか選んだ。
否を返す間もなく自己完結させてテーブルの上にコト、コト、とケースを置いたと思ったら、持ってきた木箱を重ねて持つと「じゃあねー!」と言って出て行った。
その慌ただしい様子に、キニアンはきょとん、として首を傾げた。
宝石箱の中には大小いくつものルースが入っているが、細かいものが何十個も透明な袋に入れられているものもあれば、更にひとつひとつがクッションの敷かれたちいさめのケースに入っているものもある。
その中から七色に輝く石と、濃すぎて黒寄りでも、薄すぎてピンク寄りでもない美しい赤い石をいくつか選んだ。
否を返す間もなく自己完結させてテーブルの上にコト、コト、とケースを置いたと思ったら、持ってきた木箱を重ねて持つと「じゃあねー!」と言って出て行った。
その慌ただしい様子に、キニアンはきょとん、として首を傾げた。
「──あれ、何だあいつ。何か変な感じが・・・あ、ヴァンツァー」
「ん?」
「デザインはお願いしたいですけど、石と地金分は俺出しますよ」
「いや、構わない」
「でも」
「欲しがってた車、買えなくなるぞ?」
「──は?!」
嘘だろ、とテーブルの上の石に目を落とす。
宝石の価値はまったく分からない。
カノンがダイヤとルビーだと言っていたから、そうなんだろう、くらいの頭しかない。
安価な石ではないということは知っているが、エアカーと同等とは。
「あいつ、言い逃げみたいに出ていったの、それ知ってたからか・・・?」
「別に逃げなくても作ってやるが」
まぁ、そうかもな、とヴァンツァーはちいさく笑った。
「あれもシェラと一緒で、欲しいものを口にするのは苦手だから」
「・・・いや、俺そんなのもらっても身に着けられないですよ」
耳から車をぶら下げているということだ。
無理だ。
失くすかも知れないのに恐ろしすぎる。
「落とさない形状にするから問題ない。風呂に入るときも着けたままで構わないが──あぁ、温泉と入浴剤を入れた浴槽に入るときだけは、念のため外した方がいいかな」
「錆びるんですか?」
「金もプラチナも、純粋なものは変色しない。ただ、やわらかい金属だから硬度を出すために別の金属を混ぜると、そちらが変色する」
「へぇ!」
勉強になるなぁ、と目を輝かせている婿殿に、ヴァンツァーはにっこりと笑顔を見せた。
「アルもピアスを着けられるなら、幅が広がるな」
「幅ですか?」
何のだろう、コーディネートとかだろうか? と首を捻ったキニアンは、このときもうちょっと問いただしておけば良かったと、後日激しく後悔することになる。
**********
ポンコツァーさんは、好きな子に貢ぐのも趣味のひとつです。
先日の小ネタに、感想をいただいたのでおまけでした。
嘘だろ、とテーブルの上の石に目を落とす。
宝石の価値はまったく分からない。
カノンがダイヤとルビーだと言っていたから、そうなんだろう、くらいの頭しかない。
安価な石ではないということは知っているが、エアカーと同等とは。
「あいつ、言い逃げみたいに出ていったの、それ知ってたからか・・・?」
「別に逃げなくても作ってやるが」
まぁ、そうかもな、とヴァンツァーはちいさく笑った。
「あれもシェラと一緒で、欲しいものを口にするのは苦手だから」
「・・・いや、俺そんなのもらっても身に着けられないですよ」
耳から車をぶら下げているということだ。
無理だ。
失くすかも知れないのに恐ろしすぎる。
「落とさない形状にするから問題ない。風呂に入るときも着けたままで構わないが──あぁ、温泉と入浴剤を入れた浴槽に入るときだけは、念のため外した方がいいかな」
「錆びるんですか?」
「金もプラチナも、純粋なものは変色しない。ただ、やわらかい金属だから硬度を出すために別の金属を混ぜると、そちらが変色する」
「へぇ!」
勉強になるなぁ、と目を輝かせている婿殿に、ヴァンツァーはにっこりと笑顔を見せた。
「アルもピアスを着けられるなら、幅が広がるな」
「幅ですか?」
何のだろう、コーディネートとかだろうか? と首を捻ったキニアンは、このときもうちょっと問いただしておけば良かったと、後日激しく後悔することになる。
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ポンコツァーさんは、好きな子に貢ぐのも趣味のひとつです。
先日の小ネタに、感想をいただいたのでおまけでした。
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