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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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芸術家でした。


**********

ちらほらと紅葉が見られるようになってきたこの頃。
ソナタは学校帰りに思い立って、ふらっと恋人のいる大学を訪ねた。
油絵学科、工業デザイン学科、建築学科、映像学科など数ある学部の中で、彼女が目指したのは彫刻学科だ。

「──うっわ、ちょー可愛い! モデルやらない? は? ライアン? え、なに、ハーマインの彼女?!」

道を訊ねようとしたらものすごい勢いで声をかけられ、「美大生ってみんなこうなのかしら?」と思ったソナタであった。

「学部棟はあっちだけど・・・今、ちょっとやめといた方がいいかも知れないよ?」
「どうしてですか?」
「いや、あいつ今制作入ってるから・・・」
「邪魔になっちゃいますか?」
「いや、そういう意味じゃないんだ。間違いなく喜ぶと思うんだけど・・・」

何だかはっきりしない物言いに首を傾げたソナタに、薄茶色の瞳の青年は「ま、いっか」とひとりで納得しだした。

「案内するよ」
「いいんですか?」
「うん。どうせ暇だし」
「あなたは、何を専攻しているんですか?」
「あ、俺レイモンド。レイでいいよ。俺は油絵。ちょうど、今度のコンクールに出す作品のモデルを求めていたところにきみが現れたんだけど・・・ハーマインの彼女じゃ、無理だな」
「──無理?」

歩きながら身振り手振りを交えて話す、お喋りな青年。
わりとハンサムさんなので、モデル探しになんて苦労しないだろうに。

「彼女に手ぇ出したなんてハーマインに知られたら、俺命ないし」

あはは、と明るく笑っているが、若干頬が引き攣っている気がするのは気のせいではないだろう。

「え? でも、モデルくらいやってもライアン怒らないと思うけど」
「あー、うん。制作期のあいつじゃなければ、ね」
「制作中は、苛々してるってことですか?」
「ん~・・・それもちょっと違うっていうか・・・」

ま、会えば分かるよ、と言われたソナタだったが、つい数日前にもデートしたが、別に変わったところなんて何もなかった。
やがて彫刻学科の学部棟に着き、ライアンが制作をしているというホールへとたどり着いた。
遠くからでも分かる長身と金髪──けれど、今日はちょっと様子が違った。

「・・・ふわぁ・・・」

思わず藍色の瞳を丸くしたソナタであった。
遠目に見た恋人は上半身裸でこちらに背を向け、大理石と格闘していた。
その長身もあって細身だとずっと思っていたのだが、晒された彼の褐色の肉体は無駄な筋肉のひと筋すらなく引き締まり、まさしく生きた芸術品のようだった。
首からタオルをかけ、時折流れる汗を拭うその姿が、いつもの笑みを絶やさない彼からは想像も出来ないくらいに色っぽくて、思わずどきどきしてしまった。

「声・・・かけてみる?」

レイモンドがそう訊ねてきたが、ソナタはただじっと恋人の背中を見つめていた。
やがて、ひと段落したのだろうか、額を拭って息を吐いたとき、こちらに気づいたライアンが目を瞠った。

「──ソナタ!」

喜色に溢れた声ではあったが、呼ばれた本人は首を傾げた。

──『ソナタ』なんて、呼び捨てにされたことあったかな・・・?

全然嫌ではないけれど、何だか不思議だった。

「どうした? 連絡くれれば、迎えに行ったのに」
「うん・・・」
「ソナタ?」

女の子のように綺麗な顔をした恋人が上半身裸というのは何だか変な感じなのだけれど、細くはあるがストイックなまでに絞られた身体はやはり綺麗で、思わずじっと見てしまった。
と、くすっ、と碧眼が細められ、どきり、とした。

「そんなに見られたら、穴が開く」

そんなことを言って、さらり、とソナタの頬を撫でる仕草にもどきどきした。

──あれれれれ???

いつもの、ごろごろ懐いてくる大型犬のようなライアンとは違う。
何だか、とっても『男の人』だった。

──何か、シェラの前にいるパパみたい・・・。

とか思うわけだ。

「ハーマイン。彼女連れてきてやった俺に、感謝しろよ」
「──あぁ、レイ。いたのか」
「・・・相変わらずひでぇヤツだよ、お前は」
「冗談だよ」

にっ、と笑って、ぽん、と手の甲でレイモンドの肩を叩く。
その仕草も、ソナタの知らないものだった。

「悪い、ソナタ。ちょっと待っててくれるか? 片付けるから」
「うん・・・」

よしよし、と頭を撫でてくれたが、それはいつもは自分の役目だった。
自分の知らないライアンがたくさんいて、何だかどきどきが止まらない。
道具を片付け終わると、ライアンは離れた場所から声を上げた。

「シャワー浴びてくるから、もうちょっと待ってて」
「あ、はい」

思わず『はい』とか言ってしまった。

「レイ。そいつがあんまり美人だからって、「モデルに貸せ」とか言うなよ?」
「い、言わねーよ!」

あはは、と笑って、ライアンは扉の向こうに消えていった。


**********

あー、中途半端!
『うらいあん』もっと書きたいのに!!
始業時間なんてなければいい・・・(コラ)
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