小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
書いている本人もびっくりの反響(笑)
当サイトで一番デキる子・ライアンに頑張ってもらいました。
当サイトで一番デキる子・ライアンに頑張ってもらいました。
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「・・・細く見えるけど、鍛えてるんだぁ」
ぽつり、と呟いたソナタに、レイモンドは『おや?』と首を捻った。
「えっと・・・見たことなかった?」
若干言いづらそうにしている青年に、何を言わんとしているのか気づいたのだろう、ソナタはこくり、と頷いた。
「・・・『16になったらね~』、なんて言って、もうすぐ17になるのに・・・」
ぷぅ、と頬を膨らませる様子は大層可愛らしいのだが、レイモンドは何となく理解出来た気がする。
今しがたのレイモンドの言葉に何の躊躇いもなく頷いたように、このお嬢さんはとても正直で、悪く言えば開けっぴろげで、──そして、とても真っ直ぐなのだろう。
初対面のレイモンドですらそう思うのだから、あのハーマインの内心など推して知るべし、である。
しかし、しかし。
それこそレイモンドなど知る由もないが、ここで大人しくしているようなソナタではない。
きらっ、と藍色の瞳を輝かせると、レイモンドに向かってにっこりと微笑んだ。
見たこともないような美少女の全開の微笑みに、一般人よりも鋭いと自覚している美的感覚が刺激されないわけもなく、レイモンドは思わずぽーっと見惚れてしまった。
「案内、ありがとうございました」
ぺこり、と礼儀正しく頭を下げると、ソナタはライアンの消えた扉の方へと向かった。
ぽかん、と放心していたレイモンドだったが、はっと気がつくと慌ててソナタのあとを追った。
「──いや、そりゃヤバいって!!」
仲間連中のうちで『うらいあん』と評判の今の状態では、とんでもないことになるに違いない。
『ここは学校なんだぞ!』と半分泣きそうになりながら、レイモンドはシャワー室へと向かったのである。
「お邪魔しまーす」
家族の中で紅一点のソナタではあるが、皆を引っ張って家族で風呂に入ることもあるから、そういった意味での抵抗など皆無に等しい。
現在使われているシャワーブースはひとつだけ。
そこに目的の人物がいることは間違いない。
個室のような扉はなくカーテンで仕切られているだけのブースに近寄り、ソナタは声をかけた。
「ライアーン」
「──ソナタ?」
少し驚いた声が、流れる水の音の奥から聴こえる。
「ごめんね。邪魔しちゃった?」
「・・・いや、大丈夫。それより、すぐ出るから向こうに」
「あのね、今日キニアンがうちにご飯食べに来るの。で、シェラが良ければライアンも呼んで皆で食べよう、って言うから・・・メールしようかと思ったんだけど、来ちゃった」
へへっ、と頬を掻くと、『きゅっ』という音がして、シャワーの音が止んだ。
「・・・今、忙しい? 一緒にご飯食べるの無理──」
無理かな? と訊こうとしたその時、カーテンの奥から伸びてきた手に腕を引かれた。
「──、きゃっ!」
気づくと、シャワーブースの壁とライアンの身体の間に挟まれていた。
取られた腕は壁に押し付けられ、ソナタは目を丸くして頭上を見上げた。
ぽたぽたと水滴の落ちる金髪はきらきらしていて、それ以上に光の強い碧眼に見つめられて心臓の音が大きくなった。
「・・・・・・ライ」
「──待ってろ、って・・・言っただろう?」
「・・・・・・」
いつもにこにこしている恋人の真剣な表情など見たことがない。
怒っているのかな、と思って、ソナタは眉を下げた。
「ごめんなさい・・・」
「怒ってるわけじゃない──でも」
左手はソナタの手首を押さえたまま、右手の親指で見下ろした先の唇をなぞる。
「──・・・言うことを聞かないと、悪いオオカミに食べられちゃうぞ」
ちいさく笑って、唇を近づける。
ぎゅっときつく目を瞑るソナタ。
吐息が唇に触れ──。
「はい、ストーップ!」
もがっ、と変な音がして、ソナタはぱっちりと目を開けた。
そこにはレイモンドがいて、ライアンの口を手で覆っている。
「・・・レイ、お前な」
「正気に戻れ、ハーマイン」
言うと、レイモンドはポケットから何か取り出してライアンの口に放り込んだ。
目を丸くしたライアンだったが、しばらくもぐもぐやっていると、「・・・甘い」と呟いた。
そして、はっとする。
「──ソ、ソナタちゃん?!」
ごめん! と言って手を離し、ぐいっ、とブースの外へ押し出す。
慌ててバスタオルを腰に巻く。
「な、何で入ってきちゃったの?!」
「お前が引きずり込んだんだろうが、バカ!」
「いたっ! レイ君、何で止めてくれないの!」
「今止めただろうが、この露出狂!」
「痛いってば! 露出って・・・服着てシャワー浴びないでしょう?!」
「煩い!」
ぺしぺし、とライアンの額を叩いているレイモンドは何だか楽しそうで、ソナタはぽかん、としてふたりを見ていた。
「ソナタちゃんだっけ。こんな変態やめて、俺なんてどう?」
「ちょ、やめてよ!」
「煩い。お前はさっさと服を着ろ!」
「あ、そっか──ちょっと、おれがいなくなっても、ソナタちゃんに変なことしないでよ?!」
「お前と一緒にするな! さっさと行け!!」
蹴り出すようにしてライアンを追い払ったレイモンドは、ソナタの手を引いてシャワー室を出た。
まだ半ば放心しているソナタに、レイモンドは苦笑して見せた。
「ごめんな、びっくりした?」
「・・・ちょっと」
「あいつ、全然悪気ないんだよ。制作中は、スイッチ入っちゃうからさ」
「・・・」
「集中しすぎて糖分切らすとああなるから、さっさと治すには飴でも舐めさせときゃいいんだ」
先ほどライアンの口に入れたのは、飴玉だったらしい。
濡れちゃったね、と差し出されたタオルを受け取ったソナタは、放心状態から抜け出すと、藍色の瞳をきらきらさせ始めた。
「──ひと粒で二度美味しいなんて、いい飼い物したわ!」
レイモンドの心配などよそに、『あとでカノンに報告して、思い切り羨ましがらせてやろう』と画策するソナタなのだった。
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・・・長っ。こんなんでいいのかなぁ・・・? 『シャワーブースに引きずり込め』と友人から指令があったので、やってみました。ありがちなシチュですが、私も好きですそういうの(笑)
レイ君は苦労人です。ライアンやジンジャーやパパやナシアス様のような『こっち側』の人たちは、レイモンドやキニアンのように、つつくと楽しい『あっち側』キャラが好きなようです。
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