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小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
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そうですか、そうですか。ガッ君やっぱり脱ぎますか(コラ)
どうも皆様、寝坊して10分で支度をし、家を飛び出していつもと同じバスに乗った橘ですどうもおはようございます。眠いなら寝ればいいんだよ、と毎日自分にツッコミを入れつつ生活しています。
さて、そんな橘、今日を乗り切れば明後日は楽園やんなー、な感じです。めっちゃ暑いらしいけど。めっちゃ跳ぶらしいけど(笑)いいの、ガッ君の声聴いてるだけで幸せだから。

さ、何書こうかな。


**********

「贅沢だなぁ。マリアさんの演奏が、こんなに近くで聴けるなんて」

音楽に造詣が深いわけではないが、美しいものは美しい。
『100年にひとり』と言われるヴァイオリニストの演奏会は、販売30分でチケットが売り切れるほどの人気だった。

「ぼく、クラシックって、もっと力入れて聴かないといけないものだと思ってました」
「あー、ダメダメ! わたしがそういうの苦手なの。『聴かされる』とか、『弾かされる』とか、だったらやらなきゃいいのに、って思っちゃうもの」
「本当ですね」

話題は自然と、今は席を外している彼女の息子であるチェリストに移って行く。

「アリスって『ちょー』がつくくらい真面目人間なのに、音は堅苦しくないんですよね・・・不思議」

これにマリアはくすくすと笑った。
ふわふわとした、砂糖菓子のような女性だ。
悪戯っ子のような翡翠の瞳がとても魅力的だ。

「だって、あの子『感性』の子ですもの」
「え?」
「本当は感性だけで生きてるような子なのに、何だか難しく物事考えちゃうのよねぇ。たぶんアルフレッドに似たんでしょうけど、ガッチガチに頭で考えちゃうの」

キニアンの父であるアルフレッドは、『真面目』『堅物』を絵に描いたような人間だった。
その音は豊潤でありながら実直、超絶技巧を用いながらも楽譜と作曲者の意図を尊重した演奏だった。

「小難しいこと考えると、すぐ音に出るのよね。『悩んでます』『迷ってます』って、音が硬くなるの」
「へぇ・・・」
「あの子は、何も考えないで演奏しているときが一番綺麗な音を出すのよ」
「あぁ、それ、分かる気がします」

譜面なしに、既存の曲ではなく気分の赴くまま好きなように演奏しているキニアンの音は、とてもきらきらしているのだ。

「アルフレッドは『もっと楽譜の研究をしろ』って言うんだけど、分かってないのよね。音符を見た瞬間に、あの子の中ではもう音楽が出来上がってるの。考えて演奏する音楽家じゃないのよ」

どっちが良いとか悪いとかではなく、タイプが違うのだ。
もちろん、どんな音楽家であれ、楽譜や作曲家の意図を探り、研究をすることは大事だ。
偉大な作曲家に敬意を払うのは当然である。
作曲家と楽譜の意図を正確に読み取った上で、自分の解釈を音に乗せる。
そのせめぎあい、究極の黄金率を求めるのが、音楽なのだ。
しかし、まず先に感性で動く人間の場合、時に『考える』という行為が足枷になることがある。
所謂、『のびのびとした演奏』というものが出来なくなるのだ。
これは、若い音楽家に多かった。
熟練の音楽家であれば、曲の解釈をしつつ自分の個性を音に乗せることも出来るだろう。
しかし、若手の場合はどうしてもどちらかに偏りがちなのである。

「あの子のすごいところは、楽譜を見た瞬間に、何年もその作曲家について研究をしてきた音楽家のように正確な解釈をしてしまうところにあるわ」
「──見た瞬間?」
「えぇ。理屈じゃないの。『分かる』んでしょうね。『この曲は、こう弾く以外にない』だろうって」
「あ、何か、前にそんなようなこと言ってました」
「だから、アルフレッドに『考えろ』って言われても困っちゃうのよ。だって、いくら考えたって、他に演奏しようがないんですもの」

肩をすくめるマリアに、あれ、と思ったカノンだ。

「でもそれって、楽譜通りに弾く場合ですよね?」
「さすがカノンちゃん。そうなの。アルフレッドも、そこが気になるみたいなのよね」

ほぅ、と頬に手を当ててため息を零す、少女のような女性。

「最終的に楽譜通り、作曲家の意図通りの演奏になるのは構わないんだけど、最初から何も考えないで弾くのは音楽家として致命的だ、って」
「そうなんですか?」
「楽譜通り弾くなら、ある意味誰にでも出来るもの。そこに、いかに自分の音を見出すか。聴く人が、自分の音を気に入ってくれるか──それだけだもの」

大きなスポンサーがつくかどうかは、多くの音楽家にとって死活問題だ。

「感性か・・・何か分かる気がします」
「なぁに?」
「ん~、アリスって、ものすごくかっこつけでしょう?」
「かっこつけることがかっこいいと思ってるタイプね」
「そうそう。でも、実は素の方が誑しなんですよね。きっと無自覚なんだろうなぁ、って、いつも思います」

苦笑するカノンに、マリアは微笑んだ。

「あら。それ、あの子に言っちゃダメよ? 調子に乗るから」
「はい、言いません」

くすくすと笑って悪戯を目論んだ子どもどうしのような視線を交わしたふたりのもとに、「何話してるんだ?」と低い声とともにお茶とお菓子が運ばれてきた。

「「──ないしょ」」

にっこりと微笑む美貌を前に、キニアンは半ば諦めのため息を零したのだった。


**********

いつも通り、よく分からん話だ。
感性『だけ』で生きてるはずが、あれこれ色々考えて最後に『パーンッ』てなるキニアンのお話。
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