小ネタや更新記録など。妄想の赴くままに・・・
5月病の橘です、どうもおはようございます。
適度な運動と十分な睡眠である程度情緒不安定というものは解消されるのだと、知識としても実感としても知っているのですが、何で私は動かず、しかも眠いのに寝ないんですかね? すごく不思議。
さて。今週を乗り切れば、来週はオタノシミだらけ。
前祝ではありませんが、うちの可愛い子たちに癒してもらいましょ。この前のカノキニの続きかな。
適度な運動と十分な睡眠である程度情緒不安定というものは解消されるのだと、知識としても実感としても知っているのですが、何で私は動かず、しかも眠いのに寝ないんですかね? すごく不思議。
さて。今週を乗り切れば、来週はオタノシミだらけ。
前祝ではありませんが、うちの可愛い子たちに癒してもらいましょ。この前のカノキニの続きかな。
**********
来るならチェロ持ってきてよ、とふんぞり返って言う女王様に従い、キニアンはエアカーに相棒を積み込んだ。
車中での数分間、キニアンは気になっていたことを訊ねてみた。
「お前さ、さっき何話してたんだ?」
「え?」
「先輩たちと。何か話してたんだろう?」
これには目を丸くしたカノンである。
「──聞いてなかったの?」
「ボールの音とか他の部活の掛け声で、聞こえなかったんだよ」
「全然、まったく、これっぽっちも?」
「あー・・・最後の『かっこいい』とかいうのは聞こえたかな。それ以外は全然」
「アリス、耳いいのに」
「だからだよ。聴こえすぎるから、普段は半分音切ってるんだ」
「──切ってる?」
何だそれは、という顔をしている──と思われる──カノンに、キニアンは何でもないことのように言った。
「ボリューム下げてる、っていう感覚が一番近いかな。演奏するときはフルにしてた方がやりやすいんだけど、普段からそれだと頭痛くなるから」
「・・・・・・」
ぽかん、としてしまったカノンである。
「アリスって、すごいんだね・・・」
「防衛本能みたいなものだから、別にすごくはないよ。ちいさい頃はそれが出来なくて、苦労したけど」
「そういえば、アリスって演奏のとき楽譜見ないよね。暗譜してるの?」
「まぁ、大抵1回弾けば覚えるから」
これにもほわぁぁぁぁ、と感心してしまったカノンである。
「間違えて覚えたりしないの?」
「間違えてたら、音がおかしくなるだろう?」
だからないよ、とさも当然のような顔をしてハンドルを握っている少年。
「だって、自分が作った曲じゃないでしょう? すごく失礼な言い方だけど、音がおかしいかどうかって、分かるものなの?」
「うーん・・・こればっかりは、感覚なんだよなぁ・・・音が8分の1音でも違えばもちろん分かるし、リズムが違うと違和感があるし・・・わざとそういう風に崩して演奏する人はいるけどな。まぁ、上手く説明出来ないけど」
「8分の1音って、何?」
「あぁ、音階で半音下がるとか、上がるとか言うだろう?」
「シャープとフラット?」
「そうそう。それは、黒鍵とそれに隣あう白鍵の間の音な。それと、黒鍵を間に挟まない白鍵の間も半音。それの半分が4分の1で、更に半分が8分の1。微分音って言われてる」
若干頬を引き攣らせたカノンである。
「・・・それって、分かるの?」
「分かるよ」
「だって、鍵盤にない音なんでしょ?」
「ピアノにはね。まぁ、他の楽器でも演奏者が独自のテクニックで出したりする音ではあるけど。フルートとか、最近流行りかな」
「・・・・・・」
カノンは改めて思った。
いくら鈍感で空気が読めなくてかっこつけでびっくりするくらいお人好しでも、キニアンは間違いなく『音楽家』なのだ、と。
それも、おそらくは『天才』と呼ばれる類の。
本人が無自覚すぎて全然すごく見えないが、当たり前のような顔をして言っていることは、ことごとく一般人の感覚とズレている。
「お前だって、1回見聞きしたことは忘れないんだろう? 俺は音に関してだけだから、お前の方がすごいと思うけどな」
「・・・絶対違うと思う」
「そうかな? 微分音は、お前も聴けば分かると思うけどなぁ」
「比べれば分かるかも知れないけど、ぼく絶対音感ないから指摘出来ないもん。それに、聴いて分かるのと再現出来るのは全然違うよ」
「ん~、そうかなぁ・・・?」
よく分からない、と首を傾げている彼氏。
やっぱりすごいんだ、とちょっと嬉しくなってほくほく顔のカノンにキニアンは再度訊ねた。
「なぁ。だから、先輩たちと何話してたんだよ」
「気になる?」
「・・・そりゃあ、まぁ・・・」
あまり余裕のないところは見せたくないお年頃ではあるが、気になるものは気になる。
気にならない、と言ってしまったら、こうして訊ねている意味がなくなってしまうのだから。
そんなキニアンに、カノンはにっこりと笑った。
「──教えない!」
そんな気はしていたキニアンだったが、その日は夕食後も、寝る前も、何とか話を内容を聞き出そうと奮闘したのだった。
**********
色々無自覚なキニアンのお話。
来るならチェロ持ってきてよ、とふんぞり返って言う女王様に従い、キニアンはエアカーに相棒を積み込んだ。
車中での数分間、キニアンは気になっていたことを訊ねてみた。
「お前さ、さっき何話してたんだ?」
「え?」
「先輩たちと。何か話してたんだろう?」
これには目を丸くしたカノンである。
「──聞いてなかったの?」
「ボールの音とか他の部活の掛け声で、聞こえなかったんだよ」
「全然、まったく、これっぽっちも?」
「あー・・・最後の『かっこいい』とかいうのは聞こえたかな。それ以外は全然」
「アリス、耳いいのに」
「だからだよ。聴こえすぎるから、普段は半分音切ってるんだ」
「──切ってる?」
何だそれは、という顔をしている──と思われる──カノンに、キニアンは何でもないことのように言った。
「ボリューム下げてる、っていう感覚が一番近いかな。演奏するときはフルにしてた方がやりやすいんだけど、普段からそれだと頭痛くなるから」
「・・・・・・」
ぽかん、としてしまったカノンである。
「アリスって、すごいんだね・・・」
「防衛本能みたいなものだから、別にすごくはないよ。ちいさい頃はそれが出来なくて、苦労したけど」
「そういえば、アリスって演奏のとき楽譜見ないよね。暗譜してるの?」
「まぁ、大抵1回弾けば覚えるから」
これにもほわぁぁぁぁ、と感心してしまったカノンである。
「間違えて覚えたりしないの?」
「間違えてたら、音がおかしくなるだろう?」
だからないよ、とさも当然のような顔をしてハンドルを握っている少年。
「だって、自分が作った曲じゃないでしょう? すごく失礼な言い方だけど、音がおかしいかどうかって、分かるものなの?」
「うーん・・・こればっかりは、感覚なんだよなぁ・・・音が8分の1音でも違えばもちろん分かるし、リズムが違うと違和感があるし・・・わざとそういう風に崩して演奏する人はいるけどな。まぁ、上手く説明出来ないけど」
「8分の1音って、何?」
「あぁ、音階で半音下がるとか、上がるとか言うだろう?」
「シャープとフラット?」
「そうそう。それは、黒鍵とそれに隣あう白鍵の間の音な。それと、黒鍵を間に挟まない白鍵の間も半音。それの半分が4分の1で、更に半分が8分の1。微分音って言われてる」
若干頬を引き攣らせたカノンである。
「・・・それって、分かるの?」
「分かるよ」
「だって、鍵盤にない音なんでしょ?」
「ピアノにはね。まぁ、他の楽器でも演奏者が独自のテクニックで出したりする音ではあるけど。フルートとか、最近流行りかな」
「・・・・・・」
カノンは改めて思った。
いくら鈍感で空気が読めなくてかっこつけでびっくりするくらいお人好しでも、キニアンは間違いなく『音楽家』なのだ、と。
それも、おそらくは『天才』と呼ばれる類の。
本人が無自覚すぎて全然すごく見えないが、当たり前のような顔をして言っていることは、ことごとく一般人の感覚とズレている。
「お前だって、1回見聞きしたことは忘れないんだろう? 俺は音に関してだけだから、お前の方がすごいと思うけどな」
「・・・絶対違うと思う」
「そうかな? 微分音は、お前も聴けば分かると思うけどなぁ」
「比べれば分かるかも知れないけど、ぼく絶対音感ないから指摘出来ないもん。それに、聴いて分かるのと再現出来るのは全然違うよ」
「ん~、そうかなぁ・・・?」
よく分からない、と首を傾げている彼氏。
やっぱりすごいんだ、とちょっと嬉しくなってほくほく顔のカノンにキニアンは再度訊ねた。
「なぁ。だから、先輩たちと何話してたんだよ」
「気になる?」
「・・・そりゃあ、まぁ・・・」
あまり余裕のないところは見せたくないお年頃ではあるが、気になるものは気になる。
気にならない、と言ってしまったら、こうして訊ねている意味がなくなってしまうのだから。
そんなキニアンに、カノンはにっこりと笑った。
「──教えない!」
そんな気はしていたキニアンだったが、その日は夕食後も、寝る前も、何とか話を内容を聞き出そうと奮闘したのだった。
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色々無自覚なキニアンのお話。
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